皿の上に何もおかずお客に提供してる感がある実験作です。
縁側は、昼と夕方のあいだみたいな中途半端な明るさだった。
陽射しはあるのに、暑さはもう抜けていて、畳の縁に影がゆっくり伸びている。霊夢は先に座って煎餅の袋を開け、特に断りもなく一枚かじった。ぱき、という音と一緒に欠片が落ちる。
それを見てから、魔理沙も腰を下ろす。拾われない欠片を一瞬だけ視界に入れて、それから自分も煎餅を取った。
「レミリアのこと、どう思う?」
風の音に紛れるくらいの調子で言われて、魔理沙は少し考える。
「見た目はちんまくて可愛いのにさ。時々、普通に怖いよな」
「そうなのよね。あれ、ずるいわよ」
霊夢は湯呑みを持ち上げながら言う。
魔理沙は煎餅を噛んだまま、口の端だけ動かした。
「ずるさで言ったら、お前もだいぶだと思うけどな」
「……なんか言った?」
「いや、なんでも」
煎餅の欠片がもう一つ落ちた。今度は魔理沙のほうだった。どちらも気にせず、そのまま噛み続ける。風が吹いて、袋の口が少し揺れた。
急須を手に取って湯呑みに注ぐ。湯気はもう弱い。ぬるいな、と思う前に飲めてしまう程度の温度だったが、それについて口にするほどのことでもなかった。
しばらく、音だけが続く。
畳、煎餅、湯呑み。
「……ああいうのってさ」
魔理沙が、独り言みたいに言う。
「可愛い顔して、平気で踏み込んでくる感じがな」
「あるわね」
「ずるいよな」
「ほんと」
それ以上は続かない。
話は自然に途切れて、そのまま間が落ちる。
煎餅は少し湿気ってきていたが、残っている分をそのまま食べる。袋の中身が減る音が、妙に大きく聞こえた。
「そういえばさ」
間を埋めるように、魔理沙が言った。
「恋とか、どう思う?」
霊夢は一瞬だけ魔理沙を見る。それから、すぐ視線を戻した。
「はぁ? どうもこうもないでしょ」
「だよな」
「面倒なだけよ」
「だな」
即座に返ってきた言葉は軽くて、さっきの話と同じ温度だった。
評価は雑で、深掘りはしない。
「別に、困ってないし」
「困ってないな」
急須がもう一度傾けられる。今度は魔理沙がやった。霊夢は何も言わず、湯呑みを少しだけ寄せる。注がれたお茶は、さっきよりさらに冷めていた。
「まぁ」
魔理沙が肩をすくめる。
「そういうもんじゃね?」
「そういうもんね」
煎餅の袋が、空になった。
霊夢はそれを軽く畳んで、脇に置く。魔理沙はそれを見てから立ち上がり、縁側の外に一歩出た。
「じゃ、そろそろ行くわ」
「ん」
霊夢は立たないまま、湯呑みを持ち上げる。
魔理沙は手を振るでもなく、そのまま背を向けた。
畳の上には、拾われなかった煎餅の欠片が、まだ残っていた。