記憶喪失の男子生徒と仲正イチカ   作:松花 陽気

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久しぶりです。

読み直したらめっちゃ違和感あったので大型修正しました。

完了済み

後書きに、オリキャラの設定貼ってます。


第九話:黒衣の何でも屋

月明かりを遮るブラインドが下ろされた、真っ暗な室内。

唯一の光源は、机の上に置かれたタブレット端末が放つ淡い電子光だけだった。

 

その光に照らされているのは、背もたれの高い椅子に座り机に肘を突いて顎に手をやる男――黒服のシルエットがあった。彼は窓を背にし、静寂の中で一枚の書類を見ていた。

 

表題には、『契約書』と記されている。

 

「理事は、相変わらず話の通じない人ですね。協力の提案を無下に断るとは。……まあ、断られる事は想定の範囲内です」

 

黒服の独り言が、冷たい空気の中に溶けていく。

数日前、彼はカイザー理事にとある事を提案し、それを一蹴されていた。しかし、黒服にとってそれは織り込み済みであった。

 

「今回の件は、あなたと結んだ契約とは別件のことです。なので、私は私のやりたい研究をします。まあ、これがバレればあちら側との信用問題にもなりますので秘密裏にですが、ルールの範疇です」

 

黒服は机の上の『依頼書』を手に取った。これは彼自身が作成し、ブラックマーケットに住まう者が受理した契約の証だ。

 

「……さて。問題はその後です」

 

黒服が数日前に連絡を取ったそいつは、金次第ではどんな事もこなす凄腕の者。彼が依頼遂行してくれれば、黒服の見たいものが始まることになる。

 

「天堕ケンゴ君。あなたの異様な神秘。そして、君が一体どれほどの価値を持ち、どのような存在で、いかにしてこの世に現れたのか……私は正しく知りたいのです」

 

黒服は細長い指で、机の横に置かれた無機質なアタッシュケースを叩いた。その中には、あらかじめ用意されたケンゴに向けた物が収められている。

 

「さあ、見せてください。逃げ場のない地獄の底で、それを手に取った貴方が何を選び、どこまで抗えるのか……」

 

黒服の顔を覆うノイズが、愉悦に歪んだように見えた。

 

「これは実験であり、観測であり、そして貴方への試練です。……ふさわしい結果を期待していますよ、天堕ケンゴさん」

 

暗闇の中で、黒服は静かに、不気味に笑った。黒服の前には、仮面を付けたヘイローを持つ少年が一人、ポツンと突っ立っているのだった。

黒服は、外の景色に目を向ける。はるか遠くに見える不夜城のように赤く燃えるゲヘナの街並みが、不吉な輝きを放っていた。

 

□□□ ゲヘナ自治区・廃棄コンテナ倉庫

 

「……う、ぐ……」

 

一方、埃っぽい倉庫の床に転がされたケンゴは、ぼやける視界の中で異変に気づいていた。自分を運んできたヘルメット団の連中が横目に映る。そいつらの正面には傭兵と思われる戦闘型のオートマタ達がおり、なにか口論をしているのが見えた。

ヘルメット団は、納得がいかないのかギャーギャーと騒ぎ立てる。それをオートマタが辟易とした声音で喋ると、いきなり銃を抜け取り彼女達に発砲した。続いて他のオートマタも銃を抜く。すぐまた一斉掃射。

ヘルメット団達は気絶し、そいつらはどこかへと引っ張られこの場から消えていった。

 

「……よぉ。起きたのか」

 

「なんだ……ここは?」

 

体の痺れが、眠気が消えている。ケンゴが吸ったあの煙の効果はもう体には残っていないようだった。

話しかけてきたそのオートマタを見上げる。

 

「ようこそ、新人君。なんとも気分が悪そうだ」

 

「……あぁ、最悪だね」

 

ケンゴは周囲を見渡して、簡潔に一言でまとめた。というより、それ以外の言葉が思い浮かばなかった。長く放置されていたのか、ガソリンやらオイルやらが乱雑に置かれ、その近くには自分と同様に縄で縛られている女生徒たちがいた。

 

「さっきの質問だが、お前がそれを知る必要はない」

 

「そう。なんとなく、そう言われる気がしたよ」

 

ケンゴは再度、女子生徒たちに目を向ける。黒が基調となった制服を着込んでおり、どの人達も痛ぶられたのか、制服や肌に汚れが染み付いていた。もしかして、自分もあいつら見たく、おもちゃにされるのだろうか?

 

「安心しろ。お前の事は丁重にと言われている。他の部下なら知らないが、俺は大事な商品を傷つけるなんて事はしない。……まあ、俺の目があるうちは、だがな」

 

補足して言うと、オートマタは不適な笑った。表情からは読めないが、その声音は自分たちを心底嘲笑っているかのように軽蔑したものだとケンゴは感じ取った。その男の声に、ケンゴは怒りをあらわにする。

 

「縛られてるからって良い気になるなよ。子供だからって舐めてると痛い目合うぜ」

 

「おや?怒ったのかな?」

 

「心底舐めた面だな。楽な仕事だね、こんなガキ相手に無駄な時間を浪費してるんだからさ。暇だよねぇ〜?……いや違うか?役に立たないから、ここなのか」

 

相手と同じように、心底嘲笑いながら煽ってみせた。……だが。

 

「ふははは!!やるねぇ〜!でも、俺にそんな煽りは通じない。これでも、先輩や同僚達のお陰で貶され慣れてるんでね。今更馬鹿にされたところでノーダメだぜ」

 

「……ちっ」

 

「おっと。話してたら喉が渇いたな。俺はしばしここを外させてもらう。逃げるなよ〜」

「あ、いっけね。逃げられねんだっけか?」

 

最後に高笑いだけを残して機械男はその場を後にした。ここに残されたのは、ケンゴと数人の生徒……そして異臭のする廃棄物だけだった。

 

さて、どうしようか。と奴が出て行ったお陰で集中して作戦が練られそうだ。だが、現状縛られている状態では何もできない。翼も一緒にロープでぐるぐる巻きだから広げて伸ばすこともできないし……。一か八か、力いっぱい込めてロープを引きちぎるか?いや、現実的じゃねえし、これじゃロープの前に血管が持たずに千切れそうだ。なにかないか?何か他に方法は……。

 

「……ねぇ、あなた」

 

ケンゴが必死に思考を巡らせていた時だった。ふと、隣から声をかけられた。ふと、ケンゴはそちらを向く。

そこには、綺麗な赤い髪にメガネと後ろの首あたりにツノを持った子がいた。

 

「えっと……君は?」

 

思わず聞いてしまったが、少女はすんなりと名乗った。

 

「私は、ゲヘナ学園所属。陸八魔アルよ……あなたは?」

 

「トリニティ総合学園の天堕ケンゴ」

 

「トリニティの子だったのね……なんですって!!??と、トトトリニティ!!!??」

 

すると、アルは突然白目になってすごい顔で驚いた。なんだこいつ、おもしれぇな。

 

「し、しかもあなた男じゃない!?トリニティってお嬢様学校でしょ!?男がいるなんて初耳なんだけどーー!!??」

 

そんなに驚くことなんだろうか?と思ってしまう。噂には百鬼夜行やゲヘナにも少なからずだが男の生徒はいると聞く。なんなら、最近ミレニアムではそこの生徒会が一年生の男一人に侵入されたとかなんとか聞いたことがあるが……後に捕まったとかなんとか。

 

「そういえば、あなたはどうしてここに?」

 

「ヘルメット団に捕まって気づいたらここに……なあ、ここってどこなんだ?」

 

「私が盗み聞いた話だと、ここはゲヘナ自治区の外れみたいよ。それも、トリニティ領から最も近い場所ね」

 

「ゲヘナ?……ってことはアルの出身地か。……なあ、他に捕まってる奴らもそうなのか?」

 

アルに尋ねながら、近くで気を失っているか寝ているかの人達を見やる。

 

「えぇ。この人たちは私と同じゲヘナ学園の生徒よ。見た限り、私たちよりも前に来た子たちのようね。……酷いことするわ」

 

学園の仲間を傷つけられたことに余程ムカついているのだろう、額に青筋を浮かべながら、冷静な怒りを抱くアル。

 

「いったい、なんのためにこんなことをするのかしら?相手のオートマタもどこの奴らか不明だし」

 

「……見たところ、あんたも相当ひどい目に遭ってるみたいだな、アル」

 

「この子達に比べたらまだマシよ。それに、きっと私の友達……じゃなくて、社員が助けに来てくれるから、心配してないわ」

 

「ん?友?……社員??君、学生なのに会社をやってるのか?」

 

「え、ええ!そう、私たちは『便利屋68』。今はまだ、創業準備期間というか、資本金を調達している最中なんだけど。いずれはゲヘナの……いや、キヴォトスの裏社会を支配する最高のアウトローになる予定なんだから!」

 

アルは縛られたまま、必死に胸を張ろうとしているが。その制服の汚れや、さっきまで震えていた様子からは、企業の片鱗すら感じられはしなかった。ケンゴは「ああ、この子は大概お人好しというか、夢見がちな苦労人なんだな」と直感する。

 

「……なるほど。で、その有望な会社の社員さんは、今どこに?」

 

「……今はまだ二人きりだけど、一人は今、別のルートで資金調達……じゃなくて、闇の取引に向かってるわ!きっとすぐに、この倉庫ごと敵を吹き飛ばしに来てくれるはずよ!」

 

自信満々に語るアルに、ケンゴは疑いの目を向けつつも、少し微笑する。アルは、最後の方は声が裏返っていたが平常運転だった。……と、その時。

倉庫の天井付近、排気ダクトの蓋が音もなく外れ、一人の男が滑り落ちてきました。

 

「……おっと、賑やかだな」

 

着地したのは、先ほどの無骨なオートマタとは明らかに空気が異なる、全身を黒い装備で包んだ男だった。その手には重厚なアタッシュケースが握られている。

 

「な、何!?だれ!?誰なの!?もしかして、私の首を狙うライバル企業!?」

 

アルが顔を引きつらせて叫びますが、男は無視してケンゴの前まで歩み寄ると、膝をつきました。

 

「……天堕ケンゴだな」

 

「……なんだ?」

 

男は鋭いナイフを抜き放つと、一閃。ケンゴの身体を縛っていた頑丈なロープを、紙細工のように容易く切り裂きました。

 

「……えっ、あ、ちょっと! 私は!? 私はいいの!?」

 

「うるせえな。……って、お前は??」

 

「……???」

 

アルが慌てて声を上げ男と視線を交わす。すると、男はアルの顔を見て一瞬止まると、思い出したような所作をして、マスク越しに明るいトーンが響き渡った。

 

「誰かと思えば、アルじゃねえか」

 

「……えっ??」

 

「なんだわからねえか?俺だよ俺!ゲヘナ中学でたまに一緒だった」

 

「も、もしかして……アイク!!??」

 

「相変わらず綺麗な顔でおもしれぇ面だな。元気だったか?……って、この状況でこれはおかしいか」

 

「それよりも、今まであなたどこに行ってたの!?ゲヘナのどこを探してもいなかったのに」

 

「いやぁ……まあ、学がなさすぎて……その」

「試験に……落ちた」

 

「はぁ!?」

 

アルが訳がわからないと言った顔で縛られたまま立ち上がり彼に詰め寄った。

 

「……せめてね!連絡くらいよこしなさいよ!私たちずっと探してたのよ!ムツキと一緒に遊びに行く約束までしたのに!すっぽかして!!」

 

「悪かった悪かった!!俺も色々あってよ!」

 

そうして、そこからはアルの問い詰めが始まった。簡潔にまとめると、ゲヘナの受験失敗後、他の学校に入学できないか奔走していたらしい。アビドスやトリニティは環境的な問題で除外して、ミレニアムや百鬼夜行、レッドウィンター、SRT、ヴァルキューレなどを受けたが悉く失敗。そうしているうちに時間は過ぎていき、皆進学していく中、自分は入学できずにいることが恥ずかしくなり身を隠すことに。

……で、今はブラックマーケットにて『何でも屋』をやってなんとか食い繋いでいると言ったことをしている、ということだった。それを聞いたアルは……。

 

「……そう。大変だったのねあなた。よく頑張ったわ!」

「それに、何でも屋だなんて、私たちと同じね!凄いわ!またあなたと競い合えるだなんて感激よ!!これから同業として、共に頑張りましょう!!」

 

と、称賛していた。アイクと名乗った「何でも屋」の青年は、アルのあまりにも素直な称賛に、マスク越しでも分かるほど決まり悪そうに後頭部を掻きました。

 

「……よせやい。褒められた仕事じゃねえよ。ま、腐れ縁のよしみだ、お前さんも助けてやる」

 

アイクは手際よくナイフを振るい、アルを縛っていたロープを鮮やかに断ち切りました。さらに、周囲で倒れていたゲヘナの生徒たちの拘束も次々と解く。

 

「助かったわ、アイク!さすが私のライバル(自称)ね!」

 

「はいはい。……あ、そうだ。アル、お前の得物だと思うのを見つけたからよ。持ってきといたぜ」

 

アイクはそう言い残すと、まだ状況に追いつけずにいるケンゴの方を向き、顎でアタッシュケースを示した。

 

「さて、トリニティの坊ちゃん。中身を確認しな」

 

ケンゴが促されるままケースの中身を掴み取ると、そこには、見覚えのない一挺が収まっていた。

単純な赤と黒の配色がされたアサルトライフル。艶消しのブラックをベースに、血のように鮮烈なレッドラインが走るその銃身は、華美な装飾を排した実戦特化の凄みを感じさせる。手に取った瞬間、驚くほどしっくりと馴染む感覚があり、ケンゴの背中の翼が解放を喜ぶように大きくしなる。

 

なんとなくだが、イチカの使ってた武器を思い出す。これはイチカの物と似て非なら型番だが、割とどこにでもありそうなデザインをしていた。

 

「……いい銃ね。これなら戦えるわ!」

 

呆然とするケンゴの代わりにアルが反応する。

ふと、ケンゴはケースの中から一枚の紙を取る。

 

『転入祝いという事で、こちらをお渡しいたします』

 

と、一言だけ綴られた文章を見て……というよりそのカードの真っ黒なデザインを見てケンゴはこれを送ってきた相手が誰か理解した。

 

(黒服)

 

これの送り主が黒服だと理解したケンゴは、ケースから銃を取り使い方を確認する。ご丁寧にマニュアルまで付いていたのでそれ通りに動かす。マガジンの装填方法からセーフティの外し方掛け方まで、銃の構え方まで懇切丁寧に解説されていた。

全ての確認が終わったのを見届けたアイクは、背を向けて入ってきたダクトの方に戻る。

 

「……じゃあ、俺はここらでドロンさせてもらう。これ以上ここに居座ってオートマタの野郎に見つかったら、契約違反で俺の首が飛ぶんでね」

 

アイクはダクトを見上げると、軽やかな身のこなしで跳躍しました。

 

「アル!またな!今度会う時は、その『便利屋』だか何だかの景気のいい話、聞かせてくれな!」

 

「ええ、もちろんよ!次に会う時は、高層ビルの最上階で最高級のジュースをご馳走してあげるわ!」

 

アルが大きく手を振る中、アイクの姿は闇へと消えていきました。

静まり返った倉庫。しかし、その静寂を破るように、外から無機質な駆動音と金属の足音が近づいてきます。さっきのオートマタが戻ってきたのです。

 

「……さて。アル、準備はいいか?」

 

ケンゴは新調された赤黒のアサルトライフルを構え、銃口を扉に向ける。その瞳には、先ほどまでの無力感は微塵もなかった。

 

「ええ……!行くわよ、ケンゴ!ゲヘナの、いえ、『便利屋68』社長の恐ろしさを骨の髄まで教えてやるんだから!」

 

アルもまた、自慢の愛銃を抱え、不敵な笑えを浮かべる。

 

重厚なシャッターが、外側から乱暴に押し開けられる。

そこには、赤く光るセンサーの目を剥き出しにしたオートマタの軍勢が、銃器を構えて立ち塞がる。

 

「いいケンゴ。……足、引っ張らないでよね?」

 

ケンゴの口元に、冷ややかな笑みが浮かぶと、一言告げる。

 

「あぁ、やるだけやるさ」

 

赤黒い銃身から、閃光が迸った。




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■ 杠 ルイ(Yuzuriha Rui)

【基本情報】

所属:トリニティ総合学園

所属部活:正義実現委員会 委員長

学年:三年生

年齢:17歳

誕生日:○月○日(決めてない)

趣味:戦闘、盆栽

身長:172センチ

性格は、穏やかでしっかりもの。お人好しだし、後輩思いという面を持つ。トリニティでは珍しく誰よりも仲間意識が高く正義実現委員会に何かあれば激怒する。理性的に冷静な思考を持って暴れる。
普段はすごく落ち着いている分、ギャップである。
ティーパーティーの前となれば流石に抑えるが。使う武器はSRとスナイパー型。なんでもこなせるオールラウンダーだが、ファッションセンスは皆無。まず、服に無頓着。

【身体的・神秘的特徴】

見た目、容姿:黒髪三つ編みヘアーで金目。お姉さんタイプの容姿。胸は大きく、太もももそれなりに(ハスミには負ける)。たぬき目でいつも笑顔を絶やさない。制服はきちんと正しく着こなすが『正義』と書かれた羽織を背中に背負っている。

トリニティ随一の把握能力:高い索敵能力を持ち、戦況把握が高い。

漆黒の翼:少し特殊な漆黒の花を持つ。左右の翼の大きさが異なっており右の翼が大きく、左が中くらいほど。わかりやすい例えとしては、右翼はハサミより小さくでツルギくらいのサイズ。左翼はイチカと同サイズ。
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