新入生歓迎会、略して新歓
そこは新しく大学に入った新入生たちが自らの青春をよりスパイシーにするためのサークルに入るためのいわばお試し期間である。
ここで自分の興味のあるサークルに一度入りそこが自身が青春をささげるにふさわしいのかを決める。
しかしこのような場においてとある男 -ーー 今村耕平は一人悲痛な顔をしてうずくまっていた。
「どうして、どうして俺をお兄ちゃんと慕ってくれる女子高生サークルがないんだ!?」
……あるわけないだろうボケ
☆
最悪の大学初回ガイダンスから数日、元アイドルにして現女子大学生白草四音は今隣にいる同じく大学生北原伊織と共に生贄を探している ーーー 下着姿で
正直どういう状況かわからない人しかいないだろうが安心してくれ、ボクたちにもわからない。
ダイビングサークルの皮をかぶった魔境「ピーカブー」へと引きずりこまれたあの日から連日酒浸りの状況でありなぜかそのたびに着ていた服がどこかへと飛んでいくのだ。
正直服を着てる時間より服を脱いでる時間のほうが長いしもうもはや服がないことに対し二人とも徐々に抵抗がなくなってきている。
このままではまずい、これがボクたち二人の共通見解であった。
というわけで今現在ボクたちは代わりの新入生をあのサークルに捧げ何とか僕たちがサークルに入ることをうやむやにしようとしているのである。
((最悪隣のコイツを差し出せば……))
なんてお互いに考えていると悪魔が ーーー 時田先輩がこちらに声をかけてきた。
「おーい、北原に白草一体何してんだ?そろそろ俺らのほうの新歓が始まるぞ。お前らも参加するから早く戻ってこい」
「いやいやボク……ゲフンゲフン、私たちはまだサークルに入ったわけでは」
「猫かぶんなくていいぞ白草」
「黙ってろ北原」
この男 ーーー 北原伊織、最初はただの女慣れしてないチェリーボーイだと思ったがなかなか歯に衣着せぬ物言いをするバカだということが分かった。なにかと鋭い返しをするところを見るとあの月村手毬を思い出すがあの女と違うのがメンタルの強度だ。月村手毬は良くも悪くも「普通の女の子」であったがこの男には決して揺るがぬ確固たる「我」がある(まぁろくでもない我だが……)。だれに何を言われても決して曲げようとしない強さ(?)が ーーー正直に言えば少しうらやましくも感じる。もしアイドルだった時にこの強さがあれば、姉さまに少しは認めてもらえたのか……
「?どうした?」
「何でもないですよ」
「まぁとにかく二人とも来い、新入生候補ならこっちで集めてきたからな」
「いや多分そいつら先輩たちと違ってちょっと飲みたいだけのやつらですよね」
「生贄には厳しいか……」
☆
結論から言えば案の定先輩方の連れてきたやつらは僕らの身代わりになりそうにはならなかった。
新入生は年齢確認は当たり前として、パッチテストまで受けさせられ、それによってグループ分けされた。ちなみにボクと北原の結果は耐性超強め、つまり先輩たちとサシで飲むこととなった(ボク達並みに強い奴はいなかった)。
「おぅ北原、水だ」
「ありがとうございます」
「白草はウーロン茶だろ」
「そんなお気遣いなく」
先輩たちから飲み物をそれぞれに受け取るボクと北原。
さて、
ボッ!!(ライターを近づけて燃える水とウーロン茶)
「……すいません、なんで水とウーロン茶が燃えるんですか?」
「可燃性の水とウーロン茶だからじゃないか?」
「「これほとんどアルコールだろ!?」」
本当にこのサークルにいる奴らは普段何を飲んでいるんだ?というかそもそも人間なのか?花海妹も身体能力という点では大概だがまだ理解できる範疇であった。
だめだ、このままでは確実にアルコール中毒で死ぬ。それは隣にいる北原も同じようだ。
(白草まずいぞ!早く、早く生贄を)
(わかってる!くそ!どこかに陥れても罪悪感の無い、それでいて酒に強そうなやつは!)
苦し紛れに誰かいないか辺りを見渡すボクと北原。するとどこか見覚えのある人影が……
☆
衝撃的な事実から目をそらして一週間、私葛城リーリヤは伊豆大に来ていた。
NIAで恩のある四音ちゃんの噂……なぜか下着姿で大学に通学しているというよくわからない噂を自らの目で確かめるために周りの制止を振り払ってここに来たのだ。
「リーリヤ、なんか私、嫌な予感がするの……ロクでもない意味で……」
「あぁ、なんというか、厄介ごとに巻き込まれそうな……」
「なんとなーくですが、葛城さんのプロデュース計画にかなり影響が出そうな……そんな予感が……」
清夏ちゃんに燕先輩、さらにはセンパイまで……
「でもそれは前提だから」
そう、そんな予感が四音ちゃんを探すのを諦める理由にはならないのだ。
そんなことで伊豆大のオープンキャンパスを探索つつ四音ちゃんを探していると、道端でうずくまっている男の人を見つけた。見た目は金髪のイケメンで普通にアイドルを自称しても騙せそうなほどだ。
「あ、あの大丈夫ですか?」
「ひっ!?女性!?」
「お、落ち着いてください、深呼吸です。はい、吸ってーはいてー……落ち着きましたか?」
「あ、あぁ、すみません、この大学に俺の入りたいサークルがなくて絶望してて……」
「いったいどんなサークルですか?」
「俺をお兄ちゃんと慕ってくれる女子高生サークル……」
「それは無いんじゃないかなー……」
どうやらなかなかに変な人らしい。まぁ気持ちはわからなくもない、私だって最初はそういう部活があると思ってたし、何ならあこがれてたし、私をマスターと慕う美男美女サークルがあるって……
「ちなみにコスプレサークルも同人誌サークルもなかった」
「嘘だ、あなたは私を騙そうとしている……」
そんな、大学はオタクにやさしいサークルの集まりではなかったのでは!?
やはりオタクはバレたらだめなんだ……
「つらかったですね……ぐすっ……お名前は……」
「今村耕平だ。『魔法少女ららこ』が最推しだが『ブワッとブレザー つむぎちゃん』履修し始めた。貴女……いやその感じからすると同志よ、お名前と推しは?」
「葛城リーリヤ、最推しは『ブワッとブレザー つむぎちゃん』で『魔法少女ららこ』にも最近はまり始めました」
ピシッガシッガンガグッグッ(似た傾向のオタク仲間に会えた感動を表す友情の証)
「「We are friends」」
と、今村さんと親交を深めていると
「何やってんだお前ら」
そう黒髪の青年が私たちに声をかけてきた。そして彼の隣には……
「四音ちゃん!!」
「げぇ!!葛城リーリヤ!!」
お目当ての人物がそこにいた。とりあえずはちゃんと服は着ているようだ……
「何、お前の知り合いか白草?」
「べ、別に大した関係じゃありません」
「もぉ、四音ちゃん!!ってあれ今村さんは?」
見ると今村さんは私の後ろで子犬のようにガタガタ震えていた
「知らない女性……怖い……」
「何なんですこの男……?」
「あはは、ちょっと彼、人見知りで……」
そんな中黒髪の青年が私に話しかけてきた
「ってそうだ、いきなりすいませんね。俺の名前は北原伊織っていうんだけど……お嬢さん、お名前は?」
「奴の名前は葛城リーリヤ」
「おい、お前には話しかけてねぇ……、ってあのアイドルの?」
「そうだが?」
「まぁ、そうですね、アハハ……」
アイドルとしての活動にもだいぶ慣れてきたがこうして一般の方にも自分の名前が知られているというのは未だにこそばゆい感じがする。決して悪い意味でなくむしろうれしいのだけれど
というかナチュラルに四音ちゃんと話しかけていたけれど
「四音ちゃん、友達出来たの?」
「誰がこんな男と友達になる者か」
なんてひどい反応
「そうだな、せいぜい友人未満知人以下だな」
いや北原さんも大概ひどい
「まぁ、あなたがどーしてもボッチがいやというのなら友達になってあげても」
「誰がお前みたいな性悪と」
「なんだDT?」
「やんのかコラ?」
(メンチを切りあう四音と伊織)
「もう一周回って仲いいじゃないですか……」
なんか私漫画かライトノベルでこんなの見たことあるな……
(ケンカップルってやつか……?とりあえず処すか同志?)
後ろで同志こと耕平さんもつぶやく……けど話が物騒だなぁ……確かにリア充はオタクの敵だし、実はいうと私たちのプロデューサーと清夏ちゃんが隠れて付き合っててそんな二人の甘々な雰囲気に最近反吐が出そうになっているけど……
私はアイドル、そんな誰かの不幸を望んではいけない、だから、だから……
(……二人が何も感じることない一瞬で処すなら手を貸しましょうか?)
(乗った)
だから不幸を当人が感じぬ前に処せば大丈夫だよね?
そんなことでバッグの中から布教兼処刑用のシルヴェスタ本(重量5Kg)を探していると
「そういえばそこのイケメンと葛城さん、君たちサークルを探してないか?」
「ん?あぁ……そうだな、ただお目当ての美少女女子高生サークルが存在しなくてな……」
「うん、私も実は四音ちゃん探し以外に一般の人でも入れるサークルを探す目的もあって……あったりしないかなシルヴェスト実物大立像建造サークル……」
「あるわけないだろカス共。ってゲフンゲフン……そんな貴女達におすすめないいサークルがありましてねぇ……」
「そうそう、ダイビングサークルなんだが『ピーカーブー』っていうところなんだ。実は生n……ゲフンゲフン同級生で入ってくれる奴をそこの性悪と探してたんだ」
「えぇ、誰でも入れるサークルですし、先輩方もとっても……本っ当に自分を解放できるように気を使ってくれる良い方たちなんですよ」
「ダイビングかぁ……」
昔『あま〇んちゅ』って作品を読んでたけど、実際に憧れてたなぁ……
「けど私アイドルとかの予定が……」
「あぁ、俺もアニメ鑑賞のリアタイが……」
「大丈夫だ、そこらへんはちゃんと合わせてくれるさ」
「ダイビング自体そんな結構な頻度で潜るようなものでもないようですし、そこらへんは結構緩いですよ」
目を閉じて、想像してみる
青い海の底で、太陽の光がやさしく体を包み、その光の上を魚たちが優雅に泳ぎ、そしてそんな幻想的な背景の隅でいちゃついてる清夏ちゃんとプロデューサー……
「おっと脳内メモリにウィルスが!!」
「どうした同志!?」
あ、危ないあともうちょっとでうらやましさと嫉妬で記憶が消し飛ぶところだった。とりあえず帰ったら清夏ちゃんとプロデューサーには鬱アニメ耐久に付き合わせよう……
まぁ、それは別として、
「わかったよ四音ちゃん、私、そのサークルはいるよ!!」
「むむ……ならば俺も!!確かにアニメ以外にもこういった趣味を増やすのもいいからな」
どうやら耕平さんも入ってくれるようだ
「そうかそうか、それは素晴らしい!!」
「ええ、本当に……それではそのサークルまで案内しましょう」
こうして私のキャンパスライフ、いや別に大学には入ってないから違うか……サークルライフが思わぬ形で……
☆
「「「ウェァルカァァアアム!!!!!!!!」」」
「「謀ったなぁ!!北原/白草ぁぁあ!!」」
……本っ当に、思わぬ形、いや望まぬ形で始まることとなった……
その頃のプロデューサーと清夏
『ねぇPっち、リーリヤ、大丈夫かなぁ?』
『まぁ多分大丈夫だと思いますよ』
『それとさぁ、今度、家行ってもいい?』
『……一応アイドルとプロデューサーなので……』
『いけずー』
『だからしばらくはこれだけで』 Chu
『…………もぉ~』
『頼む葛城早く戻ってきてくれ、このままでは私の頭が砂糖でいっぱいに……オェ』