ってギャルじいっぽく出で立つは僕ですが。
次の展開とかよくよく考えると切れ味の悪いところで1話を終えてしまっていたので、校正した上でみこっちゃんの涙目以降のお話を投稿させていただきます。
校正前をお読みになられた方については、暇と愛があれば校正後、展開に支障がない部分もお読みいただけたら、私としては暇人だなぁ……と思いつつ感謝の心で胸をいっぱいにしたいと思います。
第23話
戸塚と別れてすぐに雪ノ下は職員室から出てきた。
失礼しました。と凛とした声が廊下にも響く。
「で、どうなんだ?」
「適性試験があって、それに受かればいいらしいわ。基本的に学校の管轄だからか、試験の回数は多いらしいし、新学期前にまた適性試験があるらしいわ」
「へぇ……お前なら簡単になれそうだな」
お世辞でも何でもなく、そう思った。
同じ家で生活して幾度となく痛感するものがある。雪ノ下が常にあらんとしている姿。「正しさ」を追求するその姿勢は憧れさえ抱く。
「ええ、そうね、合格は過程でしかないわ」
そう答える雪ノ下の横顔は少し笑っているように見えた。
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その帰り道。
雪ノ下は先に帰り、俺はといえばラーメン屋やらゲーセンやらを探してうろういていた。
基本的に家から出ることはないが、家にいる気分じゃないこともある。そんな時のために外で暇をつぶせる場所を探していたのだ。
条件は同級生と会わなさそうなところ。細い路地に入っていくラーメン屋などは最適である。
しかし問題が起きた。
路地裏にやたらと人がいる。
揃ってみんな落し物を探すかのように腰をかがめていた。
それだけでは特に気にしなかったかもしれないが、女性。とくに女子高生や女子中学生までもが同じようにキョロキョロと路地裏を徘徊していた。
その中でも1人、毛色の違う人間がいた。
いや、目的か。
その人間が発端だということはすぐに分かった。
長点上機学園の制服を着たその女子高生は、マネーカードをばらまいていた。
ばらまくと言ってもある程度探さないと見つけられないような位置に丁寧に隠していた。
おそらく、このマネーカードを探して路地裏に人が集まっているのだろう。
長点上機学園と言えば学園都市五本指の超エリート校。高位能力者、もしくはそれに匹敵する頭脳を持ち合わせている人間ばかりが在籍する高校である。
その長点上機学園の生徒が、マネーカードをばらまいている。それは異様に思えた。
「……それにさっきからあいつ……つけられてる」
俺が言えたことではないが、俺以外にも彼女をつけている人間がいる。そのうち1人は知っている人間、他に3人、こちらは明らかに不良だ。
まずくなる前に手を打って不良を撃退するつもりだったが、長点上機学園の生徒がマネーカードをばらまいている理由も気になるので、現在俺もつけている訳だ。
決してお金が欲しいとかそんな疚しい理由ではない。決して。
そうこうしてるうちに不良共が距離を詰め始めた。直後、少女は走り出した。
異常すぎる反応速度だ。恐らくもともとバレていた。そしてバレていたのは……俺じゃない、不良の方だ。
「クソ、まずいな、不良が視界から出るとアイツを見れない!」
神裂、ステイルと戦っていくつか気づいたことがある。
今はそのひとつ、他人が見ているものを見る。
つまり、長点上機学園の少女をつけ回し、認識している状態の不良を認識すれば、ある程度その先の認識……長点上機学園の女子生徒を追うことが出来る。
どれだけ便利な能力でも、その不良を見失ってしまえば元も子もないので、全力で追いかける。
そこで不思議な光景を見た。長点上機学園の女子生徒が廃ビルに入っていったのだ。
「「そんなところに入ったら思う壷……」」
一瞬路地裏で声が響いたのかと思った。まさかそんなことはなくその声の主は
「アンタ!!」
「静かにしろ!」
「ーー!! ーーーー!!」
御坂美琴だった。
男子と女子の体格差だけあって、壁に押さえつけて口を塞ぐのに造作はなかった。
「……」
「やっと静かに……」
髪の毛が浮いたような感触に襲われた途端に紫電が目に入った。その瞬間口元を押さえつけていた手から電流が流れ込んできた。
「痛ってェ!」
「うるさい!」
え、俺のせいなの?
「さっきから分かったって言ってるじゃない、ってか、あのバカほど不可解ではないとはいえ、電撃がまともに直撃してないわね」
あのバカ……上条のことだろうか。
「あ? いや、一応軽く当たってるし……まぁ、気にすんな、ってかお前も来てたんだな」
「……はぁ……私の電撃がこんなに防がれるものたったなんて……正直世界を甘く見てたわ……」
第3位ってだからな、普通に考えて2人しかいないと思っていたんだろう。諦めたような顔で言った。
「あとそういうやつに限って『当たり前』みたいな顔してるのも気に入らない」
「お前、割と性格悪いな……」
「うっさい! アンタ学園都市に来たばっかなんでしょ? それなのにLEVEL5の私の電撃をいなせるなんて、才能って不公平よね」
御坂は自嘲気味に言った。
そういえば能力開発時点で科学者から何か言われていたような気がする。
とあるLEVEL5は最初はLEVEL1だったが、血のにじむような努力で第3位まで上り詰めたと。
だからお前たちも見習って努力すれば到達するかもしれない……と。
あれは御坂のことだったのか。
というかそんな話をしている場合じゃない。
ガコッ!! と廃ビルの中から音が聞こえた。
「……さっきの人が怪我してたら、お前のせいだからな」
「えっ、いや、それは……」
扱い辛さこそあるものの、御坂美琴はにつも学年が下だ。気後れすることはない。あの雪ノ下の相手をして、ある程度鍛えられていた。というよは癪だが、ある程度影響しているのかもしれない。
先程音のした廃ビルの二階にある部屋の前に来てみるとその部屋は真っ暗だった。
慎重に足場を探しながら室内灯のスイッチを探す。
……ん? 見られてる……?
バン!
と音と同時に部屋の明かりがつけられる。
その明かりの中、不良たちは全員気を失って倒れていた。
「……あなた、オリジナルね……それは誰」
オリジナル……? 長点上機学園の女子生徒が御坂美琴のことをオリジナルと呼んだ。
御坂は御坂でわからないという顔をしている。
ちなみに俺の名前は比企谷八幡だ。
「あなたも噂くらいは聞いたことがあるでしょう?」
「噂って……」
「あなただって、そこの男に聞かれたくはないでしょう?」
「あー、邪魔か……すまん」
そう言って、俺は彼女たちの声が聞こえなくなるまで距離を取り、待つことにした。
待っているあいだ御坂のうめき声が何度か聞こえたが……大丈夫だろう……大丈夫だよな……?
オリジナル。御坂美琴に対してその言葉といえば見当がつくものといえばひとつしかない。
――クローン
学園都市に数多ある都市伝説の一つでしかないが、学園都市第三位のクローンが軍用兵器として開発されているという話だ。もし本当ならば御坂は兵器開発、しかも人間の命を道具として扱う実験に加担しているということになる。
「ちょっとまって!! ください!!」
御坂の大声が廃ビルに鳴り響いた。
その直後ほどに長点上機学園の生徒が俺の前を通り過ぎて行った。
その間際に
「助けてあげたほうがいいと思うわよ」
なにやら火事になっている。そう気づき、御坂たちがいた部屋に走る。
そこに近づくほど、煙の排出量が増えている。
「御坂!?」
「あ、アンタ……ちょっとこれ助けて……」
軽く涙目の御坂が俺と気絶している不良を交互に見て言ってきた。
「……1階に置いときゃ多分大丈夫だろ……消防士とかが来る前に運び出すぞ」
そう言いながら不良共を担ぎ上げて運び出す。
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「はぁ……疲れたわね……」
「あぁ……」
俺たちは廃ビルから少し離れた公園で座り込んでいた。
「ねえアンタ……私のクローンが軍用兵器のして運用されてるって言われたら信じる?」
「信じないな」
「どうして?」
「人の言うことが全て真実というわけにはいかない。そしてそれを信じたら翌日学校に来てみたら、その嘘告白に二つ返事で了承した俺の話を知らない人間はいない。しかも何が悪質かって翌日学校に来てからその真実を告げられるところだ。一晩テンション上がりすぎて寝れなかったのが翌日には過去の行いに悶え苦しみ寝れないという算段だ」
「…………」
「まぁ友達の話だがな」
「あんた俺って言ったわよ」
「……言い間違いだ」
「まぁ、そんなの気にしなくていいのよ、そんなことする人なら最初っから振ってくれてありがとうって思ったらどうかしら?」
割と本気の慰め方だった。女子中学生に慰められる高校生ってどうなのかと思うが、俺の話ではない。俺の話ではない。
「そう……だな」
思い出すだけで辛い記憶だった。あの後学校を休んだら、また色々言われることは分かっていたから、休むこともできず。熱が出ても学校に行った。やっぱりどう思い出そうとも俺だった。
「まぁ、そんなリスクを背負うくらいなら、俺は人の言葉は信じない」
「そう……「糞類人猿がぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「グハァ!!」
突如横から蹴りを入れられた。
その衝撃で俺の体は御坂に覆い被さる形になった。
「ちょっとアンタ……って黒子!」
完全に俺は悪くないので御坂は言いよどみ、黒子。と名前を叫んだ。
「お姉様に触れるとはこやつ内蔵に金属矢を直接ぶち込まれたいようですわね……!」
「まて、さすがに不可抗力、つーかお前のせいだろ!」
黒子といえば確か爆弾の件で避難誘導をしていたジャッジメントではないか。
御坂の体、もとい、ベンチから立ち上がり黒子と呼ばれる者と向き合った。
「……あら? いつもの類人猿ではありませんね……そういえばあなたグラビトン事件の時にいましたわね。これは失礼しました。マァダカラトイッテユルスワケデハアリマセンガ」
この子やばい子だったのか……
「落ち着こう、落ち着いてくれ、いや落ち着け」
「これが落ち着いてられますかぁ……?」
その表情たるや人間のソレとは明らかに違う。さながら真田誠一郎の黒色のオーラまである。ちなみにあれのオーラ出てるだけなん?
「黒子、もうそのくらいにしなさい」
「ですがお姉様……」
「アンタが悪いんだから」
御坂のことをたいそう慕っているのだろう。御坂に言われる度に小さくなっていく。
説教が終わったのか御坂が俺の方を振り返る。
「じゃぁ私はここで失礼するわ」
「あぁ、またな」
「ええ」
御坂がそういった瞬間その場から姿が消えた。
最後の最後まで黒子は俺のことをにらみ続けていた。
「……そろそろいいんじゃないか?」
「気付いていたのですか」
そう言って茂みの中から出てきたのは。
「ミサカの検体番号は9980です。とミサカは名乗りながら茂みを乗り越えます」
そのミサカの発言のすべてを無視し、さらに女子高生をつけていた『知っている人間』は御坂妹だった。という伏線すらも無視して、俺は人生で初めて妹以外の、いわゆる生の縞パンを謁見することになった。
なんかネタ入れるのって難しいですね。今期アニメに合わせてネタ入れるのがいいのかしら……