異誕少女ノ魔女裁判   作:異誕少女ノ魔女裁判制作チーム

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2-8「第2回魔女裁判」

『予定時刻となりました。囚人のみなさんは裁判所へお集まりください』

 

 心ひとつこもっていない定型文が通知音と共に届く。もう時間だ。

 

「また、裁判が始まるんだ……」

 

 小さくため息が漏れる。緊張からか嫌気からかは判断ができなかった。どっちもかもしれない。

 けれど、また戦わなくてはならない。魔女を……クオレを殺した犯人を突き止めるために。

 

 最後にもう一度、集めた証拠品を見返しておこうと思い、スマホを取り出す。

 夜遅くだからと、今回も調査する時間は限られていた。その中でも調査はできる限りしたつもりだ。

 

 

《証拠品》

・2階フロアのシャンデリア(クオレの上に突き刺さったシャンデリア。【消えない火】でホールを照らしていた。死体が見つかる直前に火事が起こったが、火元はこれだ。シャンデリアは壊れて破片がクオレの周囲に散らばっている)

・シャンデリアを繋ぐ鎖(一部が折れてしまった鎖。老朽化が原因か。その割には錆ひとつ見当たらない)

・クオレの死体写真(クオレの変わり果てた姿。シャンデリアが腹部に刺さった状態で見つかった。【焦げた本】が左手付近に落ちている。よく見ると【後頭部にあざ】がある)

・焦げた本(クオレの近くにあった本。火に焼かれて表紙が焦げてしまっている。少し角が潰れている。落としたのだろうか)

・壊れたソードブレイカー(クオレが持っていた物だ。一部が折れた状態でクオレの近くに転がっていた)

・2Fホールの天井(大きな血痕があった。返り血にしては多すぎる気がする。クオレのダイイングメッセージかもしれない)

・2Fの廊下(現場近くの廊下には【複数の穴】と【引きずられた跡】があった。あまりにも不自然だ)

 

(こんなものかな……)

 

「八重沢さん」

「……っ!?」

 

 振り返ると、ウメが心配そうにこちらを見ていた。

 

「もう大丈夫なの?」

「……そうっすね。あんまり、大丈夫ではないっすけど」

「無理はしないで。あなたはひとりじゃない。……そうでしょ?」

 

 そう言われ、この間、酷く落ち込んだ時にたくさんの人が来てくれたことを思い出す。

 

「……はい。行きましょうか」

 

 ウメと頷き合い、裁判所の扉を抜ける。

 

 

 

 裁判所には既に皆が集まっていた。暗い表情で、自分の証言台の前に立っている。

 なんだか空気が暗く重たい。夜遅くだからとか、色合いとか、そんなもののせいでは無いのは間違いない。

 

(事件なんて起こらない。……そう思えてきたところだったのに……)

 

 自然と拳に力が入る。

 と、肩を軽く叩かれて顔を上げる。そこには険しい表情のレイが居た。

 

「……さぁ、行くんだ」

「あ、そっすね……」

 

 立ち止まっている場合ではない。自分の番号の席に立つ。

 

――どさっ

 

「痛っ⁉︎ ちょっと、乱暴に扱わないでください!」

「……っ⁉︎」

 

 何か音がして振り返ると、裁判所の入口でルナが座り込んでいた。側には看守が佇んでいる。どうやらルナを担いで来たらしい。

 ルナがホコリを払いつつ立ち上がると、看守は『早く行け』と言わんばかりに鎌を構えて見せた。

 

「はいはい……ふぁあ……行きますよ」

 

 欠伸混じりにルナは呟きながら、ようやく自分の席に立った。

 

(……この状況で、どうしてあそこまでマイペースで居られるんだ……?)

 

 もはやここまで来ると尊敬できる。怖いもの知らずにもほどがあるというものだ。

 

「よぉ、オマエら。ようやく揃ったな」

 

 上の方からの声に前へ向き直る。風が吹くようにどこからともなく現れたツカイマが、尻尾を振っていた。

 

「くぁ〜あ……。はぁ……本来ならとっくに消灯時間なんだぜ? 分かってんのか? オマエらが懲りずに殺人事件なんて起こすから……」

 

 呆れてるような、怒っているような、ツカイマはどちらとも取れる口調で欠伸する。眠そうなのは間違いないだろう。

 

「まぁいいや。さっさと始めて、さっさと終わらせようぜ」

「同感だ。すぐに始めよう」

 

 刃物でも当てられたような、冷たく鋭い声に思わず背筋が伸びる。声の主の方を見る。目が据わったレイが冷たくツカイマを見ていた。恐ろしいほど無表情だ。感情が読めない。

 だがツカイマは気にも留めず、淡々と進行を続ける。

 

「改めて言っておくぞ。オマエらにはこれから1時間の話し合いをして、【誰が魔女か】を決めてもらう。その後、オマエらの中で処刑する【魔女】を1人選んでもらう。必ず1人を選ぶように」

 

 そして「何か質問は?」と私たちに問いかける。それに答える人は居なかった。

 

「それじゃ、これより魔女裁判を開廷する」

 

 ツカイマがそう宣言すると、始まりを告げる鐘の音が響いた。

 

(……クオレさんのためにも、絶対に真相を明らかにするんだ……!)

 

 魔女裁判が、始まる。

 

 

 

 

―審問開始―

 

 

レイ  「……まずは被害者の話をしよう。殺害されたのは純霓クオレ。死体発見場所は2階ホール。シャンデリアが突き刺さった状態で見つかった」

 

アヤフミ「火事が起こって、ツカイマさんが消火したら……クオレさんが見つかったんですよね……」

 

テミ  「まるでホラー映画みたいでした……」

 

ユリ  「……シャンデリアが、その、クオレさんを貫いていて……うぅ」

 

ウメ  「純霓さんの上にシャンデリアが落ちてきた……。……【事故死】だったりするのかな」

 

ルナ  「……笑わせないでください。誰かが【故意に落として殺した】んですよ」

 

レイ  「何か証拠はあるのか?」

 

ウメ  「証拠は……」

 

ルナ  「……ありませんね」

 

レイ  「…………可能性を提示するのは良い。だが、証拠が無ければただの妄想だと、前回……彩果ニーナに言われたのを、もう忘れたのか?」

 

シルベ 「レイさん……」

 

レイ  「……クオレにシャンデリアが突き刺さっていた。それは事実だ。だから【何かがあってシャンデリアが落ちた】のは間違いない」

レイ  「だが、クオレは落ちてくるシャンデリアを、自身の体で受け止めることを選ぶだろうか?」

 

アヤフミ「……クオレさんなら、簡単に(かわ)してみせますよね、きっと」

 

シルベ 「うん、僕もそう思うよ。クオレさんはレイさんの斬撃を見切れる動体視力と、それに対処できる反応速度を持っていたんだ。この目で見たから間違いないよ」

 

レイ  「つまり、クオレはシャンデリアが落ちてこようと避けられた。……【何事も無ければ】」

 

スミレ (…………もしかして、あれのことを言おうとしてるのかな)

 

ウメ  「でも、純霓さんはシャンデリアを避けなかった」

 

リチ  「【避けられなかった】。……そういうことなのかな?」

 

ルナ  「はっ、じゃあなんですか? その時にあの軍人女が【本調子じゃなかった】なんて言いたいんですか? その時のことなんて分かるはずありません。それこそ、証拠があるんですか?」

 

レイ  「勿論、ある。……そうだな、八重沢スミレ」

 

スミレ 「え!?……はい、えっと……」

 

ルナ  「どうなんです、ちんちくりん」

 

スミレ (ちん……いや、それはもういい)

スミレ (シャンデリアが落ちてくる時、クオレさんが本調子じゃなかった証拠。おそらく、あれのことだ)

 

 

提示>【死体写真】

 

 

スミレ 「これを見て欲しいっす」

 

ウメ  「純霓さんの死体写真……?」

 

ルナ  「これがどうかしたんですか?」

 

スミレ 「よく見るとクオレさんの後頭部にアザがあるっすよ」

 

アヤフミ「……あ、ほんとですね。暗くて分かりにくいけれど、頭に不自然なケガがあります」

 

ウメ  「夕食の時はなんともなさそうだったよ……って、まさか」

 

レイ  「そうだ。クオレは当時、【頭に怪我をしていた】。……死体を調べた結果分かったが、かなり深手の打撃痕だった。体を動かす事は疎か、立っていられない状態だった事は容易に想像できる」

 

ペティ 「ちょっと待てよ。クオレが殴られたって言いてぇのか?」

 

レイ  「そうだ」

 

ペティ 「そりゃねぇだろ。あのクオレだぜ? それに、何で殴られたってんだよ?」

 

ウメ  「……確かに、純霓さんの近くに凶器は無かった……と、思う」

 

リチ  「ダストシュートには何も無かったよ」

 

アヤフミ「医務室も何も……シンクが使われた形跡もありませんでした」

 

シルベ 「【壊れたソードブレイカー】が落ちてたけど……クオレさんから奪うなんて現実的じゃないし、これも違いそうだね」

 

ルナ  「凶器が見つからなかったんですか? まさか、誰か【隠し持ってたり】しませんよね?」

 

シルベ 「【誰かが隠した】……あ、そうか!」

 

スミレ 「……シルベさん? 何か分かったんすか?」

 

シルベ 「うん。もしかすると……【透過】の魔法が使えるテミさんなら、凶器なんていくらでも隠せるんじゃないかな?」

 

ウメ  「……そうなの?」

 

テミ  「…………え? わ、私が……犯……人?」

 

ユリ  「そんな……テミさん、嘘ですよね……?」

 

テミ  「ちっ、ちがっ……私は、そんなことしてな……」

 

ルナ  「……消えましたね」

 

レイ  「はぁ……良いか、話を先に進めても」

 

シルベ 「えっと……ごめん?」

 

 

>反論:凶器は近くにあった

 

 

スミレ 「凶器は隠されてなんかないっすよ」

 

レイ  「ああ。灯台下暗しとはよく言ったものだが……凶器として一番可能性が高いもの。それはすぐそこにあった。そうだな、八重沢スミレ」

 

スミレ 「は、はい。それは――」

 

 

>提示:【黒焦げた本】

 

 

スミレ 「――これっす」

 

アヤフミ「それは……クオレさんの近くにあった本?」

 

ウメ  「随分と焦げてるけど……それが何?」

 

スミレ 「よく見て欲しいんすけど、この本、角が潰れてるんすよ」

 

ルナ  「落としたんじゃないですか?」

 

ユリ  「……落としたくらいじゃ、こんな潰れ方はしないと思います。すごく、硬いものに、叩きつけでもしない限り……」

 

テミ  「あれ……それって……」

 

リチ  「人の頭って、実はとっても硬いんだよ」

 

アヤフミ「それでクオレさんの後頭部を殴打した……ということでしょうか」

 

レイ  「その可能性が高い。どういう経緯でそれに至ったかはともかく……犯人は本でクオレを殴った後、小火騒ぎで【証拠隠滅を図った】のだろう。焦げているのが何よりの証拠だ」

 

スミレ 「その意見に賛成っす! シャンデリアの火は【消えない火】だってツカイマが言ってたんすけど、それを知っているなら、普通に考えて絶対に証拠を隠滅できるって思うはずっすよ!」

 

ルナ  「そんなこと、知りませんけど。その情報を事前に知ってた人が犯人ということになりません?」

 

ウメ  「え、あんた知らなかったの?」

 

ルナ  「は? 別に、アナウンスも何も無かったと思いますが」

 

リチ  「あれ~? ねぇねぇツカイマ、シャンデリアのこと、皆に話したんじゃないの?」

 

ツカイマ「え? いや、別にオレっちに説明義務とかねぇし。シャンデリアを見に来たヤツらに暇だから教えてやっただけだぜ」

 

ルナ  「なんですか、それ。じゃあ、全員が知ってるってことですか?」

 

テミ  「……まぁ、そうじゃないですかね」

 

ユリ  「い、一度は、見に行きますよね」

 

ペティ 「アタシでも知ってたぞ。どんだけ引きこもってんだよ」

 

ルナ  「バカバカしい。全員が知ってる情報なら、誰でも証拠隠滅にその火を使えたってことじゃないですか。私以外の全員が容疑者ってことですよ」

 

レイ  「……確かに、そうとも言えるな。【シャンデリアの火】は【消えない】ことを知っている誰かが、それを利用しようとした。それは間違いなさそうだ」

 

シルベ 「だけど、【ツカイマはその火を消せた】。多分、犯人の想定よりもかなり早くね。結果、この本が証拠として残ってしまったんだ」

 

スミレ 「ということは、やっぱりこの本が凶器だったってことなんすよ」

 

 

アヤフミ「ちょっと待ってくださいよ。凶器って……クオレさんをそれで殺したってことですか……?」

 

ペティ 「あ? いや、本はクオレに傷を負わせた原因ってだけで、それで殺したってワケじゃねぇだろ?」

 

レイ  「ああ。傷こそ深かったが、あれで死に至るとは考え難い。もちろん、今回の【凶器】とは、傷害を与えるために用いたもの、という意味だ。死因はそれではない」

 

リチ  「クオレちゃんのお腹に刺さってたシャンデリア……あれが死因だよね」

 

ルナ  「そんなの見れば分かりますよ、おしゃべり妖怪さん。それより、そのシャンデリアがあの赤髪の上に【どうやって落ちてきたのか】。その原因の方が大事では?」

 

レイ  「そうだな、話を戻そう。死因はシャンデリア。だから【何かがあってシャンデリアが落ちた】のだが……その【何か】について話をしよう」

 

 

ペティ 「そういえば、クオレの近くに【壊れたソードブレイカー】が落ちてたよな?」

 

スミレ 「あ、そうっすね。写真はこれっす」

 

シルベ 「壊れちゃってるよね。僕が最後にクオレさんを見た時はそんなことになってなかったけど」

 

リチ  「そーどぶれいかー……って何?」

 

ユリ  「え、ええっと……剣を壊すための剣、と言えば良いでしょうか。櫛のようになっている部分に相手の剣を噛ませて折る……そういう用途で使われる物、ですね」

 

リチ  「へぇ~。じゃあ、そのソードブレイカーって壊れてるし、誰かの剣を折ろうとして失敗しちゃったのかな?」

 

ルナ  「お馬鹿さんは黙っててください。写真のそれは派手に壊れています。剣を壊すために作られたなら、強度が剣よりもないとおかしいんですよ。それがこうなってるということは、用途外の使い方をしたに決まっています」

 

ウメ  「……だから、シャンデリアの鎖を叩き折るのにソードブレイカーを使ったって言いたいの?」

 

ルナ  「私は最初からそう言ってますが?」

 

ウメ  「まだ、シャンデリアが落ちてきたのは【事故】って可能性が残ってると思うけど」

 

ルナ  「それはさっき、証拠が無いって言ってましたよね」

 

ウメ  「この屋敷は古そうだし、シャンデリアの鎖が錆てたりしていてもおかしくないと思う。八重沢さん」

 

スミレ 「は、はい。えっと、写真を出せば良いんすかね……?」

 

ウメ  「うん。鎖がシャンデリアの重みに耐えきれずに落ちてきただけなら、鎖を見れば分かるはず」

 

スミレ 「写真はこれっす」

 

リチ  「……鎖、壊れちゃってるけど、綺麗だね」

 

ウメ  「錆びてる感じは無い……ね」

 

ツカイマ「あったりまえだ! オレっちは綺麗好きのカワイイ猫様だからな、屋敷の手入れは抜かりねぇ!」

 

ルナ  「はっ、どうやら、シャンデリアが自然に落ちてきた……【事故】という線は無くなったようですね」

 

ウメ  「……ツカイマ。なんで先に言ってくれないの」

 

ツカイマ「は? 聞かれてもないのに答えるワケないだろ」

 

レイ  「後にしろ。……とにかく、シャンデリアは誰かによって落とされた。そしてそれは、犯人が火事を起こして全てを消し去ろうとした事を裏付ける根拠になる」

 

シルベ 「だから、もっとも可能性が高い、ってことだね」

 

レイ  「ああ、そうだ」

 

 

ペティ 「で、でもよ、だからって、鎖を叩き折るなんて……無理じゃねぇか?」

 

レイ  「どうしてそう思う」

 

ペティ 「だってよ、シャンデリアの鎖だぜ? そもそも手が届かねぇし、手が届いても、ロウソクの火で火傷しちまうだろ」

ペティ 「それに、ホール内にはハシゴも無かった。ソードブレイカーで鎖を叩き折るなんて【不可能】だぜ」

 

シルベ 「うん、それは僕も同意見だよ。レイさん、可能性がもっとも高いとは言うけれど、不可能だったら選択肢から除外するべきじゃないかな」

 

レイ  「なるほど。……それであれば、別の視点から当時の状況を推理しよう」

 

スミレ 「【別の視点】……?」

 

シルベ 「もしかして、【天井の血痕】のことを言おうとしてるの?」

 

レイ  「ああ、そうだ」

 

スミレ 「そういえばあの血痕、私も気になってたんすよ。これなんですけど……」

 

アヤフミ「ひっ……! す、すごい量……。……返り血、にしては多い気がしますね」

 

ウメ  「純霓さんの【ダイイングメッセージ】……とか?」

 

ルナ  「それにしては、何を表しているか分かりませんね。文字でも記号でも無い。絵のようにも見えません」

 

シルベ 「うん。僕も上下逆にしたりしてみたけど、何も分からなかったんだ。レイさん、これから何が分かるの?」

 

レイ  「……まずは、その血痕について整理しよう。八重沢スミレ」

 

スミレ 「は、はい」

 

レイ  「【天井の血痕】はクオレの返り血であり、返り血ではない。そうだな」

 

スミレ (な、何? なぞなぞ……?)

スミレ (いや、違う。きっとレイさんはあれのことを言ってるんだ)

 

 

>提示:【シャンデリアの写真】

 

 

スミレ 「シャンデリアの写真を見て欲しいんすけど、シャンデリアにはほとんど血が付いてなかったんです。それなのに、天井には血が付いていた……」

 

リチ  「まるで、シャンデリアをすり抜けちゃったみたいだね」

 

スミレ 「そ、そうなんすよ。でも、そんなこと普通は【あり得ない】」

 

ウメ  「何が言いたいの?」

 

スミレ 「つまり、不可能を可能にした何かがあったんすよ。それは――」

 

 

>クオレの【魔法】

 

 

スミレ 「――それは、【魔法】っす」

 

アヤフミ「あ、そっか。クオレさんの魔法は【血を操る魔法】。もしかして、クオレさんは魔法を使って返り血を天井に……?」

 

スミレ 「そうとしか考えられないっす」

 

ウメ  「でも、それが何? 純霓さんが魔法で天井に血を付けたとして、何も意味が無いと思うけど」

 

ルナ  「珍しく意見が合いましたね。あれはダイイングメッセージとしては機能していないように思えますが?」

 

スミレ 「そ、それはそうっすけど……」

 

レイ  「いいや、意味はある。クオレはシャンデリアが突き刺さった時点で、まだ意識があったんだ」

 

シルベ 「……なるほど、あの量の血が用意できるタイミングって、そこしかないもんね」

 

レイ  「そして意識がある中、魔法を使うタイミングがあれば、クオレは犯人に反撃しようとするはずだ。だが、クオレは【反撃しなかった】」

 

ペティ 「シャンデリアの影に隠れて犯人が見えなかっただけじゃねぇのか?」

 

レイ  「考えてみろ。推理通り、ソードブレイカーで鎖を叩き折ったとしたら、犯人はどこに居る?」

 

ペティ 「え? まぁ、ソードブレイカーのリーチを考えたら、天井近くに居るかもな」

 

シルベ 「あれ、じゃあ上を向いていたはずのクオレさんからは見えるはずだよね?」

 

ペティ 「あ、そうじゃん! 見えないなんて変だ!」

 

レイ  「だが、クオレは【反撃しなかった】。これが示すのは――」

 

 

>同意:反撃できなかった

 

 

スミレ 「――犯人はそこに居なかった。そういうことっすね」

 

レイ  「そうだ。見える範囲に攻撃対象が居なかったはずだ。もし居たとしても、ペティの言った通り、シャンデリアの影に隠れる位置……つまり、地上に居たのだろう」

 

ペティ 「ちょっと待てって。おかしいだろ。地上に居たら、ソードブレイカーで鎖を叩き折るなんて無理だぜ?」

 

レイ  「ああ。その【矛盾】をクオレは残したかったんだ。きっとそのために、最後の力で【魔法】を使った。……そう考えられないか?」

 

シルベ 「なるほど、さすがレイさん。そう言われるとそうとしか考えられないや」

 

 

スミレ 「…………」

 

 

ウメ  「ん? でも結局、ソードブレイカーでシャンデリアを落とすのは【不可能】って結論は変わってないよね?」

 

アヤフミ「あ、本当ですね……。……今の話から分かるのは、犯人はクオレさんの視界外に居たこと、そしてそこから鎖を壊したこと」

 

リチ  「シャンデリアに近付いて鎖を壊すだけでも無理そうだったのに、地面に立ってなんて、もっと無理そう……」

 

ルナ  「どういうつもりですか? 早く結論を言ってください」

 

レイ  「ああ、良いだろう。シャンデリアから離れた状態で鎖を叩き切る……そんな事を可能にするのは、【これ】しかない。そうだな、八重沢スミレ」

 

スミレ 「……」

 

スミレ (やっぱり、そうなのかな。でも今は……レイさんを信じるしかない)

スミレ (これは【告発】だ。犯人を示す可能性を……ぶつけるんだ)

 

 

>【魔法】

 

 

スミレ 「……【魔法】っす。【不可能を可能にする】……それが、【魔法】」

 

レイ  「そうだ。犯人は【魔法】を使ってシャンデリアの鎖を叩き切ったんだ」

 

スミレ 「そしてそれは――」

 

 

>【魔法】→【切断】の魔法

 

 

スミレ 「――【切断】の魔法」

 

レイ  「――っ」

 

ペティ 「お、おい、それって……!」

 

シルベ 「す、スミレさん!?」

 

スミレ 「レイさん。……前に言ってたっすよね。【切断】の魔法は、【何かを断ち切る】魔法だって」

 

レイ  「…………それで?」

 

スミレ 「レイさんの魔法なら、離れた位置にあるシャンデリアの鎖も切れるんじゃないっすか?」

 

シルベ 「待ってよ! じゃあ、レイさんがクオレさんを殺したって言うの!? そんな訳ない!」

 

ペティ 「そ、そうだぜ! 第一、【証拠が無ぇ】じゃねぇか!」

 

スミレ (いや、そうじゃない。可能性を示す根拠はあったはずだ……!)

 

 

>反論:【2F廊下の状況】

 

 

スミレ 「この写真を見て欲しいっす」

 

レイ  「……ホール前の廊下か」

 

シルベ 「あ……!」

 

ペティ 「な、なんだよ、それが何だって言うんだよ」

 

スミレ 「廊下の壁に小さな穴が空いていたんですよ。誰かが空けた穴のはずっす」

 

ユリ  「銃痕……という訳では、あ、ありません……よね」

 

テミ  「銃を持っている人なんて居ませんし、そもそも銃がありませんし……」

 

アヤフミ「画鋲なんて無かったと思いますし、どうやって空けたのでしょうか」

 

シルベ 「……実は、思い当たることがあるんだ」

 

レイ  「言ってみてくれ」

 

シルベ 「うん。この穴なんだけど、多分、クオレさんが空けたんじゃないかな」

 

レイ  「どうしてそう思う?」

 

シルベ 「前に狩りをした時、クオレさんが【血の針】を飛ばして攻撃していたのを見たんだ。針の大きさもちょうどこの穴くらいで……だからこれって、クオレさんが【血の針】を飛ばした痕なんじゃないかな」

 

スミレ 「その意見に賛成っす。おそらく、クオレさんはこの場所で犯人と争ったんだと思うんです」

 

レイ  「……クオレが意味もなく壁に穴を空けるとは考え難い。【誰かと争った】可能性は高そうだ」

 

スミレ 「そして、この廊下……【何かを引き摺った跡】があるんすよ」

 

ウメ  「……そんなのあるの?」

 

リチ  「あ、よく見たらあるよ! 赤いカーペットに紛れて分かりにくいけど、線みたいなのが見えるね~」

 

ペティ 「お、おい……まさか」

 

スミレ 「そうっす。おそらくクオレさんがそこで負けて、ホールまで引き摺られた……その跡だと思うんです」

 

ペティ 「冗談じゃねぇ! クオレが負けたって……クオレに【勝てる奴】なんて……」

 

レイ  「…………」

 

スミレ (そうだ。この証拠から推理できる廊下での出来事。これが可能なのは、1人しか考えられない)

 

 

>指名:叢雲レイ

 

【挿絵表示】

 

 

スミレ 「……レイさん、あなたにしか、できないはずなんだ」

 

レイ  「…………」

 

スミレ (本当はレイさんを疑いたくなんかない。クオレさんの死を、誰よりも悲しんでいた。誰よりも怒りを感じていたはずなんだ。そんなレイさんがクオレさんを殺したなんて考えたくない)

スミレ (お願い、レイさん。否定して……)

 

シルベ 「レイさん……どうして黙ってるの? 反論してよ!」

 

ルナ  「ふんっ、事実だから反論しないのでしょう? 散々誘導しておいてこれですか。恐ろしいですね、魔女というのは……」

 

レイ  「……ああ。確かに恐ろしいな、魔女というのは」

 

ウメ  「叢雲さん……」

 

レイ  「まさかここまで追い詰められる事になるとは思わなかった」

 

スミレ 「……っ」

 

シルベ 「じゃ、じゃあ……」

 

 

レイ  「――だがその言葉、切らせてもらう!」

 

【挿絵表示】

 

 

スミレ 「……っ!」

 

シルベ 「レイさん……!」

 

レイ  「私の【切断】の魔法では、シャンデリアの鎖はそのように壊れたりしない。だから、私が切ったものでは無いんだ」

 

ルナ  「何を言い始めるかと思いきや、呆れました。口ではなんとでも言えますよ? 証拠を出してください」

 

レイ  「まぁ、そうだろうな。……仕方ない。ツカイマ」

 

ツカイマ「ん?」

 

 

レイ  「【月は出ているか】?」

 

 

ツカイマ「なんだって?」

 

レイ  「月が出ているのかと聞いている」

 

ツカイマ「あーあー、はいはい。月ね」

 

スミレ (何が始まるんだ……?)

 

 

ツカイマ「喜べ! 今夜は綺麗な満月だぜ!!」

 

 

レイ  「……そうか。これも何かの巡り合わせなのかもしれないな。シルベ。持っていろ」

 

シルベ 「わっ!? 重たっ……いつもこんなの持ち歩いてたの!?」

 

スミレ (シルベさんに刀を渡した……レイさんは丸腰だ)

 

レイ  「良いだろう。今から見せてやる。我が【月光】を」

 

ペティ 「ど、どうしたんだよ、レイ」

 

レイ  「努々(ゆめゆめ)忘れるな。この輝きを、そして……私が刀を抜いた事を」

 

スミレ (丸腰なのに刀を抜こうと構えてる。あれは……事故でイトさんを切った時も見た構えだ)

 

レイ  「ツカイマ。何か金属製で切って良いものはあるか?」

 

ツカイマ「ん~……これとかどうだ?」

 

スミレ (金ピカの……魔法使いみたいな子の銅像……? どっから出したんだ……?)

 

シルベ 「なにそれ。フィギュア? 銅像ならぬ、金像だね」

 

レイ  「造形物を切るのは少し忍びないな。もっと小さくて良い。他に無いか?」

 

ツカイマ「残念。じゃあこれでイイや。投げれば良いか?」

 

レイ  「コインか。申し分ない。いつでも良いぞ」

 

スミレ (手のひらサイズの小さなコイン。まさか、アレを切るとか……)

 

ツカイマ「ほらよ!」

 

 

レイ  「――【月光】」

 

 

アヤフミ「きゃっ――!?」

 

ペティ 「うわ! 眩しい!」

 

スミレ (……っ! 空中でコインが真っ二つに……! レイさんの手には何も握られてないのに……)

 

レイ  「……八重沢スミレ。コインを確認してみろ」

 

スミレ 「あ、は、はい」

 

スミレ (舞台装置の上を転がったコインの破片……これと、これか。うわ、断面平ら過ぎない……?)

 

シルベ 「よかったら僕にも見せてくれないかな」

 

スミレ 「もちろんっす」

 

ペティ 「おいおい……結構ちゃんと金属だよな、このコイン」

 

シルベ 「うん。でも、切り口を合わせたら元に戻りそうなくらい綺麗に切れてるよ」

 

レイ  「……改めて私の【切断の魔法】……いや、【月光】について説明しておこう。月光――【見えない光の刀】、それこそが私の魔法の本体。【月光】は光の刃を飛ばす事ができる。これで【(あら)ゆるものを切断】する事ができるんだ」

 

ルナ  「だったら、やっぱりあなたがやったんじゃないですか? 離れた場所から鎖を切ってシャンデリアを落とせると、証明したようなものですよ」

 

レイ  「何も分かっていないな。【鎖の切断面】をもう一度よく見てみろ」

 

ルナ  「は? 切断面……?」

 

スミレ (そ、そうか……! レイさんが言いたいことがなんとなく分かった気がする……!)

 

 

>【シャンデリアの鎖】

 

 

スミレ 「これっす。シャンデリアの鎖は……」

 

シルベ 「そ、そうか! 鎖は叩き折られてて【断面はガタガタ】だ!」

 

スミレ 「……レイさんの切ったコインの【断面はまっすぐ】だったっす。もし鎖をレイさんが切っていれば、同じようにまっすぐになるはずなんですよ!」

 

ペティ 「でもそうはなってねぇ! レイは鎖を魔法で切ってないんだ!」

 

ルナ  「はぁ……まぁ確かに、鎖は【切った】と言うよりは、【叩き壊した】と言う方が近いですね。ですが、それであなたの疑いが晴れた訳ではありませんよ、委員長さん?」

 

レイ  「い、委員長……」

 

スミレ 「でも! これで、レイさんがシャンデリアを落とした可能性は限りなくゼロに近くなったはずっす! やっぱり、レイさんはクオレさんを殺してないんすよ!」

 

レイ  「感情的になるな、八重沢スミレ。……犯人を特定するまでは、私が容疑者である事に変わりない」

 

スミレ 「……っ、レイさん……」

 

 

 

アヤフミ「ええっと……シャンデリアを落としたのがレイさんじゃ無いとして、廊下でクオレさんと戦ったのは誰なんでしょうか?」

 

ウメ  「そうだよね。結局、まだ何も分かってないよ」

 

レイ  「そうだ。状況整理はできたが、まだ何も始まってはいない。あの時、2階の廊下に居た可能性があったのは誰か、みんなのアリバイを確認するべきだろう」

 

シルベ 「分かった。火事が起こる前の時間、皆が何をしていたのか教えてくれないかな」

 

 

スミレ 「えっと……私はペティさんと厨房に居たっす」

 

ペティ 「そうだな……」

 

スミレ 「皿洗いの手伝いをしてたら、大きな音と振動が……」

 

リチ  「あ、私たちも聞こえたよ〜。おっきかったよねぇ」

 

ユリ  「わ、わ、私たちは、監房に居ました。テミさんと、リチさんと3人で……」

 

テミ  「……いろいろありましたので、最近の夕食後は、早めに監房へ戻るようにしていたんです」

 

シルベ 「じゃあ地下まで振動が伝わってたってこと? ……木造建築なら、あり得るのかな」

 

アヤフミ「…………私たちは――」

 

シルベ 「アヤフミさん?」

 

アヤフミ「――私たちは、応接間に居たんです。シルベさんと……クオレさんの3人で」

 

レイ  「待て。クオレはそこに居たのか?」

 

シルベ 「うん。ちょっと相談に乗ってもらっててね」

 

リチ  「相談? 何の相談をしてたの〜?」

 

スミレ (あ……)

 

シルベ 「えっと、ユウノちゃんのことで……」

 

ユウノ 「…………」

 

アヤフミ「その途中で……クオレさんは、『ユウノ様を呼んできます』って、応接間を飛び出しちゃって……」

アヤフミ「私があの時、強く止めていれば……こんな、ことには……うぅ……」

 

スミレ 「アヤフミさん…………」

 

レイ  「それは結果論だ。今は嘆いてる場合ではない。まだアリバイを話していない人は?」

 

ウメ  「私も監房に居たよ。……そこのツインテと会ったから、互いに証明できる」

 

ルナ  「ふん。今日もよく会いましたね。ストーカーでもしてるんですか?」

 

レイ  「後にしろ。これで全員か?」

 

シルベ 「あー……その」

 

ルナ  「この裁判が始まってからずっとだんまりの奴が居ますよね。そこの日陰女のことですが」

 

ユウノ 「……わ、わわ、私のことですか!?」

 

レイ  「そう言われるとそうだな。駒木ユウノ、何をしていたか教えてくれ」

 

ユウノ 「え、ええっと……私は、その……。……夕食後は、少し、お腹が痛くなって」

 

ペティ 「なっ!? だ、大丈夫だったか?」

 

ユウノ 「あ、い、いえ。ご飯は問題無かったと思います。……そ、その。単に、体調があまり良くなくて」

 

ペティ 「そうか……いや、それに気付けなかったアタシも悪いか」

 

シルベ 「大丈夫?」

 

ユウノ 「……(ぷいっ)」

 

スミレ (そっぽ向いてる……そういえば、まだ喧嘩中なんだっけ)

 

ルナ  「口ではなんとでも言えます。誰かこの根暗女を見た人は居ないんですか?」

 

ユリ  「わ、私たちは監房に居たので……」

 

ウメ  「別に、すれ違いもしなかったよ」

 

シルベ 「えっと……レイさんは?」

 

レイ  「私は見ていない」

 

ルナ  「誰も見てないんですか? というか、そこの委員長さんもアリバイがありませんよね? どこをほっつき歩いていたんです?」

 

レイ  「……」

 

ペティ 「レイは見回りをしてたんだよ。それに、ユウノがずっとトイレに籠ってたなら、誰も見てないのは当然だろ」

 

ユウノ 「……そ、その、すみません。夕食後すぐに駆け込んでしまったので」

 

ルナ  「はっ……最初からこうすれば良かったんです。アリバイの無いそこの2人が容疑者ってことですよ」

 

シルベ 「でも、夕食後からずっとトイレに入りっぱなしだったってこと? さすがに心配だよ、ユウノちゃん」

 

ユウノ 「……(ぷいっ)」

 

ルナ  「ああ、もう! 面倒なのでこいつらに何があったのか、改めて話をしてくれません?」

 

レイ  「そうだな……実際、私も何があったのかを聞けていないんだ。この調子だと裁判に支障が出る。少し話をしよう」

 

スミレ (事件に関係あるとは思えないけど、このままユウノさんから話が聞けないのは確かに困る……)

スミレ (とりあえず、口の聞けるシルベさんから情報を引き出すしかないか……)

 

 

スミレ 「ええっと……さっきシルベさんがアヤフミさんに、ユウノさんのことについて相談してたって言ってたっすよね。どんな内容だったか、改めて聞いてもいいっすか?」

 

シルベ 「うん。実はここ最近、【ユウノちゃんが冷たかった】んだ。監房でもあまり話をしてくれないし。僕、何かしちゃったかなって。アヤフミさんに相談したんだ」

 

ユウノ 「つ、冷たくなんて、してません! むむ、むしろ、【シルベちゃんが冷たくしてた】んです!」

 

シルベ 「だから、そんなことしてないよ!」

 

スミレ (わぁ、これが痴話喧嘩……いや、そうじゃなくて)

スミレ (なんとなく予想してたけど、やっぱり、アレが原因じゃないかな……)

 

 

>【朝のピアノコンサート】

 

 

スミレ 「アヤフミさん。何か思い当たることはあるっすか?」

 

アヤフミ「そうですね……強いて言えば、朝のコンサートに『毎日来るよ!』と言いながら、全然顔を見せてないこと……ですかね」

 

ユウノ 「……っ」

 

スミレ 「私もその意見に賛成っす! 普通に考えたらあり得ないっすよ!」

 

シルベ 「で、でも! クオレさんと狩りに行くってことは話したよ!」

 

ルナ  「どうしてここで軍人女が出てくるんです?」

 

レイ  「そうか、あのバーベキューの経緯をあまり話せていなかったな。今更だが説明しておこう」

レイ  「あれはクオレの発案で、私とペティ、クオレ、シルベの4人で、森で狩りをした結果なんだ。想定よりも多く狩れたものだから、みんなで食べようという話に……」

 

ペティ 「まぁ色々あったが、良いイベントだったと思うぜ。もっとも、シルベが他の人との約束をすっぽかしてまで参加してたとは思わなかったけどよ」

 

シルベ 「すっぽかすなんて心外だよ。ちゃんとユウノちゃんには断りを入れてから狩りには参加してるよ!」

 

スミレ (確か、ユウノさんが――)

 

 

 スミレ 「あれ、ユウノさん。今日はシルベさんと一緒じゃないんすか?」

 

 ユウノ 「きょ、今日は、来ないって言ってました。……何か、や、やりたいことを、見つけたみたいで」

 

 

スミレ (――とか言ってたっけ。具体的なことを言ってなかったのは気になるけど、話をしたのは事実みたい)

 

ルナ  「はっ、じゃあそこのおバカさんは【演奏を聞くより外に出る方が楽しいからもう行かない】って宣言してたってことですか? 相手の気持ちを考えられないんですね」

 

ウメ  「あんたがそれ言うの……?」

 

ペティ 「まぁ言い方はわかんねぇけど、そんなこと言ったら冷たくされても仕方ないと思うぜ?」

 

レイ  「……一応聞いておくが、駒木ユウノに狩りであった出来事を話したりしたのか?」

 

シルベ 「へ? うん、もちろん。ユウノちゃんとはその日にあったことを共有するのが日課なんだ。クオレさんが毒キノコを見極めたり、血の針でウサギを華麗に狩ったことも話したよ」

 

アヤフミ「く、クオレさんの話が多くありませんか……?」

 

シルベ 「僕はクオレさんとペアで、レイさんとペティさんとは別行動だったからね。それに、僕はほとんど荷物持ちだったし」

 

スミレ (うわ、本当にやったんだ……ユウノさんがさすがに可愛そう……)

 

ユリ  「そ……それは、少し、ユウノさんに同情します……」

 

リチ  「好きな子に目の前で楽しそうに他の子のお話されちゃうの、あんまり嬉しくないよね~」

 

ユウノ 「す、すすっ好き!? わ、私なんかが、そんな……」

 

ペティ 「いや、誰が見てもそうだろ」

 

レイ  「はぁ……シルベ、冷たくされたのは【駒木ユウノの嫉妬】が原因だ。そんな話をすれば、勘違いされるのも無理はない」

 

ペティ 「なんでお前がちょっと苦しそうなんだよ」

 

レイ  「気にするな。……シルベ、キミにその気がなくても、駒木ユウノは【クオレの方が大事なんだ】と勘違いしたはずだ」

 

シルベ 「それは違うよ! 僕はユウノちゃんのことも大事だよ!」

 

ユウノ 「……! シルベちゃん……!」

 

ルナ  「鳥肌が立って来たのでそれくらいで十分です。ですが、くだらない話をした甲斐がありましたね。犯人はこの根暗女で決まりです」

 

ユウノ 「……っ!?」

 

スミレ (え……?)

 

アヤフミ「ど、どうしてそうなるのでしょうか」

 

ルナ  「簡単な話ですよ。動機がはっきりするんです。あの軍人女に嫉妬して殺したんでしょう? 根暗女さん」

 

ユウノ 「わ、私はやってません! あの子が勝手に……!」

 

リチ  「【あの子】って、どの子……?」

 

ユウノ 「……っ、も、もちろん、犯人のことですよ! 犯人が勝手にやったことなのに、私を罪に着せようとしてるんです!」

 

ウメ  「まるで犯人が分かってるみたいな言い方だね。分かってるなら言ってみれば?」

 

ユウノ 「わ……わかり、ました。今まで黙っていましたが、もう限界です……。私は、犯人が誰か、知っています」

 

スミレ 「ほ、本当っすか!?」

 

ペティ 「誰なんだよ?」

 

 

 

ユウノ 「は、犯人は……叢雲さんです……っ!」

 

 

レイ  「なッ……!」

 

 

ユウノ 「私、廊下で見たんです。叢雲さんと純霓さんが戦っていたところを……。……それを見て、わ、私は怖くなって、【1階のトイレに駆け込んだ】んです」

ユウノ 「だ、だからその後どうなったかは分かりませんが……。……2人が戦って、純霓さんが気絶させられたなら、2階ホールまで引き摺ったのも、シャンデリアを落としたのも、叢雲さんになるはずです!」

 

ルナ  「はぁ。どうしてそんな重要な目撃証言を黙っていたんですか?」

 

ユウノ 「だ、だって……これを話したら、叢雲さんが今ここで、私を殺そうとするんじゃないかって……怖くて……」

 

ペティ 「そんなことレイがするワケねぇだろ!」

 

ルナ  「まぁいいです。それなら、そこの委員長さんが犯人で決まりですね」

 

ペティ 「あっさり手のひら返し過ぎだろ……」

 

ウメ  「待ってよ。凶器は【本】って話だったよね。叢雲さんには【刀】があるんだし――」

 

レイ  「――虚刀残穢月影(きょとうざんえつきかげ)

 

ウメ  「――……。……まぁ、その、純霓さんにケガをさせるためにわざわざ本を使わないんじゃないかなって」

 

ユウノ 「いいえ。刀を使えば誰しもが叢雲さんを疑ってしまう。だ、だから、凶器を別のものにして、容疑者から外れようと……」

 

アヤフミ「なるほど……一理ありますね」

 

シルベ 「それに、ユウノちゃんがクオレさんに勝つなんて、想像できないって言うか……」

 

ペティ 「待てよ。そもそも、なんでレイとクオレが戦ってるところを見て、逃げる先がトイレなんだよ? 普通、もっと人の多そうなところに行かないか?」

 

ユリ  「わ、私は、その気持ち、少しだけ分かります。そ、その……怖くなったら、狭いところに隠れる方が、なんとなく安心できると言いますか……」

 

 

レイ  「八重沢スミレ。今の話だが……」

 

スミレ 「えっと……どの話っすか?」

 

レイ  「駒木ユウノの発言、おかしなところが無かったか?」

 

スミレ 「おかしなところ……?」

スミレ (気付いてるなら自分で言えば良いのに……容疑者だから、あまり発言できないとか?)

スミレ (……まぁいいや。それよりユウノさんの発言。確かに少し冷静に考えてみると、おかしいかもしれない)

 

 

>【トイレに駆け込んだタイミング】

 

 

スミレ 「ユウノさん。さっき、アリバイを話してくれた時、『夕食後すぐにトイレに駆け込んだ』って言ってなかったっすか?」

 

ユウノ 「……っ! そ、それは……」

 

ペティ 「ああ、確かに言ってたぜ。……ん、待てよ。でもさっき、レイとクオレが戦ってるのを見て駆け込んだって言ってたよな。夕食後からずっと引きこもってるなら、どうやってレイとクオレの戦いを見れたんだよ?」

 

ユウノ 「それ、は……」

 

ルナ  「言い返せないんですか? とんだ嘘つき野郎ですね」

 

ペティ 「お前がなんで威張ってんだよ」

 

レイ  「……とにかく、駒木ユウノの発言には矛盾がある。疑義のある目撃証言は有効とは言えないな」

 

ユウノ 「で……ですが、私に純霓さんを殺すなんてできません。まともに戦って勝てるのは、貴方しか居ないんです、叢雲さん……!」

 

リチ  「ん~……。でも、アヤフミちゃんがさっき、クオレちゃんはあの時、『ユウノちゃんを探しに行く』って言って出て行ったって言ってたよ? やっぱり、クオレちゃんとユウノちゃんは、あの時会ってたんじゃないかな~」

 

シルベ 「僕の【瞬間記憶】に間違いはない。クオレさんは確かにそう言ったよ」

 

ユウノ 「……っ。で、でも……それでも、私にシャンデリアを落とす力はありませんし、純霓さんを気絶させる力もありません!」

 

ウメ  「【魔法】は?」

 

ユウノ 「私の魔法は【絶対音感】……ただ音色が分かるだけの力です。こんなもので、シャンデリアなんて落とせません」

 

シルベ 「僕の鼻歌をすぐその場で演奏に直してくれたから、効果は間違いないよ。ユウノちゃんは【絶対音感】を持ってるんだ」

 

 

レイ  「……その【絶対音感】の魔法だが、ずっと気になっていたんだ。本当にそうなのかと」

 

 

スミレ 「レイさん……?」

 

ユウノ 「何が言いたいんですか……?」

 

レイ  「【嘘】なんじゃないか。……そう言ってるんだ」

 

スミレ (【嘘】……? 魔法が……?)

 

シルベ 「そ、そんな訳ないよ! ユウノちゃんの魔法を疑ってるの?」

 

ユウノ 「そ、そそ、そうです! 私の魔法は【絶対音感】……それは、間違いありません!」

 

レイ  「本当にそうか……? 忘れたとは言わせないぞ。彩果ニーナの【魔法】……」

 

スミレ (あ……そうか……彼女の【魔法】は……)

 

 

>【魔法】は【偽ることができる】

 

 

スミレ 「ニーナさんの魔法は【感情を見る魔法】と聞いてたんすけど……実際の魔法は【分解】……瓶を割ったのは、魔法の力を使ってたんです」

 

レイ  「そうだ。【魔法は偽れる】。故に、魔法で無くても【特技】として成立する【絶対音感】は、【虚偽の魔法】である可能性がある」

 

ペティ 「お、おいおい……ユウノが嘘ついてるって言いてぇのか?」

 

シルベ 「いくらなんでも、それは無いよ!」

 

ユリ  「魔法は自己申告制ですし、そ、それに……見せられない方も、いらっしゃると思います」

 

レイ  「だが現に、偽りの魔法を申告した者が居たんだ。可能性としては否定できない」

 

アヤフミ「そうですね……【本当の魔法】が何か分かれば、早いと思うのですが……」

 

レイ  「ああ、そうだ。そしてこれまで出た話から、それがどんな【魔法】であるか、推理することはできるはずだ」

 

ユウノ 「無駄です! 【本当の魔法】なんて無いんですから!」

 

 

スミレ (確かに、本当の魔法なんて存在しないかもしれない。けれど、ニーナさんが嘘をついていたのは事実だ。それに、可能性がある限り、考える意味はあると思う)

 

 

スミレ 「……やってみましょう」

 

 

ユウノ 「八重沢さんまで……」

 

スミレ 「話し合った結果、本当に【嘘の魔法】が無かったとしても、意味のない話し合いじゃないと思うんすよ。だから、話し合いましょう」

 

レイ  「ああ、意味のない話し合いなんて無い。それに、この話をするためにここまで来たんだ。謂れのない疑いを向けるのもここまでにしてもらおう」

 

シルベ 「レイさん……」

 

レイ  「さぁ、これまでの話で分かった事を整理するんだ。それが、駒木ユウノの【本当の魔法】の正体を突き止める鍵になるはずだ」

 

 

 

アヤフミ「ええっと……ユウノさんの魔法がどんなものであればこの事件が成立するか、皆で考えるんですよね」

 

リチ  「【魔法で殺すことはできない】と思うな~。クオレちゃんを殴ったのは本だったし、鎖は多分、ソードブレイカーで折ったって話だったよね~……?」

 

ユリ  「ど、道具を使わないといけない部分は、魔法ではできなかった部分……ということでしょうか……」

 

ペティ 「そういや、ソードブレイカーで鎖を切るなら、【シャンデリアに手が届かないとダメ】だよな。しかも、地面に居る状態で」

 

シルベ 「クオレさんが死ぬ直前、犯人は地上に居たって話だったもんね。あとは……」

 

ウメ  「純霓さんはケガしてた。【不意打ちされた】んじゃない?」

 

アヤフミ「そうですね……。それと……廊下の穴はクオレさんの攻撃だったけれど、犯人には当たってないんでしたよね。【攻撃が効かない】何かがあったんだと思います」

 

 

レイ  「条件はこんなものか? ここから考えられる【魔法】は……」

 

ルナ  「【ワープする魔法】……なんてどうです? 鎖を切って瞬間移動。瞬間移動して軍人女を不意打ち。……完璧じゃないですか」

 

ペティ 「いや、それだとロウソクで火傷しちまうだろ。火傷してるやつなんて居ないんだし、それも魔法で回避できないとダメだ」

 

【挿絵表示】

 

レイ  「だが悪くない。他に考えられる可能性は?」

 

ユウノ 「も、もうやめましょう……これ以上話しても無駄です。分かる訳ないんですから」

 

ルナ  「は? どうして決めつけられるんですか? まるで正解を知ってるみたいな言い方ですね」

 

ユウノ 「……っ」

 

 

リチ  「ねぇねぇ……結局、【あの子】って誰だったの?」

 

アヤフミ「ええっと……何の話?」

 

リチ  「ほら、ユウノちゃんが言ってたよ。『【あの子】が勝手に……!』って」

 

スミレ (そういえば、その謎が残ったままだ。犯人のことだってユウノさんは言ってたけど……)

スミレ (もしかして、ユウノさんの他に、【誰か居る】のか……? 例えば、ユウノさんの中にもうひとり、別の人格とかが……)

スミレ (そんな本を最近見かけた気がする。そう、あれは確か……)

 

スミレ 「……【分身】」

 

ユウノ 「……っ!」

 

スミレ (あ……もしかして、当たり……? ありがとう、ユリさん……!)

 

レイ  「なるほど……【分身】の魔法か。似た非なる存在を生み出す……そんな魔法であるならば、火傷は残らない上に、攻撃を受けても傷が残らない」

 

シルベ 「でも、分身しただけじゃ、シャンデリアの鎖を落とせないよ?」

 

ルナ  「なら、【分身】に【瞬間移動】させれば良いじゃないですか。それなら、全部の条件を満たせますよ」

 

ユウノ 「……っ!? ……っ、……っ!」

 

ウメ  「こういう時だけ元気だね……」

 

ルナ  「何か問題でも? ちょうど目が冴えてきたところなんです。どうせ当たらないなら、言ったもん勝ちですよ、こんなのは」

ルナ  「それに、おしゃべり妖怪が言ってた話もこれで説明できます。そこの根暗女の失言、【あの子】というのは、ソイツの【分身】だったんじゃないですか?」

 

 

>賛成:【ユウノの分身】

 

 

スミレ 「そ、そうっす! 多分、ユウノさんの持つもうひとりの人格とか、そういうのが【分身】として外に出るんです! 最近本で読みました!」

 

レイ  「事実は小説より奇なり……【魔法】が実在する以上、あり得る話だ」

 

リチ  「そっか! 【もうひとりのユウノちゃん】が勝手にクオレちゃんを殺しちゃったってことを言いたかったんだね!」

 

ユウノ 「ち、ちがっ……」

 

レイ  「――だが、【魔法】は無闇矢鱈(むやみやたら)に強力なものではない。きっと何か制限があるはずだ。例えば……」

 

ユウノ 「ひっ……」

 

レイ  「駒木ユウノがいつも被っているその布。何か魔法に関係があるんじゃないのか?」

 

ユウノ 「そ、そそ、そんなわけ、ないじゃないですか……」

 

スミレ (怪しい……。……確かにユウノさんは、この屋敷で初めて見た時からずっと布を被ってる。アレが魔法に関係してる可能性もあるのか……)

 

ユリ  「例えば……【瞬間移動する先に制限がある】、とかでしょうか……」

 

リチ  「【分身の出せる数】なんじゃないかな~?」

 

テミ  「……意外と、【分身を制御できない】なんて、制限も――」

 

 

>賛成:【勝手にやった】

 

 

スミレ 「テミさん、それっすよ!」

 

テミ  「ひ、ひぃいいっ!?」

 

ユリ  「て、テミさん! お、落ち着いて!」

 

スミレ 「ユウノさんは『あの子が【勝手に】』と、確かにそう言ったっす。動機のことを考えると、【感情的になると制御できない】……なんてことは、あり得ると思うんです」

 

レイ  「ああ、その可能性は高い。それに、『あの子』と1人を指しているような言い方。恐らく【分身は1人】のはずだ」

 

ユウノ 「そ、そんなの、ただの揚げ足取りじゃないですか! 何も証拠はありませんよ!」

 

ペティ 「そうだぜ、さっきから聞いてりゃ、さすがに妄想が過ぎないか? 確かにそんな魔法だったら成立するかもしれないけどよ、確かめる方法が無いと、ただの言いがかりだぜ?」

 

ユウノ 「そ、そそ、そうです! 証拠を出してください!」

 

シルベ 「レイさん……やっぱり、魔法を特定するなんて、無理なんじゃないかな……」

 

レイ  「弱気になるな。ようやくここまで追い詰めたんだ。何か、駒木ユウノの魔法を証明する方法を考えるんだ」

 

 

スミレ (何か、見落としてないかな……。例えば、クオレさんにどうやって不意打ちしたのかとか。そもそも、分身ってどこからどうやって出すのか、とか……)

 

ルナ  「そういえばこの根暗女、証言せず黙ってた理由を『怖かったから』なんてほざいてましたけど。もしかして、【殺してしまいそうで怖かった】……なんて意味で言ってませんよね?」

 

ユウノ 「……っ、ど、どうして……」

 

ルナ  「図星ですか? 【感情的になると制御できない】……それが本当なら、今にも飛び出しそうな分身を押さえてるんじゃないです? その【影】とかに」

 

ユウノ 「……っ!?」

 

スミレ (【影】……そうか! 布を被ってるユウノさんは常に影の中だ。そこで分身を押さえてるのかも! それに、仮に影の中から分身を出せる魔法なら、クオレさんの影から飛び出して背後を取ったり、シャンデリアの影から飛び出して鎖も切れそう……!)

スミレ (でも、どうやってそれを証明しよう……証拠はもう、無いし……)

 

シルベ 「ユウノちゃんが誰かを殺すなんてあり得ないよ! もうやめようよ!」

 

ユウノ 「シルベ、ちゃん……!」

 

スミレ (……いつの間にかシルベさんが刀を腰に提げてる。あれは確かレイさんの刀)

スミレ (待てよ……魔法の力でできないことは道具を使う特徴があったはずだ。もし、【誰かを殺せる道具】が手に入れば、【分身】はきっと……)

 

 

シルベ 「ユウノちゃんの【魔法】を【看破する方法なんて無い】んだ! これ以上の言いがかりはもうやめて!」

 

 

>反論:【方法はある】

 

【挿絵表示】

 

 

スミレ 「……方法なら、あるかも、しれないっす」

 

シルベ 「へ……?」

 

レイ  「言ってみてくれ」

 

スミレ 「はい。……犯人の【分身】は、【道具】を使わないとクオレさんにケガをさせたり、シャンデリアの鎖を切ったりできなかったっす。だからきっと、【道具】が無いと誰かを殺すこともできない」

スミレ 「だから、【道具】を渡せば、制御できない【分身】は【誰かを殺す】はずっす」

 

ルナ  「まさか、本当に信じているんですか? ソイツが【分身】を押さえつけてるって」

 

ペティ 「てかよ、【道具】って何を渡すんだよ? 【人を殺せる道具】なんて無ぇぞ」

 

スミレ 「いや、あるっす。ここに――」

 

 

>指名:【忽那シルベ】

 

 

スミレ 「――シルベさん」

 

シルベ 「……ま、まさか」

 

スミレ 「レイさん。あなたの刀、ユウノさんに渡したいんすけど、良いっすか?」

 

レイ  「……八重沢スミレ。それが何を意味しているのか理解して言っているのか?」

 

スミレ 「ごめんなさい。でも、もしこの仮説がとんちんかんな言いがかりなら、渡したとしても、何も起きないはずなんです」

スミレ 「だから、シルベさん。その刀、ユウノさんに、渡して欲しいっす」

 

シルベ 「それは――」

 

 

ユウノ 「――それは、ダメ、です……!」

 

 

シルベ 「ユウノちゃん……?」

 

スミレ 「どうして、ダメなんすか?」

 

ユウノ 「そ、それ、は……」

 

スミレ 「…………【魔法】が、発動してしまうから。……そうなんすね」

 

ユウノ 「………………」

 

 

シルベ 「ユウノちゃん……嘘、だよね……?」

 

アヤフミ「そんな……」

 

 

スミレ 「違うなら、受け取ってください。その刀を。無実を、証明して下さい」

 

 

ユウノ 「………………」

 

シルベ 「ユウノちゃん……」

 

 

ユウノ 「…………やっぱり、ダメ、です。受け取れません……」

 

シルベ 「……っ」

 

ユウノ 「罪を……認めます。私が……純霓さんを、殺しました」

 

 

 

―審問終了―

 

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