とある発明家は、温度を高める装置を生み出そうとしていた。

某所のワンライ企画(1時間での執筆)で書いたもので、お題は「寒さ」です。

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本編

 私は、部屋の温度を高める装置の開発に着手した。気温を高めるために。

 照りつけているのに、まるで変わらない気温。温度計を睨み付けながら、しっかりと意思を刻み込む。

 肌を何度もさすって、ザラザラとした感触を味わう。これを、少しでも変えるために。

 今の気温は、バカげているのだから。とても足りるものではない。なんとしても、私は計画を達成してみせる。

 

 理論はすでに完成できている。分子の振動を応用すれば、高温にできるはずだ。そのための一歩を、私は踏み出し始めた。

 

「よし、まずは試作品だ。さて、何度上がる……?」

 

 3日かけて作った試作品の理論は、単純なもの。電力を用いて磁力を交互に発生させ、金属原子を振動させるというもの。

 スイッチを押し込むと、轟々という音がなり、煙を吹き出し始めた。それを眺めながら、しばらく待つ。

 10分ほど経った頃、温度計を確認する。以前より、3度しか上がっていなかった。実質的には、誤差に近い。舌打ちをしながら、私は実験結果をノートに書いていく。

 

 おそらくは、振動数が少なかった。もっと極端に増やすくらいでちょうど良かったのだろう。

 だったら、次は全力でこなしてみよう。この結果からして、行き過ぎることはない。まずは試してみるのが手っ取り早い。

 

 そういうことで、次の段階へと進んでいく。電力をフル活用して、振動の大きさも拡大しながら。

 

「やはり、勢いというものは大事だね……。実験とは、失敗してこそというものだよ」

 

 もう一度、スイッチを押す。シューシューという音が鳴りながら、装置は煙を吹き出す。また10分ほど待つと、今度は明らかに肌を刺す感触が変わった。確かに温度が伝わってくる。

 結果を見るまでもなく、進歩は明らか。胸を弾ませながら、温度計を見る。なんと、10度も上がっていた。完璧とは言えないものの、素晴らしい成果だ。腕を組んで、私は頷く。

 肌の感触は、以前とは明らかに変化している。狙い通りといったところ。

 

「うん、悪くないね。この調子で、どんどん進めていこう。狙った温度にたどり着くまで、私は諦めないとも」

 

 この手応えを胸に、私は実験を続けた。回路を見直して出力を上げてみたり、素材を見直して磁力の通りを良くしてみたり。

 何度も何度も、数を数えることすらおこがましくなるほどの回数を繰り返した。

 

 そして、いよいよ私は成功を確信する。会心の理論と組み合わせた装置が完成したからだ。

 理論というのは、単純だ。発電そのものも実行して、その熱も組み合わせる。それだけの、単純な話。

 

 あまりにも完璧すぎる。一度だけ、深く深く頷く。そして、私はスイッチを押す。白い煙が、もうもうと立ち込めていく。

 一瞬で、気温が変化した。差にして、30度。これなら、どんな環境であっても理想の温度を出せるだろう。

 

 肌をさすると、岩のような硬さを感じる。これで完璧だ。

 100度を指している温度計を見ながら、私は口から炎を吐き出した。

 


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