ゼロの人魚姫   作:北町スイテイ

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どうも、またお目にかかりました。
今回も美樹さやかのややこしい日常にお付き合いいただきます。
この話では、彼女が自分の正義心とちょっとした衝動に導かれて行動する場面が増えます。
読者の皆さまは、あたたかい目で――できれば少し笑いながら――見守ってください。

さて、さやかが今日もやらかすのか、はたまた誰かを救うのか。
それはページをめくった先のお楽しみです。


第5話「メイドさん・・・・だと!?」

いろいろあったけど、ひとまずその日は寝ることになった。

そうなると今度は寝床問題があったけど、意外なことにルイズが一緒のベッドに入ることを許してくれた。

本人曰く、

 

「対等な友達を床の上で寝かせるわけにはいかないでしょ。」

 

とのことだ。

ほんとに素直じゃないんだから。

 

 

そんなわけで、朝。

前の日にルイズに頼まれていた洗濯をするためにルイズが起きるよりもずいぶん早くあたしは起きて、洗濯をできるような場所を探してさまよっていた。

それというのもどうやらこの世界、魔法が発展している分、科学のほうはあたしの世界よりずいぶん遅れていて手洗いだったのだ。

洗濯ものを手洗いとは、小学校の家庭科の授業以来である。

 

「あの・・」

 

渡り廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。こんな朝早くに起きている人間がいるんだと思いながら振り返ると、そこには・・・

 

「メイドさん・・・・だと!?」

 

この世界で見るには少し珍しい、というかおかしいメイド服を着た黒髪の女の子があたしの何倍もある洗濯物を抱えて歩いていた。

もっと言うなら、洗濯物の上にそのふくよかなものも乗せて歩いていた。

 

「しかもでかい・・・」

「え?」

「あ! いやいやなんでもない。えっとあなたは・・・」

「私、ここでメイドをやらせていただいています、シエスタと申します」

「巨乳メイドとは、なんとけしからん」

 

思わずそのふくよかなものに目がいってしまった、いかんいかん。

 

「見慣れない制服ですが、もしかして昨日召喚されたっていう平民の・・・」

「そうそう、それあたし」

「やっぱり」

「あたしってそんな有名なの?」

「それはもう、貴族に召喚されたかわいそうな平民だって・・・あ、ごめんなさい」

「いや、気にしてないよ大丈夫」

 

そっかあ、あたしそんな風に思われてたんだ。

 

「あの、それもしかしてお洗濯ですか?」

 

シエスタはあたしの手元を見て言った。

そうだ、さっさと洗濯を済ませなくては約束の時間にルイズを起こせなくなってしまう。

 

「そうそう、うちのお姫様に頼まれてね。今からお洗濯」

「もしよろしければ一緒に洗いますよ」

「いや大丈夫だよ。これはあたしの仕事だし」

「そうですか・・・」

「ただどこで洗濯すればいいかわからなくて、もしよかったらご一緒させてほしいなあって思うんだけどどうかな?」

「それくらいお安い御用ですよ。」

「ほんと?たすかるわあ」

 

シエスタが親切な人で良かった。

そのまま洗濯場までシエスタと一緒に行って仲良くお洗濯。

シエスタはここでの仕事はそこそこ長いらしく、現代社会でぬくぬくと育ったあたしなんかよりも断然洗濯がうまかった。

 

「おお、ルイズのやつあたしよりもいい下着をつけてやがる」

 

かくゆうあたしは四苦八苦しながらなんとか洗濯板に慣れることができた。こんな経験初めてだが、隣のシエスタがさりげなく手元を見やすくしてくれてたのがきっとよかったのだろう。

 

「シエスタ、今日はありがとね。こんどなんかお礼するよ」

「いえいえ、そんな悪いですよ」

「いいっていいって、あたしがお礼したいの」

「サヤカさん・・・」

 

ふと時間が気になった。

 

「あ、シエスタ今何時?」

 

聞くとルイズを起こすまでもう10分を切っていた。

 

「おっと、そろそろルイズを起こさなきゃ」

「え?」

「お礼はまた今度ね! またねシエスタ」

「え!サヤカさん!」

 

初日から遅刻させたんじゃ面目がたたない。

でも、あたしが思うよりも校舎は広くて、このままではルイズを時間通りに起こせないと判断したあたしは、魔力で身体強化をしながら階段を駆け上がる。

 

ばん!

 

そして勢いよくルイズの部屋のドアをあけ放つと、

 

「ルイズおきろおおお!」

 

ルイズの布団に飛び込み、そして身体強化したままルイズをお姫様抱っこして無理やり立たせる。

 

「え、なに?だれ?」

 

とうのルイズは寝起きだからかまだ状況がわかっていないらしい。

 

「あんたの愛しの使い魔兼友達のさやかちゃんですよ~」

 

そのあまりにも愛らしい姿に思わずルイズをぎゅっとしてしまった。

昨日いっしょに寝ていて思ったのだが、ルイズはずいぶん小さい。あたしの体はまどかのもとに来た時のままだからだいたい14歳のころのままだけど、ルイズのほうが頭一つ分くらい小さいのだ。

これがこの世界の平均かとも思ったけど、そうでもない。昨日見たルイズの同級生らしき人たちは案外ふつうだったし、ルイズは特別小さいと考えていいだろう。

 

「あ・・・そうだ、昨日使い魔を召喚したんだっけ・・・」

「そうだよ。約束の時間に起こしたんだからシャキッとする」

「あんたって意外と力持ちなのね。」

 

まあ身体強化してるんだけど、それを言う気はなかった。

確かにこの世界では魔法は普通だけど、あたしの使う魔法とはなにか違う気がしたし、魔法使い(こっちの世界ではメイジというらしい)=貴族の風潮があるこの世界で変に魔法を使ってルイズを困らせるのも嫌だったからだ。

 

「まあ鍛えてますから」

「ふーん、そんな風には見えないけど」

「人は見た目によらないんだぞ」

 

あたしは適当に話をごまかした。

 

「まあいいけど、じゃあ着替えさせて」

「え、そこまでさやかちゃんにやらせちゃうのかあ」

 

あたしは手をワキワキさせながらルイズに迫る。

 

「やっぱりいい! 自分で着替える!」

「遠慮しなくてもいいんだぞお。このさやかちゃんが手取り足取り・・・」

「だからいいって!」

 

この攻防がしばらく続いたが、結局ルイズが切れそうになったころにあたしがひいて事なきを得た。

 

 

とりあえず時間通り部屋を出ることはできた。

が―――

 

「ルイズおはよ」

 

部屋を出るとばかふくよかな女が話しかけてきた。もう一度いう、ばかふくよかな女だ。

 

「ルイズこのやばい胸のおねーさんはだれ?」

「あら、あなたは昨日ルイズが召喚した平民ね」

「あ、ども」

 

ばかふくよかなお姉さんはあたしの体をじろじろ見ると、

 

「あなた着やせするタイプね」

 

と言い放った。

 

「さやかちゃんの隠された可能性に気付くとはなかなかやりますね」

「何の用よキュルケ」

 

さっきはおねえさん―――キュルケというらしいが―――キュルケの胸に夢中で気が付かなかったのだが、何やらルイズが不機嫌だ。

 

「あなたに私の使い魔を見せてあげようと思ってね」

 

そういうとキュルケの後ろからおっきなトカゲみたいのが出てきた。

 

「うわあ! なんだそれ!」

 

しかもなんか燃えている。あたしは思わず一歩下がった。

 

「サラマンダーよ、見るのははじめて?」

「はい、初めて見ました」

 

こんな不思議生物あたしの世界には・・・いやタチの悪いのを一匹?知ってる。

 

「サヤカ、そんな奴と仲良く話さなくてもいいわよ」

「ルイズ?」

 

ルイズは不機嫌さを隠そうともせずに言い放った。

 

「それにしても、さすが『ゼロのルイズ』。人間を召喚するなんてね」

「それが何よ」

 

どうやらこの二人、何やら因縁があるらしい。さっきから見えない火花がバチバチしているのが何となくわかる。

 

「メイジの実力を見るなら使い魔を見ろって言うけど、その通りね。平民の人間なんてあなたにお似合いじゃない?ゼロのルイズ」

 

あ、キレるとあたしは思った。

ゼロのルイズがどういう意味かは知らないけど、いい意味でないのは何となく分かる。そんな言葉をこんな風に何度も使われて、ルイズが我慢できるとはおもえなかった。

 

「っ!」

 

でも意外にもルイズは何も言い返さなかった。無言でキュルケの隣を通り抜ける。

 

「ちょっとルイズ!」

 

あたしはあわててルイズの後を追った。




読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
今回はサヤカが自分の正義心を爆発させ、少し大人の世界に足を踏み入れた回になりました。
彼女の暴走…いや、行動力に驚かされた方も多いかもしれません。

こうして見ると、サヤカはただの平民じゃなくて、信念を貫く一人の「使い魔」でもあるんですよね。
ルイズや周囲の人たちに振り回されながらも、自分の感情や価値観を曲げない姿は、読んでいても気持ちがいいものです。

さて、次回はサヤカの行動にどんな波紋が広がるのか…お楽しみに。
彼女の勇気、そしてちょっぴり天然な強さに、また付き合ってやってください。



シエスタ

名前:シエスタ
出身:トリステイン魔法学院
年齢:16歳前後
性別:女性
立場:学院メイド

トリステイン魔法学院で働くメイドの一人。
貴族ではない平民だが、非常に面倒見がよく、芯の強い性格をしている。

本来の歴史では、異世界から召喚された平賀才人と出会い、
彼の世話役のような立場から次第に距離を縮めていく存在。
貴族と平民という身分差を強く意識しつつも、
才人に対しては一途で、現実的で、時に大胆。

ルイズとは対照的に、
感情表現が素直で、生活力があり、
「一緒に生きる」ことを具体的に想像できる人物でもある。

学院という閉じた世界の中で、
彼女は常に“日常”と“現実”を象徴する存在だった。
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