自分の事をNTRエロゲの竿役だと思っているおじさんVS幼少期から光源氏(動詞)されたが嫌いになるわけないシスター   作:心理的継続性を持つおじさん

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前話で理解してくれる人が居て嬉しい…嬉しい……。
みんなも『しいて』……読もう(ダイレクトマーケティング)


シスターの論に則るならば、神は人間よりも愚かしく、ミスも多い上に、自分のミスに寛容過ぎるという最悪な評価になる。

「神ィ────ッ!」

 

 シスターは絶叫し、馬券をビリビリに破り捨てた。その圧巻の敗者っぷりは、その場に居たお偉方から言葉という言葉を奪い尽くしてしまった。とある日の懇親会、競馬視察でお試しに賭けた午後のレースで大敗したからだ。

 確かに3枠は6番人気と微妙な立ち位置ではあったが、それでも勝つのがドラマではないか。シスターはロマン派であった。ロマン派はしばしば、夢を見るあまり現実に即さない賭けに出る。

 

 シスターの夢は破れた。あるいは自分自身で破いてしまったともいう。後日談だが、次レースにて3枠は12番人気という下馬評を覆し一着となった。たらればの話になるが、シスターがいつものように昼過ぎまで寝ていたら到着がズレて勝てていたかもしれない。

 

 今日、珍しく早起きしたシスターは自らの天運を呪った。この世のすべては神の采配だというのなら、すべて神が悪いということになる。

 

 シスターは神に文句を言った。なぜ早起きさせたのかと……八つ当たりだった。だが神の教えがそうなのだから正当性は自分にあるとシスターは信じて疑わない。

 

 例えば、親からスイカの種を飲み込むと臍から芽が出ると教えられた幼子が、したり顔で友達に話して迷信だとからかわれたとして、子供は迷信を恨むだろうか?恥をかいた経験を騙されたのが悪いと受け入れるだろうか?いや違う、受け入れられるワケがない。きっと親を恨むだろう。嘘を教えやがって……と。

 

 誰しも、大なり小なり経験したことがあるだろう。人は間違った知識よりも、間違った知識を教えた人間に対して恨みを抱く。間違った知識を広めた人間こそを悪とするのだ。それは神の教えとて例外ではない。

 

 神の教えとは、その名の通り神からの教えだ。それは言い換えると教条であり、別の名前で天運ともいう。天から授けられた運命……神の思し召しだ。

 

 それに則るならば、シスターが早起きしたせいで競馬に大敗したことも天運ということになり、それは神の教えであるから責任はすべて神にあるのではないか。

 

 神は人を作ったという。ならなぜ神は人を不出来に作ったのか?神の万能を信じるなら人に不幸はない。すべてが予定調和の幸運のみの世界だ。

 

 だが、現実問題そうなっていないということは神は万能ではないということになる。もし、万能であるならばとっくのとうにおじさんと結ばれニートしているからだ。

 

 シスターは自らの境遇を根拠に神の万能説を論破し鼻高々だった。その穴だらけの説はしかし、一定の理由に沿っているから手に負えない。もしも神が万能ならば、不完全に作る理由がわからないからだ。それが神の思し召しなら別にいい。それはそれですべての責任は神に集約される。

 

 シスターは神を人間のありとあらゆる面で上位互換の存在だと思っている。ようは人間よりもできることが多いだけだ。できることが多いだけで、万能ではないしミスもする。ただ、人間よりも()()()()()()()面で上位互換だから、自分のミスをしゃあないで済ます寛容も人間より上だということ。

 

 そう考えると、人が神の似姿をしているという説も一貫性がある。人間が愚かで失敗するのは、ありとあらゆる面で上位互換の神を似せて作られたからだ。

 

 

 シスターの論はどう足掻いてもすべての責任は神にあるということになる。だから自分が不幸なのは神のせいであるし、そう教えたのは神なのだから、やっぱり神が悪いことになる。例え、神の教えたる聖書や教条がねじ曲がって伝わったとしても、ちゃんと伝えなかった神が悪い。

 

 

 シスターの論に則るならば、神は人間よりも愚かしく、ミスも多い上に、自分のミスに寛容過ぎるという最悪な評価になる。一歩間違えなくても極刑ものな考えであることをシスターは未だ理解していなかった。天罰ものである。だが、天罰が下っていないということは許されたという事である。それも、神がありとあらゆる面で上という理屈で説明できる。

 

 即ち、依怙贔屓も人間より上なのだと……

 

「スゥッ────フッフー……よし」

 

 それはひとまず置いておいて、シスターは現状の痴態をすべて神に責任転嫁することに成功した。しばらくストレスを晴らし切ったので魔法を発動する。

 

 魔法とは魔物が夢を見るためのものであり、夢にはいくつかの形態がある。悪夢、明晰夢、そして白昼夢……。現実に夢のようなものを見てしまう事だ。

 

 シスターは白昼夢を発動した。これは別に周りの人間に夢を見せるものではない。さっきの現実を『夢みたいなものだな……いや、白昼夢だろう』という意識を植え付けるのだ。

 

 シスターは先ほどの痴態を白昼夢で片づけた。周りのお偉方もシスターが圧巻の絶叫敗北者姿を現実だと思いたくない。聖女とは儚く、美しく、清楚なイメージがあった。美しくはなかったが、絶叫する様は儚さの対極に位置し、清楚さは馬券をビリビリに破いた姿で花と散った。だからこそ、白昼夢として処理された方が幸せだったから皆無意識にそれを受け入れた。

 

 シスターは今までの事が嘘だったようにお清楚な対応をした。先輩であるパンダさんに倣ってタイヤでゴロゴロするように、人々に手を振るのも忘れない。先ほどの痴態は下々には見えていなかったのが幸いした。民にはそのまま聖女足り得る人物として映っている。

 

 パンダさんの仕事を全うした彼女は、帰宅間際におじさんと出会った。久しぶりに出会ったような気持ちだ。シスターはなんだか嬉しくなって駆け足から徐々に徐々にと加速していく。

 

 しまいには魔法さえ使って重力を無視する。空中を踏みしめて加速する様はアスリートもかくやのランナー走りだった。

 

「痴漢冤罪ッ!」

 

 ガッと真正面から顔面を抱きつきにかかったシスターを死ぬ気の横っ飛びで回避する。贅肉をものともしない機敏さと発言は社会的信用に対する悲しいまでの本音だった。実際、相手が行動を起こした側だとしても罰せられるのはおじさんだから、そんな社会の悲哀を必死で叫ぶしかない。誰も声を上げないからと声を上げる努力を怠ってはいけないのだ。苦しんでる人が居る。辛いという人が居る。それを忘れてはならない。いじめられたという手が上がらないからいじめはないとするのは早計で、黙るしかないいじめ被害者を野放しにしていい理由にはならない。おじさんは世の満員電車にて痴漢冤罪に怯える社会人を背負っているという自負があった。だからこそ、こんなにも機敏に動けたのかもしれない。

 

 しかし、シスターの方が一枚上手だった……。

 

 今この時、シスターは重力というくびきから逃れ、世界の挙動をこの時だけは、水の粘性に塗り替えたのだ。瞬時に固形化させた空気を壁に見立てて、華麗なターンをしたシスターは綺麗なドルフィンキックで空を泳ぐ。

 

「くっ……!」

 

 おじさんは迫りくる人魚型痴漢冤罪を傍に飾られた装飾用甲冑でガードするも、一瞬にして引き裂かれた。熊も真っ青な威力だった。おじさんは社会的なリスクに合わせて物理的なリスクの存在に気づいて冷や汗をかく。魔法とは夢を見るためのものであるから、夢の中であればドラゴンを赤子扱いするほどの膂力を得られる。容易に人を殺せるパワーの人魚が泳いでくる様は、はっきり言って恐怖そのものだった。

 

 だが、この事態に対処しなければ、おじさんはおじ/さんまたはお/じさんになるだろう。特にベアハッグで全身を引き千切られる凄惨な事故は避けたかった。シスターにトラウマを植え付けてしまうかもしれない。

 

 おじさんは空中をクロールで遊泳するドラゴン(のような膂力を持ち)人魚にベアハッグでズタズタに引き裂かれないよう覚悟を決めるのだった。

 

「痴漢冤罪か……!」

 

 自分の命よりも社会的リスクだった。もしくは娘同然のシスターにトラウマを与えない気持ちが勝っただけかもしれない。

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