~タバサ~
「魔法少女はやがて魔女に成る」
サヤカ・ミキの言葉に皆、言葉を失っていた。
その言葉にもだが、その言葉を口にした彼女はなんだか恐ろしい気配を漂わせた。
タバサ自身も次の言葉が出てこないくらいには動揺している。
「な、なによそれ!おかしいじゃない!」
この中でもというか、この学園で一番感情的だとタバサが思っているルイズが吠える。
「魔女を倒すために魔法少女になるのに!魔法少女が魔女になるなんて、そんなのおかしいわ!それじゃあいつまでも魔女はいなくならないじゃない!」
彼女の言うとおりだ。それでは魔女を生み出すために魔法少女を作っているのと同義だ
「そうだね」
「そうだねって、あなたそれを分かっていて契約したの?」
キュルケの言葉にサヤカ・ミキは一瞬黙った。
「知らなかったよ。おそらくほとんどの子が何も知らないまま魔女に成ったんじゃないかな」
「なんてひどい、それじゃあみんなそのキュウべえってやつに騙されたってわけ?」
「まあ、あたしたちとしてはそうなのかもね。キュウべえいわく『聞かれなかったから答えなかっただけ』らしいけど」
それはあまりにも、あんまりではないかとタバサは思う。
少女たちはいったいどんな思いで戦い、生きていたのか。その結末が自分が戦っている怪物そのものだなんて、あまりにも救いがない。
「そんなの詐欺だわ!詐欺よ詐欺!そいつらは何なの!?悪魔!?」
「ルイズ、声がでかいよ。一応結界張ってるから音は漏れないけど声量は下げてね」
確かに、さっきからルイズが騒いでいるがやけに静かだ。彼女の魔法のおかげだと聞けば納得だった。
「彼らの目的はなに?」
今までの話を聞く限り、これが今最大の疑問だった。サヤカ・ミキの話が真実なのだとしたら、彼らは魔女を作るために魔法少女を作っていることになる。
「キュウべえたちは宇宙・・・えっと、空のずぅっと遠いところから来て、あたしたちなんか比べ物にならないくらい技術の発展した場所から来たらしいよ」
彼女は語る
「全世界のエネルギー・・・あんたたちに分かりやすく言うとすべての世界の魔力はどんどん減っていくんだって、そしてそのうちなくなっちゃう。その世界の為のエネルギーは減っていくばかりで増えない。」
その話を語る彼女はどこか空虚な顔をしている。
「でも彼らは見つけたんだよ。少ない力で、膨大な魔力を作り出す方法を」
「そんなものがあるの?」
「感情エネルギー、彼らはそう呼んでた」
「感情?」
「そう、それもあたしたちくらいの少女が抱く希望と絶望の振れ幅で生まれるエネルギーは、世界の法則を捻じ曲げるほど以上に大きいんだって・・・」
「それって・・・」
「願いという希望を叶えて、その希望が破壊され絶望する。その際に生まれる感情エネルギーを彼らが回収する。あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだ」
絶句、誰も声を出すことが出来なかった。重い沈黙を月明りだけが照らしている。
その沈黙を破ったのはルイズだった。
「サヤカ・・・サヤカもいつか魔女になっちゃうの?」
彼女にしては落ち着いた声だった。でもそれはこの場のいる誰もが持つ疑問だったし、彼女のさっきの「もう代償を見ている」という発言から、嫌な予感はしていた。
「うん、なるよ。というか今日その姿をみんなも見たでしょう?」
やはり
「じゃあ、魔女になっても元に戻れるってこと!?」
「それは無理」
キュルケの当然の疑問をサヤカ・ミキは即座に否定した。
「でもあんたは」
「あたしは特別中の特別。いろんな偶然でこうなっただけで。ほんとなら魔女になった時点でゲームオーバーだよ」
だからと彼女は今度はタバサの方をまっすぐに見た
「キュウべえに願い事をするのなら、それ相応の覚悟をしなきゃいけない。自分の願いが、どんな歪みで帰ってくるかは本当に予測がつかない」
彼女は気づいている。私が彼女の話を聞いてなおもあきらめられていないことに。
「でも、それでもあきらめきれない願いがあることをあたしは知ってる。あたしだからこそ知ってる」
どこかで感じていた。髪の色だけじゃない。彼女はどこか私に似ていた。
「あたしに話してみなよ。その願いってやつをさ」
ニヒルに笑うサヤカを見て
「これでも正義の味方を名乗ってたんだよ?」
彼女なら、本当に私の願いを叶えてしまいそうな気がした。