MODマシマシTSドヴァーキン(雌堕ち済)四方世界にて小鬼殺しと邂逅す   作:最初の仲間

19 / 19

 感想、誤字報告、評価いつもありがとうございます!

 1話の子鬼退治は原作の流れとそう変わらないのでカットでお送りします。


竜血魔女の口から火出す奴でだいたい勝てる

 

「おい、そこのあんた。やっと目が覚めたか」

 

 がたん、がたん、と揺れる馬車の上で、ゆっくりと目を開いた少女に声をかける。いや、よかった。結構な時間眠りこけていたもんだから、心配だったんだ。体力ゲージに支障はなかったが、それだけで安心できないのがこの世界だ。運命(スクリプト)による死は避けられないからな。

 

「……生き、てる?」

 

「ああ、生きてるよ」

 

 喋れるし、意識もある。……問題なさそうだな。奇跡、回復魔法、解毒薬、疾病退散薬、あの場で出来る手は尽くした。これ以降彼女に何が起きてもあとは神のみぞ知る……と覚悟は決めていたが、無事で何よりといったところか。

 

「「―――ごめんっ!」」

 

 目を覚ましたと知って、新人一党の頭目……鉢巻を巻いた少年と、武闘家の少女の二人が深々と頭を下げる。五体投地、土下座の勢いだ。曰く、洞窟内で後方に意識を向けるのを怠り、逸れたことがこの負傷のきっかけなのだとか。

 

 あー……トーテムの視線誘導に引っかかっただけじゃなく、術師置いて行ってしまったのか。そら全滅してもおかしくなかったわ。

 

 もう少し早く、この一党に気付けていれば……というのは後の祭りか。

 

「……いい、わよ。今回はあたしが馬鹿だっただけ。ゴブリンを甘く見たツケね」

 

「わ、私も……。お祈りで周りが見えていませんでしたし……お二人のことを何か言う資格はありません」

 

「本当に、ごめん……」

 

 暗いなぁ……。まぁ、自分も仲間も死にかけた上に、初の依頼が他の冒険者におんぶにだっこ、となればこうもなるか。生きてたんだし結果オーライ……とは今回ばかりは言えんな。

 

 ちら、と後方に目を向ける。もう一台の馬車だ。荷車には、小鬼の巣穴から救出された娘達が載せられている。街に着けば、神殿に入るのだろう。ゴブリンの慰み者にされたことがどれだけ彼女らの心身を打ちのめしたことか……。この瞬間ばかりは正視に耐えない。

 

 普通はあ(・)あ(・)なのだ。強さ云々の話ではない、どこか壊れていなければ、化物に身体を弄られ、異形の赤子を孕まされる恐怖と絶望は筆舌にし難いものだ。一手、遅ければ彼らの一党も同じか、あるいはもっと酷い扱いを受けていたことだろう。

 

「……よくある話だ。ゴブリンによって村が襲われ、娘が攫われたことも。新米冒険者たちが初めての冒険としてゴブリン退治に赴き、全滅することも」

「娘たちが冒険者によって救出されることも、娘たちが世を儚み、神殿に入ることも。何もかもがこの世では日常茶飯事な、良くある話だ」

 

 俺達冒険者の乗る、荷馬車を御する男、ゴブリンスレイヤーが口を開く。口調は厳しいが……。

 

「そんなさぁ、堅苦しく言わなくても『命が助かって良かった』……って言えばいいんじゃない?」

 

「……そういうものか?」

 

「そりゃそうだろ」

 

「……え、今、私たちのことを案じてくれていたんですか……?」

 

 ほらなー? 言葉足りないんだって。それきり黙り込むのも良くないぜ。

 

「ね、ねぇ……。洞窟にいた時から思っていたのだけれど、貴方たちは一体、何者なの……?」

 

 武闘家ちゃんが、おずおずと挙手しながら質問を投げかけてくる。……そういや治療に専念しててまともに話してなかったか。認識票は見せたがそれきりだ。

 

「ふふ、どう見える? 俺達は―――」

 

「同業だ。今日のように小鬼退治に居合わせることもあるがな。時折、一党を組んでいる」

 

「おい。最後まで言わせろよ。……まぁ、彼の言う通りさ。時々同じ仕事を請けたり、ちょっとしたアドバイスを送ったりする仲だね」

 

 がたごと、がたごと。最低限しか舗装されていない道ではよく揺れる。道中は山道の峠に差し掛かったあたり。まだ街まではしばらく掛かる。システム外の苦痛が存在しない俺はともかく、皆ケツ痛くならねぇのか……? 車輪にゴムも車軸にサスペンションもないから直で揺れがケツを揺らすんだが……?

 

「洞窟では竜血魔女(ドヴァーキン)って呼ばれていたけど……?」

 

「―――待って、竜血魔女、ですって? 私の聞き間違いかしら?」

 

 ふむ、特に新人の魔女っ娘には自己紹介もなにもしてないか。

 

「オーケー……じゃあもう一度だけ説明しよう。俺は……」

 

 ―――突如、空気を震わす唸り声が周囲に鳴り響く。街道をゆく馬車に、上空から獣の影が落ちてきた。

 

 巨大な翼。蠍の尾。獅子の胴に、醜悪な人面を持つ、異形の怪物。

 

「GWOOOOOOOOOOO!!!!!!!」

 

「ゴブリン、ではないか」

 

「あ、当たり前じゃない!? あんたどこに目ぇ着けてたらそう見えるのよ!!」

「あれは……人面獅子(マンティコア)!! なんでこんな街道沿いに!?」

 

 新人魔女がキンキンとした声でがなり立てる。まぁ、九死に一生を得たと思った矢先の出来事だもんな。泣きっ面に蜂とはまさにこのこと。

 

 ……なるほど、あれが人面獅子。初めて見るな。サーベルキャットにガーゴイルの翼が生えているだけでも厄介だろうに、シャウラス・ハンター宜しく尻尾に毒針があるんだったか? 大盤振る舞いだな。

 

「に、逃げないと……! は、早く馬を走らせてくれ!」

 

「まぁまぁ少年。慌てない慌てない。一休み一休み」

 

「お、おお……? そうだな……そうかも……」

 

 《鎮静》を周囲にばらまいていく。これ以上騒いで背後の村人まで逃げられては困る。これ以上、攫われた女の子たちに危ない目に合わせるわけにはいかない。

 

 それにしても本当にこっちの馬は臆病だな、鳴き声だけで逃げ出そうとするとは……。それに比べて、ゴブリンスレイヤーの駆る馬の頑強なこと。しっかりと訓練された馬を購入したようだ。うむ、以前のアドバイスが活きたな。

 

「頼めるか?」

 

「ああ、任せな。空飛ぶ怪物退治は何も今回が初めてじゃあない」

 

 背嚢(バックパック)から杖を抜き、上空の人面獅子へと構える。

 

「む、無茶ですよ……! 洞窟から一体いくつ魔術を使ったと思っているんですか! これ以上は……!?」

 

「わっ、私ならあと一回、まだ呪文が使えるわ! 戦力になるはずよ……!」

 

 おお……!まともに心配されたのは久しぶりかもしれない。基本俺もソロだし、彼と組むときは「やれ」「はい……」で済むからな。ギルドの連中もなんかやべーやつを見る目で見てくるし。

 

 なんでやろなぁ……。ただオダハヴィーングの背に乗って帰省したり、山賊長の首並べただけなのに……。討伐確認のために死霊術で連れてきて、本人確認させなかっただけマシだと思うんだが。

 

 そろそろ五年以上経つんだしそろそろ慣れてくれてもいいんじゃないか?

 

「じゃ、馬車を守るのに使ってくれ。俺はそういうの苦手なんでな」

 

「でも……」

 

「まぁまぁ、俺がだめそうならその時頼むわ」

 

 高らかに唸り声を上げ、上空を旋回する人面獅子が急降下してくる。御馳走の群れにでも見えたか? 真っ直ぐ向かってくるなら都合がいい。爪か、牙か、魔法か。毒針を考慮せずに済む。これ以上は流石に解毒薬はないからな。

 

 さて……。

 

「見せてやろう。魔術を極めし者の力を」

 

「GWAAAAAOOOOOOOOOO!!!!」

 

 

 

 

 

 ―――そこであたしが目にしたのは、紛れもない伝説だった。

 

 振り下ろされる右の爪に合わせ、彼女は右の杖を一振り、紫電の雷撃(チェインライトニング)が迸った。地から天に、逆流する稲妻(ステップストローク)が怪物を貫く。

 

 人面獅子の全身に走った衝撃は、全身の筋肉を弛緩させ、空中にその身を縫い付ける。その隙を彼女が見逃すことはなかった。

 

 彼女は既に、溜めていた魔力を氷柱の槍(アイスジャベリン)へと変え、解き放つ。手のひらから発射されていく巨大な三又の氷柱が、次々と翼へ風穴を開けていく。穴だらけになった翼ではその巨体を支えきれず、バランスを崩し、そのまま落下してきた。

 

 ……凄い。学院の図書館では、見たことのない魔法ばかり。それも両手で別の魔法を同時に放つなんて。一つの魔法を構築し、それを構築することがどれだけ困難な事か。

 

 幾つも魔法を放つ途方もない魔力量、消費をものともしない体力に目を奪われがちだが、彼女が恐ろしいのはそこではない。

 

 詠(・)唱(・)が(・)口(・)内(・)で(・)留(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)。無音で呪文を唱え、魔法の力のみを取り出し、現実を改変させている。大道芸人がやるという、腹話術に近い原理なのかもしれない。詠唱を伴わないから、隣にいるはずなのに彼女がいつ呪文を使うのか全く感知できない―――!

 

 ―――《トニトルス(雷電)! オリエンス(発生)……!》

 

「ッ!! 呪文が来るわ!!」

 

 突如耳に届く、邪悪な詠唱。間違いない。人面獅子だ。呪文を放つ個体もいると読んだことはあったけど……!それにしても驚異的なのは、あれだけの魔法の雨霰を受けてまだ息があるということ……!

 

 やってやろうじゃないの……! 例え杖がなくたって……!

 

 あたしだって……!

 

「《マグナ(魔術)! レモラ(阻害)! レスティンギトゥル(消失)!》」

 

 ……《ヤクタ(放出)》!

 

 あたしだって 『賢者の学院』を卒業した魔女!

 

 呪文遣い(スペルスリンガー)だ!

 

 ―――【稲妻(ライトニング)】 

 

「【抗魔(カウンターマジック)】ッッッ!!」

 

 魔力の壁があたしたちを包むように広がり、人面獅子から放たれる落雷を弾いていく。

 

 足がふらつく。意識が朦朧としてきた。壁がチラチラと霞み、雷光が強まって見える。

 

 その時、背中を支える手に気付いた。

 

「頑張れ魔法使いッ!」

 

「私たちが支えるわ!」

 

「も、もう少しです!」

 

 短いけれど、冒険を共にした仲間達が、そこには居た。

 

 拳を空に突き出し、魔力を捻り出せ。限界を超えろ。足手纏いになるな。何より……!

 

「負、け、る、かああああああああああああ!!!!!!!」

 

 あたしを助けて、支えてくれた人たちに情けない姿を見せてなるものか―――!!

 

 限界突破(オーバーキャスト)。

 

 詠唱を加えた【抗魔(カウンターマジック)】により、光の壁は再び輝きを取り戻し、人面獅子の稲妻がかき消されていく。

 

「GAAAA!?」

 

「ナイス、……じゃ、トドメだ」

 

「yol(炎) - toor (業火)- shul(太陽) !!」

 

 その時、耳を貫いたのは聞き覚えのない真言。目に入ったのは天を裂く火柱。

 

 ―――《ファイアブレス》。

 

 竜(ドラゴン)が吹くという、紅蓮の吐息。火炎放射。それが人の身から放たれていた。全身を熱線に焼き焦がされた人面獅子は、炭の塊となって地面に四散する。

 

「ふぃー。意外としぶとかったな。防御ありがと。こういう時、丁度いい防御手段持ってないから助かったぜ……」

 

「…………あんた、なんて言うんだっけ」

 

 疑問を零すが、あたしはどこか確信を得ていた。

 

 最初は信じられなかった。もし本当にこの少女が、あの英雄だとしたら。銀等級になんて収まる存在であるはずがないのだから。

 

 しかし、今の光景を見て、あの轟く声秘術(シャウト)を耳にして疑う者がどこにいるというのか。

 

 この少女こそが、天翔ける竜を従え、竜と同じ力を持ち、竜を狩る、あの生ける伝説なのだと。

 

「……おっと。そういえば自己紹介の途中だったな」

 

「俺は人呼んで竜血魔女(ドヴァーキン)。他にも呼び名はいくつかあるが、この四方世界においてドヴァーキンは知る限りこの俺だけだね」

 

「以後、お見知りおきを?」

 

 私とそう変わらない背丈の少女が、ほころんだ笑みを見せて、そう名乗った。

 

「ああ、そうだ。これ、君のだろう。返しておくよ」

 

 そう言って、彼女は見覚えのある穂先を手渡してくれた。紛れもなく、あの時手放してしまった紅玉の杖(ガーネットスタッフ)。その一部だ。

 

「頭だけだけど……核となる宝石部分は無事だし、修理できると思うよ」

 

 ああ、本当にこの人は……!

 

「ありがとう……ございます……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのですね。竜血魔女さん。依頼を達成したのであればすぐに報告の手続きをしてもらわなければ困ります。これで何度目ですか? 貴女が他の方と比べて優れた移動手段を有していることは周知の事実です。言い訳はできませんよ。それになんですか。寄り道していたら小鬼の巣穴を見つけた? 人命救助は大変、大!変!助かりますが、それこそ迅速に報告してもらわなければ依頼に向かう冒険者さんたちに無駄足を踏ませることになります。きちんと報告と依頼受注の手続きを行ってください。それに今度は人面獅子ですって? 討伐してくださったのはありがたいんですが……!なんでそのままギルドに持ってきちゃうんですか……! 街中での死霊術は厳に控えて下さい! 次やったらまた降格ですからね……!!」

 

「覚悟の準備をしておいて下さい。良いですねッ!」

 

「はい……。はい……。すみませんでした……」

 

 

 

 伝説の姿か……? これが……?

 

 

 

シャウトの表記方法について

  • アルファベット表記
  • ドラゴン文字
  • どちらでも良い
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

忍殺世界にTS転生した話(作者:下駄ロボ)(原作:ニンジャスレイヤー)

TS転生した主人公がネオサイタマをなんとか生き残る話。▼第一部ネオサイタマ炎上編完結しました。▼第二部キョート・ヘル・オン・アース編始まりました。


総合評価:4503/評価:8.8/連載:70話/更新日時:2026年11月01日(日) 19:38 小説情報

CyberPunk: EDGE CASE(作者:エネーロ)(原作:Cyberpunk2077)

目が覚めたらそこは最悪の街だったーーー▼ふと気づくと2020年代のナイト・シティ。▼体は時代錯誤(2077)のクロームまみれ。能力はMOD基準。▼企業にバレたら実験動物よろしく解剖コース。▼生き残る道を探しながら、ジョニー達と関わっていくことになる奮闘劇。▼本作品は設定作成、本文一部にAIを利用しています。▼


総合評価:3632/評価:8.8/連載:28話/更新日時:2026年07月30日(木) 00:00 小説情報

習作:マブガル世界にTS転生した一般レイヴンのお話(作者:ぱんそうこう)(原作:Muv-Luv)

知らないロボ世界に転生した。▼どうやら美少女×ロボ作品らしく、パイロットは右を見ても左を見ても女の子ばかり。▼ついでに俺も女の子になっちまったが、人型ロボに乗れる代償だと思えば軽いもの。▼いざ、鉄の軋みでファンファーレを鳴らせ。▼この手の銃は祝福のクラッカーだ。▼さあ、自由な空へ飛び立とう。あの日憧れたワタリガラスのように。▼さあ、自由に大地を駆け巡ろう。あ…


総合評価:4861/評価:8.68/連載:16話/更新日時:2026年10月31日(土) 22:00 小説情報

スパイディのことが大大大好きなマッドサイエンティスト幼女(作者:サイリウム)(原作:MARVEL)

スパイダーマン。カッコよくて可愛くて素敵だなぁ……、せや!


総合評価:5586/評価:8.72/完結:14話/更新日時:2026年10月13日(火) 13:00 小説情報

腐った連邦軍高官の娘にTS転生して、ケネス大佐の首席補佐官をやる話(作者:TSペルペト)(原作:ガンダム)

マフティーの粛清対象になりそうな腐った連邦軍高官の娘に生まれた主人公が、父親の無茶振りや特権階級の政治的横槍、体制の仕組みの深さに悩まされながらも、地球圏に少しでもマシな未来を描こうとする話です。▼なお、主人公はガンダム作品についてほとんど知らない模様。▼備考:地球連邦の組織体系や法制度などについて言及がありますが、なるべく原作設定を調べながら書いているもの…


総合評価:6447/評価:8.74/連載:9話/更新日時:2026年09月19日(土) 18:47 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>