ゼロの人魚姫   作:北町スイテイ

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第16話「謝らなきゃ」

~ルイズ~

 

サヤカと生活し始めて幾分か経った。あの契約の日からサヤカは契約通り私の面倒を見てくれてる。

元の世界に戻る方法とかは、全然だけど。

 

 

ギーシュの一件から、他の使用人とも仲良くなったのか、私の授業中もそんなに暇はしていないみたい。この前なんかは他の使い魔と一緒に昼寝をしているのをみたわ。

自由でいいわねと思う反面、そんな自由さこそが彼女らしさなのだと納得もしているつもり。

 

最初はお互いに距離を測りかねている感じだったけど、ここ最近はなんとなくお互いの距離感が分かってきたのか、これが友達なのかな?くらいの距離感を保ててた。

 

サヤカは私なんかと比べるのがおこがましいくらい、明るく素直で友達も多いみたいだけど、時々とても遠く、冷たい目をすることがあるの。

それは魔法少女の話をしたときもそうだし、日常の中のほんとに何気ない瞬間に、サヤカが壁を作っていると気づく瞬間がある。私には私の事情があるように、サヤカにもサヤカの事情があるのだろう。だからお互い踏み込まない、そんな関係も悪くなかったわ。

 

過ごす時間が積み重なるうちに、最初にあった負い目みたいなものも薄れてきて、強さとかそういうのは全然だけど、サヤカとルイズとしては少しづつ対等になれてきている気がしていた。

だからだろうか、最近は素の自分をサヤカに見せることも増えていた。

 

「サヤカ! こんな時間までどこほっつき歩いてたのよ!」

 

いつも部屋で待っているはずのサヤカが居なくて。何かあったんじゃないかと心配をしていただけだった。

 

 

「私がどんなに心配したか。」

「心配してくれたんだ。」

「当たり前でしょ。」

 

あなたは初めてできた対等な友達なのだ。身分とか、魔法とか関係ない大事な友達。

 

「サヤカ聞いてるの!」

「あーはいはい、ルイズはかわいいですよ~」

「聞いてないじゃない!」

 

私が心配でそわそわしていたというのに、へらへらと笑う顔にむかついた。

あたしの気も知らないで!

 

肩で息しながらサヤカを責める。あんなに心配したのだ、これくらい許されるはずよ。この私が、探しに行くか迷っていたのだから。

 

「もう・・・わかったわよ。帰りが遅かったことはもういいわ。」

 

一通り怒って私は満足したので、とりあえず事情を聴くことにした。サヤカが何の理由もなしに私との契約をおろそかにするとは思えないし、きっと何か事情があるのだろう。このお人よしはすぐにトラブルに首を突っ込むのだ。

 

「で、いったい何があったの?」

 

事情を聴いて、私がそれにあーでもないこーでもないって文句を言って、今日も仲良く眠る。そうなるはずだった。

 

やはり今日も余計なことに首を突っ込んでいたらしい。サヤカがいつも仲良くしているというシエスタというメイドが貴族に連れ去られるところだったとか。それは確かにあんたならほっとけないわね。

 

途中まではよかった。

 

「で、困ってたんだけど。ちょうどキュルケが来てくれてね」

「は?」

 

今、とても不快な名前が聞こえた。

 

「いやー、ほんとに助かっちゃったわけですよ。ぶっちゃけもう手詰まりだったし、キュルケにはあとでお礼しなくちゃなあ」

 

気のせいじゃなかったわ、この馬鹿ツェルプストーに助けられるどころか、いつの間にか呼び捨てをするような関係になったわけ?

ふつふつと怒りが湧いてくる。サヤカは私の友達なのだ、恋人だけじゃ飽き足らず友達にまで手を出すなんて

 

「サヤカ、私の家がツェルプストーと因縁があることは知ってるわよね。」

 

サヤカは、ばつが悪そうな顔をいている。

何か思うとこがあるみたいだけど、もしかして私じゃなくてキュルケの方がいいって言いたいの?魔法が使えない私なんかより・・・

 

そんな風に考えてしまったからだろうか。つい言ってしまった

 

「あの尻軽女に借りを作るなんて・・・」

 

そういった瞬間、先ほどまでへらへらしていたサヤカの顔が真剣になるのが分かった。

その時にすぐに謝るべきだったのだ。

 

「尻軽って・・・それはちょっと言いすぎなんじゃない?」

 

今思えば言い過ぎだったかもしれない。

 

「キュルケはシエスタを助けてくれたんだよ。昔の因縁だか何だか知らないけどさ、ルイズがそんな風に人を見るような人だなんて思わなかった。」

「あの女が尻軽なのは事実よ!」

「ルイズ!!」

 

なんで私はいつもこうなんだろう。魔法もろくに使えないのに、プライドばっかり高くって

 

「さ、サヤカ?」

「幻滅した。」

「え?」

 

だからこうなってしまうのも仕方ない。

 

「あんたならさ、自分が色眼鏡で見られることのつらさわかってるんでしょ。」

「・・・・」

 

サヤカの言葉にどきりとした。自分がやっていることの意味を考えた。

 

「ごめん、しばらく考える時間も必要だと思うから、あたし今日は別のところで寝るわ。」

「ちょっとサヤカ!」

 

でも私は本当に未熟で、すぐに答えが出せなくて。だからあきれられたのも仕方ない。

 

私が止める声も聞かずにサヤカは出て行ってしまった。

 

 

 

 

ろうそくの光が揺れて意識が現実に戻ってきた。

サヤカが出て行ってからどれくらい経ったかわからない。でもこのままではいけないとはわかっていた

 

「謝らなきゃ」

 

サヤカにもだが、あのキュルケにもだ。

これからは、ちゃんと彼女と向き合う。いや、向き合わなきゃいけない。

でもまずはサヤカだ。彼女を見つけなくては・・・

 

 

 

 

 

 

 

~さやか~

 

突然鳴り響いた大きな音に、あたしもタバサも硬直し、つぎの瞬間には戦闘態勢に入っていた。

あたしは魔法少女に変身して、タバサは無言で杖を構えた。

 

---慣れてる

 

タバサのその動きがあまりにもこなれていて、あたしは少し驚いた。

今まであまり意識してみなかったからかもしれないけれど、たぶんこの学院の生徒の中でもかなりの実力の持ち主だということがわかる。

 

「タバサ、今の音って。」

「中庭のほう。」

 

先ほどとは違って、質問の返事も素早い。いかにも仕事モードって感じ。

 

そんなタバサをちらりと見てから、あたしは中庭に面している窓を開け飛び降りた。ずいぶん高かったけれど、魔法少女になったあたしにとっては全く問題にならない高さだ。そのあとをタバサがフライで追いかけてきた。

 

「タバサは部屋で待っててもいんだよ。」

「・・・一緒に行く。」

 

タバサの気持ちはうれしいが、キュルケの大切な友達を危険な目にあわせるわけにはいかない。

 

「危ないよ?」

「あなたも危ない。」

「あたしは強いからいーの。」

「私も強い」

 

どうやらタバサは見た目にそぐわず頑固なようだ。

 

「危ないと思ったらすぐ逃げてね。」

「ん。」

 

そう言って中庭の、おそらく宝物庫方面に走り出す。朝の学院とは違い、夜の学院はなんだか不気味だった。

月明りだけが照らす宝物庫にそれはいた。

 

ウオオオォォォォォ

 

それは巨人といっていいほど大きなゴーレムだった。

横幅に大きな体に、それと比べると随分と小さい両足、そして体と同じくらいの大きさがあるのではないかと思うほど大きな両腕。その両腕の手首あたりには大きな突起がいくつもついて、さらに凶悪性を増している。

それが腕を何度も振り上げ宝物庫に叩き込んでいるのだ。

しかし宝物庫は何かバリアのようなもので守られているのかびくともしない。それでもなお何度もこぶしを振り落とすゴーレム。

 

「なによこれ。」

 

その姿にあたしは何歩か後ずさりした。

 

さすがに大きすぎる。

この大きさだ、なまじあたしのサーベルが刺さったとしても破壊するのは無理だろう。

あたしはどちらかというと援護、回復などが専門分野だ。そのせいか圧倒的に火力が足りない。

 

---魔法少女になるときに自分でステ振りさせてほしかったなあ。

 

なんてことを思ってしまうのも仕方ない。どうしよう。

 

ここはいったん逃げる?

 

そんなアイデアを出してみると、なかなか悪くないような気がしてきた。

そもそもここに来たのは音の正体を確認するためだ、あれと戦う訳じゃない。ここはいったん引いて先生に伝えるのが一番だろう。

 

幸いゴーレムはこちらに気が付いていない。今ならこっそり校舎に戻れるはずだ。

あたしは一瞬タバサを見るとゴーレムに気づかれないように念話を送った。

 

『タバサ、ここはいったん引くよ』

 

タバサは念話に驚いた顔をしたがすぐにいつもの無表情に戻した。

 

『時間がないから説明はあと。二人であのゴーレムを相手にするのは分が悪いから、一回戻って先生を呼ぼう』

 

タバサは無言でうなずいた。

 

『あと心で話してくれればあたしにも届くから』

『・・・わかった』

 

タバサは心の声も控えめだった。

 

 

 

そして作戦が決まり、二人で校舎に戻ろうとした時だった。

 

 

 

 

「きゃーーー!」

 

 

 

 

---悲鳴---

 

 

 

それを聞いた瞬間あたしは全力でその声の方向に走り出した。

 

『サヤカ!』

 

あたしを呼び止めようとするタバサの念話は聞こえていたが、そんなことは関係なかった。

 

あの声は間違いない。

 

 

ゴーレムも声に気づいたのかその腕をとめて声の方向を見ていた。

その視線の先には・・・

 

「ルイズ!!」

 

寝間着姿にマントだけを羽織ったルイズだった。

なんでルイズがこんなところにいるの?ここはルイズの部屋のある方向とは逆方向なのに。

そこまで考えて気が付いた。

ここはあたしがほかの使い魔たちと昼寝をしているところじゃないか!

 

 

 

ばかばか! あたしのばか!

 

ルイズはあたしを心配して探しに来てくれたんだ!

なのにあたしは・・・

 

そこまで考えてルイズにゴーレムが腕を伸ばしているのが見えた!

 

「っルイズ!」

 

あたしとルイズの距離はあたしが校舎に戻ろうとしたこともあってかなりあった。

 

 

---間に合わない!

 

 

このままではルイズが危ないと思ったあたしは、ダメもとでサーベルを投影し次々と投げる。

 

ガキン!

 

「っち!」

 

 

 

やっぱりだめだ! 全く歯が立たない。

 

 

 

 

軽く傷をつけるだけではじかれてしまった。

そうこうしているうちにゴーレムがルイズを捕まえてしまった。

 

「放しなさい!! この、この!」

 

ルイズがもがくがどうにもならない。力の差がありすぎる。

このままではやられる! そう思った時だった。

 

「っ!  目にもの見せてやるわ!」

 

ルイズが詠唱を始める。

 

「ラグーズ・ウォータル」

 

「まさか!」

 

タバサが驚いた顔をした。いったいどうしたのだ。

それと同時にルイズが杖を掲げたのが見えた。もしかして魔法を使うつもり? しかしルイズは今まで魔法を成功させたことがないと聞いていた。それがこの土壇場で成功するとでもいうのだろうか?

 

いや、世の中そんなに甘くない。たとえここが異世界だったとしても。それをあたしはよく知っている。うまくいくはず---

 

「イス・イーサ・ハガラース!!」

 

どかああん!

 

 

ものすごい音とともにゴーレムが宝物庫ともども爆発した。

 

 

---ないと思ってたのに。

 

「やった!!」「また失敗!?」

「「・・・・・・え?」」

 

あたしとルイズの言葉がきれいにかぶった。

だけど言ってることは真逆、あたしはルイズの魔法初成功を祝っているのにルイズは今のを失敗だと騒いでいる。

 

 

え? 失敗? 今のってそういう魔法じゃないの? レッツ爆裂拳!! みたいな技じゃないの?

 

 

あたしが混乱している間に状況はまた変わっていた。

ルイズのさっきの爆裂拳に破壊された宝物庫の中に人影が見えた。それはすでに宝物庫から出てくるところで、よく見ないと気づかないがその手にはテニスボールよりも少し大きいくらいの箱があった。

 

「サヤカ!」

 

さっきの衝撃でゴーレムの腕から抜け出したルイズがあたしを呼ぶ。

言いたいことは何となくわかった。あたしも同じことを考えていた。

 

「わかってる!」

 

あいつをこのまま逃がすわけにはいかないだろう、少なくとも今ここでこの盗人を止められるのはあたしたちだけ。

 

「・・・加勢する。」

 

いつのまにかタバサがすぐ近くまで来ていた。

 

「ありがとうタバサ、あんたが居れば100人力だよ。」

 

ここからは出し惜しみなしだ!!

万が一のために温存してたけどそうも言ってられない状況になってる。今使わないでいつ使うんだ!!

 

・・・と気合を入れたのだが。

 

どごごごごご!

 

突然目の前に大きな壁がせりあがってきて視界を覆ってしまった。そのせいであたしとルイズは分断されてしまう。

 

「こんなのってあり?!」

 

しかも土煙がひどくて視界が悪い。

早くルイズのところに行かなくては!

 

もしルイズに何かあったらあたしは・・・あたしは・・・。

 

しかしそんなあたしの思いとは裏腹に、土煙が晴れたその先にはもうゴーレムはいなくて・・・そして、向こう側にいたはずのルイズもどこにもいなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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