城塞都市アクセルの酒場にはギルドが併設されており、数多くの冒険者が昼夜問わず集まっている。その酒場には最近女神を自称する女性が現れ、頼めばとても素敵な宴会芸を披露してくれる。
「なんであの男を昼間から見ないといけないんですか!」
「大声だすなよめぐみん」
その女性のパーティーメンバー……めぐみんとカズマの視線の先には宴会芸を披露するアクアと、それを礼賛するヤマモトの姿があった。わざわざ自分で作ったのかアクアの横で紙ふぶきを撒いている。
「ふふーん!どうよ私の宴会芸は!見直したでしょ!」
「御美事!御美事!にございまする!」
数日前までヤマモトの話題になるだけで顔を青くしていたアクアだったが、先日ヤマモトが酒を持って詫びに来た事とこのヨイショですっかり機嫌を直したらしい。
「私はまだ許してませんからね!乙女の顔にあんな汚らしいものを…!」
「ダクネスが喜びそうな表現はやめろ」
めぐみんは未だにヤマモトに苦手意識をもっていて、今もカズマの背に隠れている。ダクネスはヤマモトをじっと見ている。こういう時のダクネスはたいていろくでもないことを考えているのだ。
「私にはわかるぞカズマ……彼は最近誰かをとんでもなくひどい目に合わせたのだ!おそらく彼自身も……まったくけしからんな!私も誘ってくれたらよかったのに」
「そうか何言ってんだお前……仮にそうだとしても一人で巻き込まれてくれ。俺たちは助けないからな」
「んんっ!」
カズマは変態から変体からそっと目離すと、駄女神と異常者に目をやった。後から聞いた話だと彼は有名なソロ冒険者らしい。あんなのをパーティーに誘うほど自分の肝は据わっていないが、それでも参考にすべき点はあるかもしれない。具体的にいうと何かスキルを教えてもらうとか。
ひとしきり宴会芸を披露して満足したアクアはすっかり上機嫌である。きちんとアクアを女神として扱っているのも彼女にとっては高得点だった。なにせ下天してからは誰からも女神扱いしてくれなかったのだ。めぐみんやダクネスは仕方ないにしても、自分を女神と知っているはずのカズマすら……いや、カズマが一番女神扱いしてくれない。カズマからすればアクアの自業自得というだろうが。
「さすがアクア様……美事な宴会芸でございました」
「ふふん!そうでしょ!?私は女神だもの!宴会芸だって一流よ!」
「私も駆け出し時代は冒険者業以外にも手品などで日銭を稼いでいた時期もありますが……アクア様の足元にも及びません。さすがアクア様!」
「へー……なにやってたの?」
「人体切断マジックです」
「ヴォエッ!!」
「めぐみんがまた吐いたぞ!」