「その話、本当にルイズじゃないといけませんか」
「サヤカ?」
突然間に割ってはいったあたしに、ルイズは困惑している。
「お姫様なんですよね?だったらルイズじゃなくてもいいじゃないですか」
「突然のこんなお願い困惑するのも無理はないでしょう」
姫は顔を伏せる。
でもと姫は続ける。
「こんなお願いお友達のルイズにしか頼めないのです」
「アンリエッタ様」
「ルイズ、どうか昔のようにアンと呼んでください」
「…申し訳ありませんアンリエッタ様、もう昔とはお立場が違います」
そんな二人の様子に、あたしの知らない二人の関係を見た気がした。
だとしても、だからこそ許せない
「二人が仲良しなのはわかったけどさ、だったらその友達を危険な場所に送り出すなんてどうかしてる」
「サヤカ!言葉が過ぎるわよ!」
「いいやあたしは引かないよ。ご主人の事を守るのも使い魔の役目だもん」
「アンリエッタ様はこの国の王女よ!その王女に従うのは貴族として当然のこと」
「あたしには関係ないね」
そう言ってあたしは姫をにらむ
「だからこそ、捨て駒みたいに利用するようなやり方許せない」
「そんな、ルイズはわたくしのお大切なお友達です!捨て駒なんて思っていません!」
「アンリエッタ様…」
アンリエッタの言葉にルイズが感激したような声を出す
「なんなのそれ」
これがこの世界、貴族の世界とでもいうのだろうか。
「サヤカこそ何なの?これは名誉なことなのよ」
「名誉って、死ぬかもしれない戦地に行くことが?」
「そうよ、この国の為にこの身をささげることこそが貴族の誇りじゃなくて何だっていうの」
「そんなくだらない」
「くだらないですって!」
少し前まで二人で笑い合っていたのに、この国の王族の命令一つでこんな風になってしまった。
ルイズは荒げていく呼吸を整えて、どうにか冷静になる
「あなたが私の事を考えてくれてるのはわかるわ。でも私たちの世界には私たちのルールがあるの」
今までのルイズならこんな風に冷静に説得しようとも思わなかっただろう。でも、サヤカが自分を貶めるためだとか悪意とかでこんなことをしないことくらい、今まで過ごした時間でわかっていた。だからこそわかってほしいと思ったんだろう。
「死ぬ気はないわ。でもアンリエッタ様が私に頼んだってことは、私にしかできないってことよ。こんな落ちこぼれの私を必要としてくれてるの」
「ルイズ…」
【こんな私でも、誰かの役に立てるなら】
どうしてなんだろう、どうしていつも
【だから、その為にこの命を使うね】
「なんでよ…」
どうしてっそんな
「ルイズが本気なことくらいわかるよ、わかるけどさ」
「サヤカ?」
「どうしてそんな簡単に自分の命を投げ出すの、あんたのことを大事に思うあたしの気持ちはどうなるの」
誰もかれも、どうして自分の価値をそんなに安く見積もるのだろう。
「あたしはこの国なんて、この世界なんてどうでもいい、ルイズだけでいいのに」
「…」
円環になってから、現世に執着なんてなかったはずだ。なのにどうしてこんな気持ちになるんだろう。
ルイズが大切
ルイズが心配
ルイズが、愛おしい
杏子以外にこんな気持ちにはならなかったのに、全部諦められたのに・・・
………いや、おかしい
やはりおかしい。こんなことはあり得ない。
すうっと頭の奥が冷たく冷静になっていくのが分かる。
あたしは美樹さやかであって美樹さやかではない、生前の美樹さやかの魂に刻まれた杏子やまどかたちとの思い出、気持ち、それはわかる。
だけどこの世界に来たのは、生前じゃない、死後の美樹さやかだ。終わった後のあたしだ。進むことも戻ることもない。
新しい感情を覚えるなんて、そんなの魂を書き換えるような・・・
「!!」
反社的にソウルジェムを見る
そして左手のルーンを見る
ルーンは・・・・かすかに光っていた