自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター 作:心理的継続性を持つおじさん
「就職、だとっ……!?」
シスターは激怒した。
かの無知蒙昧なおじさんを正さねばならぬと決意した。シスターに政治はわからぬ。それはおじさんの伴侶として致命的かもしれなかったが、そう育てたのは他ならぬおじさんなのだ。自業自得…そう、自業自得だ。
シスターの想定はおじさんの隣に永久就職だったが、おじさんに就職を拒否されている現状、アタックを続けながらニートを謳歌するしかない。そう、これは致し方ないことなのだ。おじさんが折れない以上、ニートを甘んじて受け入れているだけに過ぎない。
そう、シスターがニートなのは仕方がないことなのだ。
故に……
「就職……だなんてっ!」
到底、受け入れられるものではなかった。
シスターにとって仕事は生活だった。朝起きて(太陽が昇り、少し動いてから…つまるところ昼前くらいに)、祈り(生活に根差した祈祷は次第におざなりとなり、キッチンから手を組むだけになっている)、掃除し(これが一番重労働である。30分に一回、1時間の休憩を取らねばいけない)、祈り(半ばお昼寝と化しているが、目を瞑り祈っているのだ)、そして一日の最後に食事やらを済ませ、祈り(ここでシスターは本気で祈る。未だ一人で眠るのが怖いからだ)、眠りにつく。
シスターにとって生きる事が仕事だから、今更追加で仕事をしよう等ということは出来るワケなかった。ぬるま湯に浸かりきった少女にとって、それは熱湯そのものであり、お風呂にだっておじさんに嫌々入れられている生粋の風呂嫌いが浸かれるわけがなかった。
この日、シスターは試されることになる。
「い、良いかい? 君は確かにこの教会の管理を任されている。それは君を守る為でもあるんだ。君の立場が少々不安定なことは知っているだろう?」
おじさんは語る。それはシスターも理解している事だった。シスターは結構やんごとなき身分であり、かみ砕いて言うのであればこの国の大体の人を顎で使える立場にある。しかし、出生が出生なおかげでこの教会に隔離されていたのだ。
おじさんは結構やんごとなき身分の相手に対して光源氏計画をしていたという事実を棚上げする。
「シスター、君に色よい話があるんだ。聖女という職だよ。世に光を照らし、民を導く仕事だ」
聖女、それはおじさんが知る前世の知識ではシスターさんが成る職業だ。シスターさんが聖女になり、その護衛に原作主人公の騎士が据えられる。シスターと騎士のラブストーリー…のハズがおじさんに寝取られるというあらすじだ。つまり、おじさんは原作を始め、騎士と会わせようとしている。年が近い者同士、あとはよろしくやってくれのスタンスだ。
最も、それは中年おじさんの純然たるお節介であり、おじさんの横を狙っているシスターにとっては寝耳に水の事であるから、おじさんはそのことを伏せていた。
「象徴となり、皆を安心させるとても大事な仕事だ。受けてくれるかい?」
シスターの信じている宗教はこの国の国教に定められている。神離れが激しい昨今でもその影響力は計り知れない。ましてやその宗教の象徴たる聖女は他国との外交交渉にも使える。宗教というのはとてつもなく面倒くさいが、用量用法守ればお手軽に人をまとめられる。だから、猿が壺に手を突っ込むように、利権に目がくらんだ政治家が猿のように突っ込んだ手を抜けなくなる。
シスターは政治の悪い部分に利用されようとしている……。それが良いことなのか悪いことなのか。果たしてわからないが、少なくとも今よりはいいとおじさんは考えた。
ニートよりもよっぽどマシだと……。
「就職……っ!」
ガタンとやにわに立ち上がるシスター。
話は堂々巡りの領域に入った。シスターは頑なに就職を拒否し続け、ひたすらに就職を連呼している。それはどうあがいても就職することは決まっていそうだから、話をループさせて諦めることを狙っているからだった。小癪な悪あがきはもう2時間も続いている。
そもそも、聖女の何がいけないというのか。聖女という仕事は端的に言えば動物園のパンダさんだ。お客さんに手を振ったり、タイヤでゴロゴロしなくてはならない。それは今のシスターと大体一緒だから、おじさんにとってそこまで拒否する理由がわからなかった。
動物園のパンダさんと違う点はその自由さであり、一挙手一投足を見られるために不用意なだらけ・怠けは戒められる。今までのぬるま湯も真っ青な厳しいルールだ。それだけは看過できなかったから、シスターは全身を使ってゴネている。両手両足をおじさんに絡め、全身を預ける姿……きっと見る者が見ればこう例えるだろう。
コアラさんだ、と……。
コアラさんはおじさんにとって必殺の行動を取った。おじさんは倫理観を理由に結婚を拒否しているが、別に嫌いになったワケではない。寧ろ、前世という比較対象を得たことでより好意が増したとも言える。なにせ、シスターは控えめに言っても絶世の美少女だ。長い銀の髪は月光を反射し、切れ長の目と埋もれてしまいそうなほど長いまつげは、怜悧さと清楚さを兼ね備えている。長い手足が絶対に離さないとばかりに絡みつく様は親にしがみつく子コアラと同義だがその威力は絶大だ。
おじさんは理性を試されている。そして、その理性も危うい状況にあった。
重ねて言うが、シスターはおじさんを嫌っているわけではない。確かに、光源氏計画に思う事がないのかと聞かれればNOと答える。下卑た視線を向けていた点もマイナスだ。だが外に出てみるとどうやら自分は人の目を吸ってしまう容姿であり、別に下卑た視線がデフォルトだったから、シスターは『男ってそういう視線がデフォなんだ』と解釈してしまった。NTRエロゲの世界観と奇しくもマッチしてしまったのだ。
そんなわけでおじさんが世の男性と大体変わらず、手を出しても来ず(成人で美味しく頂くつもりだった為)、養ってくれる点や欲しいものを買ってくれる甘やかしが評価された。ちなみにシスターを狙う男が居ないワケなかったが、そこはおじさんの権力がカバーした。おじさんは貴族である。貴族に逆らえるとしたらそれは同じ貴族であり、シスターの出生を知っているから厄ネタに手を出そうという人は居なかった。
おじさんに守られたシスターは、その点も評価している。よって、ここまでされたんだから隣で一緒に生活するのもやぶさかではないという思考だった。しかし、それが断られてしまった。シスターは、それがなんだか自分の容姿や価値を否定された気分ですこぶる不快だった。食べられることを受け入れてしまったから、食材として変なプライドを持ってしまったともいう。食材のプライドにかけて自らをおじさんの口にねじ込もうとするシスターを必死で止めた。
「シ、シスターメレア! ゴネたってどうにもならんよ今回は! おじさんだって尽力したが、君の特別な力を野放しに出来るワケない!」
シスターは、ぴしり 動きを止め、そして抱きつきながらも神の像を睨みつける。それはまるで悪魔でも見るような目つきであり、その声には憎悪が籠っていた。
「神めぇっ……!」
シスターは、割と頻繁に神を憎悪している。