相手は「先生」ではないので、オリ主です。が、設定も固めれていません。
とりあえず、そういったシチュエーションだと思っていただければ!
ケイが可愛くて勢いで書いています。すみません。

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第1話

「いらっしゃいませ。お待ちしていました」

 ゲーム開発部に訪れた人物をケイはよく知っていた。

 まだ、ボディを持たずアリスの中にいた頃から、彼はゲーム開発部の部室に遊びに来ていた。

 

「今日は、開発中のゲームの試遊に来ていただきありがとうございます。あ、お土産まで」 

「はい、実は開発は難航していまして、モモイは設定を盛りまくり、ユズが難易度を上げすぎて、ゲームバランスが崩壊。いつもの通りの感じです」

 

 軽く現状報告すませ、地獄となっている制作現場に足を進める。

 

「しかし、あなたも物好きですね。このような依頼。いくらゲーム好きでも、すぐ断ると思いますが」

 

 チラッと横目で、彼の表情を確認する。

 彼の頬は少し赤らみ、恥ずかしそうに頭を搔いていた。

「わかりやすいですね。ええ、分かっていますよ、あなたはーー」

 

「あー!来てくれたんですね!!」

 私の発言を遮るように、彼に抱き着く青い影。

 私が仕えるアリス。そして、きっと彼がゲーム開発部に訪れる一番の理由。

 

「パンパカパーン!勇者パーティーにタンクが合流です!これでクエスト達成のために一歩近づきました」

「さぁ、一緒にクエストを達成しましょう!」

 大喜びのアリスに彼もいつも通り笑顔で返事をする。

 

「アリス、すみません。合流して間もないですが、旅に出るためには準備が必要ですので少々お待ちを」

「具体的に言うと、物資も持ってきてくれているので、冷蔵庫に入れておきたいです。先に、ゲームの準備をしておいてくれませんか?」

 

「はい!わかりました!準備が終わり次第、私に話しかけてくださいね!」

 そういうと、ニコニコと笑いながらアリスはゲームを接続しているモニターに向かっていた。

 

「アリス。あなたが来てくれて、とても喜んでいますね」

 私は彼が持ってきてくれたお土産を冷蔵庫に入れながら話しかける。

 

「すごく信用しているようです。どんな魔法を使ったのですか」

 アリスの中にいた頃から感じていた、彼に対する信頼や安心。今は恋や愛ではないその感情も、変化するのも遠くない。

 

「そうですね。もしも、このゲームをやり切ったら特別な報酬をお渡しします」

 アリスが信用するように、私も彼のことを信用していた。

 

「アリスを攻略するためのデートプランを一緒に考えてあげます」

 彼になら、アリスを託してもいいのだと思えるくらいには。

 


 

 数日後。私たちはミレニアムから離れ、D.U.シラトリ区に訪れていた。

「到着しましたね。ここなら、アリスが喜びそうなお店もあるはずです」

「何をいまさら。アリスの前で恥をかかないように、しっかりとエスコート出来るようになってもらいますから」

「さぁ、手早く下見をすませてしまいましょう」

 私が目的地をスマホで確認しようとすると、彼がスッと手を差し伸べてきた。

「……なんですか。手を伸ばして」

「確かに、アリスなら手を繋ごうとしますが……。別にそこまでしなくても」

「……。わかりました。エスコート出来るように言ったのは私ですから」

「その、握りますね」

 心臓の鼓動が早まる、このボディにも慣れてきたと思ったが、まだ完全に掌握しきれていないようだった。

「あ、大きい」

 いつもコントローラーを握っている手が、私の手を包み込む。

「えー。ごほん。はい、いい感じです。この調子でデートの練習頑張りましょう……。顔は、見ないでください」

 

 

 

 まず私たちが訪れたのは、ゲームセンターだった。

「やはりゲームセンターは外せませんね」

 私は事前に調べていた物がないか周囲を見渡した。

「部室ではできないゲームを楽しむのは当然として、わざわざD.Uで来るからには目的があります」

 愉快な音が鳴る筐体と筐体の間を進みながら、UFOキャッチャーがたくさん置いてあるエリアに進んだ。

 

「以前、アリスが欲しいと言っていた景品が、このゲームセンターには置いているようで。それを、一緒に獲っていただければと」

 駄菓子、駄菓子、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ、フィギュア、ぬいぐるみ、フィギュアーー

 

「あ、ありました。これです」

 そこには、先ほどまで見ていたUFOキャッチャーよりも、大きなUFOキャッチャーが鎮座していた。

「実物はやはり大きいですね。なんでも、このゲームセンターの名物らしく、キヴォトス一大きなUFOキャッチャーらしいですよ」

「で、その景品。ほら、あれです。あの盾です。あるシミュレーションゲームの盾を実物大スケールで再現したものらしく、大きさ的にここでしか手に入らないようです」

「とりあえず、試しにやってみましょうか」

 握る手を引っ張りUFOキャッチャーに向かおうとするが、彼は動かなかった。

「どうしたのですか?アリスの前でカッコよく景品を獲るなら、先に練習しておいた方が……」

「確かに、今ここで取ってしまったら、一緒に取れた時の喜びが薄れるかもしれませんね。一緒に試行錯誤しながら景品を取った方がアリスも喜びます」

「すみません。私の考えが甘かったようです。しかし、せっかく来たのですから、試しにやってみても……」

「え?私が欲しいものですか?」

 予想していなかった言葉で不意を突かれる。

 

「急に言われましても、思いつきませんが……」

 悩んでいる私を後目に、彼は周囲を見渡し、何か見つけたように私の手を引っ張った。

「あ、ちょっといきなり何ですか!って、これは……」

 

 小物系を扱う筐体の前まで連れていかれて、彼が指さす先を見ると。

「似ていますね。別物でしょうけど。特徴が似ていますね」

 立方体の頭を持つロボットがちょこんっと座り込んでいた。

 

「……これを私にですか?」

 私の言葉を頷き微笑み返され、手をそっと離れる。先ほどまで感じていた温もりが失い、手持ち無沙汰になった手を意味もなく動いていた。

「別に、そんな必要はありませんが……」

 私の言葉が聞こえているはずなのに、彼は構うことなく筐体にお金を入れた。

 陽気なBGMが流れ、クレーンがユラユラと揺れる。そんな柔らかい雰囲気とは対照的に、彼の目は真剣だった。

 

 ーーもしかして、私と重ねている?ーー

 

「……お金を入れたからには、必ず取ってくださいね」

 私は彼の横に並び、捕まえられるロボットを眺めていた。

 

 

 

「色々、巡りましたね」

 日がすっかり落ち。私たちは、D.Uにある公園のベンチで並んで座っていた。

 海風は冷たく私たちを煽るが、私と彼の間で繋がっている手の温もりが、私たちを包み込んでくれているようだった。

 

 ゲームセンターを出てからも色々なお店を見て回った。

 アリスが好きそうな飲食店。

 アリスが好きそうなポップアップストア。

 アリスが好きそうな服屋。

 どれもこれも、アリスの従者として自信をもって、アリス好みの場所を彼にプレゼンした。

「これでエスコートは完璧にできますね。でも……フフ」

 私は言う前に、思いだして笑ってしまう。

「UFOキャッチャーは辞めた方がいいかもしれませんね」

 私は彼に取ってもらったロボットをヒラヒラと揺らすと、彼は恥ずかしそうに笑っていた。

「まさか、1時間粘っても獲れなくて、見かねた人にアドバイスを貰ってやっと獲れるとは」

 本当は、取ってあげようかと言われていたのだが……。

「必死でしたね。それだけ、私にあげたかったのですか?それとも……」

 思わず握る手がぎゅっと強まり、鼓動がまたしても早まる。

 既に私にはこの身体の主導権はなく。彼の言動に惑わされ、思うように動かせなくなっていた。

 だから、言わなくてもいい言葉もスラスラと出てきてしまう。

 

「あの、楽しかったですか?私とのデート」

 私から『アリスのため』という大義名分は無くなり、主を私利私欲のために利用した従者という事実を受け入れ始めていた。

「でも、やはり、本命はアリスですよね」

 欠落品と書かれていたこの身体に今まで不満などなかったが。笑顔でごまかせばいい所を笑えず、唇を震わせ、目力が強まる。自分の感情をそのまま表現できてしまうこの身体に後悔していた。

 

 そっと、私の頬に手が添えられた。

 暖かく大きな手だ。

 繋がれていた手の温もりは消えていない。

 導かれるように顔を横に向けると、彼が優しく微笑み。

 

「ケイの事が好きだよ」

 

 言葉が私の中に入り込む。鼓膜が揺れ、電子信号となって脳に伝わるのではなく。心に直接彼の言葉入ってきた。

 何処か期待していた言葉。それを受け入れるキャパは既にあふれ出し、エラーを吐き続けていた。

 どんどん熱が頭部に集まり、もうオーバーヒートを起こして爆発するのではないかと思った。

 次の瞬間、私は彼に包まれた。

 突然のことで思考が停止し、全身が脳が彼を感じることだけに使われた。

 そして、少しづつ、少しづつ、思考を再構築し……。

 

「私も、あなたの事が好きです」

 


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