HELLSING×Bloodborne   作:椛―もみじ

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ルークくんには申し訳ないですがオフスクリーンです。



第7話

 

「……答えなさい。誰が貴方達を送り込んだのです?」

 

廊下に押さえつけられたヤンに対し、ウォルターが冷徹に問う。

だが、ヤンは血と脂にまみれた顔でニタニタと笑うだけだ。

「へッ、教えるわけねェだろジジイ。俺達ァお前らをブチ殺しに来た、それだけだ。さっさとオッ死んじまえよ!」

 

その時、廊下の奥からどよめきのような、低い唸り声が響いてきた。

ズズズ……と足を引きずる音。

 

「な……ッ!?」

セラスが息を呑む。

そこに現れたのは、先程ウォルターと狩人が倒した武装グールたちではない。

警備員の制服、ヘルシング機関の警備兵たち、その成れの果てだった。

 

「嘘……そんな……」

ウォルターの眉がピクリと動く。

「職員たちまで……!」

 

その一瞬の隙だった。

「ヒャハハハ! パーティはこれからだぜェ! 御サン方!!」

 

「うわっ!?」

セラスの拘束が緩んだ隙に、ヤンは抜け出し、全速力で駆けた。目指すは目の前にある重厚な扉、権力者が集う会議室だ。

 

「させんッ!!」

ウォルターの手首が返る。鋼線が生き物のように伸び、ヤンの右腕を捉えた。

スパァンッ!

鮮血と共に右腕が宙を舞う。

 

「ギ、アアアッ!? チクショウ!」

ヤンは止まらない。

狩人も反応し、持っていた「獣肉断ち」を鞭のように伸ばす。

ガギィッ!

石の刃がヤンの背中を掠め、肉を抉る。だが、致命傷には至らない。ヤンは転がるようにして会議室のドアノブに手を掛け、蹴り開けた。

 

「お邪魔するぜェェェッ!!」

 

 

 

扉が開かれた瞬間、ヤンが見たもの。

それは恐怖に震える老人たちではなかった。

 

円卓の権力者たちは全員こちらを見て、銃を構えていた。

その中心で、インテグラが長い葉巻を噛み締めながら、拳銃の撃鉄を起こす。

 

「……ようこそ、ヘルシングへ」

 

ドォォォォォンッ!!

一斉射撃。

12人の人物とインテグラが放った銃弾の嵐が、ヤンの体を蜂の巣にする。

 

「ガ、ハッ……!?」

ヤンは弾き飛ばされ、再び廊下へと転がり出た。

仰向けになった彼の視界に入ったのは、よろめきながら近づいてくる、かつての同僚たち、食屍鬼(グール)の大群だった。

 

インテグラが部屋から出てきて、その光景に絶句する。

「私の部下が……全員……!?」

 

 

「うわっ…!うわ、うわあッ!」

グールたちにもみくちゃにされ顔を歪めるが、直ぐにあの時のようなセラスが覚醒する。

セラスが飛び出し、素手で別のグールを引き裂き、蹴り飛ばす。

 

「そんな…ッなんてこと…ッ!部下達が…うちの職員たちまでもが…食屍鬼に……っ!」

 

返り血を浴びるたびに、彼女の瞳孔が開いていく。

 

「やめろ婦警(セラス)! それは私の……ッ!」

インテグラが制止しようと叫ぶが、狂乱したセラスには届かない。

 

ドンッ。

鈍い音がして、セラスの動きが止まった。

狩人が背後から忍び寄り、彼女の首筋に手刀ではなく、鎮静のツボを突くような鋭い衝撃を与えたのだ。

 

「……ッ、は……?」

狩人はセラスの肩を掴み、強制的にこちらを向かせた。

その瞳は、深淵のように静かだった。

 

「……落ち着け、新米。獲物を見誤るな」

 

その静謐な声に、セラスの憑き物が落ちる。

我に返った彼女の目の前には、自分が破壊したかつての同僚たちの残骸があった。

「あ……あ、あ…わわわ……!」

セラスはその場にへたり込み、ガタガタと震え出した。

 

 

────────────────

 

 

「……チェックメイトだ、小僧」

 

ウォルターがヤンに歩み寄る。

右腕を失い、全身穴だらけになったヤンは、壁にもたれて荒い息を吐いていた。

 

「殺りなよご老体」

 

「殺さんよ、これだけの事をしたのだ。誰かの差し金か吐いてもらってからたっぷり殺してやる」

 

「フファッ…甘いよねェあんたら…つくづく」

 

するとインテグラがヤンの前に立ち、銃口を突きつける。

 

「よう、売女(アマ)

ヤンは血の泡を吹きながら侮蔑の言葉を吐く。

 

バン! バン! バン!バンッ!

インテグラは表情一つ変えず、ヤンの四肢に銃弾を撃ち込んだ。

 

「軽口を叩くな、私は…怒っている」

 

「くッくふ…くふふは…ひははははッ!」

 

「お前らは一体なんなんだ!? なんのマネでこんな事を!? 後ろで誰が糸を引いている!? 答えろ!」

 

「ヒャハハハハッ! ハハハハハはぁッ!!」

「笑うな!! 答えろ!!」

 

ヤンは痙攣しながら、虚ろな目で天井を見上げた。

 

「……あんたらも知ってんだろうがよォ、俺の内に埋め込まれたバケモンと発信する機械は、今もこうしてヤツらに俺のザマを送り続けているんだぜ」

「作戦が失敗したことも、全部筒抜けなのさ!」

 

ヤンの皮膚の下で、何かがボコボコと脈打ち始めた。

「連中が作戦に失敗して、今もこうしてリンチされようとしてる俺を……このまま楽に死なせてくれると思うのかい?」

 

「なに……?」

インテグラが後ずさる。

ヤンの体が、内側から燃え上がるように赤熱し、膨張していく。

 

「ミレニ……アム」

 

その言葉が、引き金だった。

グシャァァァァッ!!

ヤンの全身の骨が砕け、再構築される。

皮膚が裂け、中から剛毛に覆われた筋肉が膨れ上がる。

吸血鬼の再生能力と、強制的な「進化」の暴走。

それは、狩人がよく知る姿──聖職者のなれの果てに似た姿の獣への変貌だった。

 

「グオォォォォォォッ!!」

 

もはや人間の面影はない。巨躯を持つ狼のような化け物が、インテグラに襲いかかった。

「お嬢様ッ!」

 

ズドンッ!!

鋭い爪がインテグラを引き裂く寸前、横合いから散弾の衝撃が獣を吹き飛ばした。

狩人が獣狩りの短銃から持ち替えた、散弾銃の一撃だ。

 

狩人が散弾銃を撃った直後、ウォルターが鋼線で獣を切り刻む。

しかし、剛毛と分厚い筋肉、そして異常な再生力が刃を阻む。

「チッ……なんと硬い!」

 

「代わる…!」

狩人は背中の獣肉断ちを捨て、両手で重厚な斧、「獣狩りの斧」を握りしめた。

柄を長く伸ばして変形し、両手で持つ。

 

「グルアァァッ!」

獣が狩人に飛びかかる。

狩人は逃げない。一歩踏み込み、強引に耐えながら、斧を振りかぶる。

 

「…狩りの時間だ」

 

ドガァァァンッ!!

横に力を溜め、一気に解放する。

回転しながらの二連撃が、獣の鎖骨を砕き、地面に叩きつける。

「ギャウンッ!?」

 

ダウンした獣に対し、ウォルターの鋼線が走る。

「そこだ!」

関節の隙間、肉の薄い部分を正確に切り裂き、動きを封じる。

 

「トドメだ」

狩人は斧を振り上げ、渾身の力で振り下ろした。

ザンッ!!

重い刃が獣の首を断ち切り、脊髄ごと切断した。

 

獣化したヤン・バレンタインの巨体が、痙攣し、やがて動かなくなった。

後に残ったのは、焦げ臭い獣の死臭だけだった。

 

静寂が戻った廊下。

残されたのは、うめき声を上げるグール化した職員たちだけだった。

もはや、彼らを救う手立てはない。

 

「……インテグラ卿」

アイランズ卿が、沈痛な面持ちでインテグラに声をかけた。

「彼らを……楽にしてやりたまえ。それが指揮官の仕事だ。君がやるべき義務がある」

 

「アイランズ卿それはあまりにも…」

 

「否、仕方がなかったは通用しない。なにかの準備や方法があったはずだ。総ての責任はお前にある。お前が指揮官なのだから、違うかね?」

 

アイランズ卿は指揮官の務めとして、自らの手で落としつけろと言う。

 

「彼が死んだのも死にぞこなっているのも総ておまえのせいだ」

 

「アイランズ卿…!!」「ウォルター!」

 

インテグラは震える手で拳銃を握り直した。

「……許してくれとは言わない。全部…私のせいだ」

 

一発、また一発。

インテグラは涙を見せず、かつての部下たちの頭を撃ち抜いていく。

その背中を、セラスはただ見つめることしかできなかった。狩人は帽子を目深にかぶり、死者への黙祷のように静かに佇んでいた。

 

「ウォルター…ミレニアムとやらを調べろ。速やかに、徹底的にだ」

 

「…はッ 無論です」

 

「……この落とし前は兆倍にして返すぞ」

 

アイランズ卿はウォルターに命じた。『ミレニアム』を必ず見つけ出し、必ず倍返しにすると。

 

 

 

一方、謎のモニター室。

 

「素晴らしい……」

小太りの男はヤンが獣化し、そして斧で叩き潰されるまでの映像を繰り返し再生していた。

 

「獣化……。ヤーナムの血と吸血鬼の融合。適合した者には、相応の力を宿すか」

男の眼鏡の奥で、狂気の瞳が輝く。

「だが、自我の崩壊が早すぎるな。理性なき兵士はただの肉塊だ」

 

そして彼は、別のモニターに目を向けた。

そこには、ルーク・バレンタインを喰らい尽くし、不敵に笑うアーカードの姿があった。

ルークを取り込んだアーカードの影からは、時折、獣のような爪や毛皮の幻影が揺らめいている。

 

「そして吸血鬼(アーカード)。奴は獣の因子すらも喰らい、己の糧としたか。蝕まれるどころか、火力を増している」

男は愉快そうにニヤリと笑った。

 

「まあいい、諸君。貴重なデータは取れた」

「研究を再開しよう。……戦争の準備は、まだ始まったばかりだ」

 

to be continued…

 

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