自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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先週の競馬で負けたので教養回です。月曜に出したかったけど熱でね…おそくなっちゃった。みんなもやりすぎには注意、しよう!
………今週のレースに限らず、武豊が乗ってれば賭けるみたいなとこありません?(無謀な信頼)


この時、シスターの目は現代で言うところの$のようになっていたという。

「いけ──ッ!差せッ、差せッ勝て──ッ!!!」

 

 私は間違っていない、私は間違っていなかったのだ。脳汁が脳髄から全身にと駆け巡る感覚、熱い血潮が全身に快楽を運んでいく。神が自身を祝福し、すべての生命が自らを礼賛するような声さえ聞こえる気がした。

 

 迫真の絶叫……命さえ焦がしてしまいそうな熱を吐くのは他でもない聖女様であった。

 

 もしも、世界のすべてが間違っていたからといって正しさを叫ばない理由にはならないし、叫ばないのは勿体ないのだ。人は正しさを信じる生き物だ。それは前世おじさんが危うく痴漢冤罪で捕まりかけた時も同じである。自分はやっていないという叫びは心の奥底から出たもので、それは純然たる事実だった。しかし、世界のすべてが間違っているのだから、その事実は虚偽のものとして処理され、危うく豚箱に詰め込まれそうになったことがある。そこから、おじさんが自由を謳歌出来たのには偏に運が良かっただけだ。

 痴漢は悪だが痴漢冤罪に悪は居ないと思っていたおじさんだが、痴漢冤罪で小銭を巻き上げようとする女子高生が居ることをその時初めて知った。すんでのところで計画がバレたJKの白状によっておじさんに前科がつくことはなかったのだ。ただそれだけの過ちによって、世界のすべては間違いとされたのだった。

 

 こうしたように、世界のすべてが間違っていたとしてもそれが正しさを叫ばない理由にはならないから、シスターは今日のレースの勝利を叫んでいる。シスターの自らの熱で茹で上がった脳内では完璧な計画が打ち立てられていた。今日のレース、4枠がアツい。馬体のデカさもそうだが重馬場をものともしないスタミナとパワーがあの馬にはある。他の馬は小回りやテクニックを利かせるタイプが多いから、唯一といってもよかった。紅一点ならぬパワー一点である。だからこそ、この馬に賭けてみようとシスターは思ったのだ。

 

「私の選択に間違いはないのだ──ッ!!!」

 

 すべてが間違いだらけの聖女は謳う。世界は美しく、選択に間違い等起こりようがないのだと。命を焼け焦がすほどの熱はそのままにシスターは世界の美しさと生きることの意味を叫んだ。必要なことだと思ったからだ。

 

「人生に意味を探すなッ!人生に意味を求めるなッ!自分自身が人生だと叫べる人生にしろ─ッ!世界は美しく、世界は素晴らしいのだからッ!」

 

 人生に意味を求めるのは非常にセンスのない(ナンセンス)ことなのだ。人生に意味を探すことは非常に無意味(ミーニングレス)なことなのだ。貴方の人生を形容できる言葉は貴方しかいない。貴方の固有名詞がそのまま貴方の人生を表すような人生を生きなさい。例えば、光源氏計画と言えば光源氏が行った子供を自分好みに育てることだと漠然と理解できるだろう。例えば、ランボーという名前からは暴力的な要素を連想するかもしれない。それらと同じように、貴方の人生を形容する時、貴方の固有名詞でしかそれを表せないような唯一無二の人生を生きなさい。

 

 シスターは勢い余って、非常に刺激的かつ非常に徳のあることを言った。それは例えるならシスターの本名、メレアがそのまま『競馬にドはまりして金を溶かしながら一喜一憂し、その痴態のままに叫ぶ聖女』という意味で扱われることを許容するような物言いだ。現代風に言うなら「アル中カラカラ」が近いかもしれない。「アル中カラカラ」と言われて思い起こすのは一人だろう。大体それと同じである。

 

 お付の下女はため息を吐いた。こんなところ、騎士には見せられなかった。いや、一回、懇親会で見せたことがあるのだが、シスターの記憶処理によって夢として扱われた為にノーカウントだった。もし覚えていたとしても幻滅しないだろう。騎士はお手軽に聖女をNTRされる悲しい存在もとい純朴な存在だから、信じたいものを信じ、信じたくないものは信じないという特別な力を持っている。人はそれを盲信というかもしれないが、相手の嫌なところに目を瞑ることが果たして悪なのだろうか?それが悪だとするなら世のカップル、夫婦は悪と言えてしまう。夫婦円満の秘訣に期待しすぎないとあるように、相手の悪い所には目を瞑ることは今後生活していく上で重要なファクターとなり得よう。

 

 結論から言おう。人生に山あり谷ありとあるように。損をすれば得するように。不運が続けば幸運が来るように。シスターは今日のレース勝つことができた。だがこの勝負、あまりにも4枠に賭けたものが多かったようで配当は雀の涙であったことが不満の一つである。だが、競馬に限らずギャンブルというのはそうした罠を張る。勝てた人間にこう思わせるのだ。次も勝てるかもしれない、ツキが回ってきたと……と。

 

 ギャンブルの悪魔がほくそ笑む。嘲笑(ちょうしょう)嗤笑(ししょう)…様々な笑みを浮かべ、手をこまねている。お前もこっちへ来い、お前も一歩踏み出せと。

 

 シスターは聖女にたる素晴らしい人格を持っている。優しく純粋で、誰かを信じる事ができるという素晴らしい資質だ。だからこそ、シスターはその誘いに乗る以外の選択肢はない。これは聖女の資質のせいなのだから仕方ないとして……彼女は一歩、また一歩と沼へと沈んでいく。誰かに手を引っ張られているような動きをしているが、果たして本当にそうなのだろうか。引っ張られる手の先には誰も居ない。引っ張っている人は誰も居ない。何もいない虚空を指さして笑っているのだ。この人が言うから仕方がないのだと。それがギャンブルにハマってしまった人間の作り出した幻想か、はたまた人間の心の内に潜む悪魔なのか、それはだれにもわからない。ただ一つ言える事はもう戻ってこれないということだろう。人は一度快楽を知ってしまったのなら元に戻ることは難しい。一度上げてしまった生活水準に慣れきってしまった人間のように、一度浸った快楽、快適の沼から抜け出すことは出来ないのだ。

 

 

 その後、シスターがどうなったのか……ギャンブルというものの恐ろしさを知ってほしいために時間を早送りにしよう。

 

 

 ……一週間後

 

「差すなッ!?差すな──ッ!なんっ、なんでそこで抜くんだよッ!」

 

 

 ……二週間後

 

「いけいけいけ!差せ!差せよッ!そこまで頑張った意味はなんだよッ!」

 

 

 ……三週間後

 

「クソッ!魔物達行け!行け行け!乱入だ乱入だ!馬を怖がらせろ!全員負けにしてやるッ!」

 

 

 ……そして、一か月後

 

「ば な な」

 

 ぬとねの区別がつかなそうな顔をしていてソファに溶けているのは間違いなく聖女と言われるお方である。悲しいことに今月のお小遣いに限らず来月、再来月のお小遣いさえ使い切ってしまったシスターはFXで有り金全部溶かした人と同じ顔を晒していた。また、現在競馬場は一時閉鎖となっている。魔物達が乱入してきたからだ。シスターの指示はすべて白昼夢で片付けられたものの、魔物達が乱入してきた事実には代えられない。馬達も怖がっているということでいつ再開するかさえ未定だった。

 

 ちなみに捕捉しておくとこの世界にバナナはない。バナナのようなものはあるが、別にバナナの名称は充てられていない。なのでシスターはこの世に存在しない言葉を受信したことになる。口からまろび出た言葉が得てして他の世界につながってしまうのは非常によくあることだった。

 

 だがしかし、ギャンブルのし過ぎでお給料制からお小遣い制にシフトしてしまったシスターが、こんなところで折れるわけにはいかないだろう。聖女は民の不安を取り除き、希望を齎す存在なのだ。自分のお財布に希望を齎せなくて何が聖女か。それがたとえ自業自得だとしても、人は過ちを繰り返す生き物だから、その過ちから何を学べたかが重要なのである。尤も、その理論で行くとシスターは何も学んでいないことになるのだが。

 

 シスターはたちまち起き上がり、急激にやる気を充填した。影で光学迷彩を施した魔物達が必死にポンプ的な物を繋げてシスターに何かを供給しているように見えるが、誰にも見えなければそれはいないのと同じである。

 

 風船のように膨らんだシスターが、突如として下女に命令した。

 

「支度を。此度の戦争、私が何とかしましょう」

 

 下女は一瞬、聖女が誰かに成り代わったのかと思った。それほどの代わり身ようは下女にドッペルゲンガーの存在を疑わせるには十分だった。しかし、シスターとて聖女だ。人を救いたいという気持ちはある。

 

「国の為に傷ついた兵士を癒さずして何が聖女ですか。民を守る兵士は民に区分されないというのはあまりにも詭弁です。すべての者に救いを齎すことが聖女の役目であるならば、私が行かねばいけないことでしょう」

 

「聖女……様………!はい、ただいま準備いたします!」

 

 このシスターの覚醒具合に就労意欲が二重底を突き破って底についていた下女は一気にやる気を出した。覚醒したと思ったのだ。だが、諸兄諸姉たちも察して居るかもしれないがそう簡単にニートが更正できるならだれも苦労はしてないのだ。それと同じように、そう簡単にギャンブル中毒が治るなら少なくとも片親と呼ばれる世帯は大きく減少しているだろう。

 

 聖女は影でほくそ笑む。近くで集音器らしきものを構えた魔物が声を拾った。

 

「戦争経済……ッ!名誉と金の二重所得ッ!」

 

 この時、シスターの目は現代で言うところの$のようになっていたという。




みんなもギャンブルはほどほどにね!
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