自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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うっかり原作崩壊編:簡単なことでNTRされるからスペランカー聖女とさえ呼ばれているのだ。

 風雲急を告げる……!

 

 おじさんとシスターの胃をしめやかに爆発四散させたその一報はおじさん達だけではなく上のお歴々や下々に至るまでの胃を爆散させた。日本と韓国、中国がそうであるように、イギリスとフランスがそうであるように、隣国関係というのは大変に仲が悪いものである。自分の国を繁栄させようとすると決まって領土の問題に行きつくから、領土拡大を妨げる隣国を邪魔に思うのは当たり前なのだ。飛び地、植民地は人を含めた資源を搾り取るなら良いのだが繁栄させようとすると途端に難しくなる。手が届く範囲で管理出来た方が成長もさせやすいというもの。

 

 お隣の国は所謂帝国と言われている。もちろん俗称だ。正式名称はあるけれど、皮肉も交えて帝国と言っているだけに過ぎない。帝国とは名ばかりの共和制だというのに。そんな帝国からお偉方が来るという。一体どういう風の吹き回しか、悩みに悩んだおじさんはシスターを視界に入れてはたと気づく。頭を抱えた。気づいてしまったからだ。

 

「聖女かぁ……!」

 

 聖女だった。

 

「私かぁ……!」

 

 聖女だったのだ。

 

 そう、一体どういう理由で帝国がこちらに来るのか。なんせ今までバチバチに睨みあっていたのだ。いきなりおててを繋いで仲良くしようと言われても、まず相手の正気を疑うだろう。もしかしたら手を念入りに調べるかもしれない。爪の一枚、二枚、いや、五枚くらい剥がしたところで許されるだろう。私怨が入ってるかもしれないが、それを咎める者は誰も居ない。検査は入念にした方が良いからだ。爪の隙間に未知の病原菌がある可能性が否定できない以上、検疫は出来るだけ厳重に行う必要がある。別室に隔離して漂白だ。もしかしたら人体に毒かもしれないが、これは検疫なのだ。未知の病原菌を国内に持ち込ませないための必要なことである。うっかり死んでしまえばいいという想いはないわけではない。

 

 それに、かかりつけのお医者さんがおざなりに出した診断書よりも、セカンドオピニオンの方が信用できるというもの……。人間は心配性なのだ。心配しすぎるくらいがちょうどいい。そもそもこんな一大事を上に報告しない奴がいるだろうか?居るとするなら即刻名乗り出てほしいとおじさんは思っている。そして首がちゃんとつながっているかどうか確認するだろう。頭部と胴体の接着が甘い可能性があるからだ。うっかり外してしまうこともあるかもしれない。ただそれは確認の為の不慮の事故であって故意ではない。

 

 なにはともあれセカンドオピニオンに期待したおじさんだがその期待はすぐに医療に対する絶望へと変わった。

 

『あとはそっちでよろしく』

 

 端的に言うとそんな感じの書類が届いたのだ。さしものおじさんもキレた。上は一体何をやっているんだと。キレ散らかし、グッと頭に上った血を冷ますために水を一息で飲んでから一周回って虚無感に塗りつぶされた。

 

 実はこのお祭りの中、おじさんが務める国の真ん中で次の王様を決める選挙のようなものをしているのだ。なぜこんな時期にやるのか?それもシスターが居たからと言うのが大きな理由の一つになる。

 

 シスターはやんごとなき身分の人である。世が世なら大体の人を顎で使える立場の人だ。そんな人が国境沿いの街というただでさえ危ない場所で育てられているのはそれ相応の理由がある。そのやんごとなき身分を祀り上げるどこぞのバカが寄り付かないようにするためであり、いざという時の帝国への生贄でもあった。だからこそ、成人して聖女としての立ち位置を確定させ、お祭りという絶対に聖女を動かせない今この時期が選挙の狙い目だったのだ。対抗馬を増やしたくなかったから、対抗馬が拘束されている間にやってしまおうという魂胆である。

 

 今、おじさんの国の真ん中は泥沼の政治闘争で酷いことになっている。それこそ、隣国のお偉いさんが祭事に参加するという外交ビックイベントを放置するほどに……。端的に言って国として終わってるが、そもそもやんごとなき身分の子供を生贄として国境沿いに配置する国であることを忘れてはいけない。

 

 それはさておき、セカンドオピニオンが泥沼の『ド〇ターX』バリ院長闘争的政治闘争をしているのでロクな診断書が送られてこなかった。残念ながら大門未〇子は居ないし、そんなレベルのフリーランスの外科医が居るワケない。もし、そんな人材が世に潜んでいてこの時接触して来たらまずスパイを疑うだろう。都合が良すぎるからだ。

 

 だがおじさんは願わずにはいられなかった。存在しない大門〇知子を探し続けていた。前話でも行ったように願うことは罪ではないのだ。願うことも罪とするなら、サンタさんは犯罪教唆になってしまう。何も知らない子供たちに願うという大罪を犯させたからだ。ついでにそれを教えた大人も捕まえるかもしれない。

 

 話を戻そう。帝国の狙いは聖女様だ。もちろん帝国とて国境沿いに設置させられた生贄の存在は知っていたハズだ。だが旨味がなかったのだ。この国の美味しい所と言えば領土しかなく、かといって攻め入っても収支は若干マイナスだ。生贄に取ったところで特にやる事もない。せいぜい傀儡政権の足掛かりくらいだろう。

 

 だがそんな生贄が突如として魔法(宗教上神力)を携えて聖女として祀り上げられた。これは帝国としても驚きだっただろう。大した価値なんてないだろと鼻で笑っていたカードゲームの売値が割ととんでもないことになっていて、昔遊んでいたカードゲームだからと押し入れをそこそこ必死で探すように手を伸ばしてきたのだ。

 

「私……連れてかれるんでしょうか」

 

 シスターは不安げだ。それは言葉にせずともおじさんとて同じことだった。別ベクトルでの不安であり、絶対に阻止しなければならないという意思に満ち溢れているのだが。

 

「大丈夫だ。大丈夫」

 

 必死に励ましながらおじさんは覚悟していたことが始まったと思った。即ち、原作だ。

 

 原作において帝国と言うのは中盤登場する国であり、例に漏れずNTRパーリナイの聖地とも言える。騎士と聖女が帝国に呼び出され、魔物の動乱について詳しく聞くことになるのだが……やはりNTRされる。基本的に聖女を一人にするのはバッドエンドだ。なんなら二人でいる時も選択肢を間違えるとバッドエンドになる。騎士の目の前で聖女の痴態を見せられるスチルは物悲しささえ感じさせるだろう。なにせ、その数分前にまともな顔をしていた聖女が数分で即落ちしているからだ。きっかり3分で落ちていることから、カップラーメンとさえ呼ばれている。固めが好きなプレイヤーからは不評だ。なぜなら固めくらいでスチルを止めると竿役の汚いシーンで止まるからだ。誰が汚い男の汚い竿を見ながらラーメンが食いたいというのか。そもそもNTRシーンでラーメンを食べていいわけないというご指摘については耳を塞がせてもらう。

 

 そんなこと言っているとこの先のNTRには耐えられない。簡単なことでNTRされるからスペランカー聖女とさえ呼ばれているのだ。実際に特定のシーンで転ぶと後ろにいた聖女が誘拐されるというイベントが起きる。もちろんNTRだ。聖女を迷子の子供よりも見ていないといけない。噂では首の座っていない赤子と同じくらいとさえ聞くこともある。一瞬たりとも目を離してはいけないあの緊迫感に近いとは経験者の一言だ。

 

 そんな原作展開だから、たとえあちらがやってくる……つまりはこちらに有利なフィールドだろうとおじさんは警戒を怠らなかった。油断した者は狩られるのだ。竿役の竿に。気色悪い言い方だが実際に聖女が狩られるので間違いはない。

 

 おじさんは必死に頭を回し、いくつか用意していた作戦を実行する決意をした。おじさんは前世の知識を持つ歴戦の社会人である。もちろん、接待役や会議の司会、忘年会の幹事でさえ熟してきたエリートだ。得てしてそういった種別は違えど人が集まる会というのは共通点がある。準備の8割が無駄になるが、残り2割がものを言うという事。

 

 どれだけ準備をしても報われないことがある。例えば予約したのに当日、欠席連絡してくるクソの上司、重要な会議で頭が真っ白になってしまったことで用意したカンペのほとんどが無駄になった一年目の後輩、そもそも店に来なかった接待相手……あらゆるイレギュラーがおじさんを強くしてきたのだ。

 

 おじさんは不安げな聖女さんに歌の練習を厳命した。この際四の五の言ってられないからだ。もちろん、フォローの用意はしておくが成功するに越したことはない。

 

「良いかい?もし、もし失敗すればシスターメレア。君も危うい状況になる」

 

「……わかった。わかったよプレイス……様」

 

 可愛い子だ。不安によって昔の素が出たのだろう呼び捨てはおじさんの緊張をふっと緩めた。シスターにとっておじさんの立ち位置が分からなかった時、どう呼べば良いかわからなかったから呼び捨てにしていた記憶、懐かしい記憶だ。それから成長して、シスターと貴族という職業で分けられた時シスターは呼び捨てをやめた。やめる前の懐かしい記憶が思い起こされたおじさんはぐっと片腕を上げた。

 

「任せなさい……聖歌や今の話、後でもっと聞かせておくれよ。否定なんてしない、気になるんだ」

 

 頭を撫でながら優し気に告げた。実際、前世の記憶があるおじさんとしてはシスターの言い分は一定の理解がある。前世で言う処の象徴的存在の扱いに誰しもが疑問に思った事はないだろうか?慣れない衆目に晒されるストレスだってあるだろう。自分は何もしてないのに、すごいすごいと言ってくる人を見て嬉しさや誇らしさよりも先に、怖いや不気味と感じるのも間違いではない。

 

 ぎゅっと抱き着かれるのを受け止めながら、おじさんは遠くを見た。嵐が来る……そう思った。

 

 

「………いい加減離してくれないかい?」

 

「や」

 

「………ねぇ」

 

「や!」

 

 昔を思い出したのか幼児退行したシスターが服を引き裂くレベルで引っ付いていたことは無残に散らかった服の破片から容易に理解できるだろう。半裸のおじさんは悲しい目で破片を見つめていた。

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