今回も美樹さやかのややこしい日常にお付き合いいただきます。
この話では、彼女が自分の正義心とちょっとした衝動に導かれて行動する場面が増えます。
読者の皆さまは、あたたかい目で――できれば少し笑いながら――見守ってください。
さて、さやかが今日もやらかすのか、はたまた誰かを救うのか。
それはページをめくった先のお楽しみです。
「で、ルイズは具体的にあたしにどんなことをしてほしいわけ?」
契約をするとは言ったものの、ひとまずは契約内容を決めなくては何も始まらない。
そんなわけであたしらは顔を突き合わせてお互いの契約を確認していた。
「具体的に何かしてほしいこととかは特にないわ。あなたこそどうなの?」
「あたしは元の世界に戻る方法をさがしてほしいけど。特に急ぐような状態でもないし、ひとまずはこっちの世界での生活の面倒を見てくれればそれでいいわ」
あたしが戻るつもりなのを聞いてルイズは少し悲しげな顔をしたけど、こればっかりは譲るわけにはいかない。いまのまどかと、それとあんなになっちゃったけどアイツのことだってあたしは友達だと思ってる、あいつがどう思ってるかは知らないけど。
あんまり寂しそうだったから雑に頭を撫でたら叩き落とされた。
「そんなこと当り前よ。仮にもあなたは私の使い魔よ、衣食住で困らせたりなんてしないわ」
「その使い魔ってやつはさ、どんなことをするの?もしかして人間を襲ったりとか・・・」
私の記憶の中にある使い魔といえば、人々を危険にさらす危険生物だけど、こっちではおそらく違うと思う。
「そんなことさせないわよ」
「あはは、ですよね」
「まあ、普通の使い魔なら秘薬の材料を探したり」
「あたし化学はちょっと・・・」
「視界を共有したり」
「なにそれ便利! じゃあ今もあたしの視界が!」
「なにも見えないわ」
「えー」
「困ったわね、あとは主人の身に危険がせまったら守るくらいだけど」
「お!それならさやかちゃんの得意分野ですよ!」
ルイズはあたしの姿を頭のてっぺんからつま先までを観察する。
ちなみにだがあたしの格好は見滝原中の制服のままだ。
「無理そうね」
「おい!得意分野だって言ってるでしょ!」
「だってどう見てもあなた戦えそうな体型じゃないじゃない」
「くー!このさやかちゃんの隠された力が見抜けぬとは、おぬしもまだまだよのお」
「はいはいサヤカはすごいわね~」
「その顔は信じてないなあ」
「信じてる信じてる」
「このおおお」
「ちょっと!なにして!?」
あたしはルイズの脇腹に手を差し入れると気が済むまでルイズをくすぐりまくった―――
―――数分後、そこには頭を鞭で滅多打ちにされたあたしの姿があった。
「もーほんの冗談だって。そうかっかしなさんな」
「あ、あ、あれはれっきとしたセクハラよ!あなたそっちの気があるわけ!?」
「いやそんなことは・・・」
いっしゅん杏子の顔が浮かんで変なところで言葉を切ってしまった。
「やっぱりそうなのね!」
「いやだから違うって、別にあんたのことを考えてたわけじゃないって」
「じゃあだれよ!」
「いやそれは―――」
微妙な沈黙が流れたがあたしは観念して少しだけ話すことにした。
「さっきはちょっとあたしの友達を思い出しちゃっただけ。そいつに、なんていうかプロポーズみたいなこといわれたなーって」
言ってて自分で恥ずかしくなってきた。あの時杏子はそんなつもりで言ったわけじゃないってわかってるけど、ぶっちゃけプロポーズだよね。
「え」
「だからあんたに興味があるんじゃなくて、そいつのことが気になっただけ」
そう言った私の顔は真っ赤だったに違いない。少なくともルイズが申し訳なさそうな顔をするくらいには。
「そうなんだ・・・」
また変な沈黙。
「まあ学園にいる限りそんな危険な目にあうことはないと思うから、とりあえずは私の身の回りの世話をしてもらうってことでいい?」
「まああたしはそれで構わないよ」
あたしの戦闘力についてはうやむやにされたが、戦わないで済むならそれに越したことはないか。
契約内容はルイズはあたしの生活の保障と帰る方法の模索、あたしはルイズの身の回りの世話と可能ならば護衛ということになった。
そして最後にルイズは意外なことを言ってきた。
「なによ」
「一応使い魔とご主人様って関係ではあるけど。あなたとは・・・なんというか対等な立場でいたいの」
「ほほーう」
ルイズが何を言おうとしているか何となく察しはついているけど、あたしはわざと知らないふりをする。
「それで?」
「だから・・・」
にやにやとするあたしをルイズはにらんだが、やっと言う気になったらしい
「あたしと友達になってよ」
「・・・」
「な、なんか言いなさいよ!」
「あーーー!」
「なによ!」
あたしは勢いよくルイズを抱きしめた。
「このこの!ツンデレとはなんとけしからん!」
「ちょっと放しなさいよ!」
「うりうり」
「もう、わかったから。ねえ返事は?」
「もちろんよろこんで。これからよろしくね。ルイズ」
「よろしく、さやか」
こうしてあたしたちの契約は成立した。
これからあたしは多くのことをここで経験することになる。
それはあたしの人生のロスタイムにしては悪くない。
そんな時間になることを、なぜか確信に近い予感がした。
読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
今回はサヤカが自分の正義心を爆発させ、少し大人の世界に足を踏み入れた回になりました。
彼女の暴走…いや、行動力に驚かされた方も多いかもしれません。
こうして見ると、サヤカはただの平民じゃなくて、信念を貫く一人の「使い魔」でもあるんですよね。
ルイズや周囲の人たちに振り回されながらも、自分の感情や価値観を曲げない姿は、読んでいても気持ちがいいものです。
さて、次回はサヤカの行動にどんな波紋が広がるのか…お楽しみに。
彼女の勇気、そしてちょっぴり天然な強さに、また付き合ってやってください。