自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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ランキング載ってたらしいですわね。ありがとうございます!


おじさんのヘタレを順当に継承したシスターはおじさんとのディープキスを想像し地に伏した。

「ふふんっふんっふ~ん♪」

 

 随分とご機嫌な様子のシスター。今日という幸運をずっと待ちわびていたのだ。

 珍しく休みが取れたのでおじさんが外に出ようと誘ってくれたのである。ちょうど、面倒くさい行事や挨拶などもなく落ち着いた時期であった為、誰からも邪魔されずにデートを楽しむ事が出来る。シスターは意気揚々だった。

 

 そんなわけで楽しくお出かけの準備をしている。シスターは世界三大美人と呼ばれる人達と同等くらいの美しさをしている。絶世といっても良い。そんな女性に成りきらない幼さが残る(かんばせ)には一抹の不安が浮かんでいた。

 

「……私は愛されているのか」

 

 神妙な面持ちで呟いた。そう、倦怠期だ。いや、倦怠期ではないしそもそも付きあうところまで行ってないのだが、それと似たような事が起きていると考えていた。

 

 おじさんは確かに自分の事を好いてくれる。だが、この好感度が今後も続くなどという甘えは捨てていた。脳裏に知らないハゲが囁く。良い物なら売れるなどというナイーヴな考えは捨てろ……と。それと同じように好意が一生続くなどという綿菓子よりもふわふわで甘い考えは捨て去るべきだと……!

 

 確かにそうだ。シスターは同意した。誰だか知らないがいいことを言う。おじさんとて人間だ。ずっと同じ感情が続くほど機械的ではなく、寧ろここ最近はとても人間らしい性格になっている。それはある種、子育てから解放されたこともあるのだろう。

 

 シスターが成人し、そして職業聖女となってから格段に接する機会は減った。それからというものの今まで聖女ちゃん様に向けていた意識が他に行くようになったのだ。

 

 それ自体悪いことではない。そもそも今までが恵まれていたのだ。それにかまけて甘えまくっていたのはシスターの落ち度だ。反省するべき点は反省し、次に生かす。

 

 シスターの良いところは自分自身を過大評価しないところだ。ここからどう立て直していくのか。それが重要になる。シスターは思案を巡らせた。

 

 話に戻ろう。おじさんとて人間なのだ。今まではシスターが[ガンガン行こうぜ!』なスタンスだったが一度、戦略を練り直す必要があるのではないか。

 

 即ち、『押してダメなら引いてみろ』

 

 シスターは“お清楚”な服を選んだ。本来、聖女という役職にある者はみだりに肌を晒してはいけないという暗黙のルールがあった。イメージ戦略の一環だろう。だが聖女ちゃん様はそんなものお構いなしに露出のある服装を着ていた。

 

 なにせ自分に自信しかない。妻と自分どっちを選ぶの等と槍玉に挙げられたら自分を選んでも致し方ないことだろうとさえ思っていた。自分よりも美しい人間は居るかもしれないが、それが自分の絶世の美貌を否定する理由にはならない。

 

 兎角、シスターの自信は天元突破していた。これは過大評価でもなんでもなく事実であったから余計にダメだった。よって、使える武器(外見)を使わない理由にならずガンガンに攻めていたのだ。

 

 だがそれも今日までだ。

 

 シスターが選んだ服は白のトップスにフレアスカートを合わせた落ち着きのある服装だ。ワンポイントで十字架のアクセサリーも忘れない。この服は先日血を吸いに来た吸血鬼擬きを札束で叩いて購入したものだ。どうやら帝国の流行服らしい。

 

 少しばかりサイズが違うのか胸が窮屈なもののそれすら織り込み済みだった。清楚だからといって強みを潰すのは愚の骨頂。強みを取り入れつつコンセプトに合わせる。それがおしゃれ番長ならぬおしゃれ聖女のパゥワーである。

 

 今日のデート、こちらからはガンガン行かない。あくまで清楚に、おじさんの三歩後ろとまではいかないが大人しくある必要がある。その為には……!

 

「『来なさい』」

 

 魔物の力を借りる必要がある……!

 シスターは一番仲のいいモモンガ似の魔物に恋愛が得意そうな魔物を仲介してもらった。その姿は下半身が鳥……それも一般的な鳥類の下半身ではないダチョウの胴体から人間の胴体が生えているような魔物である。

 

 この魔物、名称に則るならばマーメイド、人魚になる。なぜ下半身ダチョウが人魚になるのか。それは魔物達の理屈に則るならば海以外にも空には果てしない宇宙()が存在し、その宇宙()を航行可能な生物となるとそこに近い空を()()鳥類の派生形となる。中でも陸地に適応したダチョウさんを模すというのは丁度空と陸の中間であるとみなす事が出来るのだ。人魚は魚と人の中間だ。それは言い換えると海と陸の中間種である。それと同じように空と陸の中間種が同じ名称を与えられるのは至極全うな理由だった。

 

 ハーピィではないのかと思われる諸姉諸兄が居るかもしれない。だがこのハーピィ、魔物達以外でこの世界に存在しており、鳥類の一種に扱われている。近縁はインコやオウムだ。よってハーピィの名を借りてしまうとあらぬ間違いが起きてしまう為このようなものになっている。

 

 さて、そんな空と陸の中間種であるマーメイドは非常に珍しいことに多少の人語を手繰る事が出来る。鳥類の進化は目覚ましく、その似姿を借りることで恩恵にあずかる事が出来るのだ。尤も、単語が精々である為ちゃんとした答えを求めるには不安が残る。

 

 だがそんな不安をすべて取っ払うほど、このマーメイドには力がある。

 

 予言と精神汚染だ。

 

 前者はその人の未来を数単語で伝えるというもので、精度はかなり高い。外れる理由があるとすれば同じ魔物が介入した時か、魔法が扱える者が関わった時だ。その為、ほぼ百パーセントで当たるといって良い。

 

 後者はその名の通り、精神汚染だ。人魚の声は人を魅了するというがそこまでの力はない。せいぜい、その声を聴いた者に存在し得ない記憶を植え付けたり、自我の境界線を曖昧にすることで自認を別の物に変更するくらいだ。自認が石ころになってしまった者は呼吸することすらしなくなるが、それも一種の暗示でしかない。

 

 そんなマーメイドは恋愛のプロフェッショナルだ。数多の人間の記憶や心を覗き、予言でもって人々を導き、その声でもって記憶を改竄してきた為、魔物達の中では人間に最も詳しいと言っても過言ではない。

 

「今日は……どうなりますでしょうか」

 

 さすがのシスターとて恋愛の専門家には敬語を使う。敬意を払う対象だ。その言葉には値千金よりも価値があり、世の女性たちがこぞって大挙するほどの力を持っている。

 

 御大の言葉を待つ。

 

「『でぃ、でぃでぃで、でぃ、ディー、ディー……ップ、ププピピプ』」

 

「ディープ……?」

 

 ディープ、深いという意味を持つ単語だ。深い……深い……?

 

「『キッ……キキキキッ、キーキキ、キッキキキッキキ』」

 

 何かを言おうとしている……!が、何を言おうとしているのかわからない……!

 マーメイドは鳥の似姿を借りることでその恩恵に預かっているがその恩恵はあまりに不遜なものなのだろう。劣化し、人間に備わる声帯すら満足に扱えない。そもそも人間の声帯は精神汚染の為のものであって発音に適しているとは言えなかった。

 

 それでも頑張って何かを伝えようとしている。コミュニケーションは相互の協力あってのものだ。片方が聞く又は伝える努力を怠ったとき、それは会話ではなく独り言になる。

 

「『ディーップ、ディップ、デデデ、デディー、ディーップキーキキッ』」

 

「はぅぁッ!」

 

 八木もといシスターに電流走る。

 

 ディープ、それにキと続けばそれはもう一つの単語しかない。男女の深い逢瀬の末にいきつくもの。仲のいい男女でもあまりやらないであろうその行為……!

 

「ディープキスだと……!?」

 

 シスターは絶句した。大いに言葉を失った。押してダメなら引いてみろと考えていたら、押して押して押しまくった末に押し倒せというようなアドバイスを頂いたからだ。さしものシスターも二の足を踏むことになる。

 

「そ、そそ…!そんなご無体な……!」

 

 シスターはひよった。今までおじさんの衣服をビリビリに破いたり、未遂だが襲ったりもしていたシスターには非常に驚くべきことに羞恥心が存在していたのだ。人前でそんな事できる勇気がないシスターは必死に縋りつく。人前でおじさんを全裸にしたことすらあるのにそれを棚に上げてだ。

 

「御大……!それは段階を踏みすぎではないでしょうか!もっと、もっとこう……!」

 

 何かを言おうとして何も出なかったシスターは声にならない音ばかりを発する。カともクともつかない鳴き声は次第に小さくなり、自分が想像しているものに自分の心が負けていた。残念なことにシスターはむっつりだ。そしてヘタレでもある。自ら展開した妄想に耐えきれなくなったシスターは蹲り、謎の鳴き声を上げるナマモノと化した。

 

 そう、血は争えない。たとえ血が繋がっていなくとも育てられた環境はそれだけ類似性を齎すものだ。おじさんのヘタレは正統に遺伝しているといえよう。アヒルの子はアヒルだ。たとえそれがハクチョウの生まれだったとしても、アヒルとして育てられた経験がなくなるわけではない。ハクチョウの血故に美しく飛ぶかもしれないが、うっかり『グァッグァッ』とアヒルの鳴き声を上げてもおかしくないのだ。

 

 それが血は争えないということである。それは肉体だけではなく精神にも言えることだ。血からは逃れられない。

 

 おじさんのヘタレを順当に継承したシスターはおじさんとのディープキスを想像し地に伏した。

 

 今までの襲ったりしていたのはなんだったのだろうか。それは親子のじゃれあいの延長線上のものであり、ちょうど親離れ出来ない子が成長してから、一緒にお風呂入ろうだとか一緒に寝ようとか言うのと同じことであった。心は未だ子供なのだ。たとえおじさんを全裸にしようと、水鉄砲で服を濡らす悪戯と同レベルの喜びしか感じていなかったのだ。

 

 そんな悪戯というには行き過ぎたことをする悪ガキは大人の世界に踏み込んで、泣いた。往々にして大人の性行為は子供にとって大きなトラウマを植え付ける要素になる。その派生にあるディープキスはシスターにとって頭をカチ割られるほどの衝撃であり、それを自分からする勇気などないシスターはひたすらに呻くしかなかった。

 

 しかし、御大は容赦しなかった。

 

「『ディーップ!!ディーー!!!ッププププ!!ディーップ!!!キキキキッキキイイイイイ!!!』」

 

 もう発狂の域に達している御大はそれでもディープキスというのをやめなかった。『ス』が言えないのは口を閉じて息を吐き出すような発音が難しいのだろう。魔物は呼吸を必要としないから、それに伴って言語を発するのがとても苦手だ。鳥類の恩恵に授かっている御大でも息を交えながら話すというのは大変なのだろう。

 

 兎角、予言は正確だ。それ通りに動けばほぼ確実に成功するだろう。だからといってそれをする勇気がいったいどれほどのものなのか。

 

「殺生な……!」

 

 おじさんのデートまであと数時間、果たして御大の圧力に屈するのか。それともあってないような羞恥心が勝つのか……。

 

 最も、おじさんにとっては理性のブレーキを爆破解体するような行為なので、どれだけ拒否されるかは想像に難くないだろう。親子でディープキスするというのがどれだけおじさんの社会的風評を傷つけるかを理解していないシスターさんは地面に伏せたまま、助けを求めるばかりだ。

 

「キスだけでも恥ずかしいのに……ディープ……!!ディープキスなんて……!」

 

「『キィィィイィ!!!ディーップ、ディーップ!!!!ディィィィップ!!!』」

 

 もはや怪鳥の絶叫になりつつある御大の叫びは部屋を突き抜け、シスターの住む屋敷にこだまする。この御大がおじさんの上位互換たるおせっかい仲人おばさんと同じようなものだとは今この瞬間、誰も知る由はないことだった。

 

 すなわち、余計なお世話ならぬ余計な下世話である。

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