乙女ゲー世界というよりチートなし異世界転生が厳しいのかもしれない 作:乙女ゲーはやったことない
今日は久しぶりに図書室に来ていた。最近は贈り物と一緒に手紙を女子にペコペコしながら渡す作業をしていたため、図書室には来れていなかった。
いつも勉強している場所でオリヴィアさんが手を振っているのが見えた。婚活で心が疲弊しているのかいつもの2倍くらいかわいく見える。
「お久しぶりです! ウィリアムさん!」
「ああ、久しぶりオリヴィアさん」
久しぶりと言っても一週間ぐらいだけどな。
「悪いな。最近お茶会の準備で忙しくて」
「いえ、そんな……あっそうだ! 私もお茶会のお誘いを受けたんです」
「へーよかったじゃないか。相手は誰なんだ?」
ちょっと寂しい気がするけど、オリヴィアさんに友達が増えるのはいいことだからな。
「ブラッド・フォウ・フィールドさんに特待生と話してみるのも悪くないって言われて招待されました」
「ブラッドか。爵位が高すぎる気がするけど、伯爵以上のお茶会に参加できるなんてめったにないから、いい経験になると思うぞ」
「伯爵!? そんな方のお茶会に私が参加していいんでしょうか?」
「ブラッドは正確には辺境伯だな。まあ、招待したのは向こうなんだしいいんじゃないか。あ、でもあんまり親しくしちゃだめだぞ。ブラッドには婚約者もいるし、人気者だから嫉妬で大変なことになる」
リヴィアさんは俺の言葉にうなずいている。
よし話もひと段落したし勉強するか。
俺はいつも通りノートと教科書を広げる。お茶会の準備で最近はあんまり勉強できてなかったからな。今日はちょっとだけ頑張ろう。オリヴィアさんに馬鹿だと思われるのも嫌だし。
「…………」
「…………」
なんかオリヴィアさんがこっちをちらちら見てくる。なんか言いたいことがあるのかな。それとも俺が変なこと言ったとか?
目を合わせてみる。するとすぐ避けられた。
「えっと、オリヴィアさんなんかまだ俺に用事ある?」
「い、いえなんでもありません!」
それは何かある時の反応なんよ。
まあでも、本人が何でもないっていうならそっとしておくか。藪蛇かもしれないし。
「(……………………ウィリアムさんのお茶会に参加したいって言ったら迷惑ですよね)」
◇◇◇
お茶会の日がやってきた。
相手は男爵令嬢だ。実に学園の女子らしい女子だ。男を金としか見ておらず、亜人の奴隷を連れ遊びまわっている。
こんなやつがお行儀よくお茶会できるのかと思っていたら、案の定お茶会は失敗した。
俺を給仕としか見ておらず、亜人奴隷とのみ話し、お茶とお菓子を食い荒らして去っていった。しかももっと高いのがいいとか口に合わないだとかさんざん文句を垂れていった。
「クソが。何がもっと高いのがいいだ。男爵令嬢には高すぎるくらいだろ。身の程をわきまえろよ。腹立つ奴だな」
最悪ではあるがあれでも暴力を振るわないだけましである。本当にやばいやつは女子からも怖がられてるからな。
というか学園の女子はどうして奴隷を連れてるんだ? 俺だったら奴隷を連れずに男子にやさしくして、奴隷じゃなくて学園の男子にちやほやされるけどな。
俺がどうでもいいことを考えながら片付けをしていると、外からオリヴィアさんの声が聞こえた気がした。他の女子の声も聞こえる。もちろん楽しそうな声ではない。
すぐ部屋の外に出てオリヴィアさんの方へ走る。聞こえてくる声からしてオリヴィアさんがブラッドのお茶会に行くのが気に食わないらしい。
「おい」
俺が魔力をたぎらせながらオリヴィアさんを攻めている女子に声をかける。
「な、なによ」
学園の女子も自分より明らかに強い怒っている生物は怖いらしい。
「失せろ」
俺がそういえば虚勢を張りながら去っていった。
「大丈夫? オリヴィアさん」
怒気を霧散させてオリヴィアさんに話しかける。
「ウィリアムさん……。すみません、助けてもらって」
「いいよこれくらい。それより悪かったな、ブラッドのお茶会。こうなることも予想しておくべきだった」
「いえ、ウィリアムさんは悪くありません。私が平民だから……」
「……とりあえずまだお茶残ってるから休んでいきなよ」
俺はそう言ってオリヴィアさんの手を引いてお茶会をするために借りている部屋へ向かった。
◇◇◇
「ウィリアムさん! このお菓子すごくおいしいです!」
さっきまで少し暗い雰囲気だったが、休んだら落ち着いたのかいくらかいつも通りの彼女へ戻っていった。
それにしてオリヴィアさんの素直な反応には涙が出そうだ。さっきの女子はオリヴィアさんを参考にしたらどうだ。一瞬で金持ちの婚約者が見つかるぞ。
「口にあったようで良かったよ」
「でもいいんですか? これ高いやつなんじゃ……」
「いいよいいよ。今日全部使う予定で買ったんだから。誰が食べても一緒だよ」
むしろうれしい反応をしてくれるオリヴィアさんに食べてほしいくらいだ。
「あのさ、さっきみたいなことって多いのか?」
「いつもではないですが……。皆さん平民の私が学園にいることをよく思っていないみたいで……やっぱりは私、ここにふさわしくないんでしょうか?」
「オリヴィアさんを特待生として学園に招待したのは学園なんだから、ふさわしくないってことはないと思う」
「そう、でしょうか」
「……オリヴィアさんはさ、どうして学園に入学したんだ?」
「え?」
「学園はオリヴィアさんにとって居心地のいい場所じゃないからさ。やめるのも一つの手かなって」
「私は……たくさん勉強してお母さんやお父さん、故郷の人たちを楽させてあげたくて……」
オリヴィアさんらしい優しい理由だ。
「ウィリアムさんも私は学園をやめた方がいいと思いますか?」
やべ、話の流れ的にそう聞こえたか。
「いや、そういうことじゃなくて! 俺はむしろ、もうちょっと頑張ろうって言いたくて。……俺もオリヴィアさんが学園からいなくなったら寂しいからな」
「私がいなくなったらウィリアムさんは寂しいですか?」
「ああ、寂しいよ」
「そうですか……」
オリヴィアさんは少し赤くなっているように見えた。
「それじゃあ私ももうちょっと頑張ってみます。少し弱気になってたみたいです」
オリヴィアさんは笑顔に戻っていた。
彼女の笑顔が見れるなら学園生活も悪くない。そう思った。
◇◇◇
その後も話していたらいい時間になったので解散することになった。
「今日はいろいろとありがとうございました」
「こっちこそオリヴィアさんとお茶できて楽しかったよ。ありがとな」
「いえ……。私も楽しかったです」
「それじゃあまたな。オリヴィアさん」
「……リビアです」
「え?」
「地元ではそう呼ばれてました。ウィリアムさんもできればそう呼んでください」
「わ、わかった、リ、リビア」
なんか照れ臭いな。どもってしまった。
「……俺もウィルでいいよ」
「わ、わかりました。ウィルさん」
俺たちは二人して赤くなってうつむいている。
なんだこの空気。めっちゃ恥ずかしいんだけど。
「そ、それじゃあ、また図書室で会いましょう!」
オリヴィアさん……リビアはそう言って走っていった。
「あ、ああ。またな……」
俺は聞こえるはずもないのにそう言うしかなかった。