自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター 作:心理的継続性を持つおじさん
昨今の人離れならぬ神離れは無視できないものになっていた。教会、ひいては宗教にお布施をする者は少なくなり、反対に神という揺り篭から独り立ちする者は多くなった。
シスターは寂しさや悲しさを感じこそすれ、喜ばしいことだとも思った。神に縋るということはそれだけ世に不安が多い証拠である。神に頼ることがないというのは、逆説的に世の中の不安が少なくなったという事でもあるのだ。シスターは神を信じ、隣人を愛する。その隣人が健やかに過ごしてくれるのならばそれに越したことはない。
また……一方で嬉しいこともある。
「お貴族様、いえ、敬虔なる信徒プレイスよ。此処は懺悔室。罪を懺悔し、しばしの安らぎを得る場所です。懺悔をしましょう。例えば……幼少期から親しくしていたシスターを好いてしまったということとか」
本来、シスターが懺悔室に入ることは許されない。罪を聞くのは神父の役割であるからだ。しかし、この教会に神父はいない。いや、名義上の神父は居るのだが、その神父は最初の一度、姿を現したきりなのだ。それ以降、会った事はない為、顔すら覚えているかどうか……。
この教会はシスターのみで運営されている。特段孤児院を併設しているわけでもないので祈り、掃除し、たまに来る信者の話を聞くだけの生活だ。正直なところ、退屈極まりないのだがそれでも楽しみというのがある。
懺悔室には男女二人。一方はシスターであり、もう一方はお貴族様である。
この太っちょお貴族様はシスターが幼少期の頃から多額の寄付を教会に施してくれた聖人である。今や、生活の大半をこのお貴族様に握られていると言っても良い。この食っちゃ寝祈りの生活は嫌いではないが退屈で、このお貴族様はそんなシスターを気に掛けてくれるのだ。欲しいものは誕生祭に買ってくれるし、お菓子はねだれば次の時には持ってきてくれる。まるで親鳥と雛鳥だ。シスターはそのことを自覚しているので、どこまでも自分本位になれる。
ゆんゆんと体中から溢れ出る養ってオーラは留まることを知らない。
本来お貴族様には慇懃な態度を取らねばいけないが、その点で言えば指を咥えて見上げていたころからの付き合いなのでそんなものはとうの昔に消え去った。なんなら、シスターとしてこの教会を管理する前は、お腹の贅肉を揉みしだいてダル絡みしていたくらいだった。
シスターはお母さんのお腹の中に、遠慮とデリカシーを置いてきてしまったのだ。
「幼少期の頃からその欲を持て余し、あまつさえ多額の寄付金によって逆らえなくすることに罪悪感を覚えている……相違ありませんね?」
端的に言えばシスターは調子に乗っていた。確かに、この太っちょお貴族様の容姿はそこまで良いものではない。お腹は出ているし、顔周りも贅肉がついている。ストレートに言えば豚さんだ。あまり外に出る事がないのか肌はなまっちろいのもあって白豚さんである。しかし、昨今の流行りとして話題になる騎士顔(騎士のように身体を鍛え上げ、顔のどこかしらに傷があるような男性を指す)よりも、この太っちょお貴族様の方が好感を持てた。
この太っちょお貴族様は、シスターが成人する今の今まで一切手を出さなかった。その点についてはまた別のもやっとした気持ちもあるが、それはそれとして幼少期の頃から好かれていることがわかっていた。なのに、手を出さず、お金を与え、生活をより良くしてくれ、あまつさえ欲しいものも機会が合えば買ってくれる。
見た目は兎も角、好意を持つなという方が無理な話だ。それに遠慮を大暴投した話しぶりだが一シスターとお貴族様。逆らえると思う方が難しい。世間一般で言うところの思春期に漠然と『この人と結婚するんだろうなぁ』と思っていたシスターからすれば、成人の儀を迎えた今日は『ようやく来たか』という想いの方が強かった。
シスターさんは狩りを終えようとしている。
「汝、敬虔なる信徒プレイスよ。貴方の罪を神は許すでしょう。その想い、その献身は今、私が成人の儀を迎える事が出来たということで証明されました。神の教えではシスターの婚姻は認められています」
あとは刈り取るだけだ。何年、何十年待ちわびたことか。シスターにとってこの日はずっと待ち望んだ日でもあった。なにせ、自分の人生に悉く関わってくるクセに今更ポイというのも“ない”話だ。確かに、幼少期の頃から洗脳のようにしてきたのならそれは大罪だ。しかし、この太っちょお貴族様は健全に成長を支えてきた。親のようにも思えたが、それ以上に隠せてない不器用な愛情を何十年も見せつけられてやきもきしないワケないのだ。
シスターがこのお貴族様と婚姻を結んだ時、シスターは貴族姓を得る。貴族の権力を振るえるわけではないが、それでもこの太っちょお貴族様と対等になる事が出来るだろう。そうなれば常日頃ダル絡みする事が出来る。一週間に一度か二度が毎日になるのだ。この教会の管理については不在の神父に丸投げすればいい。お貴族様に逆らえる神父は居ない。
よって、この日はふくふくと育てられてきたシスターさんの出荷日だ。シスターは少なくともそう思っていたし、間違いないだろうとも思っていた。
だから、懺悔室の窓越しの太っちょお貴族様の言葉が信じられなかった。
「シ、シスター、シスターメレア。私は今日をもって礼拝をや、やめようと思う。寄付は今後も続けるが、君の成人を見届けた今、礼拝は邪魔になると思って……」
この日、シスターは初めて、神を呪った。