ダンジョンに儲けを求めて何が悪い!   作:ケツアゴ

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第六十八話

 ウチのファミリアの構成員は基本的に糞だ。今は何処でどんな噂を聞いて来たのか酒造りを学びに来た連中と神特有の時間感覚を発揮したソーマが噛み合っちゃいるが、連中から学んだのは最後に頼るべきは自分自身だという事。

 

 あっ、リリルカは別な。ケツ蹴り飛ばして鍛え上げたが、それでも兄ちゃんを頼って良い。

 頼りきりは駄目、言うまでもない逞しさだけれども。特に腕とか俺以上に……。

 

 だが、それ以外を学んでないかっつーと嘘になる。今は過労と友達になってザマァなザニスだが、未だ余裕があって俺がランクアップしたての頃に偉そうに語った事がある。

 

 友好的に接して来る相手は利用価値があるから無碍に扱うな。捨てるのは利益を搾り尽くしてからだ、だとよ。

 

 流石はソーマのアホを理解し、実権を握っていただけはあって少しは役に立った。

 媚びでも下心でも勘違いでも良いが、こっちも友好的に接すれば向こうが裏切った際に徹底的に叩きのめす大義名分が生まれるってもんだ。

 

 大切だぜ、大義名分って。

 

 

「ヘディンは兎も角、俺はちゃんと友達とか居るからな。お前みてぇのは要らねえ。……あっ、いや、一応ヘディンだって友達と言えなくもないのか?」

 

 俺はアミッドが居るし? 他にはリヴィラの街のとかガリバー兄弟は兄貴分気取ってる感じだが仲良くやってるし……ヘイズだって友達と呼べない事も。

 

 でも、ヘディンの方は友達少ないんじゃねえのか? ファミリア内は相変わらずで、他所からは遠巻きにされているし、故郷に関しては知らねえが。

 

 取引やら訓練相手とか知り合い以上ではあるだろうし、此処はフォローした方が良いよな? 言うだけならタダだし。

 

「要らん気遣いだ、愚拝金守護者。そして狂人女め。私も貴様を友にしたいとは思わん。おい、愚神。私を止めた理由、キチンと説明して……」

 

 神威を向けてまで神狩りを再び殺すのを……うん? ああ、そうか。死んだのに蘇ってるんだ。

 

 俺に可能な事が敵対する誰かにも可能だと認識する様に、本来有り得ない事態が起きているなら二度目三度目だって有りえる。

 

 ヘルメスがヘディンを止めたのが其れに起因する何かがあるのだと俺が察し、ヘディンも言葉の途中で薄々勘付いた様子を見せるのと階層全体が激しく揺れるのはほぼ同時だった。

 

「う、うぇぇぇん! 二人共、酷い! タナっち様とイシュちゃん様に言い付けてやるんだから!」

 

「いや、歳考えろや。享年に今までの年月足したら何歳だよ」

 

「ぶー! アタシちゃんは永遠の十代ですー! この体だってわざわざ死んだ時と同じ位のを用意して貰ってるんだからー!」

 

 明らかな異常事態は進み、太陽の代わりに十八階層を照らす水晶の明かりが消え失せる中でも異常者であるガブリエルはガブリエルのまま一切崩れず、反して天井の一部が崩れて本来生まれる筈のない黒の巨人が生まれ落ちた時、ガブリエルが空中に向けて宝珠の胎児を放り投げた。

 

 この時、俺達に突き付けられた選択肢は二つ。即ちガブリエルと黒いゴライアス+宝珠の胎児の何方に意識を向けるかだ。

 

 上に視線を向けた相手の首なんて喜んで掻っ切りに来るだろう相手だ。他の連中が上を見るなら俺とヘディンはガブリエルを注視するのみ。

 ヘルメスも見てんのは確か前の団長が殺された上で頭をホームに投げ込まれたからか。

 

「取り敢えず……足を奪うか」

 

 金の造形は極小の針。血管にでも入れば勝手に心臓まで運んで行ってくれるってんで弱い頃は重宝した。

 

 これだけ細かいと直ぐに折れるし上層の更に浅い場所か下級冒険者にしか通用しねえってんでランクアップしてからは使わなかったが、現在は絶賛悩みの種の聖火のオマケ付きだ。

 

 地面スレスレ、草の隙間を縫って飛ぶ金の針はガブリエルへと向かって行き、横合いから飛び出した女に叩き潰された。

 

 

「フィルヴィス…さん……?」

 

 それは行方不明だったディオニュソス・ファミリアのあの女。交友を結んでいたらしいウィリディスが呆然としたのはこのタイミングで、しかもガブリエルを助けた事だけじゃねえ。

 

 その見た目は既に人間を捨てていた。……あー、数少ない生き残り様は実は生き残っていなかったってオチか。

 こりゃディオニュソスも黒だな。

 

「その姿は……」

 

「っ!」

 

 ウィリディスの静かな声が漏れる中、針を破壊すると同時に放出された聖火は球状に膨張して周囲の物を飲み込む。

 今の動きからしてフィン以上のステイタスを得ているみたいだが、聖火はその腕すら一瞬で燃やし尽くし肘から先を消滅させていた。

 

 追撃……は無理か。周囲一体を巨人の着地による地響きが揺らし、伸ばした腕が周囲の新種達を取り込み巨体を膨張させて行く。

 

 このまま欲張りゃ下手すりゃ俺もモンスターの一部だ。ヘスティアを肩に担ぎ、元凶のヘルメスを適当に投げて遠ざけると俺も飛び退きながら未だ固まってる馬鹿共に向けて声を張り上げた。

 

「逃げろ、馬鹿!」

 

 周囲からは十八階層に散らばっていたモンスターがゴライアスの誕生に誘われる様に集まり、立ち尽くしてたら轢き潰されるだけ。

 まあ、仮にも上級冒険者。既に動いていた第二級以上の二人は当然として他の連中も直ぐに動けた。……一人を除いて。

 

「待って下さい、フィルヴィスさん! 貴女に一体何が……」

 

 何やってんだ、ポンコツエルフ二号が! 他人に拘れる程強くねえだろうが!

 

「……死ぬな、レフィーヤ」

 

 手を伸ばし追い縋ろうとするポンコツエルフ二号に声を掛けながら背を向けた時、二人を分断するかの様に巨人の手が伸ばされた。 

 周囲のモンスターを取り込んだ肉は膨張し、ボコボコと膨れ上がった筋肉は首や頭すら包み込む。

 

 今のゴライアスは歪な形の肉から手足が生え、窪みの中から元の顔と女の顔の二つが覗くという人の形状を完全に失った状態。

 その速度は今更気付いても後衛魔導士が逃げ切れる物じゃなかった。

 

 

「レフィーヤ、ごめん!」

 

 その腰にベルの腕が回され、両手で抱えるなり飛び退く。僅差で退避し空振りになった腕は地面へと突き刺さり、飛び退き空中で身動きが出来ない二人を風圧で吹き飛ばした。

 

「……逃げられたか」

 

 この僅かな時間でガブリエルの姿は消え去り、厄介な狂人を逃した事に奥歯を噛み締める。

 

「よし、足手纏いはダンジョンから叩き出すか。おい、駄女神に馬鹿。先にオラリオに戻ってろ。ついでにポンコツエルフ二号……は働かせるか」

 

 素早く扉を出現させてヘスティアを投げ込めばアスフィもやや乱暴にヘルメスを投げ込み、直ぐに閉ざす。

 ダンジョンが神に気が付いて異変が起きたなら外に逃せば何か変わると思ったが世の中そんなに甘くねえか。

 

 ポンコツエルフ二号が居るって事は遠征帰りで他のも居るだろうし、戦力としては……足りたら良いんだが、どうも嫌な予感がするな。

 

 他の連中がどの辺に居るのか聞こうと思って視線を向ければ吹き飛ばされた影響かベルが押し倒される体勢でキスしている所だった。

 

 あーあ、面倒な。ヘスティアを放り出して良かったな、おい!

 

 あの二人、あんな事になって役に立つのか? そして面倒なのが……。

 

「ヘディン、ありゃ事故だ。女神に伝えても不機嫌になるだけだぞ」

 

「分かっている。あの愚兎の未熟さが原因だ。後々私の手で鍛え上げてやる。乗り越えられねば死ぬ程にな」

 

 まあ、良いだろ。

 

 

 

 

 

「ああ、いけませんクラネルさん。そうだ、唇の薄皮を切り落とせば未だ……」

 

「お前、マジで暫くはポンコツエルフ一号呼びな?」

 

 

 

 




尚、ロキFは現在大勢が毒で倒れている最中です
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