ゼロの人魚姫   作:北町スイテイ

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読み返したらちょっと読みにくかったので修正しました

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第28話「サヤカ、何か困ったことがあるならちからになるわ」

お披露目会があった日の夜

 

「あなたにあんな特技があったなんてね」

「特技ってほどのものではないけどね」

「そんなことないわ、あれは素晴らしい演奏だったもの、あなたはもっと誇るべきよ」

 

そう言うルイズは少し興奮気味だった。

 

「あなた噂になってたわよ。あの楽器は何だって」

「帰りにいろんな貴族につかまって大変だったよお」

「それにしてもあんなにあっさり教えてよかったの?ヴァイオリンだっけ?」

「いいのいいの、あたしは魔法で作れるけど、職人が作った方がきっといい楽器になるよ」

 

あたしの演奏は思いのほかこの世界の人間の心に刺さったらしく、ヴァイオリンを作りたいという貴族にヴァイオリンを見せた。彼は有名な楽器職人らしく、食い入るようにヴァイオリンを見た後譲ってもらえないかとも頼まれたが、残念ながらあたしの魔力で作ってるものだから長くはもたないというと血眼で紙にヴァイオリンの図面を書いていた。

 

「それに、音楽の素晴らしさとか可能性を邪魔するなんてもったいないでしょ」

「そういうものかしら」

「そうだよ、音楽は自由じゃなくっちゃ」

 

ルイズが前に言ってた通り、この世界で音楽は添え物だ。そんな世界に少しでも風穴をあけられたならちょっと誇らしい気持ちかもしれない。

 

「ねえサヤカ」

 

そんな風に話していると、ルイズが改まって話をしてきた。

 

「近々この前のフーケの件で王宮に行くことになったわ」

「よかったじゃん。なんだかんだルイズの事が認められてきたってことじゃん」

「そうね、でも今回呼ばれたのは私、キュルケ、タバサだけよ」

「へー」

 

これはなかなかでかい報酬がもらえるのではないだろうか?

今のルイズの環境を鑑みるに、今回の件で少しはルイズの周りの評価が変わってくれればいいんだけど。

 

「・・・」

「どうしたの?いいことじゃん。これで少しは教室の生意気な奴らに一泡吹かせられるよ」

「あんたが居なかったらどうにもならなかった事件だわ」

 

ここに来てやっとルイズが言わんとしてることが分かった。

 

「なのにサヤカが使い魔だから、貴族じゃないからって理由で評価されないなんて間違ってるわ」

「ルイズ・・・」

 

あたしは俯くルイズを見て近づくと

 

「うりうり!!」

 

ルイズの頭を抱えて撫でまわした

 

「ちょ!サヤカ、なに!するの!!」

 

ルイズも抵抗してくるがそんなのお構いなしに撫でまわす

 

「愛いやつめ!かわいがってやるぞ」

 

最初はじたばたしてたルイズだがやがておとなしくなでられ始めた。

そのうちあたしがベッドに座ってルイズを膝枕してる体制に落ち着いた。相変わらずルイズの頭をなでるがルイズはもう抵抗する気はなかった。

 

「あたしの事、気にかけてくれてありがとね」

「当然でしょ。あんたは私の使い魔なんだから」

「でもいいんだよ、どうせあたしはこの世界を去るわけだし。富とか名声とかそういうのあんまり興味ないから」

「・・・」

「あたしはただルイズとの契約を守ってるだけ。だから気にしなくていいよ」

 

ルイズはあたしの顔を膝から見上げている

 

「もし元の世界に帰ったら、もうこっちには戻れないのかしら」

「それはわかんないけど、簡単には来れないんじゃないかな?」

「一度呼べたってことはまた呼べるってことよ」

「そうかなあ」

「きっとそうよ、私がその魔法を覚えてサヤカを遊びに誘うわ」

「ルイズ自らお迎えとか、なかなかビップですな」

「本当よ、私に迎えに行かせるなんて、なかなかできることじゃないわ」

「ありがたき幸せ」

「あなたもしかしてバカにしてる?」

「冗談だって」

「本気なんだからね」

「うん、わかってるし、信じてるよ」

 

ルイズがそう言うなら、本当に迎えに来てしまいそうだ。

 

この子はそういう子だ。

笑われても、否定されても、絶対にやめない。

今は結果が出なくても、きっといつか辿り着く。

 

インキュベーターなんかに頼らなくても。

 

前から疑問だった。

みんなルイズを“魔法が使えない落ちこぼれ”だと言うけど、あたしに言わせれば違う。

爆発している時点で、それはもう立派な“魔法”だ。

 

だから教師に魔法について聞いてみた。

この世界の魔法には適性があるらしい。火、水、風、土。

 

でもルイズは、そのどれにも当てはまらない。

 

最初は火かと思った。

でも燃えた話は聞かない。

水でも風でも土でもない。

どの系統を使っても、結果はいつも爆発。

 

おかしい。

 

四つのどれでもないなら、残るのはひとつ。

 

『虚無』

 

伝説の魔法。

聞けば、伝説上の魔法で存在は確認できていないとか。

 

だけど、話を聞けば聞くほど、ルイズのことを言っているようにしか思えなかった。

 

虚無は魔法を打ち消す。

虚無は人を蘇らせる。

 

コルベール先生は言った。

それは“魔法を消す”んじゃなくて。“魔法という概念を否定する”んじゃないのか、と。

“死から蘇らせる”んじゃない。“死という状態を書き換える”んだ、と。

 

概念を書き換える魔法。

 

だったら、ルイズの爆発は——

 

爆発を起こしているんじゃない。

“爆発という現象を、強制している”。

 

そう考えた瞬間、背筋が冷えた。

 

もし本当にルイズが虚無なら。

この世界の理屈すら、書き換えられるとしたら。

 

あたしがここに来たのも——

偶然なんかじゃない?

 

もし、世界という枠そのものに触れられるなら。

 

だったら。

 

まどかだって。

 

そこまで考えて、あたしは思考を止めた。

 

それは希望だ。

そして同時に、取り返しのつかない願いだ。

 

あたしはもう、“奇跡”の代償を知っている…

 

「サヤカ?」

 

ルイズがあたしの顔に手を添える

 

「どうかしたの?怖い顔してるわよ」

「いや、ちょっと考えごとしてた」

 

いつの間にか顔がこわばっていたらしい。あたしは自分の頭の中の考えを振り払う。

 

何を考えてんだろあたし

 

「サヤカ、何か困ったことがあるならちからになるわ」

 

真剣な顔で言うルイズに

 

「うん、その時は遠慮なく頼ろうかな」

 

あたしの目的のためにルイズを利用するなんてそんなこと許されない。

 




【お知らせ】

いつもお読みいただきありがとうございます。

これまで平日は毎日投稿を続けてきましたが、今後は「二日に一回」の更新に変更させていただきます。

職業柄、月によって業務が立て込む時期があり、安定したクオリティを保つためにも、少し余裕を持った更新ペースにしたいと考えました。

作品自体はこれまで通り丁寧に書き続けていきますので、引き続きお付き合いいただければ嬉しいです。

今後とも『ゼロの人魚姫』をよろしくお願いいたします。
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