ここ悪の組織じゃね?ヤバ 作:駆け出し旅人
「おぉ〜、これはこれは」
スネージナヤは大国である。
他国が異世界ファンタジーらしい世界観や技術力で成り立っている中、この国では列車が走っているし、山程いる兵士達はパワードスーツを着込んで、元素力を秘めた武器を持っている。
技術の高さに比例して、当然のように国力も高い。
つまり何が言いたいかというと。
「すごい。給料こんな出るのか、うっへっへ」
冒険者なんてやってる場合じゃねーな、これは。
その辺のモンスターなんてしばいてる場合じゃない。
時代はファデュイだったか。女皇陛下万歳!
さてと。まとまった金も入ってきたことだし、さっそく行こうか。
こういうのはスネージナヤには無さそうだからちょいと他国に、ええと、ナタとかがいいかな。
前に寄ったことがあるから、ここならワープできる。
■◆■
「てなわけで初任給が入ってきたんだけどさ」
と、タルタリヤに呼びかける。
「ああ、よかったね。そういえば君は簡単にお金に釣られたわけだけど、何か理由とかあるのかい?」
「理由?」
「そうそう」
「まあ、ちょっとばかし欲しいものがあってな。大した話じゃない、が……」
「ふぅん。ま、詳しくは聞かないでおくよ。それでどうしたんだい?」
少し言い淀むと、タルタリヤが話を戻す。
俺としてもあまり口に出したいことではない。
せっかく稼げる能力を得たんだから、バカみたいな値段のワインを開けてみたい、とか言うの恥ずかしいしな。
ありがたく当初の話題を出すことにする。
「懐があったまったことだし『少女』様に贈り物をしようと思ってな」
「ほう、贈り物。口説くにはなかなか難しい相手なんじゃないかい?」
「そういうんじゃねーよ。ほら、前に金を恵まれただろ。あれをたびたび返そうと話をしてきたんだが、どうにも神として一度やったもんを返してもらう発想がないみたいで何も受け取ってもらえなかったんだよな」
「その話、まだやってたのか」
「ああ。正直もういいかなとも思ってるんだが、最近めっちゃ綺麗な月神の信者と知り合ってね。話の種にもなるかなと」
「綺麗な信者ねぇ」
ナド・クライでしばらく過ごしている間にわかったが、めちゃくちゃいい人だったんだよな、ラウマ。
衣装だけはめちゃくちゃヤベー奴だけど。
「最近変人とばかり絡んでたから、ああいうストレートな善人が染みるね」
「なかなかいい出会いがあったようだ」
「常時裸エプロンみてーな格好なこと以外は聖人」
「それは変人なのでは?」
彼女もワイルドハントと戦っていたが、なんか鹿になってたんだよな。下半身がこう、ガッツリ変形するからには衣装とそれに合わせて、下半身がスカスカなのかもしれない。
……いや『少女』様も下半身スカスカだから、月神信仰がそもそもエロ宗教な可能性もあるな。
入信すべきか?
「それで何を贈るんだい?」
「ん? ああ、いや。もう渡してきた後だ」
「行動の早い……贈り物は、お菓子とかかな。彼女はそういうの好きだろう」
「それはわざわざ渡さなくても、勝手に俺の部屋から持っていかれるから大丈夫」
「……? どこが?」
何故か不思議そうにするタルタリヤ。
おかしなこと言ったか? まあいいか。
「で、贈り物なんだけど────ってとこ」
「なるほど! さすがは親友だ。もし次、誰かへの贈り物を用意する時は俺も呼んでくれ。アドバイスしよう」
「よろしく?」
■◆■
──ピヨ。
廊下の向こうから、間の抜けた音が聞こえた。
ピヨピヨ。
サンドローネは足を止めた。
気のせいだと思った。思おうとした。
ピヨピヨピヨピヨ。
「……」
聞こえる。
確かに聞こえる。
しかも近づいてきている。
角を曲がって現れたのは、コロンビーナだった。
鼻歌を歌いながら、廊下をゆったりと歩いている。
その足元で、一歩ごとに。
ピヨピヨピヨ。
「コロンビーナ」
「あ、サンドローネ」
ピヨピヨ。
「それは何かしら」
「可愛いでしょ。気に入ったの」
「脱ぎなさい」
「嫌だけど」
ピヨピヨピヨ。
「足踏みして鳴らすんじゃないわよ!」
「どうして。歩くたびに鳴って楽しいのに」
「楽しい、じゃないわよ! どこでそんなものを──」
サンドローネは途中で口を閉じた。
考えるまでもなかった。
こんな悪趣味な真似をする人間など、この組織に一人しかいない。
「……あいつね」
■◆■
ドカン、と部屋の扉が勢いよく開けられる。
「おや、『傀儡』様。どうされました?」
「どうされました? そうね、どうされたと思う。何か心当たりはないかしら?」
「人の恨みを買う心当たりは山程ありますが、『傀儡』様を怒らせる心当たりとなると」
なんだろう。滑稽ロボ呼ばわりしたこととかかな。
「コロンビーナよ」
「『少女』様? 何かありました?」
「あ、あら。あなたじゃなかったの」
なんかあったのかな?
そんなところへ、後ろから付いてきていた『少女』様が部屋へと入ってくる。
ピヨピヨ。
「あ、『見習』ありがとうね。このサンダル、とても気に入ったよ」
「それは何よりです」
「やっぱりあなたじゃないのよ! このうるさいサンダルの出どころは! というかそもそもなんでサンダルなのよ!」
「気にいるかなと」
「面白くて好きだよ」
「面白くない!」
今日も今日とて愉快な上司たちである。
「ねえサンドローネ、そんなに嫌なの?」
「嫌に決まっているでしょう!」
「こんなに可愛い音がするのよ」
「可愛くない! うるさくって仕事に集中できないの!」
「うーん」
『少女』様が小首を傾けた。
「じゃあ、サンドローネのお部屋には行かないようにするわね」
「そ、れは……ぐぅ、ぐぬぬ。あーもう! せめて足踏みだけはやめなさいよね!」
見習→傀儡:わりと懐いてる。パレスによく居るし、頼りやすい。
見習→少女:だいたい悪友くらいに思っている。目閉じ続けてるから、たぶん過去になんかあったんやろなぁ。
見習→裸馬:人格には非の打ち所がないので、女性陣の中で一番好印象。