自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター 作:心理的継続性を持つおじさん
とある日、太陽が顔を隠した昼下がりにシスターは庭の隅にて暗躍していた。
周りに誰もいないことを確認したシスターは密かに魔法を発動する。地面の接地判定を無くし、地下に埋没した。息は出来ているし生存に問題はなかった。魔法の良い点は細かい所は指定しない限り『夢だから』の一言で曖昧に暈される。シスターは地下に潜り、そこに集まる生き物たちに声をかけた。近くにはホワイトボードのようなものがある。そこには、辛うじて街のように見える絵と、そこから這い出る複数体のミミズが描かれていた。
シスターは手ごろな棒を取り出し、ミミズを指す。
「そう、此処です。この街路を封鎖してください」
街路であった。シスターは画伯()だったのだ。ミミズ街路に大きな犬っぽいナニカが描かれている。近くにいた大狼がこれ俺?という風に自分を指さした。自分と見比べる。絵には脚が8本あった。対して現実は4本しかない。自分の脚が二倍にされているショックは尻尾から痛い程伝わってくる。付け加えて言うのであれば絵には尻尾がなかった。悲しいが、シスターは画伯()なのだ。足と尻尾が混同され、また増殖させられるというその美的センスに期待してはいけない。
シスターが教鞭をとるように、ぴしり、棒を叩きつける。
「危害を加えてはいけません。貴方方が討伐されます。ただそこに棲み着いてしまったという体で、はい、はい、そうです」
小さく縮こまり、定期的に上を見回す。明らかに不審な動きをしてますよとアピールしているようだった。埋まっているから誰にも見えないハズなのに、シスターは心配性だった。別に音漏れもしないのに、そっと囁くように話しかける。
「身体が大きな方を選びました。はい、そこの方。馬型?馬型……まぁ群れるなら、良いと思います。なるべく人を足止めしてください。それがメインです」
シスターはやんごとなき身分だ。また、聖女という政治色が強い職業に就いている。だから、外出は厳しく制限され、敷地内でしか自由にすることが出来ない。
だがしかし、縛られたからこそ発揮されるものもある。それは夏休み最後の日になって宿題に手を付ける子供のように、追い詰められた状況になって初めて本気を出せる人種というのが存在する。シスターはそんな制限下において悪知恵が働くタチであった。ある目的の為にずっと動き続けている。今は自由時間、その間に作戦を立てていた。
「大丈夫、貴方方の目的は理解しています。ギブアンドテイク……はい、私達は対等です」
シスターが一番に話しかけていたのは小さなモモンガに似た生物だった。目は一つ目で、尻尾は引っ付き虫のように棘々している。偵察に向いた個体だ。街やおじさんを偵察してもらっているから、仲の良い個体ということになる。こうした何故その進化を辿ったのかよく分からない生物達は、魔物と呼ばれている。他にも多くの魔物がこの場所に集っている。狼型、熊型、様々だ。多種多様な魔物達は自分のいう事を聞いてくれるようで、シスターはほくそ笑んだ。この作戦、上手くいっていると……。
別にこの世界の人達は魔物と敵対関係にあるワケではない。特に何もしないからだ。魔物は何かを食べることもせず、眠ることもしない。増えたり減ったりしているから、いまいち生息数も把握しきれていない……。
飲食や睡眠を必要としないから、ただそこに居るだけになる。特に人を襲うようなこともない。時折、喋り掛けるような鳴き声を発するが、何を言っているかわからない為、未知の行動とされている。ペットとして飼う者もいる。餌を必要とせず、撫でても噛まないから犬猫よりも安全と専らの評判だ。
たまに、眠るような動作をするが、叩けばすぐに起きる。それは魔物が睡眠を必要とせず夢を見ないから、夢を見ようと他の生き物の真似をしているという事実を知る者は極少数だ。だから、今の人達は無害なよく分からない生き物という評価に落ち着いている。
シスターは魔法が使える。夢を見るための道具のようなものだ。本来、魔法は人間が扱えるようにできていない。まず、言語体系から異なる。魔法を扱うということは、まったく知らない言語を辞書なしで理解し、約10万字の小説1本書き上げるようなものだから、シスターは魔物達からも尊敬される。
シスターは数少ない魔法が使える人間の1人で、魔物達からすれば夢を知っていて言葉が通じる人間だから、シスターのお願いは出来る限り聞いてあげようとする。
それはおじさんにわかりやすく日本で例えると、日本に留学しに来た外国人留学生だ。知り合いも少ない異国でアルバイトに励む中、こちらに気づいて、カタコトな挨拶で愛想よくしてくれる。ちょっとした世間話も忘れないから、なんだか親しみさえ持ててくる。『オ仕事、ガンバテクダサイ』等と慣れない言葉で言われようなら、ちょっと嬉しくなるくらいだ。
魔物達はシスターにお節介を焼きたがる。奇しくも若人に余計な気を回すおじさんのように。
「えぇ、はい。くれぐれも手を出さないよう……お願いします」
シスターは
この世界に魔王は存在しない。魔物を統括する生き物が存在しないからだ。大体宇宙人と一緒だが、宇宙人のように統一されていないから、各々が好き勝手生きている。そんな魔物達にもし魔王が現れたら、どうなるか。一人の意思決定に沿って、規律的に行動を開始したならば、それは直接的でないにせよ立派な加害行為になるだろう。だが、人間同士が争い合うように、もし魔王というものが現れるならそれは人間同士で生まれるだろう。宗教で異教徒を悪魔崇拝と呼んで迫害するように、敵国の人間に与する者達を非国民と呼んで蔑むように。特別な力を持った人間を妬んで『魔王』と呼ぶのと何が違うというのだろうか。
ここに、一人の魔王が生まれた……。魔王は理外の美貌と只人には扱えぬ外法を用いて魔物達を統べる。目的はただ一つ……
「デート……!」
デートであった。