案内されるがまま*1進むと、やけに厳重そうな扉の前で止まった。ヒキコウモリさんと館員さんは僕を置いて、何やら機械に操作し始めていた。そのうちに”ピー”という電子音が鳴ると、扉はゆっくりと自動で開いた。何となくだけど、学校の職員室の扉の仕組みがそれだった気がする。
「どうぞ、こちらへ」
館員さんの声に誘導されるがまま中に入ると、明かりが落とされた広い空間になっていた。四方にはプロジェクターで様々な映像が写し出されていた。その圧倒的な広さに驚いていたけれど、流れている映像をみて、さらに驚いた。
「……ケー、君?」
あちこちで流れる映像の中に、ケー君としか思えない子供が何度も映っていたからだ。何度も何度も、映し出される映像のほぼ全てと言っても過言ではないほど。そして赤いネコのヨウカイや白いお化けのようなヨウカイだけではなく……隣にいるヒキコウモリさんの姿もあって。でもそんな彼らと一緒にいて、ケー君は笑っていた。ヨウカイ達と"普通の友達"のように笑い合って、時に突っ込みみたいな事したりボケ担当になってみたり。正直この普段の光景は気が抜ける。でもピンチの時—妖魔界を揺るがすような事件や元居た世界にも影響を及ぼしかねないような事件の時は、赤いネコのヨウカイや白いお化けのようなヨウカイだけではなく、数えきれないほどのヨウカイと共に戦っていて。今までの、なっちゃんと一緒に会っていた時のケー君の様子から違い過ぎて、僕は混乱してしまった。
「彼はケースケさんではありませんよ。貴方が知っている天野ナツメと天野ケースケ、その二人の父親である天野ケータさんです。」
「なっちゃんのお父さん⁈」
ヒキコウモリさんにそう言われて、僕は展示室内だというのに大声をだしてしまった。だってあの、”普通の父親”と表現するにふさわしいなっちゃんのお父さんが、ヨウカイと繋がりがあってヨウカイ絡みの大事件に関わっていたなんて。こう映像を見てもまだ、信じられない。僕の前では本当に、”普通の父親”で”普通の良い大人”だったから。今まで何度か会ってたけれど、その時には一切匂わさなかったから猶更。
そんな僕の様子を気にすることなく、ヒキコウモリさんは笑って続けた。
「驚きますよね。ケータさんは天野家の中で最も”普通がふさわしい人”ですから。
死んでも尚、”普通”から抜け出せない程。
……しかし、いえだからこそ
承認欲求でも自己顕示欲でも所有欲でもない。
人間界のヒーロー達のように「人助け」を前面に押し出す図々しさもない。
ケータさんが私達に向けていたのは、純粋な信頼と友愛。
困っている友達を放っておけない優しい心根の持ち主で、
その結果成し遂げたことにだって興味が薄い。
結果よりもその過程で傷ついた友達を心配する。
そんな人なんです、ケータさんは。
だからこそ、年を経るにつれて”私達を視る目”を失っても、
私達は彼を信頼し尊敬しているのです。」
ヒキコウモリさんは、映像を見ながら愛おしそうに目を細めた。
それに釣られて映像に視線を戻すと、ケー君にそっくりな彼—ケータさんは、さっきまでの激しいバトルが嘘みたいに穏やかな表情でヨウカイ達と向き合っていた。そして、作戦に協力してくれたヨウカイ達一人一人にお礼を伝えてお互い笑顔で二言三言交わして、怪我しているヨウカイがいれば”怪我させてごめん”と謝りながら応急処置をして。*2ずっと近くにいる赤いネコのヨウカイや白いお化けのようなヨウカイと、まるで何事もなかったかのように笑い合っていて軽口を叩き合って。
その光景はまさしく”信頼があるからこそ”成り立つもので。僕が知っているプロヒーローとは違って、上下関係のない平等な関係だからこそできること。そしてそれが当たり前だと捉えているからこそ、ヨウカイ達も普通に応じているんだと感じた。ケータさんとヨウカイ達は、対等な関係で助け合っている。きっとその理由は、ヒーローたちが行っている「人助け」よりも単純。
……”友達を助けたい”、ただこれだけ。
これが、”ウォッチ使い”とヨウカイの関係なんだ。これが、マークさん達が求めていることなんだ。皆フレンドリーに接してくれて受け入れてくれてる。あとは、僕が彼らを受け入れる。ただそれだけ。”友達を助ける”、そう考えると肩の荷が下りた気がした。
YフォンModel.Iの召喚機能は、いつ使うことになるかは分からない。でも、”友達を助けるため”なら使いたい。ヨウカイと仲良さげなケータさんのことを見て、そう思った。
せっかく入ったから、という理由で、僕はそのまま展示を見ていくことにした。ヒキコウモリさんはいつの間にか展示室から出ていて、けれど僕の表情を見て満足げな表情をしていたことから、”僕にこのことを分かってもらうために”ここに連れてきてくれたんだと理解した。
それは兎も角。一人で展示を見ていたけれど、ケータさんの友達の数に驚いてまた大声を出しそうになってしまった。流石に今回は抑えたけれど。”友達を助けたい”。その一心で600を超えるヨウカイと友達になって、片手じゃ収まらないほどの大事件を解決しているなんて。展示エリアに”妖怪マスター”や”伝説のウォッチ使い”といった表記がされていても納得してしまう程。こんな凄い人が”普通の父親”をやってるなんて、最早詐欺だよ。
ここでの成果が規格外すぎて内心そんなことを呟いていると、部屋に人一人が通れる程度の通路が用意されていることに気付いた。ちょっと気になって、僕はその通路に入ってみることにした。すると、別の部屋に移動した。そこはさっきの部屋とは異なり、人何人かで幹を覆うくらい立派な桜*3が咲き誇り、全体的に古代中国を模したようなデザインになっていた。
「鬼姫・朱夏と、”黒き太陽”?」
部屋の名前の記されたプレートの内容に、首を傾げた。さっきまでの端的さとは違って、中二病チックなタイトルだからこそ分からない。でもなんかスルーするのはもったいない気がして、僕は恐る恐る展示物に近づいた。けれどまた、衝撃的な事実を見ることになった。
「えっ........。なっ、ちゃん........?」
今の現状とはかけ離れ荒れに荒れているこの世界の混乱を抑えるため、生身で奮闘しているなっちゃんが映っていたから。なっちゃんがこの世界に訪れている描写はないのに、なっちゃん達は把握していて険しい表情を浮かべている。なっちゃんには仲間がいて、なっちゃんの近くにほっそりとした男の子とぽっちゃり目で神主の格好をした男の子、ケー君の傍には誰もが二度見するような美少女がいて、皆同じような表情をしている。……僕が知っている二人からは、想像できない光景だ。どうしてもなっちゃん達には”普通な家族”という印象がついてくる。実際ケータさんが”妖怪マスター”だということも、ここで教えられるまで全く気付かなかったし知らなかった。日常生活で仄めかすこともないから、猶更。それはなっちゃんやケー君も同じだ。だからこそ、目の前の”プロヒーローと同等に闘いこの世界を守っている”という事実が、信じられない。
「なんで、こんなことをしてるの……?」
思わず僕の口から零れた言葉に、応える者はいなかった。
[No side]
出久は、空亡に立ち向かうナツメとその仲間に衝撃を受けつつ何とか持ち直して展示を見ていた。しかし、その程度の衝撃はまだ序の口だった。
「なっ……ちゃ........ん........!!」
出久は流れる映像を見ながら、口を手で押さえて青ざめた。なぜならナツメが空亡に取り込まれた、その瞬間を目の当たりにしてしまったのだから。映像の中の妖怪探偵団も、ナツメが取り込まれたことに恐怖と焦りを感じながら攻撃の手を緩めはしなかった。しかし、相手には余り効いておらず、ナツメたち妖怪探偵団の方が劣勢であることは目に見える。このままではどうしようもない!そう出久が思ったタイミングだった。
『俺の友達!出て来い、亡霊番長!』
「ケー、君……。」
ナツメ達から離れた森の中にいたはずのケースケが、亡霊番長の背に乗ってアキノリの隣に降り立ったのだ。出久はケースケのその真剣な様子に、思わずあだ名を呟いた。普段のケースケからは想像できない、恐怖を抱えながらも果敢に挑もうとするその姿勢に、出久は圧倒され言葉が出なかった。
「……ケーくんがこんな表情をするなんて」
投影された画面のなかで、ケースケは亡霊番長だけでなく次々と妖怪を召喚して空亡へ挑みかかっていた。必死に友を喚ぶケースケからは焦りも恐怖も伝わってくるし、その表情は決して笑顔なんかではない。映像内の状況をイマイチ理解しきれていない出久でも、彼ら妖怪探偵団の行動はヒーローに似ていながら、その心持ちは決して同じではないと悟っていた。彼らは”妖魔界を
映像はいつの間にか移り変わり、いつものおさげを解き二本の角を生やし中華風の朱い衣装を身にまとい目に朱を引いたナツメ—朱夏の力を覚醒させたナツメが指一つで空亡を抑え込んでいた。その後は妖怪探偵団側の優勢となり、空亡は追い込まれていく。最後朱夏の必殺技である千本鬼桜を放ち、空亡は終わった。そう思われた。しかし相手はしぶとく、ナツメ・トウマ・アキノリを巻き込み異空間へと移動していた。
時系列は飛び、妖怪探偵団は広大な砂漠に一人の鬼が壁に手錠で固定された場所に移動していた。一人の鬼は、慰め励ます二人の鬼を前に諦念を零していた。二人の鬼はアキノリの前世である白秋とトウマの前世である玄冬であり、その二人の前にいる鬼こそ”空亡”として妖魔界を混乱に陥れた存在であり、白秋/玄冬と共に朱夏に仕えた”空天”。空天は彼の存在を憎む者の罠にかかり、裏切り者の汚名を着せられて投獄された。嵌めた者への恨み、そして許嫁でもあった朱夏に真実を伝えたい一心で”空亡”となり、必死に朱夏の生まれ変わりを追っていたのだ。その後誤解は解け、朱夏と空天は成仏していった。
出久はその映像を見て、ナツメたちの寄り添い方を理解すると同時に人間界においてのヴィランの扱いについて考えを巡らせていた。”事件を起こしたヴィランを逮捕”。これで終わってしまっているのが、元の世界だと。ナツメたちは敵の本心—本音に寄り添っている。ただ”敵だから”で括るのではなく、相手の状況や信条を理解しようと努力している。昨今の人間界では、ヴィランの今までの経歴や信条などを知ろうとする人は少ない。ニュースで報道されないのは勿論のこと、"ヴィランはヴィラン"。その一言で片付けられてしまうからこそ、彼らが何故そうなったのか、本質を知ろうとする人は少ないのだ。
(少しでも相手に寛容になれれば、何か変わるかもしれない。)
出久はナツメ達妖怪探偵団とヒーローたちのスタンスの違いを見て、そう感じていた。
映像が全て流し終わり展示エリアの照明が戻ったものの、出久はその場から動けなかった。知っている人物の大活躍—それも一切知り得なかった大事件を知ったのだから当然。しかも、妖怪探偵団の在り方とヒーローたちの在り方を見比べて考え込んでしまい、癖である小声呟き考察こそ行われなかったが思考の海に沈んでしまっていたのだ。
「…い、…い、おい!大丈夫か?」
「........っ!!」
出久は、その声で現実に引き戻された。目の前には、赤いマントをまとい額に十字の傷を持つ宙に浮く青い猫がいた。
「ね、猫のヨウカイが浮いている?」
出久は現状を理解できないまま、呆然と呟いた。相手―猫妖怪はカラカラと笑うと、そのノリのまま自己紹介を始めた。名前は”フユニャン”。”浮遊霊の猫”なので、”フユニャン”だとか。浮遊霊なのに妖怪カウントしていいのか?というツッコミはしてはならない。
閑話休題。
「お前も、ケイゾウのこと見に来たんだろ?」
「ケイゾウ?」
フユニャンの口から出た、聞き覚えのない名前に出久は首を傾げる。いや、薄っすらと検討はついていた。天野ケータ、その息子の天野ケースケ。その流れからケータたちの血縁であることは、洞察力の高い出久が気づくのには訳なかった。
「ケイゾウって、まさか……ケータさんたちの先祖ってことですか?」
出久がそう聞くと、フユニャンは正解というかのように輝かしく笑った。そして誇らしげに言葉を続ける。
「その通り。ケイゾウは俺の相棒さ!ケイゾウがいなきゃ、ケータやナツメ・ケースケが妖怪と関わることもなかっただろうな。」
フユニャンの何処か感慨深そうなその言葉に、出久は言葉が出なかった。数多の妖怪と友達になり数々の大事件を解決した、妖魔界の英雄”天野ケータ”。父のように妖怪絡みの事件を解決しながら前世からの因縁を見事晴らした、エルダ魔導鏡の使い手”天野ナツメ”。この二人が妖怪に関わらなかった場合のifをつい想像してしまい、言葉を失ってしまったのだ。
しかし出久がそんなことを考えているとは知らず、フユニャンは立ち止った出久を引っ張って隣の部屋に連れてきた。内装はさっきの中華風とは打って変わり、荒れてはいるものの”異能の気配”を感じない古い田舎村を模していた。
「えっ........。」
出久はまたも言葉を詰まらせた。目の前に表現されているのは、出久も歴史の教科書で見た”第二次世界大戦終戦後の日本”。出久が想像していた景色—少なくとも”個性が定着した社会”を想像していたために、まさか超常黎明期よりも昔の誰も”異能”を持たない過酷な時期が模されているとは考えていなかったのだ。
だが何とか復活した出久。先ほどのフユニャンのセリフを、本当に長い目で見た時の”先祖”だと捉え直したのだ。そうすれば、何の問題もない。戦争、超常黎明期。その二つを乗り越えても尚記録が残っている、少し珍しい家系。そう言う事にできるのだから。
しかししかし。ここ”妖魔界”、ひいては”妖怪””怪異”を甘く見てはいけない。そんな単純な理由で片づけられるわけがないのだから。
出久は流れた映像を見てまたもや動きを止めてしまった。だが、これは仕方がない。先ほど無理やりにでも理解しようとしたロジックを真正面から粉々にされたのだから。目の前で流れている映像は、最初の部屋で”妖怪マスター”とまで謳われていたケータが、浅黒肌でそっくりな顔立ちをしつつ何処かぶっきらぼうな雰囲気を纏う少年に向かって、”じいちゃん”。そう呼び掛けていたものだった。
「この少年がケイゾウさん?ケータさんが”じいちゃん”と呼んでいるってことは、なっちゃん達のひいおじいさんな訳だけれど、どう考えても時代がおかしい。なっちゃんは僕の一個上で、ケー君は僕の二個下。ケータさんの年齢を考えても、なっちゃんたちのひいおじいさんが終戦直後の時代に生きているわけがない。僕達の曾祖父世代は超常黎明期ギリギリだから、背景がこんなに荒れていることには説明が付く。でも、映像と合致しない。超常黎明期前だってそれなりに技術が発達していたことは、史料からも明確だ。電気も水道もしっかり整備されていたし、インターネットも携帯電話も普及していて誰もが気軽に使用していた。でも、映像では電気や水道はともかく、インターネットや携帯電話の概念がなさそうに見える。人に連絡するときに、誰もスマホを使おうとするどころか直接人を探しに行っている。この時点で超常黎明期でないことは証明できる。問題は映像がどの時代のものかと言う事だけれど、歴史の教科書で見た”終戦直後の日本”と一致しすぎている。街角のブラウン管テレビに群がっている子供たち、服装、食事の配給など、”戦時中や戦後”でないと聞こえない単語ばかりが並んでいる。超常黎明期の混乱で、それ以前の歴史について余り触れられなくなっている事実があるとはいえ、この光景はそれにしか該当しない。けれど、200年以上前の映像に僕達の曾祖父世代が映ることはあり得ない。」
出久はいつの間にか思考の海に落ち、いつもの悪癖を発動させてまで”
「ケイゾウがナツメのひいじいちゃんなのには間違いねぇけど、”前提が違うぜ”出久。」
「”前提が違う”?」
フユニャンの声掛けで現実に戻ってきた出久は、フユニャンの言葉の意味が分からず復唱した。フユニャンは頷いて続けた。
「そう。出久は”映像のナツメ達が同じ時代を生きている”って考えてただろ?それが間違いだ。」
「えっ?でも、なっちゃんは僕の一個上。生きてる時代が違ったら、今の年齢差になるわけが……。」
「ほら思い出してみろよ、今までのケータやナツメの映像を。あの中に、”ヒーロー”はいたか?”個性を持っている人”はいたか?」
「………………………………………………あっ。」
出久は、フユニャンの諭すような言葉にハッとした様子で目を見開いた。
「そうだよな……。僕が知っている世界では、” 個性” は当たり前のように存在していて、” ヒーロー” が人々を守っている。でも、映像の中では……」
出久は、今日見てきた映像を思い返した。どの映像にも、”ヒーロー”どころか”個性を持った人”—特徴の分かりやすい異形系個性の人の姿がなかった。”個性のように変わった見た目”をしているのは、ナツメたちの傍にいる妖怪達だけだ。
「つまり、今までの映像の中のケータさんやなっちゃん達の世界は、” 個性” がまだ発現していない、あるいは、” ヒーロー” という概念が存在しない、全く別の歴史なんだ……。僕が、ケイゾウさんがなっちゃんとケー君の” ひいおじいさん” だから、戦後にいるはずがないって思い込んでいただけで……」
出久は、自分がいかに思い込みに囚われていたかを痛感した。自分の知っている「当たり前」が、必ずしも全ての世界に当てはまるわけではない。その単純な事実を、彼は見落としていたのだ。
無事結論を出せた出久の様子に、フユニャンは満足そうに頷いた。そして、誇らしげな笑みで出久を誘った。
「謎はこれで解けただろ?折角ここまで来たんだ、ケイゾウの活躍も見て行けよ。ただ立ち止まってちゃ勿体ねぇぞ。」
「そうですね。」
出久は晴れやかな態度で、その誘いに乗った。もう、出久は整理できていた。”映像が
この展示エリア、ケイゾウ絡みの展示でも出久にとって衝撃的な事は数多くあったが、ケータとナツメ。そしてパラレルワールドという前提があったからこそ、素直に受け入れることが出来ていた。
「なっちゃん達の家が”普通”って、詐欺だよ。」
ケイゾウの展示も見終えた出久は、出口に向かいながらそう愚痴った。妖怪ウォッチの製作者のケイゾウ、伝説のウォッチ使いのケータ、朱夏の生まれ変わりのナツメ。コレの何処が”普通”なのか。出久が愚痴を零すのも当然の帰結である。そんな出久に、フユニャンは軽いノリで返す。
「でも、出久が知ってるナツメたちは”普通”だろ?天野家の功績は、彼らが”普通だからこそ”輝くものだ。まさに、普通な家族のシャドウサイドってやつさ。」
「”普通な家族のシャドウサイド”……
なっちゃん達らしいや。」
フユニャンの言い分に、出久はフレーズを復唱してから笑みを浮かべた。そして、出久は軽い足取りで展示室を後にした。その態度は堂々としたもので、出久自身は気付いていないものの自信を取り戻せた証拠でもあった。
【今回の妖怪大辞典】
かつて 妖魔界を滅亡寸前まで追い込んだという 悪しき存在。
恨みや憎しみの感情から生まれ『黒い怨念』となってしまった。
虚空より現れ 絶望へと導く。
”黒い太陽”とも言われる大きな黒い球体の形をしており、中に大きな一つ目だけが存在している。太古の時代に強い恨みや憎しみから生まれた妖怪や人間の心の揺らぎに取り憑くウイルス系の妖怪で、人間や妖怪の心に眠る後悔や恨みを増幅させる能力を持っている。
妖怪ウォッチシャドウサイドにおいては、世界の裏で暗躍していた黒幕であり朱夏の生まれ変わりであるナツメに執着して、朱夏の力を手に入れようとしていた。
かつて妖魔界を治めていた朱夏、彼女の父親の妖魔王を護衛する親衛隊であった鬼族の青年。妖魔王から厚い信頼を寄せられており、朱夏にも信頼をされていたが、密かに妖魔王の座を手にし、妖魔界を支配しようと邪悪な野心を心に秘めていた。しかし、次々と証拠が持ち上がったことで自身へ近付いたのはその野心のためだと知り、信頼していた者に裏切られたと確信した朱夏の手によって地の果てで処刑されたものの、その肥大化した怨念によって現在の空亡の姿へと変貌した。
と思われていたが、実は空天の力を妬む勢力に妖魔王暗殺の濡れ衣を着せられ、陥れた者への憎みと朱夏へ真相を伝えられない無念さから”空亡”となり朱夏を探していた。
朱夏に仕える鬼族の近衛騎士。文武に長けており多くの賢人を従える研究者でもある。朱夏や白秋 そして仲間たちを何よりも 大事に思っている。
全体的に青みががかった肌色をしており、大きな手と一本角が特徴的。月浪トウマの前世であり、白秋と共に空天の無実を信じ続けた存在。
朱夏に仕える鬼族の近衛騎士。豪快で仲間のこととなると熱くなりがちだが常に中立で正しい者であろうと努めている。なぜか動物からよく好かれる。
全体的に明るい肌色をしており、がっしりといた体形に橙色の髪が特徴的。有星アキノリの前世であり、白秋と共に空天の無実を信じ続けた存在。
フユニャン
浮遊霊のネコ妖怪。地面から少し浮いているが性格は地に足が着いておりとっても頼りになる。額のキズは名誉の負傷。
文中にある通り、赤いマントを身にまとった青い猫妖怪。ケイゾウの相棒的な友達妖怪であり、ケイゾウの死後もそれは継続している。ケイゾウの孫であるケータとは、ケータが幼少期つまり妖怪が視えている時代に何度も顔を合わせている仲。今はケイゾウの頼みもあり、遠くからナツメ・ケースケのことを見守っている。
【今回の登場人物記録】
天野ケイゾウ
映像のみで登場。ケータの祖父で、即ちナツメ・ケースケの曾祖父。容姿は幼少期のケータ及び現在のケースケと瓜二つ。しかし性格は正義感が強くて頑固者。曲がったことが大っ嫌い。当時はやりの”ガッツ仮面”のファンで、本気でなりきる程。
原作では妖怪ウォッチ(メダル式)の開発者。
【今回の妖怪広辞苑】
鬼桜
本文では明言しなかった、紫がかった花を咲かせていた桜。鬼族の妖力に反応して花を咲かせる特殊な桜で、原作では酒呑童子(ss)が鬼桜を頼りに朱夏の生まれ変わりを探していた。