ゼロの人魚姫   作:北町スイテイ

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いつも読んでいただきありがとうございます。
日常と少しの違和感が重なる回です。
ゆっくり読んでもらえたら嬉しいです。


第12話「そうかあ、ついにあたしにもモテ期が来たってわけかあ」

 

最近、誰もいないのにどこからともなく声が聞こえてくる、なんて言う事件が多発しているが、そんなことはあたしには関係がない。

 

今日も今日とて早朝からルイズの下着を洗濯中である。

 

 

 

「ふむふむ、これははじめて見る下着ですな~。あの時の買い物はこれのことかあ。」

 

 

 

あたしは紫のパンティを掲げながら言った。

 

 

 

「サヤカさん! やめてあげてください。ミスヴァリエールがかわいそうです。」

 

 

 

それを一緒に洗濯に来ていたシエスタがおろおろと止めていた。

 

 

 

「大丈夫大丈夫、今はあたしとシエスタの二人だけだし。」

 

「私がいるじゃないですか!」

 

「女の子同士だし気にしないでいいよー。」

 

「それをさやかさんが言うのは絶対違うと思います・・・。」

 

 

 

最近あたしは、会話をしながらでも洗濯ができるようになっていた。あたしの洗濯スキルは日々進化しているのだ。

 

 

 

「はあ、こんなところをファンクラブの皆さんが見たらどう思うか。」

 

「あはは、ファンクラブってルイズの?」

 

「いえ、お二人のです。」

 

「はいぃ?!」

 

 

 

びっくりしすぎて素っ頓狂な声が出てしまった。

 

 

 

「なにそれ聞いてないんだけど。」

 

「ずいぶんな人気で、お二人をテーマにした小説がひそかに取引されているとか。」

 

「ちょっとそれは知りたくなかったかなあ。なんでそんなことに・・・」

 

「ギーシュ様との決闘騒ぎでの二人がまるで騎士と姫のようだったとかで、私たちメイドの間でも人気なんですよ?」

 

 

 

知らなかった。あの騒動がこんな弊害を生んでいたなんて、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないか!

 

 

 

「あの時のサヤカさん本当にカッコ良かったですもん、人気が出るのもうなずけます。」

 

「そ、そう?」

 

「はい!」

 

 

 

そう言われると悪い気はしない。

 

 

 

「そうかあ、ついにあたしにもモテ期が来たってわけかあ。」

 

 

 

こまっちゃうなあ

 

 

 

「あ、そういうのとは違うみたいですよ。」

 

「へ?」

 

「ミスヴァリエールとサヤカさんが好きというよりは、お二人が仲良くしているのが好きといった集団ですね。」

 

「何ですとぉ!?」

 

 

 

それはつまり・・・

 

 

 

「あたしとルイズがパヤパヤするのを期待している集団ってことですかい・・・」

 

「端的に言えばそういう意味ですね。」

 

 

 

なんてこったい。

 

ちなみにシエスタの話だとそのファンクラブにもいくつか派閥があり、「友情的なパヤパヤがみ隊」「あれ的なパヤパヤがみ隊」「サヤカはルイズに飼われてい隊」などがあるらしい。・・・最後のはどういう意味だ。

 

 

 

「誰がそんな恐ろしいクラブを作ったのよ!」

 

 

 

とっちめてコテンパンにしてやる!

 

 

 

「会長はギーシュ様だとお聞きしましたが・・・」

 

 

 

もうコテンパンにした後だった。

 

 

 

「ギーシュのやつぅ、今度会ったら酷いんだかんね。」

 

 

 

あれからギーシュとはたまに話す仲だったが、そんなことをしているとは・・・油断ならない。

 

あたしは洗濯する手にさらに力を籠めると、ギーシュへの復讐を誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

 

 

「学院のご理解とご協力に感謝いたします。」

 

「王宮の直命に理解も協力もないでな。」

 

 

 

学院長室の会話が聞こえてきた。私がくるのが遅かったため内容まではわからなかったが、何か署名をしていたのだけはわかる。

 

やがてキザったらしく、趣味の悪い服を着た男が出てきた。

 

彼はモット伯。ハルケギニアの貴族である。

 

 

 

「今度食事でもどうです? ミスロングビル?」

 

 

 

そう聞く彼の目線は私の胸元を見つめている。私は両手を胸の前で合わせて、さりげなく隠す。

 

 

 

「それは光栄ですわモット伯。」

 

 

 

軽く微笑む。

 

 

 

「楽しみにしてるよ。」

 

 

 

そう言ってモット伯は去っていった。

 

 

 

 

 

-----吐き気がする。

 

 

 

こんなゴミみたいな貴族とは口を利くのも忌々しい。

 

だがこれも仕事。私は無理やり笑顔を作る。

 

 

 

『そんなに嫌ならぶっ飛ばしちまいな!』

 

 

 

あの剣ならそういうんだろう---

 

 

 

私はデルフのことを思い出した。

 

 

 

あの日街で拾った剣を、私はまだ売り払うことができないでいた。

 

もともとすぐに売り払うつもりだったが、のらりくらりと話題をそらされた末に、持ち帰ることになってしまった。

 

今では私の部屋を我が物顔で占領している。

 

やれ服はちゃんとたためだ、やれベッドのシーツは毎回変えろだ、いちいちうるさい。

 

最近は部屋の模様替えを要求してくるようになってきている。

 

もちろんそんな言葉を聞く義理はないのだが、そのつどいいように煽られ、売り言葉に買い言葉。

 

 

 

『っへ、やらなくてもいいってのはやれないやつのいいわけさ! 要はできないことをできないって自覚するのが怖いのさ。まあ、姉さんがそんな卑怯な真似をしても俺は別に責めないぜ、こんな簡単なことも(・・・・・・・・・)できないからって責めはしない。ああ、しないともさ!!』

 

「それくらいできるわよ!!」

 

 

 

という感じにしてやられるわけである。

 

 

 

「あの剣いつか目にもの見せてやるわ!」

 

 

 

モット伯を見送りながらそんなことを考えた。

 

 

 

「王宮は今度はどんな無理難題を押し付けてきたんですか?」

 

 

 

とりあえずデルフのことは置いておいて、まずは情報収集が先だ。仕事をしなくては。

 

 

 

「なあに、くれぐれも泥棒に気をつけろと勧告に来ただけじゃよ。」

 

「泥棒?」

 

「近頃フーケとかいう魔法で貴族の宝を盗み出す賊がいるらしくてな。」

 

 

 

ドキリと胸が鳴ったが、何事もなかったかのように散らかった本に手を付け棚にしまっていく。

 

 

 

「土くれのフーケですか?」

 

「わが学園には王宮から預かった秘宝『悪魔の繭』があるからの」

 

「『悪魔の繭』? ずいぶんな名前ですね。」

 

「この学園の宝物庫は、何人ものスクエアメイジが強力な魔法をかけておる。心配せずとも盗まれることなんてありはせんよ。」

 

 

 

なるほど、これはなかなか骨の折れる仕事になりそうだ。何とかして宝物庫の情報を集めようと私が今後の計画を練っていると・・・

 

 

 

 

 

ゾクゾクゾク

 

 

 

 

 

指の形をした石の置物でオスマン氏が私の背中をスーッと撫でた拍子に変な声が出る。

 

 

 

「ほっほっほ」

 

 

 

このくそ爺!

 

私は置物をひっつかむと力の限りオスマンに投げつけた。

 

 

 

「あぎゃああああ。」

 

 

 

学院ではどこからともなくこんな悲鳴が聞こえたとか、聞こえなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰ってからその話をデルフにすると。

 

 

 

『よくやった! やればできんじゃねーか!』

 

 

 

と舞い上がっている彼を見て、なんだか少しうれしく思う私だった。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
明日も22時に更新予定です。

次回 第13話「まーた助けられちゃったなあ」
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