「…痛い…」
目を覚ますと青く染まった青空が目に入った。
カルロッタの野郎…至近距離が撃ちやがって…いくら死なないとはいえ、至近距離で撃たれると流石に痛いのである。
「大丈夫ですか?琴吹様」
「いつも通りに撃たれただけですよ」
差し出された美少女の手を掴む。
「カルロッタ様も酷い事をしますわね」
「本当にそう思う」
「それで琴吹様、私との話決めてくださいました?」
「いや…まだ決めかねてる所…」
「そろそろ決めて頂かないと…いけないのでは?」
「そうだけど…簡単に決めていい事なのかなぁって…」
「そう言って時間を延ばしてもいい事ないですよ?」
「分かってるんだけどなぁ…」
「だって琴吹様は私の事が好きなんですよね?」
隠海孤児院って聞いた事があるだろうか?
詳しくは言わないが、僕はそこに居た人間なのだ。
両親揃ってクズでどうしようにも無い家に生まれたのが俺だった。
父は酒に溺れ、母だけでは無く俺にも暴力をふるような奴だった。
母も父からの暴力を俺に振るってくる奴だった。
そんな父の名も母も名も忘れた、覚えているのは好きな女の子とカルロッタくらいだ
家を飛び出した事もあった。
それこそ幼いカルロッタと知り合いだった俺は、モンテリーファミリーに逃げていた事もあった。
-過去の記憶-
「どうして、カルロッタはそんなに優しくしてくれるんだ」
「どうしてって言われても。琴吹が可哀想だと思ったから」
「それだけ?」
「うん」
そんなやりとりをした記憶がある。
しかし、そんな時間も長くは続かない。
父「琴吹。お前は明日からここに行け」
父から渡された紙の場所は、人間を物として扱うそんな場所だった。
「この子は価値がありますね~」
父「そうだろ。約束の金を渡せ」
「父さん、悪い人ですね~」
と謎の男は俺の腕を掴んで強引に引っ張ろうとする。
すると、見慣れた女の子が謎の男にしがみついた。
「待って!琴吹を連れて行かないで!」
カルロッタだった。
「丁度いい、モンテリーファミリーも脅せばもっと金が手に入る」
父「ははは、偶然にもモンテリーのお嬢ちゃんが来るとは。琴吹お前やるなぁ~」
あまりにも憎い、憎すぎるそんな父の最後の言葉がそれだった。
その後、俺たちは何も出来ずに連れていかれる
「カルロッタ…お前は逃げろ」
「えっ?そしたら琴吹が居なくなっちゃう…」
「大丈夫。いつか会いに行くから」
そう言って馬車から隙を見て、カルロッタを突き落とした。
ああ…これで俺は死ぬんだと思った。
「何をしているんだ、せっかくの大金のチャンスをよくも!」
謎の男はこの状況においてもそんなことを言っている。
父もクズなら付き合う人間もクズって事だ。
「仕方ない~今はこいつを連れていく事が優先だ。お前たち、あの女を探せ!」
なるほど…こいつ以外にも仲間が居たのか。
これは失敗したな…これではカルロッタはすぐに見つかってしまうだろう。
そんな時だった。
「待ちなさい。貴方たち何をしてるの」
「聖職者かよ」
「これはこれは聖職者さん、私達はただ道を通っているだけなのです。なので通していただけませんか?」
何を言うか。嘘つきだらけの癖に
「いいえ、そう言う訳にはいきません。その馬車の中を見せてください」
聖職者がそう言うと男達は慌てだした。
「お断りします!大事な商品なので」
「あら?そうなの?」
「そうなんですよ~見せられなくてすみませんね~」
「って通せる訳ないでしょ!」
「っち…お前らやってしまえ」
聖職者の対応にしびれを切らしたのか、男達はそれぞれの武器を持って戦いだした。
ある者は剣、ある者は銃といった。多種だった。
「戦いはあまり好きではないのですが…」
「うるせえ!やるぞおらー!」
男達は聖職者に向かって攻撃を始める。
しかし、聖職者の女性はその攻撃をいとも簡単に交わす。
「凄いあの姉ちゃん」
そんな小さな声が聞こえたのか彼女はこちらに降りてきて、俺を閉じ込めていた馬車の扉を開けた。
「早く逃げなさい」
姉ちゃんがそう言った時、背後に居た銃を持った男が引き金を引いた。
「これで終わりだ!」
「危ない!」
「えっ?」
聖職者に向かっていった銃弾は彼女に当たる事も無ければ、僕にも当たる事は無かった。
「ぎゃああああ」
その銃弾は撃った男に命中した。
見る影もなかった。誰が見ても分かる即死だった。
「なんだ今のは」
周りに居た男達も困惑していた。
「何今の…」
もちろん僕も困惑していた。
「君、名前は?」
「琴吹…って姉ちゃん後ろ!」
「貰った!」
背後に居た男は剣を持って彼女に切りかかった。
しかし、これもまた彼女に触れる事はなかった
「一体どうなってんだよ…あの子供化け物じゃねぇかよ…」
そう剣は持っていた男に刺さっていたのである。
わずか1秒である。
首謀者の男はそれだけ逃走を図った。
「あっ。待ちなさい!」
彼女はあいつの事を追いかけようとしたが、すぐに辞め僕の方にやってきた。
「琴吹君、もし家がないなら私の家に来ない?」
こうして彼女に連れて行かれるがままやってきたのが隠海孤児院という訳である。
カルロッタとはこの時に分かれた。彼女がその後、どうなったかは知らない。
「琴吹君、聖職者のフィービー様に助けて貰ったんでしょ。光栄な事ね」
「あのお姉ちゃんってフィービーさんって言うの?」
「そうよ」
その後、彼女は事あるごとに俺に会いに来た。
晴れの日も、雨の日も、雪の日も、ほぼ毎日だった。
そんな彼女に気づけば惚れていた。
忘れていたがカルロッタと再会したのは数年も先の話である。
「琴吹…?」
「うん?」
偶々。モンテリーファミリーの家の近くを通った時に、彼女に声をかけられた。
「私。カルロッタ。覚えてる?」
「…知ってるよ。久しぶりだな、元気そうで良かったよ」
そう言った時、彼女は抱きしめてきた。
「もう会えないかと思いました。これからはずっと一緒に居てください!」
告白に近い事を言われた。
「…ごめん…それは無理だ…」
「…どうしてです?」
「俺…好きな女の子が居るんだ」
そう言った時、彼女はスカートの中から銃を取り出した
「なんでそんな事を言うんですか?あの時の約束を忘れていませんよね?」
「あの時の約束…?」
「私に会いに来るって言ったじゃないですか」
「…あっ…」
「それなのに…それなのに…私以外の女性と結ばれるなんて許せません!」
そう言って彼女は急所をわざと外すように撃ってきたのだが…当たる訳もなく…
「どうして弾が当たらないのです?」
「俺…自分に命の危機が迫ると勝手に発動するんだこれ」
それからカルロッタは、会うたびに告白してきては銃を撃ってくるという行為に走った。
そんな日々が続き、今に至る。
閑話休題
「だって琴吹様は私の事が好きなんですよね?」
「何故そう思う?」
「私が琴吹様の事好きだからです」
「えっ?」