幼少期のエルザ達は連れ去られたジェラールを助けるためこの楽園の塔で幾度となく、教団の連中と対立を繰り広げた。
「今日中に第八センターまで行くぞ!みんな頑張って!」
エルザは数多くの子供達のリーダーとして懸命に走り回った。しかし相手は武器を持つ大人でありそう簡単にはいかなかった。…けれどこの日までは上手く戦えていたのだ
…この日までは
「ぐは!?」
「シモン!?」
仲間であるシモンの顔に何かがぶつかり、シモンが吹き飛ばされる。そして次の瞬間にはーー
「「「うわぁァァァァ!?」」」
「魔法だ!」「奴ら魔法を使ってきやがった!」
次々と炎の球がエルザ達のいるエリアに着弾し、瞬く間に仲間達は戦闘不能へと追い込まれていく。仲間達がやられ、己自身もボロボロの中でもエルザの闘志は消えない
「ダメ!みんな諦めないで!」
しかし、エルザの決意とは裏腹に仲間たちは次々と討ち取られていき、残る仲間も僅かとなり、窮地かと思われたその時ーー
「あァァァァァァ!!!!」
「「「っ!?なんだなんだ!?」」」
後に"妖精女王"とまで呼ばれることとなる少女が目覚める
エルザの慟哭と共に周囲に散らばった無数の武器たちが意思を持ったかのように空中へと浮かび上がり敵陣へと突き刺さっていく。
そしてそれは敵陣を壊滅させるまで終わることはなく、最後の1人を手に持った剣で斬りつけるエルザ
この日からエルザを中心にした反乱軍と、教団側の戦力差が逆転する。反乱軍側はエルザの覚醒により息を吹き返した様に教団側を圧倒し等々ジェラールがいるであろう広間へと辿り着くことに成功するエルザ
しかし、再会したジェラールは…すでに"壊れていた"
数多くの拷問を受けていたジェラールは精神が崩壊したかのように暴れ狂い、敵を制圧した途端、過剰に攻撃しさらには妙な言葉を口走る様になった
『俺は気づいてしまったんだ…俺たちに必要なのは仮初の自由じゃない…本当の世界は"ゼレフの世界"だ』
狂ったように嗤いながらそう言い放つジェラールにエルザは恐怖を抱いた。…もう…あの時のジェラールは存在しないのかも知れないと…
しかしかつて己の"希望"となってくれた男をエルザは諦めきれなかった
「ジェラール…お願い…目を覚まして」
「お前はもう要らない…だけど殺しはしないよ…邪魔な奴らを排除してくれたことには感謝しているんだ…だから島から出してやろう。仮初の自由を堪能してくるが良い」
「ジェ…ジェラール?」
「分かっていると思うがこの事は誰にも言うな…楽園の塔の存在が政府にバレると計画が台無しだ…ばれた暁には証拠隠滅のために俺はここにいる連中を皆殺しにしなければならない…お前がここに近づくのも禁止だ、目撃情報があった時点で1人殺す」
「…」
「そうだなぁ。まずはショウ辺りを殺す」
「…ジェラール」
幼いエルザの瞳からは涙が溢れ出す。自分を救ってくれたはずの少年の変貌…そしてそれを救ってあげられなかった己への不甲斐なさ…幾度となく葛藤を繰り広げたエルザの心はーー
ーー思い出したくない様に"蓋を閉めてしまった"のだった
◆
「それが私の過去だ…私は…ジェラールと戦うんだ」
涙を流し震えるエルザはそう告げる。これまで幾度となく葛藤があったのであろう。…昔の仲間を諦めて、フェアリーテイルで一からスタートした今でも忘れられない過去との決別…
そしてそんな過去を聞いていたのはフェアリーテイルの面々だけでは無かった
「ね、姉さん…今のはどう言うことだ!?」
「…ショウ」
「そんな与太話で仲間の同情を引くつもりなのか!ふざけるな!真実は全然違う!8年前姉さんは俺たちの船に爆弾を仕掛けたじゃないか!ジェラールが姉さんの裏切りに気づかなければ全員死んでいたんだぞ!ジェラールは言った!これが"魔法を正しく使えなかった"者たちの末路だと!姉さんは魔法の力に酔ってしまい俺たちの様な過去を捨ててしまったんだと…」
ショウは受け入れたくない事実を否定するかの様に叫ぶ
「'ジェラール"…が言った」
「貴女の知るエルザはそう言う事をする女性なの?」
「っ!?でも!?」
グレイとルーシィからのカウンターにショウはたじろぐ…これまでの8年間を否定され体が拒否反応を示しているのだろう。先ほどから異常な汗を噴き出している。
「なら…正しいのは姉さんだって言うのか!?間違っているのはジェラールだと!?」
「そうだ」
「「「っ!?」」」
とその時、ショウの返答に応えたのはエルザ達の背後から現れた男…
「シモン!?」
「テメーー」 「近寄らなーー」
「待ってくださいグレイ様!!」「待ってアラジン!!」
シモンに対し、警戒心を強め臨戦体制に入るグレイとアラジン…エルザの昔馴染みの男とはいえ2人からすれば仲間を払った敵でしかないのだから当然の反応である
「お前もウォーリーもミリアーナもみんなジェラールに騙されているんだ…そして気が熟すまで俺も騙されたフリをしていた」
「シモン…おまえ」
シモンから驚愕の事実が語られた。そしてーー
「俺は初めからエルザを信じている…8年間ずっとな」
「…っ」
「会えて嬉しいよエルザ…心から」
そう言い放ちエルザと再会の抱擁を交わすシモンとエルザ
「なんでみんな…そこまで姉さんを信じられる…なんで俺は姉さんを信じなかったんだ…くそぉぉぉぉぉ!!うわぁぁぁぁ!!」
泣き叫び地にうずくまるショウ…そしてそんなショウを見たエルザは
「今すぐに全てを信じるのは難しいだろう。だかこれだけは言わせてくれ…私はこの8年…お前達のことを忘れたことなど一度もなかった。何も出来なかった私は弱かった…本当にすまない」
「だが今なら出来る…そうだろう?エルザ」
「…ふっ…あぁ…私の仲間達は強いぞ」
「ならいち早くサラマンダーを探そう。奴がウォーリーやミリアーナと出会う前に」
「「「おう!!」」」
◆
エルザ達一行はナツを探すためにナツが登った階段をひたすら駆け上がっていた。
「大丈夫かショウ?」
「うん」
エルザは不意に、下を向くショウに気づいた
「姉さんがいてくれるから…」
エルザは気が付かなかった…この時ショウが何を思い、"覚悟"を固めていたのかをーー
◆
《楽園の塔・最上階フロア》
楽園の塔に存在する最上階にて2人の人間が集まっていた。
「シモンとショウが裏切った…そしてミリアーナとウォーリーはサラマンダーの手によって撃墜…と」
全身が黒いローブに包まれた謎の男が言い放つ
「やはりゲームはこうでないとな。一方的な展開ほどつまらないものはない」
そしてその問いに応えたのは、黒い衣服に長髪が目立つ男
「ジェラール様…早くエルザを捕えましょう。もう遊んでる場合じゃありませんぞ?」
「ならばお前がいくか?ヴィダルダス」
「宜しいので?」
そう口にした瞬間、男の体から蒸気が噴き出す。そして次の瞬間爆発と共に3人の男女が現れる
現れたのはーー3人の人間達… まず中央にいる長髪の男。
異様なほど長く伸びた黒髪が、地面に届くほど垂れ下がっている。目は見開かれ、瞳孔が小さく、正気とは思えない危険な光を宿している。そして上半身はほぼ露出していて、細身ながら筋肉が浮き出た体つき。首元や胸元には刺青のような模様が入り、禍々しさを強調している。腕には黒いリストバンドのような装飾。腰にはベルトと、骨やドクロをモチーフにした装飾がぶら下がっている。
その左にいる女性。
長い髪を後ろで大きく結び、柔らかく流れるようなシルエット。表情は穏やかで、どこか余裕すら感じさせる微笑みを浮かべている。中央の男とは対照的に、落ち着いた美しさが際立つ。衣装は白を基調にしたドレス風で、胸元や帯にドクロの装飾が施されている。袖や裾には炎のような模様があり、優雅さの中に不穏さが混ざるデザインであり腰には剣を差している。
そして右にいる人物… 頭部が完全にフクロウで、大きな丸い目と羽毛に覆われた顔をしている。体は人間で、がっしりとした筋肉質である。背中にはロケットのような装置が2本突き出ており独特な雰囲気を漂わせている
そしてこの三名こそがジェラールが認める真の部下…
【暗殺ギルド・髑髏会・特別遊撃部隊・三羽鴉(トリニティイレブン)】
「頼んだぞ…お前達の出番だ」
新たな脅威がアラジン達の行手を阻まんとしていた
◆
『ようこそ楽園の塔へ』
「なんだ!?」
「…この声は!?」
アラジン達がナツたちを探し塔を登っている最中…室内を奇妙な音声が響き渡った。そしてその声が聞こえた瞬間…ショウ達の体が震えるのが分かった
『俺の名はジェラール…この塔の支配者だ』
「「「ジェラール!?」」」
『互いの駒が集まった…そろそろ始めようか楽園ゲームを』
ジェラールと思わしき声はこちらの反応を無視し語り出す。
"楽園ゲーム"…ルールは簡単…エルザを狙うジェラール一派の攻撃や妨害をこちら側が阻止ないしは撃退すれば勝ち…更にはジェラールサイドは本人合わせ4人しか存在しないこと
「舐めやがって!」
「いやジェラールが認めたと言うことはかなりの実力者に違いない…侮れんな」
『最後に一つ特別ルールを掲示しておこう…評議員が衛生魔法陣でこちらを攻撃してくる可能性がある…全てを消滅させる究極の破壊魔法…"エーテリオン"だ』
「「「なんだと!?」」」
"エーテリオン"…それはすなわち魔導評議会が保有する極めて強力な魔導兵器であり、複数の魔力供給源から膨大なエネルギーを一点に集束し、光の柱として放つことで対象を一瞬にして消滅させる、いわば“最終手段”とされる存在である。
その威力は都市や巨大施設を丸ごと消し去るほどに凄まじく、通常の魔導士が扱う魔法とは比較にならない規模を誇るが、その反面、周囲への被害も避けられないため、発動には厳しい承認が必要とされ、軽々しく使用されることはない。
つまりは国が認めるほど、この楽園の塔は危険視されているということ…
『さぁ楽しもうか』
ジェラールからの音声は途切れた瞬間、ショウが魔法を発動させる
「姉さんには指一本ーー」
しかしその"魔法が発動することは無かった"
「かはっ!?…な…な…」
「…ごめんよ…これ以上エルザに何かされるわけにはいかないんだ」
「「「ショウ!?」」」
「「「アラジン!?」」」
ショウが魔法をエルザに向け発動させようとしたのをアラジンは見逃さない…殺気が感じられないことから攻撃魔法ではないことは理解していたが、この場面でエルザに向けショウが魔法を放つ利点を感じ得なかったアラジンはショウの腹へと膝蹴りを叩き込み一撃で意識を断ち切ってしまったのだった。
「改めてごめんよ皆んな。でも…ここにくるまでの道中で彼の挙動がどんどんおかしくなっていることに気づいたんだ。…ただでさえコチラは一度エルザを攫われてるんだ…これ以上おかしな真似はさせない」
「っ!?」
苛立つアラジンの魔力は新たに仲間となった人物へと向けられていた…それを感じ取った"シモン"は冷や汗をかきながら唾を飲み込む
(なんと言う魔力だ…これほどの魔力とプレッシャーは味わったことがない!?)
しかしそれと同時にこれほどの男が仲間になったと言う事実に胸が躍るのも事実であった。