息が止まる。全身を針で縫い付けられるような感覚がした。
「これで私たちを否定する邪魔者はいないし、早速魔女を倒しにいきましょうか」
あの人がなにか言っているが、もう何も聞こえない。
綺麗だと思っていた声が雑音に変わっていく。
「うぅ...」
「あら、まだ死んでなかったのね」
あの人が、モモの頭を踏みつける。それでも、身体は動いてくれない。
目の前の光景を嘘だと思いたいのに、この目は許してくれない。
「ぁぐ...」
「んー、あなたは別に魔法少女をバカにしてはなかったけど...」
あの人が、マスケット銃を創り、銃口をモモの頭に突きつける。
やめろ、とも言えない。ただ、小さく声が漏れるだけで。
「一人だけ残しても可哀想だし...それに佐倉さんには私がいるから別にいいわよね」
あの人は、銃をモモに突きつけたまま、クルリと顔をこちらに向けた。
「ねえ、佐倉さん」
あいつの満面の笑顔を見た時、血が滲むほど歯が噛み締められ、あたしは弾けるように駆け出した。
―――殺す
「ちょっと、なにをそんなに怒ってるのよ」
あいつがリボンであたしの槍を防ぐ。
そのままリボンごと突き刺そうとするが、あいつの蹴りが腹に入り、あたしが吹き飛ばされる。
―――殺してやる!
もう一度あいつとの間合いを詰め、槍を突き出すが、あいつにはただの一掠りもしない。
ならばと槍を本来の形である多節根に変え、あいつの全身を絡め取り、壁に叩き付けた。
少しだけあいつの顔が痛みを堪えるように歪むが関係ない。
そして、今度こそはと槍を突き出す。しかし右肩を撃たれ、槍を手離しはしなかったが威力と勢いを殺がれ、あいつにまた躱された槍は空しく壁を壊すだけだった。
「乱暴な戦い方ね」
―――絶対にお前を許さない!
痛みを無視して、あたしはあいつのもとへ駆け出す。
そして―――ドン、と銃声が、響いた。
どれくらい経ったのだろうか。
あたしは、まだ生きているみたいだった。
あいつにもそれなりの手傷は負わせれたようだが、もう姿が見えないことから、動ける程度のものだったのだろう。
「...父さん」
名前を呼ぶが、返事はない。
「...母さん」
辛うじて動く左腕だけで、床を這う。
「...モモ」
全力を出しているが、まだ遠い。
「......」
やっとみんなのところへ辿りついたと思ったら、眠くなってきた。
もう、なにをする気も起きない。全部投げ出したい。
そう思い、意識を手放そうとしたその時
かすかに聞こえる呼吸の音に、ちょっとだけ安心した。