どうやら美少女×ロボ作品らしく、パイロットは右を見ても左を見ても女の子ばかり。
ついでに俺も女の子になっちまったが、人型ロボに乗れる代償だと思えば軽いもの。
いざ、鉄の軋みでファンファーレを鳴らせ。
この手の銃は祝福のクラッカーだ。
さあ、自由な空へ飛び立とう。あの日憧れたワタリガラスのように。
さあ、自由に大地を駆け巡ろう。あの日見た山猫たちのように。
—————その自由が、見せかけだとも気付かずに。
この作品、ss少なすぎるので自給自足タイムです。これからシコシコ出していきたいですね。
俺は知らないロボ作品世界に転生したらしい。
な、何を言って……と自分でも思うが、しかしそういう確信がある。
俺はどこにでもいるようなゆるいロボ好きだった。ガンダムは好きだしアーマードコアの新作には狂喜したし、合体ロボには夢を見てきたし、スパロボ参戦作品には一通りアンテナを張ってきた。
そんな俺はある日起きたら、ザルトゥーム島という島に住む女の子になっていた。
その時は自分がどこに転生したのか分からなかったが、テレビでロボ——MGの映像が流れてきた時にピンと来た。ここはロボ作品の世界なのだと。
その時俺に電流が走る。この世界なら俺、念願のロボに乗れるんじゃないか?
そうと分かれば行動は早かった。俺はMG乗りになるためにザルトゥーム学園の戸を叩いた。
操縦する時、脳内のイメージはいつだってアーマードコア。
自由にどこまでも飛び立つ渡鴉のように、大地を無尽に駆ける山猫のように。
握った操縦桿は軽くて重い。この世界で鴉と山猫の軌跡を知る人間は俺しかいないから。だからせめて、彼らに恥じない戦いをしたい。そう思って、いつも訓練に励んでいた。
アセンブルは楽しい。両肩ミサイルは火力面でいいけど、片方ウェポンハンガーにして手持ち武器を二つ持ちするのも捨て難い。なんなら両方で四刀流とかもやってみたい。バリエーションはアイデアの限り無限だ、いくら試したって飽きることはない。
出来ることが増えていくのが楽しい。日々が新しい発見の連続で、自分の操縦に新しい動きを取り入れていくことに歓びを覚えた。そう。
「戦い続ける歓びを……なんちゃって」
好きに自由に飛び続けていたい。
MGに乗り続けているうちに、そう思った。
「あいきゃんふらーい、あいふらいはーい」
◇ ◆ ◇
「
「大声出さなくても聞こえてるよ、ユリア」
「あ、きたきたー!ねえねえ、今日も私と遊ぼーよー!」
「いいけど、翠蘭には話してきたの?」
「ううん!まだ!」
「そんな嬉しそうに言ってどうするのさ。ちょっと待ってて……あー翠蘭ママ?今こっちにユリア来てるんだよ。これから『遊ぶ』から後でよろしく」
翠蘭の「誰がママですか!」という声を聞きながら電話を切る。翠蘭のママムーブはいつ聞いてもいい栄養が摂れるなぁと思いながら、目の前でニコニコしているイロイロ無防備な彼女に想いを馳せる。
青みがかった銀髪、白い肌によく似合う黒のチョーカー、着崩して胸の谷間がガッツリ見えている制服に萌え袖と、とてもえっちな格好をしているが本人の感性がちびっこなのでまったくえっちな目で見れたものではない。
しかしてその実力は学園でも最強クラスだ。純粋な個人の戦闘力ではトップに君臨すると私は思っている。
ザルトゥーム学園に入学してからしばらくして私は、学園最強クラスの天才であるユリア・バーンズにすっかりツバをつけられていた。前にカオスメイデンと公式MG競技でやりあったところ、どうも彼女の琴線に触れたらしい。以来、定期的にウチにやってきては戦いを強請るようになった。本人の性格も相まって、ぶっちゃけAC6のフロイトである。指示役の話を聞かないところまでそっくりだ。
とはいえ、私としては断る理由はない。強い相手との戦いは大歓迎だ。「俺」に流れる山猫の、ワタリガラスの血はいつだって闘争を求めているのだから。
「あの2人の戦い、見応えあってたまんないよね……」
「今日は何戦するのかな。お金取っちゃだめ?」
「みんないっちょ噛みしたくなるからだめじゃない?」
二人連れ立ってスカラ校舎に赴く。周りが何やら怪しげなのはスカラの名物だと言っていい。違法建築に違法建築を重ねたこの迷宮の如き校舎に住む生徒に悪い人間はいないが正常な人間もほとんどいない。
普段MGの模擬戦をする時はシミュレータを使っているのだが、これはあくまで学園の設備、使うには当然予約が必要なのだ。だからこういう突発イベントの時はいつも私がスカラ校舎に赴いてバトルをしている。
『あはっ!今日もいっぱい楽しもうねー!』
「やれやれ、毎度ながら楽しそうだよなぁ……まぁ、『俺』も似たようなもんか」
コクピットの中で呼吸を整え、戦いのために頭を切り替える。
戦う時だけ、「私」は「俺」になる。アーマードコアがくれた闘争の血は「俺」でなければ持ち得ないものだから、だろうか。
まあ細かいことは気にしないに限る。
「今日は三先か?」
『百先!!!!』
「俺が翠蘭ママに殺されるから十先で我慢しろ」
『えーーーー!!』
「じゃあ今からママが止めるまでエンドレスな。それならいいだろ」
『むーーーーー。まあ、いっか!おっけー!じゃ……始めよっかぁ』
ユリアのチャームポイントであるかわいいぐるぐるおめめが喜悦に歪む。口角が上がり、獰猛な笑みを隠そうともしない。一方の俺は目を閉じて精神を研ぎ澄ます。イメージするのはネクストACとスティールヘイズ。
MGは大元こそ作業用機械だが、その在り方は6のACに近いものがある。単独飛行が可能であり、高高度飛行時は戦闘機的な機動をする。その証拠に「フラットスピン」という本来戦闘機で行う高等技術もあるほどだ。
だがMG同士での戦闘は本質的にリンクス同士の戦闘に近い。低空や地上などのフィールドを高スピードで駆け回りながら、ブレードやミサイル、銃弾のぶつけ合いをするのはまさにネクストACといったところだろう。
「ああ始めよう。だがより高く『飛ぶ』のは俺の方だ……!」
ユリア専用の黒いMG、「エクスプローラー」の目がギラリと光り、呼応するように俺の黒い「黎明」がバーニアを吹かす。
そして双方、同時にレバーを倒し、最大出力でぶつかり合った。
◇ ◆ ◇
「あの黒い黎明は……もしや『スティールヘイズ』の黒鉄さん?」
「知り合いか?」
「ええ。カラフルブーケに並ぶ柊校舎のエースチームのリーダーですわ。しばしばスカラ校舎に出入りしているとは聞いていましたが……」
「ええ。あの方は私たちのリーダーのお気に入りでして……定期的に『お遊び』に付き合っていただいているのです」
スカラ校舎の見学場。チーム「カオスメイデン」の偵察に来たシリウスシュガーの鳴滝七彩と指揮官は、目の前の模擬戦を見学していた。カオスメイデンリーダーのユリア・バーンズ対スティールヘイズのリーダー、
そう答えたのはカオスメイデンの紫雲沙耶。茶道の名家出身らしい嫋やかな雰囲気で、2人の戦いを見守っている。シリウスシュガーの2人がこれから戦う相手であると理解しながら、敢えて見逃すその姿勢からはユリアに対する絶対的な信頼と自信が滲み出ていた。
「これは、とてつもないな」
双眼鏡で2人の戦いを眺める指揮官はその機動に感嘆の声を漏らした。
羽音の動きを理解して先読みするユリアと、それを食い破るように動く羽音。羽音は経験上、既にユリアの挙動を「こちらの入力に反応して先行入力してくるタイプ」として結論づけており、単発の攻撃など何の意味もないと考えている。そのため、右腕の突撃銃で相手を動かす、左肩のミサイルを回避先に置く、途中でブースターを吹かして白兵戦を仕掛けに行く、という風に、全ての行動を次への布石とすることで処理を強要している。ユリアも全ての行動に無駄がない羽音の動きを見てより楽しそうに笑いながら、さらにその操縦精度を高めていく。
「ユリアさんは常に敵機の照準の中心に映りません。たとえ一瞬映ったとしても、トリガーを引くまでのタイムラグでかわされる。ですから撃つこと自体が無意味になります」
「ですが黒鉄さんはそもそも照準の中心に入れる、という工程を挟みません。銃口の向き、敵機の位置、相対速度———それらを全て計算し、照準する間もなく撃ちます。無論その程度ユリアさんに予測できないはずがありませんが、彼女はそれすらも織り込んで自分が望む戦場へと誘導しているのです。そのあらゆる行動は、常に次の一手への布石となっている……そのぶつかり合いから生まれる珠玉の闘争をお二人は楽しんでいるのです」
「あの、わたくしにも分かるように説明してくださいまし……」
「まさに、
◇ ◆ ◇
『あはっ!すっごい置きエイム!どんどん熱くなってきちゃった!』
「そうかい、ならそのまま落ちろや……!」
『まだまだ!こんな楽しい時間、終わらせるわけないでしょー!』
ユリアは相変わらず笑っている。俺の置きミサとブレード、ブーストキックでいくらか削れてはいるが、まだ致命打とは言えない。なにせあっちは紙一重の避け方が上手いし他のパイロットと違って足癖も悪い。
MGは飛行可能という性能と引き換えに、装甲はやや薄い。だからこそ近づいて一気に仕留めるか、集団戦で弾幕を張り近づけさせない、という戦術が今や主流だ。その環境でたった一人飛び込んで殲滅する、なんて戦いが可能なのは俺とユリアぐらいのものだ。一回ユリアにアルテリア・カーパルス占拠やらせたらどうなるんだろう、と思ったことは一度や二度ではない。
だからこそ、私たちの戦いはいつだって限界ギリギリだ。
「ならこういう動きはどうだ?」
ブースターを吹かし、右足を軸に一回転、側面へ回り込む。当然ながらあっちも織り込み済み。しかし、向こうが完全に反応する前にクイックブーストめいた動きで一気に加速、背部のウェポンハンガーに突撃銃を預けて肉薄。
「この距離ならシンプルな殴り合いだッ!」
エクスプローラーの顔面に拳を叩きつけ、メインカメラにダメージ。
『あはっ!いいよいいよ、そういうのも面白そうだもんね!』
黎明の顔面にブレードが突き刺さる。頭を潰され、メインカメラがブラックアウトする。
「まだだっ!たかがメインカメラをやられただけだ!」
位置取りはもう頭に入っている。加えて今聞こえたブースター音、そしてユリアの性格から思考を分析し、相手の位置に当たりをつける。これで外したら負けだな、と思いつつその場から機体の立ち位置を身体一つ分外側へずらし、ウェポンハンガーから銃を受け取り。
「オールインだッ!全弾持っていけぇ!」
頭上でブレードを構えて急降下中のエクスプローラーに向けて弾切れも気にせずぶっ放す。ついでにミサイルも全弾投射、上空で回避どころではないエクスプローラーはそのまま被弾、撃墜判定をもらった。
『えっなんでバレたのってわぶぶぶぶぶぶ』
試合終了。これでこの前の4連敗の借りはちょっとだけ返した。
◇ ◆ ◇
「うわーーん!負ーけーたー!」
「ユリア、最後に意表突きたくて下にブースター吹いたでしょ。ちょっと欲張りすぎたんじゃない?あのまま斬った方がよかったでしょ」
「いや、あれどうにかできるのあなただけだと思いますけど」
「そう?練習すれば誰でもできるよ、きっと」
「普通の人はメインカメラ潰されたら負けなんですが???」
拗ねるユリアに分析を告げると、カオスメイデンのママこと劉翠蘭がドリンクを両手に近づいてきた。
彼女は正常な人間が殆どいないスカラ校舎のなかでも数少ない「殆ど以外」の側に属する。問題児揃いのカオスメイデンの参謀役として皆を纏める姿はまるでママ。特にユリアのママをすることが多いので私も敬意を表して翠蘭ママと呼んでいるのである。
「そういえば、今お宅のシリウスシュガーが偵察に来てるみたいですよ、沙耶が対応したそうです」
「あ、そうなの?やるじゃん。敵を知り、己を知れば百戦危うからずって感じ?まぁそれでユリアに勝てるかは知らないけど」
「あはは、また羽音が変なこと言ってるー。またソンシって人の名言集?」
「あなたもこういう奇行がなければウチに誘ったんですがね」
「うーんスカラの人には言われたくないなあ!!!」
心外だー!と叫んだところで翠蘭ママの提案で一旦今日はお開き。ユリアが「やだやだー!もう一回やるのー!」と駄々をこねたが、思ったよりお互いの機体のダメージが大きかったので対戦は明日、シミュレータ室で十先をやる約束をして自室に帰った。
そういえば翠蘭も言ってたけど同じ柊校舎のシリウスシュガーに新任の指揮官がついて指導するんだっけ。確か負けが込んでて次負けたら退学だったような。
え、カオスメイデンに負けたら退学になるの?だいぶきつくない?
その後、カオスメイデンとシリウスシュガーの試合はシリウスシュガーが勝った。マジかぁ。
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