~サヤカ~
「魂って…何言ってるの」
キュルケが、心底理解できないという顔をしていた。
無理もないか。
「魔女と戦うには私たちの身体は脆すぎるんだって」
それでもあたしは淡々と話を進める
「だからその体から魂…命を取り出してソウルジェムという丈夫な殻に収める」
「…」
あのタバサですら一目でわかるほど動揺しているのが分かった。
「本来あたしたち魔法少女が活動できるのは、ソウルジェムから100mってところなんだよね」
キュルケはまだあたしの言葉が飲み込み切れてないみたいで、何を言ったらいいかわからないという顔をしている。
「…でもあなたは動いてる」
そんなキュルケを見てかタバサが前に出て聞いてきた
「そうだね、これにはあたしもびっくりなんだけどさ。最初に召喚されて使い魔のルーンが刻まれるとき、本来はソウルジェム、まあ端的に言えばあたしの魂にルーンを刻もうとしたんだ」
初めてこの世界に来た時のことを思い出す。ルイズの髪を見て、まどかみたいって思ったっけ。
「まあさすがにそんなことされたらあたしも気が付くからさ、とっさに弾いちゃったんだよね」
「…弾いた?」
「うん、ソウルジェムに干渉できないように結界を張った。そうしたら、あたしの身体の方にルーンが刻まれちゃったんだ」
手のひらを掲げて見せるあたし。
「このルーンはなんとなくだけどルイズにつながってるみたいでさ、そのおかげでルイズがソウルジェムの近くにいれば何とか体が動かせるバグみたいな状態になっちゃった」
そこまで話して、やっと話に頭が追い付いてきたキュルケが口をはさむ
「まってまって、何普通に話を進めてるのよ。魂があの宝石の中にあるって…じゃあ今こうして話してるサヤカは何だって言うの?」
まあ、すぐに理解しろていう方が難しいか。
「ただの人形だよ、魂こそが人間の本質だって言うのなら、ソウルジェムこそが美樹さやかで、今ここにある身体はその美樹さやかだったもの。ただの肉の塊って言ったところかな」
「っ!」
思わずといった感じで、キュルケがあたしの身体につかみかかる
「あんた!なんでそんな普通にしてるのよ!こんな、命への冒涜みたいな、こんな扱いされて…」
そのままあたしの身体を引き寄せて抱きしめるキュルケ。
「ああ、なんてこと」
そのままキュルケはさめざめと泣きだしてしまう。
これにはあたしもタジタジだ。
「だ、大丈夫だよキュルケ!こんな風に距離が空いちゃうと動けなくなるのは不便だけど、戦う分にはめちゃくちゃ有利だからさ!」
そんな風に励ましたけど、正直自分でも慰めになってないと思った。
しばらくキュルケの自由にさせて、あたしはキュルケの背中をさすることしかできない。これじゃあ今までと立場が逆だなあ、なんて考えてた。
そうこうしているうちに船が動き出すのを感じる。
「そうゆうことだからさ、医者はいらないよ。ソウルジェムさえ戻ってくれば、またいつもみたいに元気になるからさ」
泣いていたキュルケが体を離してあたしを見る
「…じゃあさっきあなたが苦しんでたのは、あんたのソウルジェムに何かあったってことね」
「うん」
「あんたのソウルジェムが壊れたらどうなるの?」
「今ここにある身体がただ死体になるだけだよ」
真剣な目であたしを見るキュルケ。
「いまさら言うのもなんだけどさ、正直ルイズがあたしのソウルジェムから離れちゃったら、あたしの身体をお願いしたいんだよね。ソウルジェムの近くに持って行ってくれれば意識は戻るからさ」
「その間あんたはどうなってるわけ」
「え?だからただの肉の塊に」
「違うわよ。今私とこうしているあなたはどうなるの?」
「…」
あたしの意識…前にソウルジェムと引き離されたときはほむらがソウルジェムをすぐに取り返して何とかなったけど、正直気がついたら目が覚めた感覚で正直ちゃんと覚えてはいない。
「わからない」
「わからない?」
「前にソウルジェムと離れた時は意識がなくなって、気がついたらソウルジェムが戻ってきてたから…」
「そう…」
正直ソウルジェムがないときのあたしの意識、心がどこにあるかなんてわからない。
「はあ、本当に世話が焼けるわね」
キュルケはかなり深いため息を吐いた。
「私としては、正直にこのことをルイズに話すべきだと思ってる」
「キュルケ!」
「でも!」
と彼女は続けた
「それはあんたたち二人の問題よ。だから黙っててあげる。ソウルジェムが無事に戻ればあんたはもう平気なのよね?」
その質問に一瞬どうこたえるのが正解か迷う。
「うん、今まで通りだよ」
だから嘘は言わないことにした。
「…わかったわ」
キュルケはそれで納得してくれたみたいだった。
「当面の間はあなたのソウルジェムを無事にサヤカのもとに持ってくるのが先決ね」
「うん、迷惑かけるけどよろしく」
「そのためにもあんたは本当に休みなさい。いざという時に動けるように」
「ありがとうキュルケ」
そう言ってあたしの肩を離すと、タバサと共に部屋を後にした。