自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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しいていうならおじさんが光源氏計画した(動詞)相手が魔王だというのに。

「魔物達の反乱だと!?」

 

 使用人の報告におじさんは驚愕した。椅子から滑り落ち、したたかに腰を打ち付ける。後々の検査でむち打ちになっていたことがわかるほどの物理的・精神的衝撃だった。

 

 痛む尻を抱えながらやにわに立ち上がり、すぐさま使用人に行政官達を呼び寄せるよう指示する。

 

 にわかに忙しくなる屋敷内で、おじさんは苦虫を噛み潰したような顔をした。なぜなら、魔物達の反乱は原作開始の導入部分だからだった。本来、無害なハズの魔物達が何者かの命令により、人に危害を加え始める。それをシスターと騎士が仲良く解決していく物語なのだ。

 

 しかし、現状、シスターは愛想がないパンダさんであり、騎士にぞんざいな態度を取っている。なんなら、騎士を外に放り出す始末だ。言い分としては『あくまで護衛なら部屋に入れることもないし、仲良くなる理由もなくない? 必要な時に護衛してくれたら人材を遊ばせることもないじゃん』だそうだ。正論だった。

 

 だが社会というのはそう簡単に回らないものだ。おじさんは前世で歴戦の社会人だった。人間関係のなんたるかを身に沁みて理解しているし、それを疎かにした人間がどうなるかを何度も見てきた。人間、仕事だけの関係で社会が回るワケがない。だからこそ、昨今衰退しそうな飲みにケーションが横行したし、構い過ぎてモラハラセクハラ扱いされるのだ。何事も塩梅であるが、それでもやらないよりもよっぽど良いというものがある。第一、挨拶をするのとしないのとでは、人事の評価に雲泥の差が生まれる。それは人事部を経験したこともあるおじさんにとって当たり前のことだった。

 

 だから、せこせことおじさんは騎士とシスターの仲を取り持とうとした。それは、別に良い雰囲気になってほしいからではない。まだ早いとおじさんさえ思っている。何事も順番というものがあるから、せめて顔を合わせれば挨拶するくらいの関係値を求めた。それは当人達の問題ではなく周りが安心するからであった。社会は往々にして当人達を度外視して回ることがある。仲悪い人達のギスギスを感じながら仕事をしたくないからだ。

 だが現状、そうなっていない。挨拶以前に顔すら合わせることがない。そんな状態のまま、原作が始まろうとしている……。

 

 おじさんは頭を抱えた。こんな状態でシスターを世に放り出す事なんて出来るワケがない。放り出した途端、古巣の教会に直行しそうな雰囲気だった。なんなら騎士へおざなりに人を近づけるなと命令さえするだろう。そして引きこもる。引きニートの誕生……そうなれば最悪だ。

 

 それに騎士も騎士だ。確かにイイ子である。人に甘く、人を信用し、情に厚い人物だ。またの名をNTRされ得る人物とも言える。シスターや竿役を簡単に信じてNTRされる才能があるのだ。この世界に放り出すにはあまりにも不用心だった。なんならシスターを育ててきたからと、おじさんを無条件に信頼してシスターを置いて森の中に冒険しに行くことさえある。ヒントはいくらでもあったハズなのに、意気揚々と森の中へ向かう様は馬鹿を通り越して病気を疑うレベルだった。そんな原作ルートの引き金は元のおじさんだというのに、そんなことは頭からすっぽ抜けてずっと心配している始末。

 

 正直に言おう。おじさんも騎士もどっちもどっちだった。片や心配性のお節介、片や人を信頼しすぎるために騙される。ニートシスターも合わせれば、登場人物全員ロクでもなかった。

 

 そして、それはラスボスも例外ではない……。

 

 先に言っておくと、この魔物達の反乱はシスターによるものである。しかし、原作では魔物達の反乱が物語の始まりだ。では原作でもシスターが黒幕なのかと言えばそうではない。ちゃんとラスボス……もとい黒幕がいる。ソイツはシスターと同じく魔法を扱う事が出来、魔物達を扇動して世を支配しようといういかにもな黒幕だ。

 

 シスターは自分と同じ力を持っているから、警戒してシスターと騎士を分断し、シスターを手籠めにして無力化しようとする。おじさんルートは黒幕に辿り着く前の序盤の話、言ってしまえば別スチルの話だから、ちゃんと黒幕にもNTRされるルートがある。

 

 だが現実問題、魔物達の反乱はシスター主導で起きている。では黒幕はどこに行ったのか?

 

 簡潔に言おう。まだ寝ているのである。それは別に比喩でもなんでもなく本当にスヤスヤしているだけである。なにせ、黒幕が動き出すのは自分に魔法を扱える力があると理解し、世界を支配するのだと決める時だ。時系列で言うならまだ1,2年ほど後の話で、シスターが動き出したせいで勝手におじさんが原作が始まったと思ってるだけである。

 

 黒幕は未だ自身に眠る魔法を自覚せず、シスターと同じくニート生活をしていた。オブラートに包んで考えるなら、黒幕が原作の時期に動き出してもらわないと早々に世界が支配されてしまうから、動き出すまでの間はなに不自由ない生活をして寝ていてもらおうという世界のご都合的算段があったのではないか。

 

 つまり、こうだ。

 

 世界はまだ原作すら始まっていない。しかし、シスターが崇高なる目的(デート)の為に魔物達に命令したことをおじさんが勝手に原作開始したと思い込み、それまでに騎士とシスターの仲を取り持てなかったことに胃をキリキリさせている。なんなら、シスターが魔物達の反乱を治める前に寝床に直行しそうだったから、おじさんは覚悟を決めるしかなかった。

 

「……仕方ない。仕方ないか。私が世界を救うしかない……! そうだ、そうだろう。可愛い娘同然の子をこんなNTR世界に放り出せるワケがない。騎士もあんな純朴な子が世界の厳しさを知る必要がない。そんな面倒なことは年上に任せてオフィスラブでもしていれば良いんだ……!」

 

 おじさんのひと昔前のような思考はおじさんだからということで許してほしい。それに好意があると言っても、やっぱり育ててきた親心というものがある。可愛い娘には旅をさせよというが、可愛いだけだったので旅をさせるわけには行かなかった。まず、放り出しても勝手に寝床を探し出して引き篭もるから下手に外へ出すことも出来ない。一人暮らしでニートされるよりも、実家暮らしでニートされたほうが口うるさく言えるというもの……。

 

 おじさんはなんだか自分の考えが最善な気がしてきた。これしかないとさえ思えてくる。追い詰められた人間はしばしば得られた情報を頼りにそれ以外の案や考えを排除する傾向にあり、これを認知バイアスの一種で確証バイアスという。

 

 おじさんは確証バイアスに陥っていた。前世という知識が先行し、本当に黒幕が動き出したのかという確認を怠っている。

 

「お、お前の好きにはさせないぞ……!魔王……!」

 

 おじさんは義憤を燃やした。元のおじさんならあり得ないことだが、前世を思い出したことで股間にあった脳みそがあるべき頭部にスライドしたのと合わせて、良識も栞を挟まれたように生えてきたからだ。

 

「わ、私はやってやる……!や、やってやるぞ!」

 

 荒事に慣れないおじさんは自らを奮起させ、行政官達の元へ向かう。さながら、レベル1の勇者のようだった。きっとシスターが見れば即座に美味しく頂かれるような情けない勇気だったが、おじさんにとっては大きな勇気だ。

 

 謂れのない罪で処罰が決まってしまった黒幕は今も無垢な幼子のように眠っている。昼過ぎ、ニートに相応しい寝つきっぷりだった。だがしかし、人は生まれながらに罪を持っているというように、昼過ぎまで惰眠を貪ることは罪なのだ。もし、シスターが知れば、自身を棚上げして糾弾するだろう。それは断じて自分が働かされてるのに、気ままにニートを謳歌している黒幕への私怨ではない。魔物達を扇動し、民を不安にさせる卑劣な行いを許せないからだ。

 

 かくして、シスター(現魔王)は、自らの罪過をすべて、何も知らない惰眠を貪る黒幕(覚醒前魔王現ニート)に押し付けることに成功した。知らない罪で義憤を燃やされた魔王は冤罪で処罰されることになる。なまじ、世界を支配しようというのは本当だから、未来の罪過で処罰されることになるのだ。

 

 

 しいていうならおじさんが光源氏計画した(動詞)相手が魔王だというのに。

 

 




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