「えーっと、何だったかな、ほら、参拝に来た時の礼して手ぇ叩くやつ」
「なんだよもう忘れたのか?さとりが言ってたろ。ほれ、二拝二拍手…………えっと……?」
「あっ、あたい知ってる!二はい二はくしゅ、人体錬成!!」
博麗神社の社殿を前にして、礼法を酒で飛ばしてしまった鬼二人と、そこへ割り込み、自信満々に答えたチルノ。
我先にと前へ出た3名に、その場にいた全員が苦笑を漏らす。
「こらこら、参拝で禁忌を犯すな」
「語呂はいいですけどね」
慧音とさとりは半ば呆れつつ、慣れた動作で当人達を端の方へフェードアウトさせた。
「……阿保妖精は兎も角、あの二人も相変わらずだな」
「威勢の塊みたいな種族だもの。お酒があればどこでもお祭り騒ぎなんだから」
「自分で持ち込んでるけどね」
「じゃあ
運営側にまわっている博麗姉妹と魔理沙は、それぞれ率直な感想を漏らした。
他を見てみれば、紅魔館組や妖怪の山組は先程霊夢から教えてもらった参拝の作法がイマイチ理解できなかったらしく、様子見を決め込んでいる。その中でも紅魔の主は何故かお手並み拝見とでも言いたげに胸を張っていた。
「仕方ありませんね!ここは一度、私が手本をお見せしますよ!!」
などと言って一同の前に歩み出たのは、守矢の巫女だ。こちらはこちらでどこか誇らしげな表情である。
「いいぞ早苗〜」
「びしっと決めなよ〜」
後方では神奈子と諏訪子の二柱が、まるで子の演劇を応援する親のように、彼女の背へ小さな拍手を送っている。
そもそも彼女らは立場的に
その様子を見ていた輝夜は、くすりと笑みをこぼすと、徐に視線の先に見つけた妹紅へ歩み寄った。
「貴女は行かないのかしら」
「……もう少し後に行く」
輝夜の問いに、妹紅は振り返ることなく答えた。
「何故?」
「別に」
変わらずそっけない返事。
しかし輝夜は構わず続ける。
「まさか貴女もやり方がわからないとか?」
「…………そんなとこだ」
ここでにんまりと輝夜の口角が上がった。
「あらー?じゃあ里であの仲の良い先生に参拝のやり方教えてもらって、何度も練習してたって言うのは私の聞き間違いだったのかしらー?」
輝夜がわざとらしい説明口調でそう言うと、途端に妹紅の肩が跳ね上がった。
「なんっ、お前…!知っ、おい……!」
わなわなと肩を震わせ、漸く振り返った彼女は、既に耳まで赤い。
「ウチの従者は優秀なのよ。里の大抵の情報なんて筒抜けなんだから」
勝ち誇ったように笑みを浮かべる輝夜だが、実際のところは、定期的に里へ薬売りに出ていた鈴仙が偶々目撃しただけであった。
「ぐぬぬ……!ちっ」
危うくいつものように沸騰しかけた妹紅だったが、なんとか怒りを飲み込んで舌を打った。
「あら、今日はおとなしいわね」
輝夜も肩透かしを喰らったように首を傾げた。
妹紅は顔を背けながらふんと鼻を鳴らして再び社殿へ振り返ると、
「順番的にはそっちが先だろ」
と、小さく呟いた。
輝夜の目がぱちりと瞬く。
「むかつくけど、師匠との付き合いは輝夜達の方が長いだろ。だから、先に譲ってやるよ」
余程癪だったのか、はたまた恥ずかしかったのか、最後の方は消え入りそうな程小さく、か細い声だった。
すぐにまたふんと鼻を鳴らして俯いたあたり、両方かも知れない。
「……妹紅」
輝夜は一拍置いて口を開いた。
「あんたやっぱりお馬鹿ね」
その言葉に妹紅は勢いよく振り返えると、呆気に取られたように目を丸くした。
恐らくあと数秒後には我にかえって怒鳴りつけてくるだろう。
だから輝夜は制すように続ける。
「付き合いに長いも短いもないでしょうに。大体参拝するだけなのにどうして順番なんて気にする必要があるのかしら?」
「……っ」
妹紅は一度言葉を飲み込むと、顔を赤らめて呟いた。
「……だって、最初に神様に届く願いって……、その、重要…じゃん?」
もじもじとそう続けた妹紅の声は、先程よりも更にか細かった。
「……お」
対して、輝夜は面食らったように目を瞬かせた後、今日イチの声で叫んだ。
「乙女か!!」
今回プチギャグ回でした。
今年最後の投稿です。
また1年間読んでいただいてありがとうございました。
今年はとある分野の資格取得のために中々投稿出来ずにズルズル来てしまいましたが、来年にはまとめあげる予定です。
寒波が来ていますが風邪とコロナはコタツに篭ってやり過ごしましょう 笑
来年もよろしくお願いします。皆様よいお年を。