指令『青の中へ入り、先生となること。期限は無期限』 作:一般通過遂行者
シャーレ前を無事制圧したグローリアは、目的のブツがある建物の地下へと進んでいく。
そこには狐面を付けた生徒が布に巻かれた板を不思議そうに見ていた。
「これは一体何なのか……全く分かりませんね。これでは壊そうにも」
「ありゃ、先客……重要なものって、多分この板だよね〜」
気配を消して狐面の生徒、ワカモの背後に回り、すっと板を取り上げる。
ビクッと肩を跳ねさせ、後ろに飛び退くワカモのことは気にせず、こちらに来る前に発光していたものと同じと思われる板を眺めるグローリア。
「あ……あらら? ……なんてキューt……し、失礼いたしましたーっ!!!」
あわわと慌てながら、どこかに消えていったワカモ。
グローリア1人になった時、しゅるる、と巻かれていた布が解けていき、板の正体がタブレットであることが明らかになる。
「なんだっけ、図書館で戦ったうちの1人が、こんな見た目の頭してたような気がするんだけど」
「お待たせしました、先生。あぁ、ちょうどその手に持たれているものが、連邦生徒会長が遺していった『シッテムの箱』です。こちらでも色々と調べましたが何も分からずで」
「ふーん……あれ、これは……指令の紙?」
4人を言いくるめていたリンがやって来ると同時に、はらり、と1枚の紙がタブレットから離れて落ちる。
それを拾い上げると、ちゃんと人差し指の印が捺されており、誰かが偽造した指令に従え、という指令も出ていないため本物だろう。
「えーっと、『我々は望む、七つの嘆きを。我々は覚えている、ジェリコの古則を。と唱える』」
グローリアが指令を読み上げると、タブレットの画面から光が溢れ、またか〜なんて思いながら呑まれていく。
《『シッテムの箱』へようこそ、グローリア先生。
生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します》
海の見える崩れた教室で、机に突っ伏して寝ている1人の少女。
グローリアは揺すったりすることもなく、起きるのを待つことにした。
〜1時間後〜
「ふぁ〜……よくお昼寝しまし……も、もしかしてあなたは! グローリア先生!?」
のそりと顔を上げた少女は慌てるように立ち上がりグローリアに向き直る。
窓際? で都市で見ることがほとんどない海を眺めていたグローリアはその声に気づくと、少女のいた机の方に戻っていく。
「お待ちしてました、グローリア先生! まずは自己紹介から! 私はアロナ! この『シッテムの箱』に常駐しいるシステム管理者でありメインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
生体認証が必要とのことで、指をアロナと合わせるグローリア。
なぜか一瞬赤い視線の姿がチラつき警戒態勢に入りそうになるが、瞬きを終えた頃には少女の姿に戻っていた。
「これで認証完了です!」
それと……と言いながらポケットから何かを探すアロナ。
もちろんグローリアは手伝うこともなくそれを眺める。
あった! と机の引き出しから出てきたのは一枚の紙。
「グローリア先生のメールボックスに入っていたんです! なので、お渡ししておきますね!」
「これもやっぱり指令だ。『これよりアロナを伝令として任命する。代行者グローリアはアロナより指令を受け取ること』だって。こっちに伝令がいるか心配だったけど、これで解決したね〜」
指令の内容を共有すると、アロナの制服の上から、白い人差し指の外套が被せられていた。
「これは……テクスチャの上書き……?」
アロナは不思議そうにしているが、指令を伝達してくれるならまあいいか、とかなり気が抜けていたグローリア。
そういえば、と外の状況を軽く共有する。
するとサクッとタワーの制御権を掌握したアロナ。
「これでキヴォトスはグローリア先生の支配下も同然です!」
「こういう拾得物をどうするか、指令にない時困っちゃうよね〜。何も無ければ懐に収めてしまってもいい、って解釈を下すことが多いけど……」
「グローリア先生の管理下で一時的に連邦生徒会に移管、というのはどうですか?」
サンクトゥムタワーの制御権を手放さない選択肢をグローリアが浮かべたため、表向きには連邦生徒会に運用させつつ、何時でも手元に戻せるようにしておく、という提案をするアロナ。
「指令を達成するのを手伝ってくれてるリンちゃんに恩はあるけど、それはそれで、これはこれだからね〜、そんな感じでお願いしようかな」
間接的にではあるが、指令の影響を世界全体が受けるようになったキヴォトスで、グローリアは何を成して行くのか。
それは、指令だけが知っている。