二度目の惑星封鎖機構ちゃん in キヴォトス 作:Seiran
『我々の自治区で、我々を排除してでも軍事作戦を行うと言うことですか...?』
「えぇ、アビドス自治区近辺で大規模な作戦行動を行うことは申し訳ありませんが...妨害されるとなれば対処せざる負えませんから」
堂々と言い切った行政官に、いよいよアヤネは激怒した。自分たちの恩人を捕らえんとし、あまつさえ自治区を侵犯する事を宣言されたのだからさもありなん。何人からもアビドスを守り抜くという決意を込めて、アヤネは叫んだ。
『それでも、あなた方の軍事行動は容認出来ません!全力で抵抗させていただきます!!』
「社長、逃げるなら今のうちだよ。風紀委員会はきっと、アビドスと一緒に私たちを殲滅するつもり。...だけど、アビドスがあっちの気を引いてくれてる今なら、包囲の薄いところを突破できる」
──少し離れた場所で、便利屋68は小声で話し合っていた。社長であるアルは、撤退を進言するカヨコの言葉に不敵な笑いで答えた。
「...ふふ、ふふふふふっ」
「...社長?」
「...ねぇカヨコ、あなたなら私の性格、もう分かってるんじゃなくて?こんな状況で、こんな扱いを受けておいて...背中を向けて逃げるなんて、そんな3流悪党みたいなことを私たち便利屋がする訳ないじゃない!!」
「あはー...」
「社長...」
若干呆れ気味のムツキとカヨコ。しかし、「昨日、直ぐに逃げなかったっけ...」という思いはアルの笑顔で黙殺された。
ゴオオオォォォォォォ...
「はぁ...まあ、それは良いけど、あの兵力と真っ向から戦う気?アビドスとC&Cが居るとはいえ所詮烏合の衆。かなりギリギリだし、アビドスが私たちに協力してくれるとは思えない...となると...」
社長の生き様に付き従う少女は現実的な問題に頭を悩ませていた。方や1度敵対したアビドス。方や余りにも未知数なシャーレ。こちらが言葉を尽くそうとも決して協働など出来ないだろうという分析は、しかし他ならぬアビドスによって覆される。
ゴオオオォォォォォォ...
「よっし、便利屋っ!挟み撃ちするわよ!この風紀委員会、コテンパンにしてやらないと!!!」
「ん、先生の盾になってもらう」
「なっ...あんた達、正気...?」
一瞬でまとまった話にカヨコは面食らっていた。しかし、悪い話ではない。...墓穴を掘った発言もあったが、社長も張り切っているのだ。やらない道理はない。
改めて結束する両者を見据えつつ、行政官は指示を出す。
「うーん...まぁ、これはこれで想定していた状況ではありましたが... それにしてもここまで意気投合が早いとは、想定外でした。まぁいいでしょう。風紀委員会、アビドスと便利屋、C&Cを排除します。先生はキヴォトス外部の人間のため、怪我をさせないように注意を。...全隊攻撃始め」
『敵、包囲を始めています!突破してください!先生、指揮をお願いします!』
「”うん、まかせて!みんな、攻撃開───”」
『ッ!?先生!何かが遠方から高速で接近しています!注意を!』
「”えっ?”」
ドゴオオォォォォン!!!!
「な、なに!?」
『一体何が...?』
「コード23、現着。旧アビドス市街地に展開する全ての武装勢力に告ぐ。直ちに武装解除し臨検を受けよ。これを拒否することは封鎖機構への敵対と見なし、例外なく拘束対象となる。これは、治安維持作戦の一環である。繰り返す。直ちに武装解除し、臨検を受けよ」
◆◇◆◇◆◇◆
個体識別番号CDーS5N64
それは封鎖機構が誇る特務機体「エグドロモイ」を駆る
少女の記憶の始まりは暖かな赤色に包まれたような視界だった。その主である「セントラルシステム」から特務少佐を任ぜられた彼女は、やがてプログラムの域を超えて職務に忠実となった。心酔と言っても過言では無い。システムに属するパーツとしてはやや逸脱しているが、その能力に疑いの余地はない。
他の姉妹と同様に、敬愛する主君の為に生きることを望み、存在意義もまた主君に仕えること。...故に彼女は、封鎖機構に敵対する者へ容赦しないのである。そう───
「ぐ...うわぁ!?」
───今まさに奇襲を看破され、地面に沈む
「この機体に奇襲を仕掛けるとは... その意気は認めるが、もう一度だけ繰り返そう。臨検を受けるか、虜囚となるか。さて、答えは?」
機体の後方に十数個の黒点が見える。尾を引くバーニアの青い火がどんどんと近づいていた。
「これは...想定外です。まさか封鎖機構が出張ってくるなんて...」
「あ、アコちゃん、どうするんだ!?」
「困りました... 抵抗も逃亡も出来なさそうですし...」
「───特務少佐殿、手早く片付けましょう」
狼狽する行政官やこちらを警戒する
「そうだな。警告は済ませた。排除執行する」
「”ちょっとまって!まずは話をしよう!”」
1人の男が集団から飛び出した。CD-S5N64はその男の顔を認識し、それが最近共有された”先生”という存在であることに思い至った。
システムの定める重要人物であり、サンクトゥムタワーをハッキングした人間に対する警戒が声から滲み出ていた。
「話...だと?」
「”そう。まだ、話し合いの余地があると思うんだ”」
彼女は、臨検を受け入れればそれで済む話であるにも関わらず会話を求めることに疑問符を浮かべていた。
◆◇◆◇◆◇◆
[マスター、個体識別名「先生」がシステムとの対話を希望しています]
ん... 封鎖機構の内部情報以外なら現場の裁量で当たり障りなく答えてくれればいいよ?SGの救出はもう終わったんだもんね?
[はい、マスター。SG部隊は既に戦域を脱出しています。しかし、先生はどうやら「システム」をひとつの意思ある存在として会話を試みており、戦闘人形では回答不可能です。]
それは、それは。なるほど。システムの人格性を予測するとは流石は「先生」に選ばれるだけあるね。
或いは、そう
あまり表に出たくないが…彼が素直に引いてくれるはずもなし。仕方ない。エグドロモイのオープン回線で繋げようか。
隔離領域形成…
さて、ファーストコンタクトだ。
「初めまして、先生。私がキヴォトス封鎖機構、封鎖統制システム《セントラル》だ。」
続きません