由比ヶ浜との約束で学園都市を案内してくれる!あぁ、ありがたい!
ちゃんと原作的な関係性を作る話ないとダメだもんね!(メタ
あ、原作をやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。にしたのは意味があったり無かったり。
第10話
「…………帰っていいか?」
「来て早々帰りたい発言?!」
「私は帰ってもらっても構わないのだけれど。むしろなぜ帰らないのか疑問だわ」
ほら、雪ノ下もこう言ってるんだ。帰ってもいいだろ?
由比ヶ浜がぼっちの俺をわざわざ誘ってくれた(当然雪ノ下のついでだ)学園都市案内。ありがたいが、俺には無駄である。デートのお誘いも俺の手にかかれば無為に終わる。特殊な訓練を受けた俺には全ての罠は霧散するのだ。
ついでにいうと雪ノ下のついでのように誘われた事を根に持っているわけでは、決して無い。ほんとだよ?
しかもこの暑さ……熱膨張って知ってるか? そうだ、これもこの作品だ、メタ発言は控えめにしよう。転生ものじゃないんだし。
「帰りたい理由に暑い。次に暑いがあって、その次が暑いで、その次くらいに暑いからだ」
「暑いしか言ってないじゃん!」
コイツはコイツで暑苦しいし。何がそんなに楽しみなんだ。雪ノ下もいやいや言いながら楽しそうだし。
「事実だからな、湿度も相まって呼吸すら苦しいまである。」
「……比企谷くんに賛成するのは誠に遺憾だけれど確かに過ごしづらい事この上ないわね。学園都市といえどもヒートアイランド現象は解決されてないのね……」
雪ノ下が服の襟首を人差し指で引っ掛けてパタパタとまな板に空気を送り込んでいる。雪ノ下にしては品がない。それほどに暑いということなのだろう。
それにしても……通気性が良さそうだな……それに対してあのアホは。敢えてタイプは公言しないが男子として目を見張るモノがある。星三つ!実際は二つの塊何ですけどね。柔らかくてジューシー!!
「でもさ! 木とか他の街と比べると多いじゃん! ほら、入浴だよ!」
話の脈が飛んだ。不整脈なのだろうか。俺の耳がおかしいのか、それとも学園都市の日本語すら2.30年進んでいるのか。おそるべし学園都市。間違いか否か確認を怠る俺ではないが。雪ノ下も困っているし。
「まさか、森林浴と言いたいのか。なんで街のど真ん中で素っ裸にならんといかん」
「あ、そうそうそれ! ってかヒッキー卑猥!」
なんで俺が悪い……
雪ノ下がこんなにも辛そうなのは見たことがないぞ。
そんな俺達を見る由比ヶ浜はその訳が分かっていないらしく、アホそうな顔をしていた。
天然は自分が天然であることに気づかないというがその例なのだろうか。
しかしこいつ、天然というより馬鹿、アホである。バカとアホは厳密には違うのだが、彼女はそれを両立……いや、同一化させているまである。つまるところ近年類を見ない正直者なのか。
まぁ……胸が大きいやつは往々にして頭が空っぽだからな。
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「そういえばそもそも、ゆきのんとヒッキーってなんでいつも一緒にいるの?」
噴水公園的な所で由比ヶ浜がそんなことを言う。雪ノ下がばてたのが理由で公園に来た事なんて怖くて言えない。
なんでってそりゃぁ……
そう言えばなんでだ? 別に泊めてやる義理も無いし、運命的な何かを感じたわけでもない。あえていうなら可愛いかったからということもできるがその後数回言葉を交わしただけで彼女が残念な性格なのは分かった。自分で言うのもなんだが、めんどくさいことは嫌いだ。それにもかかわらず雪ノ下を泊める理由か……
「……ちょっと待ちなさい、ゆきのんって何かしら?」
「いーじゃんいーじゃん! ゆきのんはゆきのんだよ!」
1は1だからいいんだよ。的な理屈である。こう言ってしまうと正しいように見えてしまう……まぁいいよね、ゆきのん!
「……まぁ、今はいいわ。一緒に住んでるのは知ってるわよね?」
おいおいゆきのん、それは今後ずっとゆきのんって呼ばれるフラグだぜ? ん? おれ? ヒッキー? 何それうまいの?
「うん、言ってたね」
俺を睨みながら返事するな。なんもしてねえよ、童貞だよ! 文句あんのか?!
「……そうね、私がチャイルドエラーだったから、といえばそうなのだけれど、この男が奉仕精神や優しさで私を泊めるとも思えないし」
そう、信頼度のことは置いておく他ないが、雪ノ下の言う通りである。いつもの俺ならきっと情けなどかけない。他の奴がいる上に最悪施設が存在する。
「そうだな……正直俺もなんでか分からん」
こう言う他やはりないのだ。
なんかあれだな、馴れ初めを話すのって意外と緊張と言うか、恥ずかしいな。
「分かんないって……まぁヒッキーらしいや。でもずっとそうしておく訳にもいかないわけじゃん? 次は私んち泊まってもいいよ!」
何やら突然ゆるゆりムードが展開されたようだ。あぁ^~ 心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~
つーか、ほぼ初対面のやつにヒッキーらしいってなんだよ。引きこもりっぽいね! ってか? クソっ!反論できねぇ!
そうやって俺が一人悶々としているうちに話はこちらに転がってきた。
「でも、いいなぁ、ゆきのんとヒッキーって、本音で話し合ってるみたいで。私はいっつも人に合わせて……あはは」
雪ノ下が少し邪険な空気を出した途端由比ヶ浜は押黙る。
なるほど。そう言う事か。
俺は得心した。彼女は空気を読みすぎる。確か最初に出会った時、厳密には2回目だがやたらと雪ノ下に嫌われてる?と不安がっていた気がする。そして今まさに雪ノ下がわずかに変えた空気に反応して黙ったのだ。
「由比ヶ浜さん」
「は、はいっ!」
「……貴女、三浦さんと私が喧嘩したとき確か止めに入ったわよね?それは間違いではないと思うけれど」
「三浦さんだけではなく私も庇おうとするそれは。はっきり言って、気味が悪かったわ」
うわ、辛辣ゥ……俺はその時の状況は知らないが、ここまではっきり言ってしまうものなのか。
由比ヶ浜の方を見てみたら……頬を紅潮させている。泣いてしまうのではないかと俺は「関係ない」の準備を始める。おい、ダメだろそれ。だって小学生の時なんて近くに俺がいたら犯人は絶対俺なんだぜ? 真実は闇の中だ。
「……カッコイイ……」
「「……は?」」
俺と雪ノ下の波長が珍しく合ってしまった。魂の波長が……!! この調子ならデスサイズを作れるまである。
さすがの雪ノ下もその返事は想像だにしていなかったようだ。はっきり言って気味が悪かったわ。と言われたやつのセリフではない。と、俺も思う。
そんな俺達の空気をまた読んでか由比ヶ浜は申し訳なさそうに話し出す。
「私ね、周りの人達にすごく合わせちゃうんだけど、それが気に入らない子もいたり、正直それが原因で辛いこともあったんだ。でもね、ゆきのんとかヒッキー見てるとそういうの馬鹿らしく見えてさ……」
由比ヶ浜は由比ヶ浜で自分の性格に思うところがあったようだ。言葉を紡ごうとする由比ヶ浜を雪ノ下が見つめる。俺もこの状況でふざけられるほど彼女の気持ちが理解できない訳ではない。むしろかなり共感できる。空気が読めない、読まないことは苦であるが、それに乗じる事もまた苦なのだ。だから俺はぼっちを選んだ。まぁ自然とそうなってしまっただけなんだけど。
「だからね、ヒッキーとかゆきのんに憧れてたんだ。最初に会った時から。なんてゆーか……私もそうなりたいなぁーって思ったの」
その顔は不安そうで、俺達の顔色を窺っているが、決して嘘偽りはなく。彼女の本心なのだろう。だからか、雪ノ下もいくらか穏やかな口調で言葉を返す。
「……そう、勝手にしたらいいのではないかしら?」
由比ヶ浜がパァっと顔を輝かせ、抱きつく。
「ゆきのんっ!!」
「ちょ、ちょっと暑苦しいわよ、離れなさい」
わずかに頬を赤らめているから説得力のかけらもない。
「うん、そうだねー!」
「頷いたなら早く離れてくれないかしら……」
雪ノ下のツンデレもしっかりと読み取る由比ヶ浜。彼女たちは思っていたより相性がいいのではないかと思える。由比ヶ浜が雪ノ下に抱きついて男としては目のやり場に困る。あぁ^~ 心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~
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パワポケでいうなら友情イベントが終了し、コマンド「うろつく」の意味を為さなくなり一週間は終わるはずだったのだが……グースカピー……。パワポケみたいに簡単に彼女できたらこの世の中に俺みたいなやつはいないがな。ちなみに俺は7と10の裏サクセスが好きだ。パワポケは裏サクセスの方がやり込めるまである。
「後1週間くらいすると夏休み入るじゃん?」
「あぁ、そう言えばそうだな」
そう言えばそうだな、他人より10日程長い夏休みを貰えている俺はなかなか優遇されていると思う。
「それでさ、ゆきのんとヒッキーは何してるのかなーって!」
「そうね……特にすることもないけれど……」
俺も特にすることはないな。夏休みとか暑いだけだし。ほんと暑い。
「いや、まて、早く俺の部屋から出ていけ。なんなら由比ヶ浜の部屋にでも泊まらせてもらえ」
「ゆきのんならかんげーだよ!」
「い、いえ、それは嬉しいのだけれど。そういうわけにはね……」
「学校の転入手続きも出したんだろ?なら後は適当に決まるだろ」
「えー!! それはやだよー!」
由比ヶ浜が突然駄々こねはじめた。
「なんだよ……」
「だってそれじゃほとんど学校毎に寮が決まってるから私の家に泊まれないよ!」
「さっきから泊まらないと言ってるのだけれど……」
雪ノ下も否定するがそれでも由比ヶ浜はまだぶーたれている。なんだよ、そんなに雪ノ下の事が好きなのかよ。レズなの?
「あ、でも連絡先は交換してるし大丈夫だよね!」
ちなみに俺とは交換していない。さらに言えば雪ノ下とも交換していない。フォルダには家族のみである。どういうことなんだってばよ…
「ヒッキーと交換してないから……いい?」
ケータイを胸の前に大切そうに抱き上目遣いで交換を求めてくる。グッ……直視できねぇッ!
相手から言われて断るほど俺も天邪鬼ではない。ケータイを差し出す。
しかし由比ヶ浜は意味がわからないと言うふうに首を傾げる。あれ? もしかして勘違いしちゃった? 連絡先の交換じゃなかったの?
「いや、だから連絡先の交換じゃなかったのか?」
「えー……そういうの普通女子にやらせる? うわ、スパムとAmaz〇nばっか……でも一応女子の名前とか……え? ある……?」
するりと由比ヶ浜の手元からケータイが滑り落ちる。おい、俺のだぞ。
「はっ、小町は妹だ。俺の大切な妹だ」
地元に置いてきた大切な妹である。
「ちなみに俺だって新クラスの時ケータイを持ってキョロキョロしてたら『交換……する?』と聞かれるくらいにはもててたんだぞ」
もっとも、学園都市に来る際全部消した。あんな苦しい過去とはおさらばだ。
「それって……まぁいいや。じゃ、これでオッケーっと♪」
その気の遣い方は人を傷つけるぞ。気を使うと気を遣うは意味が違うから注意な。俺は気を使うことしかできないタイプだ。
そんなことをしているうちに日が傾いて行く。時とは残酷だと、常々思う。
「もう暗いし、そろそろ帰ろうぜ?」
俺が帰ろうと催促すると由比ヶ浜が儚げに応える。
「まだ一緒に話してたかったのになぁ……」
「夏休みが明けたらまた会えるじゃない」
雪ノ下はほんとに空気が読めないやつだな……俺が普通を語るのもおかしな話だが、こういう時は夏休みの間にとか返すべきだ。もっとも、俺は家から出たくないからそんなこというはずもないが。
……もしかしたら雪ノ下もそうなのかもしれない。
「そうだけどね……夏休みのうちにまた一緒に遊べたらいいなぁって」
「……そうね」
雪ノ下が少しだけ笑みを浮かべながら応えた。
人と人がこうやって順序を持って仲良くなるのは見ていて悪いものではない。今時の高校生と言う奴はいきなり心の奥底まで入ってこようとする。あのプライバシーの無さはなんだ。プライバシーの侵害とかで訴えたら高校生は半分は居なくなるまである。
「まぁ、今日は助かった。ありがとうな由比ヶ浜」
そう言えば学園都市を案内してくれていたということを思い出して言う。
「……えっ? うん! またメールするね!」
えっ? ってなんだよ。そんなに驚かなくてもいいじゃん……
「ゆきのんもまたねー!」
「ええ、またね。今日は本当にありがとう」
「えへへ、こちらこそだよ!」
「じゃあね〜ゆきのんとヒッキー」
俺は片手をあげて応え、雪ノ下は胸のあたりで手をひらひらさせている。由比ヶ浜も楽しそうに応えて走り去る。
「いいやつだったな……」
「なぜ死んだみたいにいうのかしら、思えばあなたはいつもそうだったわね…」
「おい、俺が死んでるぞそれ」
「えぇ、よく気付いたわね、さすが目が死んでいるだけあるわ」
さっきまで柔和だった雪ノ下はどこに行ったのだろうか。テレポート並の速度で辛辣になった。
もしかして自分の気分も自分の能力で冷やしてたりするの?
「まぁ、でも、ほんとにいいやつじゃねえかあいつ。でもなんかなぁ……」
不思議そうに雪ノ下が尋ねてくる。
「あら、どうかしたのかしら?」
「……いや、初めて会った気がしないんだよ」
「ッ……あなたデパートで出会ったって言ってたじゃない。それともナンパかしら?」
「チゲえよ! デパートでとかそう言う事じゃ……あ?」
「……? どうかし(今すぐここから離れるぞ)
「? なぜかしら」
「いいから言う通りにしてくれ」
俺の視線の先に1人の少年が立っていた。
その少年の目は赤かった。
その少年の髪は白かった。
その少年の視線の先には一人の少女が居て。
その少女に――殺意を向けていた。
一方通行と妹達登場ォォオ!
さて次回は、2週間で投稿かな?
ではまたっ!