自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター 作:心理的継続性を持つおじさん
おじさんはおじさんというだけで罪になることもある。
前世、おじさんであった現在もおじさんのプレイス氏は語った。黒い背景に革の張られた椅子がクルリと回転し、膝元で手を組んでしたり顔で続ける。
「おじさんはね。まず、社会の立場を自覚するところから始まるんだ」
おじさんというだけで社会的風評は著しく低くなるからだ。
例えばの話だが……
とある女子高生が居たとする。スカートを履き、青春を謳歌している者だ。ふと、風が強く吹き、スカートが捲りあがったとしよう。その近くにおじさんが居た場合、それは一転して犯罪的行為につながる。これは事故だと言ったとしても、見た事実は変えられず、女子高生の下着を見る事は実際に犯罪であるから、もうどうしようもない。
おじさんの社会的地位はとても低い。それに加えて容姿が整っていなければさらに下がるだろう。世にルッキズム廃止を謳う者は多いがしかし、そうはなっていないことを理解するべきだ。『ただし、イケメンに限る』という言葉は逆でも罷り通る。すなわち『ただしブサイク、テメーはダメだ』ということ。
おじさんの自己評価が低くなるのは当然の事なのだ。あらぬ事故を防ぐためにも、おじさんは謙虚でいなくてはいけない。
それは世界が変わったとしても同じことだった。
ここはNTRエロゲが原作の世界である。世に下半身の方にこそ脳みそがある男が乱立し、あまりにも倫理観をなくした女性が今日もひっそり
世界は狂っている、当初、NTRおじさんを自覚したおじさんは叫びたかった。まず、自分の容姿が端的に言えば白豚であることにも絶望したし、NTRは二次元や妄想、漫画やゲームといったものに限るから良いのだ。現実でNTRが起きたなら、それはただの事件だ。普通に犯罪であるし、背徳感がどうのと言う前に人としてどうかという話であった。道徳はどうしたのかと、おじさんは懇々と説き伏せたかった。
おじさんが正しくおじさんを自覚したのはとてつもなく寒い日の夜であった。末端冷え性故に、足先を酷く冷やしたおじさんは寒さに耐える為、温かいものを飲もうとした。おじさんは貴族である為、使用人を呼んで作らせようとしたその瞬間だった。
使用人を呼ぼうとベッドから起き、声をかけようと身じろぎした瞬間、左足の小指が一瞬、ほんの一瞬、ベッドの角をかすめた。ただそれだけのことだった。
おじさんは一瞬にして走馬灯に加え、前世の記憶を思い出すほどの激痛を味わった。
人間は死にそうな瞬間になるとその状況をどうにかしようと走馬灯を見る。これは今までの記憶や経験から対処できる方法を模索するためだった。しかし、今世おじさんの走馬灯は大した記憶や知識はなかったので、なぜだか前世おじさんの記憶や知識を参照し始めた。
おじさんは前世を思い出した。悶絶し、苦しみ、嗚咽を漏らしながら。酷くみっともない姿だったのは言うまでもない。
さて、話を戻そう。
おじさんには好きな人が居た。前世の方ではなく今世の方だ。幼い頃に出会い、その幼い
恋に年齢は関係ない。
おじさんはそう叫びたかったが、前世のおじさんが社会的地位の低さで苦労したように、こちらの世界でも世間一般に幼い少女に恋をする成人男性は犯罪だった。
だから、今世のおじさんは前世で言うところの光源氏計画をした。幼い頃から自分を好きというように誘導しようとしたのだ。欲しいものは買い与え、生活に苦労しないよう寄付を行い、貴族に対する態度ではないシスターの物言いを甘んじて受け入れた。
その結果、シスターは働く意欲を一切見せず、かつ自分に依存する気マンマンだったことには甘んじて目を瞑るしかない。これは光源氏計画を実行したおじさんの責任だった。
だから、前世を思い出したからといって寄付等をやめるつもりはなかった。最後まで面倒を見るつもりであり、それは前世で言う処の『衝動で飼うことを決めてしまったペットに対するおざなりな覚悟』とも言い換える事が出来た。
前世を思い出したおじさんは、シスターをろくに言うことも聞けない駄犬としか見ていない……。
前世を思い出したことで、今まで下半身にあった脳みそが嘘のようにあるべき頭部へ移動した。前世を思い出す前のおじさんは、シスターを成人してから美味しく食べるつもりであったが、倫理観が突如、雨後の筍の如く生えてきた今のおじさんからすれば、成人したとしてもNGであった。
それは別に原作主人公とシスターさんがイチャイチャしているところを見たいというようなものではない。ただ単に、おじさんと結ばれるシスターを哀れに思っただけであり、結婚するならおじさんよりも年が近い男性とした方が良いという中年おじさんによくある思考だった。
とまぁ、おじさんの長ったらしい前置きはこんなところにしておいて……
「だ、だからね? シスターメレア。た、確かに、君に好意を抱いていないと言えば嘘になる。だけどね? おじさんよりも良い人はいっぱいいるんだ」
おじさんの活舌はすこぶる悪かった。それは喉周りの贅肉が増えたのもそうだし、舌が太ることでスムーズに動かなくなるからだった。だから、前世を思い出したおじさんはゆっくりと喋ることを心掛けている。
「はっ?」
女性の圧はとても怖い。おじさんは身に沁みて理解していた。それは女性に逆らうととてつもない圧力で攻め立てられた前世のトラウマがあるからかもしれない。
「い、いやね? だってそうだろう。君と私とでいくつ年が離れていると思う? 私は年若い君を残して逝くのは忍びないよ」
それに年齢の問題もあった。シスターとおじさん、どちらが先に逝くかと言われればそれはよっぽどのことがない限りおじさんだ。このNTRが蔓延る世界、未亡人がどれだけ垂涎の的であるかを理解出来ないおじさんではない。十中八九、いや100%そうなるだろうという思考があったから、おじさんは手のひらを返したのだ。後悔がないと言えば嘘になる。好意は紛れもなく本物だから。だからこそ、相手を想い、決断した。
しかし、それはシスターも同じであった。
「今更、今更ですか? ここまで…ここまで育てておいて?」
人が同じ言葉を繰り返す時、強調やその内容に強い不安を抱えていることが多い。情報を繰り返すことでそれが確かなものであるかを確認しているのだ。
よもやよもやだった。改めて世界の理不尽さを理解した気分だった。今更手を引くのかと感動すら覚えたくらいに。それはまるで、朝の占いが本当に当たったことに驚くようなものだった。夢かどうか、頬を抓るほどに。痛みが現実であることを教えてくれる。
シスターにとってはまさしく青天の霹靂だった。まず頭から外していた事が後方から猛烈な勢いで追走し、タックルをかましてきたからだ。だが、ここで折れるシスターではない。だてに成人するまでニートやってないのだ。親のスネを齧るためなら実力行使も辞さない。おじさんは親ではないがいずれそうなると睨んでいる。既成事実はこの世界でも武器足り得るからだ。
物覚えの悪い子供に言い聞かせるように、努めて優しく、しかし強い語調で言い募る。
「信徒プレイス……貴方は今一度理解した方が良い。神の教えには受けた恩は返す事が載っています。それは献身に対する返礼であり、感謝です。そう、これは感謝でもあるのですよ……感謝させろ」
凡そ、感謝を伝える態度ではない。高圧的な態度は想像を絶するほど冷たく、まるで死刑執行前に遺言を聞くような鋭利さだった。
「感謝の押し売りは……いけないことだよシスターメレア」
おじさんの必死に宥める姿はいっそ哀れだった。まるで刑務所の看守に慈悲を乞う犯罪者の様だ。それでも看守は止まらなかった。この蒙昧な犯罪者を教育せねばなるまい。
シスターは一旦、懺悔室を出て、また入り直した。神父の部屋ではなく懺悔する者の部屋へだ。懺悔室は狭く、片方に二人入るというのは無理がある設計だった。必然的に密着することになる。しかし、おじさんは必死に壁の端に張り付いて距離を保とうとした。たとえ、贅肉が触れていたとしても近づかないようにしたという事実は時として今後の人生を救うことになる。痴漢を疑われぬよう、両手を見える位置に上げて胸の前でクロスし、可能な限り腰を引くように。前世の集大成、それはまるで現代に蘇ったファラオであり、痴漢冤罪を防ぐ最終形態であった。
胸の前にクロスした両手は拒絶の意を表している……
しかし、やる気になってしまったシスターの前では障子の紙よりも薄っぺらいガードだった。両手指をうごめかせ、歩を進める。構図が逆な気がしないでもないが、きっとこれでいいのだろう。
シスターは自らに秘められた力のあらん限りを使用し、服を引き剝がそうとした。
絹のような叫び声が上がったのはその後すぐだった。それが誰の声であったかは言うまでもない。