自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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風邪っぴきで熱あるけど毎日投稿は続けるぜ!前話とか前前話とかは熱に浮かされてたので後々修正しますん。失礼…!


心の中のギロチンセットが静かに刃を研いだ気がした。今この瞬間にも落ちてきそうなヒリつきがシスターの心を焦がしている。

「ぐ、うぁ……」

 

 シスターは酷く呻いた。それは放置していたありとあらゆる面倒事が足を掴んで引きずりこんでくるような重さを伴っていたからだ。今まで自分がしでかしてきた事が今日という日を待ちわびたようだった。世界に味方は誰一人も居ないのではとすら思った。それはまるで、夏休みの最終日に終わらせた宿題を意気揚々と提出しようとしたところ、やってない宿題がランドセルの奥から出てきたような……そんな絶望感がシスターを支配していた。

 

「如何ともしがたいが……しかし、どう対処すればいいか……」

 

「話し合っている場合ではない!今この瞬間にも被害が出ている可能性もある!それにあの魔物達が無害だと決めつけていた私達にも責任はあるだろう!」

 

「だが倒せるとでもいうのか!?肉を裂いても忽ち再生し、頭を分離させてもひとりでに戻るぞ!生死すらあやふやだ!」

 

「だからといって対処しないということにはならんだろう!貴族として示しがつかないぞ!この有事に動かなければ民からの信頼は地に落ちる!何のための貴族だとな!」

 

「だが……!」

 

 会議は低迷していた。それもそのはず、魔物達が反乱を起こすという重大な事件が起きていたからだ。今までそんなことをしてこなかった魔物達が、次々と街路の封鎖に精を出している。それは魔王が動き出したからであり、デートのためにおじさんを閉じ込める為だとはだれも気付くまい。そう、魔王であるシスターを除いて……

 

 シスターはおじさんに連れられてこの会議に参加している。おじさん的にはようやくストーリーが始まるのだから、主人公ポジションとして意見を聞きたかったのだ。魔法と呼ばれる力も使えることから戦力としても申し分ない。娘同然のシスターを前線に出すのはとても遺憾の意を示したいが、旅に出すよりもよっぽどよかった。

 

 そうした心からの行動がまさか、本人にとっては自分を追い詰める処刑場になるとは思いもしていなかった。唐突に呼び出されたかと思えば、ギロチンにセットされたシスターは酷く絶望している。もちろん、比喩でそのようなことにはなっていないことに留意してほしい。心の中のギロチンセットだ。

 

「一つ、良いだろうか」

 

「プレイス……何か案が?」

 

 おじさんが静かに手を上げ衆目を集める。これでもおじさんは貴族達に一目置かれている。それはある種の尊敬であり、忌避であった。おじさんが領主を務めている街は、他国と国境を面している場所であり、いの一番に被害が出るであろう場所だ。そこを任されて、今日まで死なずに生き残っているという事実がおじさんの言葉に重みをもたせる。なぜなら、国境の向こう側の国が虎視眈々と傀儡にしようと賄賂や裏の交渉に誘いを掛けたり、それが無理なら“不慮の事故”が起きる。その全てを搔い潜ったおじさんは歴戦の政治家であったから、誰しもがこう思っていた。

 

 いい案でなくとも責任は全ておじさんにある。

 

 そう、貴族とて自分可愛いというもの。この会議は誰が責任を持つのかという一点で暗礁に乗り上げていたのだ。だがここでおじさんが手を上げたということは、責任をすべておっ被ってくれるということだ。人、それをスケープゴートあるいは責任転嫁ともいう。ものの見事に羊さんに祭り上げられたおじさんはしかし、覚悟を持った羊さんだった。

 

 

「今回の魔物達の反乱、私は裏に何者かが居ると考えている」

 

 

「「「「おぉ……」」」」

 

「ヒュッ………」

 

 心の中のギロチンセットが静かに刃を研いだ気がした。今この瞬間にも落ちてきそうなヒリつきがシスターの心を焦がしている。

 若干一名、息を詰まらせた気もするが、それでもおじさんの言葉に周りの者達は同調した。何故急に魔物達が動き出したのか?という問いに裏に何者かが居ると考えた方が筋が通るからだ。そして、その裏にいる“何者”は、すぐ横にいることに気づかない。なんならおじさんはその“何者”をとある場所にて未だニートである男だと思っている。

 

 綺麗にすれ違っているおじさんだが、シスターもまた綺麗なすれ違いをしていた。

 

(やばいやばいやばい……ば、バレてるっ、バレてる……)

 

 顔面蒼白を通り越して土気色の死人顔になっているのが件の魔王である。ただおじさんとデートがしたい為に街に続く街路を封鎖しおじさんを閉じ込めようとした前科持ちだ。しかし、シスターは神に愛された聖女であり、もしそのような大罪を犯せば神が黙っていないだろう。恐らく……いや十中八九天罰ものだ。だが現実問題そうはなっていない。ということは神はまだシスターに情状酌量の余地があるとみていると考えられないだろうか?

 

 何分、シスターは人への被害を入念に言い聞かせた。誰も傷つけてはいけないという聖女の理念に沿ったわけではなく、私情で誰かに危害を加えた時、責任を持てないからだ。それは聖女らしい優しさではなく単なる保身だった。だが、その保身が、その中途半端な我が身可愛さが、シスターをギリギリのところで情状酌量に抑えたのだ。

 

 だがしかし、今この場を断罪の場だとおもっているシスターには処刑場から逃れる術はない。魔法等使おうものならもう人里には居られないだろう。指名手配……で済めばいい方だ。討伐隊を組まれる危険性さえある。なんとか乗り切らなくてはいけない。この処刑場を、自らを断罪する法の刃を。

 

「み、皆様、私がその魔物達の反乱の原因、突き止めてみせます」

 

 シスターは先手を打った。犯人は現場に戻るというように、犯人自らが証拠隠滅すれば問題ないのだ。魔物達と談合していい感じに倒されて正気に戻ったような演出をしてもらえばいい。そうすれば、シスターの特別性と証拠隠滅、その両方が完結できる。天才的だ。人という生き物は不思議なことに追い詰められた時に限って本領を発揮する人間がいる。シスターも同じタイプであり、追い詰められたときに悪知恵が回るタイプであった。

 

 だがしかし、その焦りやバレたかもしれないという恐怖の顔色が逆効果となってしまった。

 

「いや、シスター……いえ、聖女メレア様。貴女様の手を煩わせるわけにはいきませんよ。そのように恐れながらも必死に民の為に動こうとするその姿で十分でございます」

 

 ぬかった……!シスターは口内で頬の内の肉を噛んだ。そうではない、そうではないのだと言おうとするのを気合で飲み込む。自分自身の顔色と発言が反対方向に取られてしまった。つまり、恐怖心に耐えながらも、民を救おうとする聖女の姿勢だ。本性は犯行現場に証拠物を忘れてきてしまった犯人が急いで取り繕って取りに戻ろうとするなんて誰も知る由がない。知る由もないから、人は都合のいいように受け取る。そして、首を絞めるのだ。シスターの首を。

 

「い、いえ、私は聖女です。民が困っているならば動くのは当然のことで、それがここまで育ててくれた恩を返す為でもあります。私はこの国の人達のおかげで健やかに育つ事が出来たのですから」

 

 シスターは心にもないことを言った。いや、訂正しよう。育ててくれた恩はある。それはおじさんのみであり、他の有象無象はどうでもよかった。だが、おじさんを含んだ街全体として見た時におじさん以外の人の手がなかったかと言われるとそうではない。その極1%にも満たないものの為に頑張ると言えばそうだろう。

 

 シスターは拡大解釈することで先ほどの発言に正当性を持たせた。大事なのは嘘ではないという事。本当のことを言ってしまえば幻滅されるかもしれないが、だからといって嘘を言うのも違うだろう。それは他人を傷つける非道な行いだ。

 

 シスターに言わせてみれば、優しい嘘だなんて嘯くことは詐欺だ。真の詐欺師は嘘ではないが本当の事ではない事を言って煙に巻く。いや、真の詐欺師ではないのだが……世界はたかだか一つ、靴紐を一つ掛け違えた程度でその先の人生が大きく変わることもある。それに則れば、シスターが詐欺師として大成していた可能性もあるだろう。だがそれはあくまで可能性の話であって、今聖女である自分とは関係ない。人がもし『○○だったらな~』というのと一緒だ。あり得た可能性に想いを馳せることは罪ではない。

 

 シスターはとりあえず自分自身が詐欺師ではないことを自分の心の中で立証した。誰にもわかることはないこの裁判で、シスターは勝訴の紙を掲げたのだ。それが現実逃避だと言われようとシスターにとっては必要なことだった。自らの正当性の為に戦ったのだ。つまりこうとも言い換える事が出来る。

 

 ここまで自らの正当性の為に戦った者が魔王であっていいわけないのだ。だから、シスターが魔王行為に及んだのはそれを指示する別のよからぬ者が居て、それは未だシスターの心の中に隠れ潜んでいるかもしれない。

 

 シスターがよくわからない自己弁護と迷走の末、唐突に別人格の概念を持ち出してすべての責をその何も知らない別人格に押し付けようとしたとき、事態は動いた。

 

「この件、私に任せてもらえないだろうか」

 

「プレイス……もしや!?」

 

 おじさんは感動していた。ロクでもないロクでもないと散々言ってきたシスターが今ここではちゃんとストーリー通りに頑張って旅に出ようとしている。子供はいつの間にか成長していて、それを見る事が出来るのは非常に稀という言葉を思い出した。それなら、おじさんは運が良かった。娘の成長をこの目で見る事が出来たのだから。

 

 おじさんは親として、覚悟を決めた。いつまで経っても可愛い子だから、甘さを捨てきれないのはおじさんの罪だ。だがそれでいい。子の罪は親の罪という言葉がある。それは子供に起因する過失は親にも責任があるとする見方だ。見捨てる親も居よう。ロクでもない育ち方をしたと嘆くかもしれない。だが、たとえ出来の悪い子だとしても一片でも親としての情があるというもの。あなたに良い子に育ってほしいという願いが今この時叶ったならば、親としては本望だ。

 

「あぁ。私が前線に出よう。貴族がいざという時動かなくては誰が動くというのだ。魔物達の反乱は私の街の周りで多く起こっている。ならば、そこを治める私が出るのも当たり前だろう」

 

「……死ぬかもしれないのだぞ」

 

「無論、承知している。私の代わりなど幾らでも居るだろうからな。せめて、足止めくらいはさせてもらおう」

 

 おじさんは他の貴族の手前、潔い啖呵を切った。だが内心は酷く情けないものだったことを記しておく。おじさんは別に戦ったことなど一度もなかったし、誰かを殴ったことすらない。そんな喧嘩すら未経験のおじさんに一体何が出来るというのだろうか。

 

 だがおじさんには普通のおじさんと違って一つだけ違う点がある。前世という違う世界の記憶であり、そこにはこの世界を舞台にしたゲームをやっていたのだ。普通の好き程度だったので設定全てを読み込んでいたわけではない。だが、それでも使える知識はあるというもの。

 

 おじさんはおじさんだけに備わる前知識を頼りに宣言した。

 

 

「私に、良い考えがある」

 

 

 後ろで過呼吸になって死にかけている魔王は見なかったことにする。

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