西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
自分の都合しか考えず、他人を妬むのが人間。
家族、仲間、友達のために他者を苦しめるのも人間。
信じる人のために、その人の願いを妨げる障害を排除するのも人間。
普段馬鹿にしている奴に自分を重ねてみろ、何が違う?
劣っている?
頭が悪い?
根性がない?
音痴?
物事すべて真実だけで回るのは夢物語。
自分の周りは本当に平和で誰もが幸せか?
集団の中で劣っている馬鹿を貶してないか?
他人をクズ呼ばわりする前に自分を鑑みろ、胸を張って誇れる人間はどれだけいる?
ただ暮らしているだけで他者を傷つける人間が、真に皆が幸せな世界をつくるのは可能なのか?
理想郷は所詮理想でしかない。
次世代に平和を望むならそれこそ武力で弾圧し、ユートピアを作り上げろ。
子供を産ませてユートピアに適する世代をつくり続けろ。
その時初めて、平和が訪れる。
だが――――――未来を思おうが、その時代を生きているのは我々自身。
数値だけで物事を判断する人間は確かに優秀だが、好かれないし人間味がない。
感情論で判断する人間は評価はされるが他人から脳筋、物事を見据えていないなどと伐倒される。
『木原』は数値と感情の両方をみる。
数値と結果だけを求めるなら『木原』は名乗れない。
どれだけ時間が掛かろうが、効率が悪かろうが、『木原』らしさがそこになければ『木原』とは言えない。
数値で最も効率的な実験を模索しても、そこに『木原』がいるだけで台無しだ。
けどだれも逆らえない。
某科学者の想定した結果など優に超え、『木原』は結果、課題、改善点、その先まで導き出してしまう。
『木原』は人間を数値として認識しつつ、『木原』としての感情と相手の感情に正直で敏感だ。
この場合相手の感情の在り方で、『木原』に気に入られるかか決まる。
優柔不断なゴミや、使えないクズは要らない。
人間の感情を何より科学的に理解している木原だからこそ、感情の大切さを理解している。
『木原』は効率厨を敬遠するし認めない。
目的を達成するには感情は不可欠。
だけど、『木原』が他人の都合を優先するかは――――――その『木原』の個性に委ねられる。
明後日、壁は崩壊しガストレアとの全面戦争がはじまる。教授にすべてを捧げる身として、ここで死ぬわけにはいかない。教授とエヴァ……百歩譲ってももかも大切だとしよう。人を殺し、裏社会で身を置いている僕がこの一年間で友達が増えた。一見不良ぶっている片桐玉樹と生意気でツンデレの片桐弓月。先輩の先輩で認めたくはないが僕より武術が強い薙沢彰磨と恥ずかしがり屋の布施翠。ペアなんていらないんじゃと思わせる剣豪天童木更と天然スナイパーティナ・スプライト。いつもその明るさで周りに元気を振り撒いている藍原延寿。そして――――――
「我儘になったものだな僕も……失いたくない」
見失いたくない。
試練を与え、耐え、苦行を乗り越えてこそ輝くというが、試練にはその人のぴったりな苦行じゃないと相応しくない。そう――――――あの人に相応しくないんだ。
「いくらなんでもやりすぎだ。
汚い奴らだ。
「僕たちが目指す世界にゴミは要らない。未来を見据えず、停滞し、過去に囚われた愚か者など以ての外!!」
なんの戦闘手段のないゴミクズが群れをなしてわらわらと――――――不愉快だ。
「……目障りだ」
証拠も血痕も残さない。
一撃で心臓を破壊する。
「な……何なんだよテメェ―!!?」
「ザッケンナァ!!」
「壁が崩壊すんのも、内側にいるガストレア共がおびき出したせいだ!!」
うるさい塵共だ。
「僕は慈悲深い……痛みもなく終わらせてやる」
「ヒッ!」
そこからは一方的な虐殺。一撃で心臓を破壊し、肉塊を量産した。
此処は外周区・第三十九区――――――太陽が昇れば子供たちが集う場所でもある。
残すところ一日になった。朝から風が強く、テントの天幕をはためかせていた。
「行くのか、今日も?」
「ああ」
テントの戸口で見送りをする薙沢彰磨はいつになくしかつめらしい顔をして立っている。
「なんでいまさら学校に行く必要があるのさ?わけわかんない」
隣のボサボサに跳ねた金髪を撫でつけている片桐弓月に、延寿は元気よく腕を振り上げて答えた。
「こんな時だからこそいくのだぁ!!」
「はぁ?」
心底理解できないという弓月の声に、俺自身も何故こんな行動をとるのか上手く他人に説明できる自信はない。
残すところ一日、今日一日を完全自由に決めたのは民警をまとめ上げている我堂長政だ。今日で最後なので自由を満喫しろとの意図らしい。確かに、いま会わなければ恋人や家族と今生の別れになる可能性はある。そして俺は、最後の自由になる日を『蓮太郎先生』として過ごすことを、ごく自然に当然として選択した。
「未練が増すだけじゃねぇのか?」
片桐玉樹はいぶかしむ表情をする。
「かもしれねぇけど最後の挨拶をしないとな」
「ふん、わかってんならまあ、湿っぽくならないよう気を付けるんだな」
「お前らは?」
片桐兄妹が顔を見合わせる。
「オレっちは明日に備えてたらふく美味いもん食って寝る」
「お前ら、他にやることねぇのか?」
「家族親戚あらかたガストレアに食われちまったしな、別れを言う相手もいねぇよ」
質問したことを後悔した。
「…………お前たちは、ガストレアに復讐するために民警になったのか?」
「さーて、どうだかな。そう七面倒くさいことは考えねーようにしてっから」
「いや、考えないようにしてるってそんな――――――!!」
「ガストレアとの戦いに恨みを持ち込むやつは早死にすっからな」
胸を突かれた気がした。玉樹はズレたサングラスから覗く鋭い瞳を見られるのが嫌がるように、中指でブリッジ部を押し上げる。
「まあ強いて挙げるなら誰かの笑顔のためかな。よしッ!!マイスウィートォォォオオ!!明日に備えてもうひと眠りすっか」
余程眠いのか、弓月は頷くとそのまま寝床に戻っていく。蓮太郎は先ほど垣間見た玉樹の表情を見て複雑な心境になったが、無理矢理気持ちを切り替える。
「彰磨兄ぃはどうすんだよ?」
彰磨は天童式の道場では蓮太郎の兄弟子、本当の兄弟ではないけど兄のように慕っている。彰磨は傍らの翠を見る。
「もう少し経ったら二人で修行を開始するつもりだ。いざというとき体が動かないようでは困るからな」
片桐兄妹にしても彰磨ペアにしても、随分淡泊な話だ。まあ彼らからしたら、のんきに学校に行っている自分たちも危機感が欠如しているか。その時、テントからティナが飛び出してきて申し訳なさそうな表情で「さきに行っててください」とぺこりと礼する。木更さんよティナの立場が遂に逆転した瞬間だった。いまから、最短でたどり着いても大遅刻だが。
こうして最後の一日は粛々と始まった。三十九区行きの切符を買い電車に乗る。朝の陽ざしがポカポカと暖かい。今日が東京エリア最後になるかもしれない日だと、とても思えなかった。明日になれば千体のガストレアを率いるアルデバランとの決戦になる。二千体のガストレアもアルデバランも想像を絶する強敵として立ちはだかる。蓮太郎がかつて経験したことのない激闘になるのは必至だ。蓮太郎も延寿も生きて呼吸をしている確証がない。だから、なのか――――――残された時間の短さが、こんな何気ない時間さえも、かけがえのないもののように世界を輝かせる。
「延寿、学校は楽しいか?」
延寿は目を細めると、気持ちよさそうな表情で蓮太郎の胸に頭をこすり付けてくる。延寿から甘い日向の匂いがした。
「うん、とってもたのしいぞ。ありがとうな、蓮太郎」
「もし楽しいなら、それはお前が頑張っているからだ」
延寿は顔を上げると、胸にしがみ付いたまま首を横に振った。
「妾は知ってるんだぞ。蓮太郎と木更が夜こっそり電卓を叩きながら、妾のいけそうな場所で、一番良いところを探してくれたんだって」
「覗いてたのか?」
複雑な心境になる。こういうリアル鑑定はあまり子供に知ってほしいところではない。
「妾、蓮太郎に感謝している。……まあ、木更にもちょっと感謝している」
延寿の頭に手を回し、胸に抱く。
「なら、頑張った甲斐があった」
「蓮太郎は、先生やるのやっぱ楽しくないのか?」
「そうだな……」
がタンゴトン、車窓に流れる廃墟を眺めながら今日までの出来事に思いを寄せる。建物は瓦礫に、空だけが漠然と広がっている。
「楽しいよ」
「え?」
一度認めればこんなにも楽なのか。
「きっかけは何であれ、楽しいよ。お前のおかげだ延寿、ありがとう」
最初は目を丸くしていた延寿も、徐々に表情の形が笑みになり俺の腕に抱き着いてくる。慌てて引きはがそうとしたが、延寿のとろけそうな顔を見て、黙って延寿を抱いた。
穏やかな時間が流れていく。列車は三十九区前に到着する。名残惜しいが延寿の背中を押し降りるよう促す。今日も超満員で教室で待っているだろう。列車を降りるとそこには意外な人物がいた。
「悠河?何でこんなところに?」
「……遅刻、素行不良に時間厳守は無理か」
「遅刻して悪かったな、てかマジ何でいんだ?」
先生をしているのは話したが、特に手伝うなどの話はないはずだ。
「いえ……自主的な掃除ですよ。生ごみが投棄されてたので片づけに時間がかかりまして」
「態々やってくれたのか?」
意外だ。子供たちには無関心だと思ってたのに。
「……そのせいか掴まりましてね。今の今まで玩具にされてましたよ。……さっさと行ってください。最後なんでしょ、蓮太郎先生」
「繋ぎの時間稼ぎと掃除サンキューな、今度礼させてもらうよ」
「ま、頑張ってください。ももかたたき起こしてくるんで」
アイツまだ寝てんのか。
「そうか、お前も頑張れよ」
最後の自由をどう過ごすのかはアイツが決めること。最後にしては、らしくないことをする。
「悠河も混ざりたいのか?」
「いえいえ、ただ先輩に貢献しただけです。後輩らしいことでもしようと。そろそろ行ったらどうです?待たせてますよ」
「おう」
「悠河、またな!」
教室まではそんなに遠くない。騒がしい声がここまで聞こえてくる。そこには希望が溢れている。夢が満ちている。――――――これで、最後なんだ。
一歩、教室に踏み込む。
「席に就けお前らッ!!授業始めんぞッ!!」
いつまでも続けばいいのに。
二〇三一年七月十二日午後三時十六分。
白化したモノリスが風の影響で一日早く崩壊――――――『第三次関東会戦』がまったく意図しないタイミングで始まった。
"シュヴァルツェスマーケン 紅血の紋章"の続編本当に今年の冬発売すんのかぁ!!?まってねーー!!あ、来年の一月アニメ化するのでよろしくお願いします。知らない方は、マブラヴを検索検索♪