自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター 作:心理的継続性を持つおじさん
「うぅ……!」
シスターは唸っていた。それは魔力切れの症状からだった。両手足を拘束され、猿轡を嚙まされている。熱に浮かされるように唸る姿は年相応に見えるだろう。尤も、それはあくまで外見だけで内実、怨念を溜めているに過ぎないのだが。
本来、人間の魔力が切れることはない。使う機会がないからだ。
すべての事には意味があるように、魔力という言葉にも意味がある。魔の力、魔というのは負の感情や悪い事を指す総称だ。魔力というのは実のところ、負の感情や怨念といったものを指しているだけだったりする。
人間の魔力が切れることがないというのはそのためだ。聖人君子がこの世に存在し得ないように、人間である限り極小でも悪性が尽きることはない。つまり、今のシスターは悪性が切れているこの世で最も聖人君子に近い人間という事になる。
唸っているのはこの世の無常と、心の内から生まれてくる悪性にダメージを受けているということだ。今この瞬間最も聖人に近いために、諸行無常に病んでいる。それは繊細な人間が考えすぎで自死を選ぶように、シスターもまた心を病みそうになりながら悪性を溜めて、通常状態に戻ろうとしているのだ。
シスターを魔力切れのまま放置してしまうと、繊細な人間のように自死に走ってしまうので拘束して悪性が溜まるのを待っているのが現状だ。残念なことにこればかりはどうにもならない。実はおじさんが近くに居ると心の拠り所を見つけたシスターがものすごい勢いで依存していくのだが、それをしてしまうと反動でおじさんがはじけ飛んでしまうので、おじさんも涙を呑んで隔離されている。此処で言うはじけ飛ぶというのは物理的、心理的な意味を含む。溢れんばかりの依存はおじさんをベアハッグからのバックブリーカーに移行してしまうのだ。
魔力の正体は負の感情だ。魔力を回復するという事はその身に悪感情を育てるということである。
シスターは自らの善性に焼かれながらも考える限りの悪行を思い浮かべた。
「(おじさんの髭を抜く……おじさんに出来たニキビを潰す……おじさんの髪の毛を抜く……毛根を半分絶滅させる……)」
順調だ。順調に悪性が溜まっている。
悪行のランクアップがそうであるように、人の負の感情は他者を要求する。本編の黒幕がそうであるように、世界を憎悪するには資質が必要なのだ。一般的な人間は誰かを恨むとき、他人を必要とし、それが身近であるほど恨みの具体性と確実性が強まる性質を持つ。
そばには魔物達が待機し、その手を握ったり、あるいはホワイトボードを使ってこの世を効率的に恨む方法を図示している。ポップに世界を滅ぼすような作戦と、その理由が描かれており、人間がいかに環境を汚していて、いかに人間が害なのかという事も書かれている。一歩間違えなくとも黒幕教育なのだが、それでもシスターには必要なことなのだ。
魔力の正体は負の感情で、残念なことにこの世界はNTRモノの世界だ。竿役と女性に目が行きがちだが、女性を寝取られた男たちがいることを忘れてはならない。つまり、世に怨念が尽きることはないのだ。
しかし、それらの負の怨念の源泉は寝取られた男達だ。残念なことにその性質さえも引き継いでしまう。
この世に蔓延る魔力の正体はネトラレた側の怨念ともいえるので女性に力を貸すことはない。近づくことさえ叶わず、手前で消滅してしまう。
よって、シスターは外部からの魔力供給手段がなく、自力で回復を待つしかないのだ。これが本編黒幕とシスターの違いである。本編黒幕は世に蔓延ったネトラレ怨念を使うことができる。まさに無限のエネルギーだ。NTRモノ世界でその怨念が尽きることはない。
それは寝取られた側の怨念は寝取った竿役にいかずに、他の人間へと向かうからだ。
自ら寝取る側になることでその恨みが晴らされる。それはもう寝取られた側になりたくないという気持ちとそもそも寝取られるに足るヘタレの性質故のものだ。
ネトラレ怨念達は本質的に竿役に逆らうことはない。
よって、本編黒幕はチャラ男が『オタク君見てる~?』というようにネトラレ魔力を体よく使うことができる。チャラ男は女を寝取ってそれに絶望するオタク君を楽しんでおり、オタク君側はそもそも不倫や不貞の証拠になるから訴えようという思考にはならず、唸りながら自らの竿を扱くことしかしない。つまり、オタク君も間接的にNTRに協力しているのだ。相互の協力なくしてNTRは完成しない。もはや間に女性を挟んだだけの歪んだBLみたいな関係性になっている。
そんなことができないシスターはやはり自らの悪性の回復を待つしかないのだ。また、魔物達も間接的にしか協力することしかできない。なにせ、魔物達は無限のエネルギーを持っているので、シスターのキャパシティが耐えられず爆散してしまうのだ。ちょうど、片手サイズのコップをナイアガラの滝に放り込むようなものである。コップに水を注ぐというレベルではない。大量の水の中にコップを投げ込む行為なのだ。
おじさんもまた部屋の外で両手を組んで祈っている。それはまるで手術中の娘を待つ父親そのものだが、大体間違いはない。
魔物達の黒幕講座は後半戦に移った。悪意の発露をより明確にするためにこの時代にはまだ早い近代教育を施している。悪意は知識によって発露する。無垢の悪意は成長し得ないから、成長するための餌をやる必要がある。
『これからの世に蔓延る思想と倫理』
そう銘打たれたホワイトボードには、いかに人間が愚かでかつ救いようがないかということが延々と記載されている。それを教えるのは角が生えた馬…ユニコーンさんだ。ユニコーンの名を冠する魔物は純粋、無垢の性質を持つ。純粋というのは濁りがないということだ。よってすべての濁りを許さない潔癖の魔物である。それは最も白く、最も黒いといえるだろう。
裏があるから表があるように、白いというのは黒があるから成り立つのだ。よって、白以外を認めないというのは白と黒の判断がつかなくなるということであり、白いキャンパスに一滴のインクが目立つようにこの世で最も悪性に満ちた魔物でもある。
ユニコーンさんは生粋の悪役だ。この世で最もどす黒い邪悪と言っていい。その白馬の見た目に似合わない真っ黒な心は、おじさんの関係性についても囁いてくる。
ユニコーンさんはバンッとホワイトボードをひっくり返した。こんなものよりももっと悪意を醸造できるものがある。そう言わんばかりに反対のホワイトボードに書かれた文字を角でもって指さす。
『男に寄りつく女性の特徴トップ10』
シスターは未だ女性成りたてだ。男女の機微に疎く、子供とそう大差ない。
よって、おじさんがいかに優良物件かという事を知らないままなのだ。このままではおじさんに目を付けた肉食系女子に食われてしまうだろう。そうなる前に、世に存在する男性に近づく女性の匂い……勘ともいえるものを育てないといけない。スマホを裏側にしておく男に何かを察する女性のように、身だしなみに他の女の匂いをかぎ取るように、同性に対する勘こそが今のシスターに足りないものだと思っているからだ。
シスターはそこに記載された文字を目が血走るほど凝視する。そこにはわかりやすくおじさんがもしそういう女性に関わったらというIFの話が具体的に描かれているからだ。
もし、おじさんに女性の影が現れたら……いつものハグがどこかぎこちなくなり、あまり体に触れることはなくなる。
もし、おじさんに女性の匂いが付着していたら……仕事と称して会う機会が少なくなるだろう。週に一度の食事会さえ断るようだったら要注意だ。
もし、おじさんが他の女に懸想しているならば……マウンティングの形跡があるかもしれない。部屋に知らないものが置かれていたらそれは当てつけだ。
そんなもしもがシスターの悪性をより強く、濃いものにしている。恋は盲目であるというように、光闇と恋愛は密接な関係がある。相手という強い光に目を焼かれた人間はそれ以外の光を見ようとしない。逆もそうだ。強い闇に惹かれた人間に光が宿ることはない。
この世で最も黒く、最も白い魔物からの薫陶はシスターをより強い存在へと押し上げようとしている。シスターの心の内にほのかな悪意の種が芽吹いた。時代をロケットで飛ばしたような先進的な知識を含んだ悪感情はシスターにとある感情を生み出させた。
この世界にメンヘラ感情というものが誕生した瞬間である。
2026/04/21 感想もらって追記したくなったのでおまけ
魔力は悪意や負の感情の塊なので善行するほど減っていく性質もある。だから本編で聖女(真)だったシスターちゃんはそこまで力がなかったんですね。
…………今が悪性塗れというわけではないよ。ホントダヨ。