世界観や設定の都合上、原作とは異なる解釈・展開があります。
本作は『叛逆の物語』後の美樹さやかが、
別世界に召喚されるところから始まります。
重くなりすぎず、でも軽くも流しすぎない、
そんな温度感を目指しています。
合わなければそっとブラウザバックで。
大丈夫そうなら、少しだけお付き合いください。
「あらたまって何よ、気持ち悪いわね」
「気持ち悪いって何よ、仮にもこれからしばらくはお世話になるから関係を修復しようと思ってね」
「そもそもあんたが先に喧嘩売ってきたんでしょ」
「はあ?先にあたしを誘拐したのはあんたでしょ」
しかも戻し方を知らないと来た。おまけにどちらかが死なないと契約は切れないという。
それはまるで―――
「誘拐じゃないわ、サモン・サーヴァントは神聖な儀式なの。自分の生涯のパートナーを召喚する儀式。そして召喚された使い魔は何であろうと契約しなくちゃいけないの。私ももっとかっこいい使い魔がよかったわ」
「・・・何よそれ。バッカみたい」
「・・・なんですって」
「馬鹿みたいって言ってんのよ」
それはまるで魔法少女の契約のようで・・・
「こんなのが契約?説明もろくにしないで一方的に契約を押し付けてるだけじゃない」
あたまの奥のほうが冷たくなっていくのを感じる。それはいつかの『あたし』の気持ち―――
「誰にだって、自分の人生ってやつがあんのよ。それを自分たちの都合で召喚して契約して。そんなのが契約?ふざけんじゃないわよ。
それを当然だと思ってるんだったらあんたは人間じゃない。こんな、こんなひどいことよく平気でできるよね」
「人間じゃないって、大げさな」
「あんたみたいな考え方が貴族の常識って言うんなら、ここは頭のおかしい屑どもの集まりってわけ?」
「あんたね!」
ルイズの怒鳴り声に、少しだけ冷静になった。
「ごめん・・・言い過ぎた」
「・・・」
あたしとルイズにつかの間の静寂が訪れた。
気づけば日は完全に落ちていて空には、本来ありえないはずの二つの月が浮いていた。でもあたしは思ったほど驚きはしなかった。心のどこかで覚悟はしていたから、今更異世界に来てしまったという確信を得たくらいで動揺なんてしなかった。
「・・・あたしさ。異世界からきたんだ」
「突然何よ。ついにおかしくなったの?」
まあ、ふつうそう思うよね。まあ信じてくれないならそれでもいい。
「いいから聞きなって。
信じられないかもしれないけどあたしの世界の月はひとつしかないし、たぶん今は半分しかない。あたしはそんな世界にいたんだ」
「月が一つのうえ半分?そんなのうそよ」
「それがほんとだから困ってんのよね・・・」
あたしの諦めたような言葉にルイズは口をつぐんだ。
「まあ、月が半分って言うのはまた面倒な事情があるんだけど、それはこの際おいとく。問題はさ。あたしにはその世界でどうしてもやらなくちゃいけないことがあるってこと」
「っ!」
「だからどうしても元の世界に戻らなきゃいけない」
ルイズの顔が恐怖で染まる。
それは使い魔を失う恐怖か、それともあたしへの罪悪感か。
「それだけはわかっててほしんだよね。あんたが悪気がなかったのはわかってるけどさ。それを仕方ないって割り切れるほどあたしは人間出来てない」
「・・・」
うつむいたルイズの顔を見ることはできないけど、少しは責任を感じているのかこぶしを握りこんでいる。
そんなルイズにあたしは少しだけ安心した。
この子は不器用で、まっすぐで、ただ世界を疑えるほど大人じゃないってだけ・・・まるで恋に盲目ないつかの少女のように・・・
だけど、まだ大丈夫、この子はちゃんと相手に向き合う強さがある、だからこそ。
「だから改めて契約をしよう」
「え?」
「今までの不当な契約についてはこの際仕方ない。この聖母のようなさやかちゃんは水に流す!」
おちゃめに言い放つとルイズにウィンクをして続けた。
「そしてあたしとあんたで新しい契約をしよう」
「新しい契約・・・」
「うん、魔法も何も使わないあたしとあんた二人だけの契約。ちゃんとお互いが納得できるそんな契約」
そういうとあたしは右手を突き出した。
「どう?あたしと契約する気になった?」
しばらくあたしの手を見ていたルイズはようやく口を開いた。
「今まで、このサモン・サーヴァントについて疑問なんて持ったことなかったわ」
「うん」
「それは今まで人間を召喚した人なんていなかったから・・・ってこんなのいいわけね。とにかく、あんたは生意気で頭も悪そうだけど」
「おい!」
でも、とルイズはつづけた。
「あなたを無理やり連れてきてしまったこと、今はちょっとだけ。申し訳ないと思う。それはほんとにごめんなさい」
あたしから目線を外したままルイズはそう言った。きっと貴族として生きてきたこいつにとって謝るのなんてほとんどない経験なのかもしれない。それでも勇気を振り絞って謝ってくれたのがちょっとうれしい。
そしてルイズはこんどはまっすぐあたしの目を見た。そこにさっきまでの生意気な貴族はいなくて、
「だから私からもお願い。」
そしてルイズはあたしの手を取り言った。
「私と契約して使い魔になってサヤカ」
「こちらこそ。よろしくルイズ」
ルイズと触れる手が熱を帯びた気がした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
第3話では、
さやかとルイズがちゃんと向き合うところを書きました。
口は悪いし態度も最悪ですが、
どちらも「間違ってるかもしれない」と思える子たちです。
この物語では、
強い使命とか壮大な目的よりも、
「納得して選ぶこと」を大事にしています。
さやかがもう一度、自分の意思で何かを選ぶ話でもあります。
次からは、
異世界生活らしい日常やすれ違いも増えていく予定です。
ゆるく続けていくので、
気が向いたときにまた覗いてもらえたら嬉しいです。
ここまでありがとうございました。