楽しんでいただければ幸いです。
「出席取るぞー。
「はい」
先生の言葉にアタシはそこそこ大きな声で返事する。
アタシ、
テンプレ的な交通事故にあって、転生してきた人間。いわゆる転生者だ。
前世ではOLしてたけど、今は花の高校生。
そして転生した先は大人気カードゲーム『遊戯王』のアニメ6作目、『遊戯王VRAINS』の世界だ。
ちなみに目の前には『VRAINS』の主人公、藤木遊作くんがいます。
後ろ姿でも目立つ髪型だから一発で分かるね、コレ。
転生した時はどうやって死んだかも思い出せなかったし、状況を飲み込むのに時間がかかった。
けれど、この世界で生活して行くうちに色んな事を思い出せた。
なにより自分の好きなカードゲームアニメの世界に来れたことが嬉しかった。
そんなワケあってアタシは2度目の青春を謳歌しているのだった。
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授業と部活を終えたアタシは自宅に戻る。
「ただいまー」
「オカエリナサイマセ、シノサマ」
帰宅したアタシを長身のメイド型ロボットが出迎えてくれる。
アタシの両親(この世界のだけど)は海外で仕事をしていて、アタシは一人暮らし。家事とかは全てロボットにやってもらっている。
入学祝いで貰ったSOLテクノロジー社の新型デュエルディスク。
この世界にきてからまだ行ったことないんだよね、リンクヴレインズ。
せっかくなんで行ってみますか、リンクヴレインズ!
「デッキセット!Into the VRAINS!」
掛け声と共にアタシの身体が青い粒子に包まれてゆく。
そして目を開けるとそこにはもう一つの世界が広がっていた。
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「ここがリンクヴレインズ……」
とりあえず物は試しという事で、初期アバターのまま来ちゃった。
色んな人がこのリンクヴレインズで決闘をしたり、観戦したりして楽しんでいる。
アニメを観ている時はピンと来なかったけど、実際に来てみるとVRとは思えないほどのリアルな空間が広がってる。
そんな時だった。突然、空間が揺れて、建物や大地を揺らす。
そして、割れた空間から一人の人影と黒いドラゴンが現れた。
アレは……ハノイの騎士!?
「Playmakerは何処にいる?まぁ、いい。奴が現れるまで暇つぶしさせてもらおうか……!!」
男が不敵に笑う。まさか……!!
「やれ、クラッキング・ドラゴン」
ハノイの騎士の命令を受けて、雄叫びを上げる黒い竜。
そして、その口からこの世界を燃やす炎が放たれた。
「うわぁぁぁぁぁああ!」
「ハ、ハノイだー!!逃げろー!!」
ハノイの騎士が現れた事により、平穏だったリンクヴレインズが一気に崩れ去る。辺りには悲鳴が響いて、逃げ惑う人々で溢れかえっていた。
飛び回るクラッキング・ドラゴンは破壊活動を加速させてゆく。
倒壊した建物の瓦礫で押し潰される人。
クラッキング・ドラゴンの炎に飲み込まれる人。
色んな人が消えてゆく。
「どうしたPlaymaker!ここまでしても出てこないか!」
……アタシには関係ない。
「リンクヴレインズが全て破壊されても壊されても知らんぞ!」
リンクヴレインズ内でやられても、死にはしない。
それにハノイの騎士なら
それまでの話だ。
「誰か……!!助けてっ……!!」
「……!!」
弱々しい声で悲鳴を上げる小さな女の子。
逃げ遅れてしまったのだろうか。
黒い竜は緑の眼を光らせながら、女の子へと近づいてゆく。
「私は女子供でも容赦はしない。やれ、クラッキング・ドラゴン!」
ここがアニメの世界っていうのは分かってる。
……それでも。
困っている誰かの声を見過ごす事なんて、出来ない─。
「はぁぁあああああ!!」
地面を蹴って、全速力で駆け抜ける。
炎が女の子を飲み込む間一髪の所で、小さな身体を抱え込む。
衝撃と共にアタシの背中が地面に打ち付けられる。
かなり痛いけど、この子は炎に巻き込まれずにすんだ。
「大丈夫?」
「う、うん……」
「巻き込まれないうちに早く行って!」
「あ、ありがとうお姉ちゃん……」
女の子が安全なところまで走っていくのを見届ける。
そして、アタシの中で
アタシは感情の赴くままにハノイの騎士へと歩みを始める。
危険なんてどうでもいい。
今はアイツを。
やっつける!
「なんだお前は?」
「……今、アタシはかなりイラついてる。リンクヴレインズを滅茶苦茶にして、我が物顔でふんぞり返ってるアンタにね!」
震える手を隠しながら、私は目の前のハノイを睨みつける。
「
「ハハハ!ハノイに逆らうバカがここにもいたとはな!いいだろう、Play makerが来るまでの暇つぶしだ。相手になってやる!」
スピード デュエル!
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データストームの風に乗り、アタシとハノイの騎士の
「私のターン。私は
「フン、いきがってた割にはその程度か。私のターン、ドロー」
ハノイの騎士がドローした瞬間、その口角が釣り上がる。
「実に完璧な手札だ。これならば我が力を存分に発揮出来る……!」
ハノイの騎士の切り札。十中八九、クラッキング・ドラゴン。
そして呼び出す為のカードが手札に揃っているのだろう。
だけど、その隙は与えない─。
「メインフェイズ開始時、
私が伏せていたカードを発動すると、『おジャマイエロー』、『グリーン』、『ブラック』の姿をしたトークンがハノイの騎士のモンスターゾーンに居座る。
「な、なんだコイツらは!?」
「『おジャマトリオ』。アンタのフィールドにおジャマトークンを3体特殊召喚する」
「私のフィールドにモンスターを?何を考えている……」
アタシの行為に疑問を浮かべるハノイの騎士。
彼は自分のフィールドを見て、その言葉を撤回するハメになる。
「しまった……!これはスピードデュエル……」
「そう。モンスターゾーンは3つしかない。よってトークンによって埋めつくされる」
「だが、コイツらを『クラッキング・ドラゴン』のリリースにしてしまえば……」
「無駄よ。『おジャマトークン』はアドバンス召喚のリリースに使用できない」
「なんだと!?」
「アンタに『おジャマトークン』を処理出来るのかしら?」
『クラッキング・ドラゴン』を主軸にデッキを組んでいるコイツがリンクモンスターを持っているとは思えない。
「私の戦術を封じてくるとはな……。だが、それもコイツらを退けるカードを引けばいい話。それまでは貴様が召喚したトークンが私の壁となり、ライフを守る!ターンエンドだ!」
……耳は痛いがハノイの騎士の言う通りだ。
『クラッキング・ドラゴン』の召喚を封じる事に成功したものの、敵に塩を送っている状況には間違いない。
下手にこちらからトークンを除去してしまえば、その隙を狙われる可能性もある。
「……」
そして私の手札は正直、事故にも近い。
……だけど、あのカードが来てくれればこの状況をひっくり返せる。
このドローに全てがかかっている。
「アタシのターン。……ドローッ!」
目を開けて、ドローしたカードを確かめる。
「……!!」
デッキは私に応えてくれた。これがこの決闘を勝利に導く最後のピース!
「私は『逆ギレパンダ』を召喚!」
「攻撃力800のモンスター?それで何が出来る」
「『逆ギレパンダ』の攻撃力は相手フィールドのモンスター1体につき500ポイントアップする!」
「何だと!?」
『何だゴラァ!』と叫び声を上げながら、『逆ギレパンダ』の攻撃力が上昇する。
逆ギレパンダ ATK800→2300
「そして装備魔法『デーモンの斧』を装備。『逆ギレパンダ』の攻撃力を1000ポイントアップ!」
逆ギレパンダ ATK2300→3300
「更に魔法カード『野性解放』!このカードの効果によって、『逆ギレパンダ』の攻撃力は自身の守備力分アップする!」
『野性解放』の効果を受けた『逆ギレパンダ』の怒りは最高潮に達する。
今にも相手モンスターに襲いかかりそうなくらいだ。
逆ギレパンダ ATK3300→4900
「ただし、この効果を受けたモンスターはターン終了時に破壊される。バトルよ!『逆ギレパンダ』で『おジャマトークン』を攻撃!」
「血迷ったか!いくら攻撃力を上げたところで、壁となるトークンがいる限りお前の攻撃は届かんぞ!」
「ムダに攻撃力を上げていたワケじゃないわ!『逆ギレパンダ』のもう一つの効果。攻撃力が守備力を上回った数値分、相手に貫通ダメージを与える!」
「な、なんだと!?」
『逆ギレパンダ』の鋭い爪が『おジャマトークン』を貫く。
そしてその攻撃で発生した衝撃波がハノイの騎士を襲う。
「ぐぉぉぉぉおおおお!!」
ハノイの騎士 LP4000→100
「ハァ……ハァ……正直、貫通ダメージには驚いたぞ……!!だが、肝心なところで計算を間違えたようだな。私のライフは100残っている。次のターンから私の反撃が始まるのだ」
「それはどうかしら?」
「何?」
「おジャマトークンが破壊された時、そのコントローラーは300ポイントのダメージを受ける」
「この私が、何も出来ずに、負ける……!?」
『ハ、ハノイの兄貴〜』
バトルに負け、ボロボロになった『おジャマトークン』がハノイの騎士に歩み寄ってゆく。
「ち、近寄るな……!!」
逃げようとするハノイの騎士に『おジャマトークン』が飛びつく。
その時だ。いきなり『おジャマトークン』が破裂して、起こった小さな爆発がハノイを襲う。
「馬鹿なァァァァ!!」
ハノイの騎士 LP100→0
こうして
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「約束よ。ここから出ていってもらうわ」
「くっ……。今日の所は退いてやる。だが、ハノイの騎士に逆らってタダで済むと思わない事だな……!!」
そんな捨て台詞を吐いてハノイの騎士はログアウトしていった。
負けた腹いせに何かされると思っていたけど、潔い奴もいるのかしら。
「すげぇぜアンタ!ハノイの騎士に勝っちまうだなんて!」
「Playmakerに次ぐヒーロー誕生だ!」
「良かったらオレとフレンド登録を……」
アタシの周りに次々と人が集まってくる。
「お姉ちゃん!」
「貴女は……」
人々に囲まれて困惑するアタシの目の前に現れたのは、決闘前に助けた女の子だ。
「さっきは助けてくれてありがとう!今の決闘見てたよ!とってもすごかった!」
「アタシの決闘、ずっと見ていてくれたんだ。ありがとね」
「お姉ちゃんがパンダさんを使うところカッコよかったー!!なんだか獣使いみたい!」
「……!!」
その言葉でアタシの中で何かが変わる─。
「この子の言う通りだ。さっきまで逃げていた事を忘れて、君の引き込まれたよ!
「私も!」
「オレもオレも!」
……そうだ。今、分かった。
この子を含めた人々は単なるアニメ世界の住人じゃない。
この世界で確かに生きているんだ。
「もうこんな時間!そろそろ帰らなきゃ!バイバイ、お姉ちゃん!」
女の子は手を振りながら、ログアウトした。
その姿を見届けたアタシはある決心をした。
「みんな、ゴメンね!アタシも帰らなきゃ!」
「えっ!?」
「やりたい事ができたの!じゃあね!」
ざわめく周囲の声を後にアタシはログアウトする。
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今日は部活がない日なので、真っ直ぐ帰宅したアタシは新型デュエルディクスを構えていた。
昨日、ログアウトしてから徹夜でアバターのデザインを考えていた。
ややブラック気味だったけど、デザイン系の会社に就職しておいて良かったと思う。
結果、今日の授業には遅刻しかけたけどね……。
まぁ、気を取り直していくとしますかリンクヴレインズ!
「デッキセット!Into the VRAINS!」
桃色の髪と作業用のゴーグル。そして頭にはネコ耳がついている。
アタシが前世で使っていたデッキで一番好きなカードをモチーフしたデザインだ。
「今日からアタシは
背中からDボードを取り出し、データストームの上を駆け抜けゆく。
コレは転生したアタシがVRAINS世界で生きてゆく話だ。
To be connected……?
〜ざっくりキャラ設定〜
【獅子野 シノ/ビーストテイマー】
転生前はOCGをプレイしていたアラサーのOL。
好きなテーマは【鉄獣戦線】。
この世界に来てからは【ビースト】寄せのビートダウンを使っている。
当初はデフォルトのアバターでリンクヴレインズにログインしていたが、ハノイとの決闘後は『鉄獣戦線 キット』をモチーフにしたデザインのアバターを使い、名前もビーストテイマーに改名した。