ようこそ骨の実力至上主義の教室へ   作:ok.ko

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独自解釈入ってるので注意!今更かもしれません


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……彼の事を、優しいと思っていた。

 

 

そして、その優しさは不要だと、そう思っていた。

 

 

あなたの存在が邪魔だと思っていた。

 

 

兄さんに認められていたあなたが、羨ましくて、妬ましくて、とても目障りだった。

 

 

けれど、私はあなたの実力を認めていた。嫌な話ではあるが、兄さんに認められているということは、実力があるということだ。

 

 

だから、あなたのことをどこか信頼していた……絶対に本人へ直接は言わないが。

 

 

 

へらへらしている笑顔がとても嫌いだった。

 

 

 

私とは別の土俵に立っている気がして、私よりも格上な存在であることが分かってしまったから、嫌いだった。

 

 

……あなたのことは、怒るなんてことすらも知らない、穏やかな人だと思っていた……

 

 

……目の前のあなたは、どうなのだろうか。怒って、いるのだろうか……

 

 

……私は、彼から目を離すことは出来なかった……

 

     

 

──────────

 

……龍園がAクラスを訪ねて来た頃、サンズは葛城が龍園と何か話をしているのをよそに、割り当てられた役割の場所へと動いていた。白石達もついてきている。

 

 

「……う〜……あちい……」

 

 

「……み、水……」

 

 

吉田と西川がとても暑そうにしている。当然だろう。こんな猛暑日の中、30分間ぶっ通しで歩いているのだから。サンズは持っていたペットボトルを2人にポンと投げた。

 

 

 

「ほらよ。水だ」

 

 

「えっ……いいのか?」

 

 

葛城が先ほど購入し全員に配っていたミネラルウォーター。これは然程高い買い物ではなかったが、全員に一人ひとつ与えられた大切なものである。

 

吉田と西川はここまでの道中で配布されたペットボトルの中身を全て飲み干してしまっていた。いや、正確にはギリギリ残っているのだが、これでは安心して飲むこともできないだろう。

 

 

「遠慮するなよ。オイラは水のことよりもアンタ達が倒れることのほうが心配だぜ?」

 

 

軽く肩をすくめてそう言うと、吉田が感激したかのような表情でサンズの手を握ってきた。

 

 

「ありがとうサンズ!お前は命の恩人だ!」

 

 

「ホントにありがとうサンズ君!このご恩はいつか必ず返させていただくであります!」

 

 

「……ハハハ、大げさだぜ」

 

 

 

二人はまだ未開封であったペットボトルを開けて口をつけずに飲み始める。冷たくはないだろうが、乾いていた喉には最適だろう。冷たい物をいきなり飲むと腹を壊す可能性もあるため、逆に都合が良かった。

 

 

……ふと、ツンツンと背後から背中をつつかれる。見なくても分かる。白石だ。

 

 

「サンズ君。サンズ君」

 

 

「……何だ?」

 

 

振り向いて白石を見る。汗だくだったが、水を飲む量を抑えていたようでペットボトルにはまだ余裕があった。

 

 

「あの、目的地というのはあそこですか?」

 

 

白石が指で指し示していた先には、水辺があった。綺麗な透き通っている水。正確には池なのかもしれない。小さい池だった。キャンプ地としては少し不安があるような場所だ。

 

 

「お、あったな。ああ、そこだぜ」

 

 

後ろの2人が水を充分飲んだのを見て移動を始める。三人が後ろから付いてきているのを確認しながら森の中を進んで池の前まで辿り着いた。

 

 

「……うぉぉぉー!サンズ、お前何でここに池があるってわかってたんだよ!」

 

 

喜びの声を上げる吉田。見たところ周囲にはスポットもないため、ここは無条件で水を手に入れることができる便利な場所のようだ。占領する必要もなさそうだ。

 

 

「あー……男の勘ってやつさ」

 

 

……先程テレポートを使って見てきたなどとは絶対に言うことはできなかった……

 

 

 

池の中には魚も数匹泳いでいるのが見えている。水質に問題はなさそうだ。

 

 

しかも、この暑い森の中にあるにも関わらず、この池の水は非常に冷たい。まあ、先程歩いて身体が火照っているのもあるのかもしれないのだが、それにしても不思議な冷たさだ。恐らく学校側が用意した一つの措置だろう。

 

 

三人に水質が問題ないことを伝えると、全員がペットボトルの中に水を入れ始めた。ペットボトルの中に入っていく水を見ても、透明で砂や泥などが混じっている様子もない。やはり、ここは学校側が用意した一種の救済スポットとして考えて良いだろう。

 

 

しかし、煮沸消毒はしておいたほうが良い。菌が繁殖していないとは限らないからだ。ここで体調を崩してリタイアになってしまっては本末転倒だ。取り敢えず、葛城にこの情報を伝えるべく、拠点に戻ることにした。

 

 

「……てか、またこの道歩くのかよ……」

 

 

思わず吉田が呟いた。帰りはまたあの灼熱地獄を歩かなくてはならない。吉田と西川は嫌そうな顔を浮かべた後、渋々といった様子で立ち上がった。そのまま元の道へと戻ろうとするが……

 

 

「おっと待った、お二人さん」

 

 

サンズからストップがかかった。2人が思わず振り向くと、サンズがニヤリと笑いながら反対方向に歩いている。白石も穏やかに微笑みながらついていっていた。

 

 

「お、おい、サンズ。そっちは逆じゃ……」

 

 

もう一度、ニヤリと笑って吉田の瞳を見つめる。

 

 

「こっちだよ。オイラちかみちしってんだ」

 

 

そう、サンズは言葉を返し、そのまま歩き出した。

 

 

「ちょ、サンズ君!待って―!」

 

 

「お、おいサンズ!」

 

 

2人も焦ったようにサンズについていく。本当に、この道で正しいのかと思いながら。

 

 

―――

 

 

 

「ほら、もうついた」

 

 

「「「……え?」」」

 

 

……結論から言うならば、サンズの『ちかみち』は、正しかった。片道30分だったはずが、何と5分に短縮されてそのままたどり着いてしまった。

 

 

「……え、いや、はあ!?」

 

 

思わず吉田が絶句した。当然のことだろう。片道三十分の道を僅か五分程度で戻ってきてしまったのだから。西川も口をあんぐりと開けて固まっている。

 

 

「……ええ……?」

 

 

何かを言おうとするが、言えない。それほどまでにあり得ない光景だった。

 

 

「ふふっ、流石サンズ君ですね。まるで魔法みたいでした」

 

 

白石だけがどこか納得したようにクスリと微笑んでいるが、正解は『サンズがテレポート(近道)を自然に使って誘導した』である。もちろん、種明かしをするつもりなど毛頭ない。

 

 

「言ったろ?オイラちかみちしってんだ、ってな」

 

 

「いや、近道知ってるなら最初からそっから行けば良かったじゃねえか……」

 

 

「ハハハ。行くときには気付かなかっただけだぜ?」

 

 

すっとぼけているのが分かるが、何も言えない。ぐぬぬと口では言いながらサンズに向ける顔はどこか笑っていた。やはり、サンズはとんでもない、という認識が吉田の中……いや、三人の中で再度固まった瞬間だった。

 

 

「サンズ君、やっぱり頼りになるうー!これからもついていくからよろしくお願いね!」

 

 

西川も晴れやかな笑顔を浮かべていた。そのまま二人は洞窟の中へと向かっていった。葛城に報告をするためだろう。

 

一方、サンズは木陰に座ってウトウトしていた。

 

目を瞑ると、気持ちのいい風が頬を撫でていく。ゆっくりと、夢の中へと誘われていく……

 

 

―――

しばらくたって、ふと優しく肩を叩かれた。いや、揺すられた、という表現のほうが正しいかも知れない。

 

薄く目を開くと、いつの間にか夕焼けが空に佇んでい

た。随分と寝ていたらしい。

 

もう一度優しく肩を揺すられる。目を開けなくても分かる。白石だ。

 

 

「……白石か。どうした?」

 

 

目を開けずに少し眠気で頭がぼんやりとしているが、気にせずに口を開く。

 

 

「葛城君がCクラス……龍園君と手を組んだようです」

 

 

「……へー……」

 

 

心底どうでもいいことだった。薄く目を開けて横を見ると、白石が微笑みながらこちらを見つめていた。

 

 

「……」

 

 

眠気がある、少し鈍くなっている頭で考える。葛城が手を組むということは、大きなメリットが存在しているはずだ。例えば、ポイントの譲渡や、ポイントで買ったものを譲るなどだ。だが、あの……り……り……

 

 

……名前が思い出せない……

 

 

まあいい。あの厨二病がそう安々と手渡すわけがない。恐らく、こちらにもデメリットが発生することとなるだろう……

 

 

……つまり、契約を結ぶ条件は……

 

 

「……プライベートポイント、か……」

 

 

一人呟いた。サンズ自身はプライベートポイントに特に魅力を感じているわけではないのだが、あの厨二病や綾小路達Dクラスは恐らく喉から手が出る程に欲しいものではあるだろう。

 

 

「……」

 

 

……しかし、サンズにとってはやはり心底どうでもいいことだった。クラス間の争いなど勝手にやっておけばいい。関わる必要などない……

 

 

サンズはもう一度眠ることにした……

 

―――

 

side 白石飛鳥

 

……やはり、彼の声は良い。眠っている彼を見ながら私はそんなことを考えます。最初から彼の隣の席になれたことは幸運でした。それは、クラスでの争いを回避できるという側面も存在していました。

 

 

しかし、私にとっては、彼の行動一つ一つを観察することが出来るという理由が非常に大きいことです。

 

 

「……」

 

 

ふと、彼の顔をちらりと見ます。綺麗な白髪に非常に整っている白い顔。見た目だけであれば、この学校……いえ、日本において右に出る者はいないかもしれません。

 

 

しかし、私が最も彼に魅力を感じているのは、その『こうどう』にあります。

 

 

彼の『こうどう』には、常に驚かされ、そして、ワクワクさせてくれるのです。思わず笑顔になってしまうほどには。

 

 

そして、あの飄々とした笑みから発せられる声は、素晴らしいものがある……そう、私は感じています。

 

 

……彼は、本当にクラスのことをどうでもいいと思っているのでしょう。私に興味を然程示していないことからも、それを推測することができます。

 

 

……本当に、面白い……

 

 

 

……彼を、ずっと見ていたい……

 

 

そう考えながら私は彼の横顔をじっと見つめ続けました

 

 

―――

 

 

 

夢を見ていた。

 

 

 

暗闇の中にいる。体を、動かすことができない……

 

 

 

『……誰かが言った。生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ、と』

 

 

 

 

……目の前の男は誰だ?

 

 

 

……見たことがある……

 

 

 

『その言葉を発した人間は、文字通り極限状態に追い込まれていたらしく、死んで楽になるか、もしくはまだ苦しみながら足掻くかの選択を迫られていたという』

 

 

 

……何が言いたい?

 

 

 

『君はどうだったんだい?』

 

 

 

……

 

 

 

『あの地獄の最中、この世から消えてしまいたい、とは思わなかったかい?』

 

 

 

…………れ

 

 

 

『最愛の弟が殺されるところを何度も、何十回も、何百回も見たはずだ』 

 

 

 

…………まれ

 

 

 

『仲良くなっていたいせきの管理者が死んだのを、何百回も観測したはずだ』

 

 

 

…………だまれ……………

 

 

 

『弟の師匠だった彼女が溶けていくのを、何度も見たはずだ』

 

 

 

…………もう…………

 

 

 

『……見つかった住人たちが全員殺されていくのを、見たはずだ』

 

 

 

…………やめろ…………

 

 

 

『……叫び声も、聞こえたはずだ』

 

 

 

…………やめ…………

 

 

 

 

『君自身も、地獄の痛みを経験したはずだ。それも、何千回も、ね』

 

 

 

………なに………を………

 

 

 

 

『それでも、君は足掻くかい?』

 

 

『死んでなお、止めるつもりかい?』

 

 

『どれだけ逃げろと言われても、逃げないつもりかい?』

 

 

………それだけは………

 

 

『……そうだね、君はそういう奴だ』

 

 

 

『助けを求められると、何となく放っておけない。君はそんな性格をしている』

 

 

 

『お人好しだよ、君は』

 

 

 

……あの、顔を見て……

 

 

 

『………フリスクを、助けるケツイはあるのかい?』

 

 

 

………ガキンチョが、泣いてる顔を見て………

 

 

 

………泣きながら、助けて、逃げてって………

 

 

 

………そう言いながら、来られたら………

 

 

 

俺の弟ならば、助けるに決まってるだろう?

 

 

 

「……ああ、当たり前だろ。俺は逃げない。死なない」

 

 

 

「少なくとも、あのガキを助けるまではな……てか、ガキンチョを助けるまでは、ループは解除されない。そうだろ?」

 

 

「俺の弟なら、絶対に諦めないはずだ」

 

 

「だから、俺も……オイラも諦めない」

 

 

 

………『ナニカ』が笑っているのが見えた………

 

 

 

………視界が、暗転していく………

 

―――

 

side ??????

 

辛い  苦しい  痛い  死にたい

 

 

その願いが叶えられることは、ないだろう。

 

 

今日も私は泣きながら歩く。

 

 

ナイフを持って、皆を殺害していく。

 

 

 

……もう嫌だ

 

 

嫌だ

 

 

嫌だ

 

 

嫌だ

 

 

自我が、徐じょに、なくなって、い、く

 

 

あなただけは、ころしたく、ない、よ

 

 

 

なみだが、とまら、ない

 

 

 

わたしのからだが、じゆうにつかえたらいいのに

 

 

 

たすけて、たすけて

 

 

だれか、たすけて

 

 

 

にげ、て。にげ……て

 

 

 

きずつけたく、ない、よ

 

 

 

「逃げ、て……よ………おね……がい………」

 

 

 

 

なん……で、わらって……いる……の……

 

 

 

「……たす、け……て……」

 

 

 

……ふたんを、かけ、ちゃ、だめ……

 

 

 

「にげ……て……」

 

 

 

ないふをもって、かれにおそいかかる。なんとか、ふみとどまった。つぎは、むり……

 

 

 

おねがい……

 

 

 

にげて、よ………

 

 

 

……あなたと、はなしたい……

 

 

 

ちゃんと、はなしたい

 

 

 

すきなことも

 

 

 

きらいなことも

 

 

 

いままでのことも

 

 

 

なんでわたしがこんなことをしているのかも

 

 

 

ぜんぶ

 

 

 

だから

 

 

おねがいだから

 

 

 

にげてよ

 

 

 

だいすきだから

 

 

 

あなたのことが

 

 

 

せかいでいちばん

 

 

 

だいすきだから

 

 

 

きずつけたくない、よ

 

 

 

……これなら、しんだほうがましだ……

 

 

 

……あなたを、ころす、くらいなら……

 

 

 

……ああ……

 

 

 

……また、きずつけた……

 

―――

 

 

 

無人島試験二日目

 

早朝

 

 

 

「……嫌な夢を見た」

 

 

汗が髪から滴っていた。スケルトンの時は感じたことのない不快感がサンズを覆っていた。

 

 

昨晩の夢を思い出す……内容を思い出せないが、不快な夢だったことは間違いなさそうだ。

 

 

取り敢えず昨日見つけた池まで歩く。既に先客がいた。葛城だ。

 

 

 

「……サンズか、おはよう」

 

 

「よ、おはようさん」

 

 

葛城は顔を洗い終わったところだったのか、手にはタオルが握られていた。サンズも顔を洗って思考をクリアにさせる。

 

 

 

「……俺の、判断は」

 

 

 

唐突に葛城が切り出した。

 

 

 

「俺は、正しかったと思うか?客観的な意見を聞いておきたかったんだが」

 

 

 

昨日、Aクラス全体に共有されていた情報なのだが、葛城はCクラスと手を組むことにしたらしい。内容としては、Cクラス側が今回の無人島試験に必要なアイテムをAクラスのために揃え、相手のリーダーも暴く。その代わりにポイントを1ヶ月毎に龍園に渡す、という内容だ。

 

 

「さあな。オイラにとっては知ったこっちゃないぜ」

 

 

少し目を瞑って軽い口調で言う。それは葛城に対する穏やかな拒絶であった。いや、正確には拒絶ではなく、それくらいは自分で考えろというサンズからのメッセージである。

 

葛城はサンズの返答を聞くと、小さく息を吐き、水面に映る自分の顔を見つめた。

 

 

「……フッ、そうだな。お前に意見を求めた俺が愚かだった。元より、他人に委ねるような覚悟で決断したつもりはない」

 

 

「ハハハ、そうだな。そもそも聞く相手が間違ってると思うぜ?」

 

 

「いや、俺はサンズを信用して声をかけた。お前だから声をかけたんだ」

 

 

「そうかい、なら見当違いってやつだ」

 

 

飄々とそう嘯くサンズを見て葛城はまたふっと笑った。

 

 

「……まあいい。では、俺は先に行く」

 

 

「へーい」

 

 

……葛城の手堅い策は決して間違いではない。だが、相手はルールや常識の外側にいる……名前を思いだした。

龍園だ。

 

龍園はルールを守ろうとはしないだろう。正規の方法で葛城達に臨むとは考えづらいが……

 

足元をすくわれる未来が、サンズには容易に想像できていた。

 

……だからといって行動を起こすつもりなど毛頭なかったが。

 

 

 

……そして、時間だけが淡々と過ぎていき……

 

 

 

 

―――

無人島試験、最終日となった。

 

 

ちなみに、この6日間やってきたことは変わっていない。ただ寝て、起きて、食べて、また眠る。それの繰り返しだ。正直、Cクラスからの救援物資はかなり役に立っていた。サンズが特に行動を起こしていなくても、問題がまったくないほどには。

 

 

……最終日だというのに、雨が降るってきた。だが、Aクラスの雰囲気は今までと同じく緩い。当然だろう。今日も昨日までと同じ事をしておけば、この試験を乗り越えることができるのだから。気が緩むのも致し方ない。

 

 

……だが、サンズは一つの気配を感じていた。悪意を持ったナニカを。

 

 

―――何度も経験した、殺意を持っている、ニンゲンの気配。

 

 

それは今まで相対してきたクソニンゲンのような大きな殺意ではなかった。だが、悪意を持って動いていることは確かである。

 

 

……何処かで煙が上がっていた。

 

 

 

「……白石。ちょっと様子を見に行ってくる」

 

 

そう一声かけてサンズは走り出した。後ろから誰かの声が聞こえるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。とにかく、行かなければ。

 

 

―――

 

煙が上がっていた場所は、Dクラスの拠点だった。火事が起きているらしいが、今は気にしない。

 

 

……近くから、微かな殺意を感じとった。ふと足元を見ると、ぬかるんだ地面に足跡がついていた。だが、それはサンズのものではなかった。もっと小さい、女子の靴跡のようだ。

 

 

周りを確認する。誰もいない。

 

 

「……よし、やるか」

 

 

目を瞑って深呼吸して、再び目を開く。そのサンズの片目は黄色く輝いていた。そして、サンズはその場から姿を消した。

 

 

一瞬で誰かの足跡の最終地点あたりへとたどり着く。テレポートを第三者に見られる可能性があったが、そこは確認しているので問題ないだろう。

 

 

ゆっくりと、足を進めていく。少しだけ嫌な予感を感じながら、一歩一歩歩みを進めていく。森を抜け、視界が開けたその先には……

 

 

……堀北鈴音が、複数から暴行を受けていた。主に青緑色の髪をした少女からだ。周囲には龍園を筆頭としたCクラスメンバーの4人程度がいた。

 

 

……カードキーを寄越せ、と言っている。

 

 

……ああ、やっぱり。

 

 

クソニンゲンは、どこにでもいるようだ。

 

 

―――

side 堀北鈴音

 

 

……限界が近い。伊吹さんに蹴られている私は危機を感じていた。元々体調不良の状態で参加した、この無人島試験。7日間あれば体調が少しは良くなるかと期待したのだが、むしろ悪化するばかりだった。

 

 

さらに雨が降ることによりさらに体温が奪われて動きが鈍くなっていく。頭がぼーっとして、伊吹さんの攻撃を受け止めるのが精一杯だ。

 

 

……このままでは。

 

 

 

……兄さんに、振り向いてもらえない。

 

 

 

……ああ、意識が……朦朧と……

 

 

伊吹さんの蹴りが鋭い速度で顔面へと近づいていく。私はとっさに目を瞑って防御態勢をとった。

 

 

 

だが、衝撃はいつまでたっても来ることはなかった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

伊吹さんの驚いた声が聞こえる。恐る恐る目を開く。

 

 

「なんで、あなたが―――」

 

 

 

そこには、最も私の会いたくない存在が、そこにいた。

 

 

……いつも通りのニヤニヤとした笑顔がなく、寒気を感じさせるほどの表情だった……

 

 

―――

 

……サンズは、相対する敵に冷たい瞳を向けていた。いつものニヤニヤとした笑顔もなく、ただ、その雰囲気は冷たい。いつものサンズとは別人なのではないかと錯覚してしまうほどだ。

 

 

堀北を見る。顔が非常に赤く呼吸も荒い。先程の戦闘でかなり体力を削られているようだ。このままではそう遠くないうちに倒れるだろう。。

 

 

……ここは戦うことを避ける。

 

 

「……おい、サンズ」

 

 

龍園が短く言葉を放つ。その言葉にサンズが反応することはなかった。倒れかけている堀北を抱える。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

 

 

「は、ちょっと、サンズ君!?」

 

 

「黙ってな。舌を噛むぞ」

 

 

伊吹の蹴りをバックステップで避けつつ、堀北に忠告をしておく。こいつらに、もう用はない。ちらりと堀北を見ると、気絶していた。疲労がたまっていたのだろう。苦しそうな表情で眠っていた。

 

……好都合だ。サンズはくるりと空中で一回転しながら体勢を立て直す。そして、森へ向かって走り出した。

 

 

 

「なっ!待ちやがれ!」

 

 

龍園は声を荒げながらサンズに向かって走り出した。逃げるのならば徹底的に追い詰めるだけだ。サンズの背中を追う。

 

 

……瞬間、龍園の背中を冷たいナニカが通り抜けた。経験したことのある、この感覚は……

 

 

(……殺気……)

 

 

が、いくつもの修羅場を駆け抜けてきた龍園にそのような手は効かない……はずだった。

 

 

(……なっ!?)

 

 

 

サンズから溢れ出す、とてつもない殺気。まるで、いくつもの死線をくぐり抜けてきた軍人の用な雰囲気を醸し出していた。いや、そんな生温いものではない。本当に死んだことがあるのではないか。そんな奇妙で恐ろしい気配を纏っていた。

 

 

「……どうだい。オレはなかなかのやりてだろ?」

 

 

龍園の足が、止まった。今まで恐怖を経験したことのなかった男が。まるで磁石で足を縫い付けられたかのように動かなくなってしまったのだ。

 

 

本能で理解していた。今動けば、待っているのは死だということを。もはや、サンズが何なのか分からない。本当に人間なのだろうか。

 

 

首だけを後ろに傾けて、サンズは言い放った。

 

 

「……死にたい奴は前に出ろ」

 

 

誰も、動くことはできなかった……

 

 

 

 

 

 

サンズは堀北を先生達のいる待機所まで送り届けた。その際、特に何も聞かれなかったのがとても助かった。めんどくさいことをわざわざやる意義が分からないからだ。Dクラスの担任からは訝しい目を向けられたが……

 

サンズは、ゆっくりとキャンプ地へと戻っていった……

 

 

―――

 

 

無人島試験

 

結果

 

 

 

1位 Dクラス 225ポイント

 

2位 Aクラス 200ポイント

 

3位 Bクラス 140ポイント

 

4位 Cクラス 0ポイント

 

 

クラス変動なし

 

 

合計ポイント

 

Aクラス 1250ポイント

 

Bクラス 900ポイント

 

Cクラス 620ポイント

 

Dクラス 250ポイント

 

 

 

 

 

―――

 

船内へとサンズが戻ってきた頃。Aクラスは、完全に2つに分断されていた。橋本がAクラスのリーダーの情報、つまり戸塚の情報を売ったのではないかという疑いをかけられ、ほぼ確信を持って問い詰められているようだ。

 

 

「……そ、そうだ!サンズ!そもそも、お前がちゃんと試験をこなしてなかったのが悪いだろ!いつもいつも怠けやがって。ちょっとはクラスの役に立ってみたらどうなんだよ!」

 

 

戸塚が叫んだ。周囲からの視線は冷たい。やはり葛城は信頼できない。坂柳派閥へと移ろう、という者が今回の試験で過半数を占めていた。その上でのこの発言。周りが不快感を顕にするのも不思議なことではなかった。

 

 

いつものサンズならば笑って受け流しているところだろう。しかし、今のサンズは少し機嫌が悪かった。

 

 

「……オイラは寝る」

 

 

1人与えられた部屋へと戻り、ベッドに寝っ転がる。

 

 

……疲れた。そう考えながら、サンズはゆっくりと目を閉じて夢の中へと潜っていった……




駆け足で駆け抜けました。読みづらいと思いますがすみません。
あ、無人島試験のifルートを書こうかなと思っています。

それと、これはわがままなのですが。感想がほしいです!誰がどう思って見てくれているのか、それが本当に欲しいです。今は誰にも見られてないのでは、この作品は消したほうがいいのかも知れない。と思っています。だからお願いします……
正直に言います。寂しいので感想をください!お願いいたします!

皆さんの好きな曲教えてください

  • Megalovania
  • 夢と希望
  • undertale
  • save the world
  • アズゴア
  • 本物のヒーローとの戦い
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総合評価:11027/評価:8.85/連載:26話/更新日時:2025年12月24日(水) 23:33 小説情報

ようこそ未知を探求する教室へ(作者:叙述トリッピー)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

世界の警察権力の「最後の切り札」である彼が実力至上主義の教室に入る話


総合評価:2835/評価:8.51/連載:37話/更新日時:2026年09月10日(木) 19:49 小説情報


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