部屋にルイズを迎えに行くとルイズが部屋の掃除をしていた。おそらくまた爆発したのであろうことは教室を見れば明らかなので、あたしは無言で掃除用具を取りに行くとルイズと一緒に掃除を始める。
少し前まではルイズを部屋で待つことの方が多かったが、ある日キュルケがこっそり教えてくれたのだ。
「あの子、帰りが遅い日は教室の掃除をしてるわ」
キュルケが手伝うのはあの子が嫌がるからと。
その日からルイズを迎えに行くことにしたのだ。最初は渋い顔をしていたルイズだが、これも契約の内ということで押し通した。
「そういえばルイズ、準備してほしいものがあるんだけど?」
「何をするか決まったの?」
「うん、楽器を演奏しようかなって」
ルイズが驚いた顔であたしを見た
「あなた楽器の演奏なんてできるの?」
「友達が上手でさ、それでちょっと練習したの」
本当は魔女になった時に弾けるようになっただけなんだけどね。
あたしの恭介への執着が、恭介に見てほしくて・・・進化したんだと思う。
「未練がましいていうかなんというか」
「サヤカ?」
「いや、何でもない」
「ボーっとしてたけど、大丈夫なの?」
「うん。どんな演奏しようかなーって考えてた」
「ならいいけど、準備してほしいものって?」
「一応コンサートだからね、ドレスを貸して欲しいなって」
「それくらいなら別に構わないわよ。デザインはどうする?」
「それはルイズに任せるよ」
「わかったわ」
話しながら掃除していたら、気が付けば清掃は終わっていた。
二人で廊下に出て歩き出す。
「それにしても演奏って、どんなことするわけ?」
「ヴァイオリンを弾こうかなって」
「ヴァイオリン?」
タバサと話していてなんとなくそんな気はしていたが、どうやらこの世界にはヴァイオリンが存在しないらしい。
「ねえルイズ、この世界って楽器は何があるの?」
「……まあ、あるにはあるわよ。
貴族のたしなみとしては必須だし」
ルイズは少し考えてから、教本をなぞるみたいな口調になる。
「まず一番一般的なのはリュートね。
弦を指や爪で弾く楽器。舞踏会とか晩餐会でよく使われるわ」
「へえ、ギターみたいな感じ?」
「ギター?ていうのはわからないけど、全体を整える役割があるわ」
「なるほど、BGM担当」
「次は笛類。木笛とか角笛とか。
これは軍楽や儀式で使われることが多いわ」
「また戦争寄りだ」
「この国はそういう文化なの。
あと、弦を弓でこする楽器も一応あるにはあるけど……」
「あるんだ」
「ええ。でも音は荒いし旋律をなぞる程度であまり好まれないわね」
「ふーん……」
「そもそも楽器は魔法みたいに自己主張するものじゃないの。
主役はあくまで貴族と魔法。音楽は添え物よ」
そこでルイズは言い切る。
「だから、あなたが考えてるような
“音そのものを見せる”って発想は、この世界じゃ珍しいと思う」
「じゃあ、あたしがその第一人者になるわけだ。責任重大」
この世界はまだ音楽の本当の力に気が付いていないんだ。それはなんてもったいない話なんだろうと思った。同時に俄然やる気が出てきた。
「ちょうどいい機会だから、音楽の力を見せつけますか」
すごく短いんですけどキリがいいのでここで切ります。
次回演奏会やる予定です。