ゼロの人魚姫   作:北町スイテイ

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第25話「・・・あなたの演奏、素敵だと思う」

「サヤカ、あなた何か特技とかある?」

 

夜中の演奏会を開くのがなんとなくの習慣になってきたころ。ルイズが藪から棒に聞いてきた。

 

「え、特技?さやかちゃんスマイルとか?」

「何を言ってるのよあなたは・・・」

 

ルイズのあきれた顔に冗談だよと笑う

 

「特技ねえ、一応戦うのは得意だけど、多分そういうんじゃないんだよね」

「まあそうね。今度学院で上級生や外から貴族を呼んで使い魔のお披露目をするのよ」

「それでかあ」

 

あたしは近頃感じていた異変の答えを見つけて一人納得した。

 

「それでって?」

「最近広場に来る使い魔が減っててさ、たまに来たと思ったらぐったりしたり疲れてたりしてたから、なにかあるのかなー?とは思ってたんだよね」

「あー、そうね。おそらくその予想で合ってるわ。教室でも何人かピリピリしている生徒がいるし」

「そんな大事なイベントなんだ」

「それはそうよ、毎年開催されてるし、それなりに偉い貴族も来るから。このお披露目で将来が決まることも多いわ」

「ほへー」

 

就職とかの自己PRみたなものか?と、予想してみるが。さやか自身エスカレーター式で見滝原中に入ったためわからない。それに

 

「あたしはあっちに帰る予定だしあんまり関係なくない?」

「関係なくてもメイジのあたしには使い魔を紹介する義務があるわ。あんたには迷惑をかけるけど、お披露目会には出てもらわないと」

「あーね」

 

使い魔というよりもご主人様の技量チェックってことか、ならあたしもやらなきゃいけないな。

 

「って言っても、人様に披露できるような特技なんて戦闘力くらい?」

「でも相手がいないわ、主人以外のメイジの手を借りるのはルール違反だから・・・」

 

ルイズはそう言うと俯いた。

なるほど、納得がいった。あたしの特技の戦闘力を披露するためには相手が必要だが、魔法のつかえないルイズにあたしの相手を準備することはできないってことで悩んでたのか。

 

「ごめんなさい、あたしが魔法を使えないから」

「ルイズ、それは言わないって約束したでしょ?それにルイズにはレッツ爆裂拳があるし」

「あれは魔法じゃないわよ!」

「魔法だよ!あたしからしたらあんなん魔法ですよ!」

 

例のフーケ事件のあと改めてルイズの魔法について聞いたところによると、あの夜の激しい爆発はルイズの魔法の失敗だったらしい。本来は土の魔法でフーケを抑えようとしたのに結果魔法をかけようとした土が爆発したというわけだ。あたしの世界基準から言えば、爆発すること自体魔法なんだけど、こっちの人間にとってはそうは映らないらしい。

 

「まあ、一応話はわかったよ。あたしの方でも戦闘以外で何かできないか考えてみる」

「ありがとうサヤカ。あたしに準備できるものが有れば何でも言って。魔法以外なら・・・なんとかするわ」

 

本当はオクタヴィアの使い魔を使おうかと思ったが、できるだけ魔女の力は使わない方がいいのと。ルイズが自分が魔法を使えないせいでと気にするかもしれないからやめた。

あたしはとりあえずほかの使い魔が何を披露するのか見て回ることにした。

 

 

 

ギーシュの場合

 

「僕の使い魔かい?

ジャイアントモールと言ってね。普段は土の中に潜っていて、なかなか姿を見せてくれない恥ずかしがり屋なんだ。だが今回は、僕のために顔を出してくれる予定さ。

……何をさせるのかって? 彼はこう見えて地中を高速で移動できる。だから今回はその機動力を披露しようと思ってね。ステージの端から端まで一瞬で駆け抜けさせるつもりだ。

本当は君にも協力したいところだが、これもルールでね。残念だよ。」

 

 

 

キュルケの場合

 

「あらサヤカどうしたの?

あーお披露目会ね。私の使い魔はサラマンダーだからそれだけでだいぶ派手よね。

一応私の火の魔法の中を歩かせたり火を吹かせたりする予定よ。

あなたの特技?そうねー、さすがに例のあれをやるわけにはいかないし。剣技をやろうにもルイズじゃあれよね・・・。あ!ごめん、今日は午後からケニーとデートなの、もういかなきゃ。力になれなくてごめんなさいね。」

 

 

 

 

 

そんな感じで何人か回ってみたけど、全体的に戦闘系のものが多かった気がする。

いやな話だが、まだまだ平和とは程遠いこの世界、普通に戦争とかをしているらしく、戦争になればどれだけ強い使い魔を使役しているかはかなり重要になるらしかった。このお披露目会も要は将来の戦力の品定めの側面が強いのだろう。

 

「なんかやだなあ」

 

あたしは現代っ子だから、戦争とかはいけないよねって価値観だけど。この世界ではこれが普通なんだって言われると悲しい。

 

「・・・」

「もっと楽しいことを披露すればいいのに」

「・・・」

「サーカスみたいに綱渡りとかどうよ!みんなをハラハラさせてからの華麗なジャンプ!からの着地!みたいな」

「・・・」

「中庭もステージに含まれるらしいからできなくはないと思うんだよねー」

「・・・」

 

あたしの声だけが響いてるが、別に一人というわけではない。

 

「はあ、タバサ~どうしたらいいと思う?」

 

あたしは今タバサの部屋でゴロゴロしている最中である。もちろんタバサは読書に夢中だ。

 

「・・・」

 

お陰であたしの言葉はすべて独り言である。

 

「おっと。もうこんな時間じゃん、そろそろルイズのところいかなきゃ」

 

あたしは軽く身支度を整えタバサのベッドを軽く整えた。

その気配に気づいたのかタバサも本を閉じる。

そのまま入口まで送ってくれたあと、去ろうとするあたしの服の袖をつかんでいることに気が付いた。

 

「どうしたのタバサ?」

「・・・」

 

何か言いたげにこちらを見ているタバサにあたしもじっと目線を返す。

 

「・・・楽器」

 

やっとのことで言うタバサに、一瞬フリーズしたが、何を言ったか理解した後

 

「あー、もしかしてシルフィードからきいた?」

 

もしやと思ったがあたしの質問にタバサは首を振る

 

「感覚共有」

 

そういえばルイズが言っていた気がする。優秀なメイジは感覚の共有もできると。

 

「あはは、聞かれてたのか~恥ずかしいなあ」

「恥ずかしくない」

「え?」

「あなたの演奏、素敵だと思う」

「・・・」

「・・・ちゃんとしたの、聞きたいから」

 

それだけ言うとタバサはドアを閉めてしまう。

 

「あれは演奏を生で聞きたいってことでいいのかな?」

 

しばらくドアを見つめた後あたしは踵を返す。

この国では戦闘力とかそっちの方に価値を置いているのだろうけど、それに反抗するのも悪くないかもしれない。そんなことを考えながらルイズのもとに向かうのだった。

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