津上さんと並んで地のエルを見据える。だが、その前に風のエルが動いた。弓を構え、俺たちを引き離そうとする。
「結城、風のエルは任せろ」
芦原さんの声が背後から届く。エクシードギルスの金色の装甲が前へ出る。氷川さんのG3-Xも射線を確保し、GX-05を構える。
「行くぞ」
津上さんが地のエルへ向き直る。俺も隣に立つ。だが、風のエルは上空へ跳び弓を引いた。狙いは俺たちだ。光の矢が放たれる。
「結城くん!」
津上さんの声と同時に俺はアビスの衝撃分散を展開した。矢が胸元に届く。衝撃を全身へ逃がす。だが完全には防げず、一歩後退する。
「援護する!」
芦原さんが風のエルへ斬り込む。氷川さんのGX-05が火を噴く。風のエルは矢を放ちながらも、二人の攻撃を避ける。その動きは速い。だが、芦原さんと氷川さんが引き受けてくれている。
「結城くん、行くよ」
津上さんがアギトからシャイニングフォームへ移行した。全身が白銀と赤に輝く。俺もエクリプスフォームへ変身する。
冷たい。
音が遠のき、感情が薄れていく。日食の記憶。水底の静寂。だが、津上さんの声は届いている。
「結城くん、聞こえる?」
「……聞こえてる」
隣の仲間を認識している。それだけは手放さない。
風のエルが俺の背後へ回り込む。速い。エクリプスの感覚が敵の動きを捉えるが、身体が追いつかない。津上さんのシャイニングカリバーが斬撃を放つが、風のエルはそれをかわし、今度は津上さんへ光の矢を放った。
「津上さん!」
俺は津上さんを庇おうと位置を変える。津上さんも俺を庇おうとする。二人の位置が重なる。その瞬間、突風が吹き荒れ、まとめて押し戻される。
「……くそ」
俺は歯を食いしばった。エクリプスの力は強い。だが、強さだけでは勝てない。動きを合わせる必要がある。
「結城くん、俺が攻めるから君は受け止めて」
「分かった」
役割を分ける。俺は正面へ。津上さんは側面へ。
風のエルが弓を引く。俺は重力操作を展開する。グラビティフォームの力。敵の踏み込みを鈍らせる。完全には封じられない。だが、一瞬の遅れが生まれる。
その一瞬を、津上さんが捉えた。シャイニングカリバーが風のエルの側面を斬り裂き、火花が散る。風のエルが体勢を崩す。
「今だ!」
津上さんが叫ぶ。だが俺の反応が遅れた。エクリプスの力を使い続けるほど、感覚が薄れていく。津上さんの声が遠い。
俺は追撃を優先しかけた。だが、その瞬間、津上さんの手が俺の腕を掴んだ。引っ張られる。光の矢が俺のいた場所を貫く。
「危ない」
津上さんの声。掴まれた感触。それで我に返る。
「……悪い」
「大丈夫。まだ行けるね」
「ああ」
頷き合う。残された時間で決める。
俺は正面から圧力をかける。重力操作を集中させ、風のエルの動きを鈍らせる。津上さんが斜めから斬り込む。風のエルが上空へ逃れようとした瞬間、俺は重力を一点に集中させた。上昇が鈍る。
その隙に津上さんが弓を使う腕を弾き、間合いができる。
「結城くん!」
「分かってる!」
「分かってる!」
俺はエクリプスフォームの必殺技を設定した。腹の奥底で漆黒の力が凝縮されていく。冷たい。音が遠い。津上さんの隣にいることだけを確かめて、足に力を込める。
津上さんもシャイニングライダーキックを設定した。白銀の光が右脚に収束していく。アギトの角が展開し、太陽の輝きを宿す。
「行くよ、結城くん!」
「ああ!」
二人で同時に跳んだ。
風のエルが弓を引く。だが遅い。俺の重力操作がその腕を鈍らせている。津上さんの白銀の脚が風のエルの胸甲を捉えた。
そして俺の脚が届く。
エクリプスの漆黒の力がアビスの青い衝撃を纏って、風のエルの装甲を貫く。
二つのキックが同時に命中した。
風のエルが吹き飛ぶ。巨体が夜の闇を裂いて後方へ飛ぶ。翼が軋む音。装甲が割れる音。だが奴はまだ消えない。空中で体勢を立て直そうとする。その瞬間だった。
爆散。
白い閃光。風が爆ぜる。エルの全身が光の粒子となって弾け飛ぶ。残ったのは、消えゆく羽根と夜の静寂だけだった。
俺は地面に着地した。膝が笑う。エクリプスの反動が押し寄せる。感情がまだ戻らない。音が遠い。だが、足の裏に地面の感触はある。冷たい夜気が頬に触れる。