俺の異世界勇者デビュー   作:†バレット†

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夢に誘われ

梅雨の季節がようやく明けた6月、夕日が差し込む通学路に二人の男子高校生の会話が響いていた。

 

 

「そこで俺は言ってやった訳だよ!! 荒れ果てた大地の上に立ち塞がる星の数ほどの異形達に向かって、俺の刀の錆になりたい奴はかかって来やがれッ!! てな」

 

「へー、さいですかー」

 

「おいおいノリ悪いなー、もうちょっとなんかこーさ! 反応してくれよな?」

 

「いやいやいや!? だって昼まっからずううぅうっと聞かされてるんだぜ!? 今の下りの話! いくら俺でもさすがにキレるよ!?」

 

「わ、悪かったよ……、今回の夢が中々爽快かつ熱い展開だったからついな」

 

俺、川島光(かわしまひかる)は中学からの親友に対し、今朝の夢の一部始終を聞かせながら人通りの少ない路地を通って学校の岐路についていた。

 

「まったく……お前本当にが夢大好きだよなー、どんだけ勇者になって活躍する、ファンタジーここに極まれりな夢が好きなんだよ!」

 

「自分の意思で見れる程です」

 

「あっそ……」

 

隠す気がさらさら無い親友が明らかに呆れた様子で言葉を濁すがそんな事は俺には関係なかった。

 

 

そう、俺は小学生辺りから自分の意思で勇者もしくはそれに類するもの……例えば英雄として戦う夢を見ることができるんだ。

 

理由? そんなの知らん、勇者として戦う夢を見ることが出来るだけで内容までは決められないし、思春期が見たいようなピンク色の夢とかは見ることは叶わない。

 

どうにも勇者として戦う夢だけが俺の意思で見れるレパートリーらしい、もうちょっと種類があってもいいもんだけどね!

 

 

コイツ以外の他の友達にこの事を話したらキモイと一蹴され、次いでお前病院行った方がいいんじゃね? と右ストレートを繰り出された経緯があり、中学からの親友であり唯一の理解者でもあるコイツにしか話をできないんだ。

 

つまり、俺の胸の中で滾っている熱い思いはこいつにぶちまける以外方法が無いという訳だ。本人からしたら堪った物ではないと思うけど……

 

 

「じゃあ俺こっちだからさ、夢見る男子もほどほどにしとけよ!!」

 

「余計なお世話じゃ! じゃあまた明日な!!」

 

そんな邪推をしながらも、片手を挙げて角を曲がって行く親友に軽く手を挙げ返事を返す。 嫌な顔せずに俺の話に付き合ってくれるコイツがなんだかとっても輝いて見える。

 

 

 

 

 

……これがコイツとの最後の別れになるって知ってたら、もう少し俺は違う態度を取れたのかも知れなかったが……。

 

今の俺にそれを知る術はなかったんだ。

 

 

 

 

「ただいま~っと、誰も居ないんだけどねぇ」

 

俺の両親は共働きで帰りは大体いつも遅い、その為昼と夜はコンビニ弁当で済ましているのだ。寂しい事この上ない。

 

近くのコンビニで買った弁当を片手に二階の自室へ駆け上がる。

 

「飯、飯ぃ~、腹減っちまったぜ」

 

部屋に飛び込んだ俺は早速コンビニで購入した幕の内弁当と飲み物を取り出す。

 

「ふっふっふ、弁当は温め済み、抜かりはない! では、いただきます!!」

 

パキッと子気味いい音を鳴らして箸を割った俺は軽く舌なめずりした後に弁当に手をつけ始めた。

 

「うん、この鮭なかなか……、おっ! 煮物もおいしいじゃん!!」

 

 

 

 

 

 

お弁当を作ってるおばちゃん、いつもありがとう。俺は……今日も元気です!!

 

 

「ご馳走様でしたっと」

 

少しだけ虚しくなったが、両手を合わせて、まだ見ぬ白衣に包まれているであろうおばちゃん達に感謝した。

 

 

 

「さて……、なにするかな」

 

 

弁当のゴミを片付けた俺はきょろきょろと自分の質素な部屋を見回す。

 

「ん~、碧の○跡もやりこんじゃったし、F○もクリアしたばっかだしな~SA○の最新刊も読み終えたばっかだし……」

 

 

どうしたもんかと思考を開始して数秒……。

 

「よし、寝るか!!」

 

睡眠は究極の暇つぶし、俺なら勇者として戦う夢も見れるし、体を休めれるしで一石二鳥だ!

 

そうと決まればさっさと寝よう!

 

短パンにTシャツでベッドに転がり込んだ俺はいつものようにのび○大先生のように速攻で眠りについたのだった。

 

「ここは……?」

 

気づけば真っ黒い、まるで宇宙のような空間に立っていた。

 

自分の体すら視認できない、光という概念が一切合財排除されたような、恐ろしく静かな空間だ。

 

「失敗した? でも今までそんなこと……」

 

いつもの夢なら服装も鎧やらローブやらに変わっていてを腰や背中には自身の武器が備えられているのだが、そんな重みは一切感じられない。

 

暗闇という分かりやすい恐怖が俺を徐々に侵食し始めたそんな時だった。

 

か細い、今にも途切れてしまいそうなそんな掠れた声のような物が聞こえたような気がしたのだ。

 

「き……すか?」

 

……まただ、でも今度はもっとはっきり聞こえた気がする。

 

女性の声のような気がしたけど……。

 

「聞こえ……ますか?」

 

「聞こえた! いったい誰だ!?」

 

今度は間違いなく聞き取れた。それは若い女性の声だったのだ。

 

俺の声に反応したのかどうかは不明だが、いきなりすぐ近くの空間が光始める。

 

「うわっ!?」

 

突如発生した光源に慌てて腕で顔を覆う、徐々に目が慣れてきた其処にあったのはふわふわと浮かんでいるサッカーボール位の光の玉であった。

 

 

 

「よかった、繋がったのですね……」

 

どうやら先ほどの声の主はこの光の玉らしい、よくわからんがここから声が聞こえてきた。

 

「えっと……どちら様?」

 

「失礼しました、私はミフィリア……ミフィリア・グランセウムといいます」

 

「はぁ……」

 

「お願いします! 私達を助けてくださいっ!!」

 

「えっ?」

 

あまりにも唐突な助けて発言に俺の体は少しばかり硬直する。

 

「不躾なのは重々承知です、ですがわが国は……いえ、この世界は重大な危機に瀕しているのです!!」

 

尊大な物言いの彼女の言葉に対しピコーンと俺の頭上で電球が燈るイメージが一瞬浮かび上がる。ようやく俺自身の理解も追いついてきた訳だ。

 

ははぁ~ん、なるほどね。

 

今回はそういう趣向ですか、なるほどわかったよ。始まりが始まりだったから少しばかり動揺しちまったけど、後はいつも通りの流れって訳だ!

 

 

 

「無理を言っているのは重々承知しています、ですが勇者様どうかお願いです! 私達には貴方様の助けが必要なのです! どうか……どうか助けては頂けないでしょうか……?」

 

ミフィリアと名乗った光の玉は、今にも泣き出しそうな声で懇願してきた。夢の中でもあるにも拘らず正に真に迫らんとする迫真の演技だと俺は深く関心した。

 

それほど心を揺さぶられる程の思いが対面していないにも拘らず伝わって来たのだから。

 

 

「ああ、わかった。俺に出来る事ならなんでも手伝うよ!」

 

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!! しばらくの間こちらに戻る事は出来ませんが此方に召喚してもよろしいですか?」

 

「ん~? よく分からないけどいいよ!」

 

どうせ夢だしね~、てか今回の夢はいやに手が込んでるな。

 

召喚やら戻れないやら……まぁいっか。いつまでもこのよくわからない空間に突っ立っているだけってのもツマラナイ話だからな。

 

どうせ夢だから……と、深く考えないでいる間にどうやら向こうの準備は終了したようだった。

 

 

「お待たせしました、準備が整いましたので召喚いたしますね」

 

「ああ、頼むぜ」

 

「では……行きます!!」

 

「おおっ!?」

 

 

暗い足元に黄色い光の線が走り闇を切り裂く、それはもの凄い勢いで駆け回りすぐに一つの図を書き上げる。

 

「魔方陣……? うわっ!?」

 

直後、俺の足元にある本格的な魔方陣らしき物が輝き始め、俺の視界を遮った。

 

 

そして俺は悟る。

 

やば……、この感覚目が……覚める。

 

 

これからって時に、もうちょっと楽しみたかったのにな……。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

「……て……だ…い」

 

うんんっ?

 

なんだ? 誰かが俺の事を呼んでるのか?

 

 

「…きて……くだ……ゆ」

 

 

来て? くだゆ? なに言ってんだコイツ? てか俺兄弟とかいないはずなのに……、まさか不審者!?

 

「起きて下さい勇者様ぁ~!」

 

「うおっ!!」

 

「ようやく起きられましたね、中々起きないので心配いたしましたよ」

 

いきなりの事態に寝起きながらも目をパチクリしている俺の目の前には今まで見たことが無いほどの絶世の美少女、そして見た事もない程豪華な部屋だった。

 

今までアニメやゲームでしか見た事の無いピンク色のセミロングの髪に後頭部には赤い大きなリボン、アメジストのように綺麗な薄紫色の瞳を備えた彼女はまるで天使のように可愛らしい。

 

薄いピンクを下地に赤いラインが入っているドレスを纏っている彼女はまるでお姫様のようだった、そして。

 

 

 

ここ……、どこ?

 

俺の部屋とは似ても似つかないほどの洋風ここに極まれりな控えめながらもゴージャスな部屋。うん、自分で言ってて何を言ってるのか意味が分かんないぞ、俺。

 

兎にも角にもこの部屋は俺の部屋とは月とスッポン、天と地程の差がある事は比べるべくもなく明らかであった。

 

 

「えっと……勇者様?」

 

 

頭の中がぐちゃぐちゃになりながらも、傍から見れば呆けているだけに見える俺が心配になったのか、薄紫色の綺麗な瞳に少しばかりの不安を漂わせながら女の子が俺の方を見ておずおずと訪ねてきた。

 

 

てか勇者って誰だ? と思うも、少女の瞳は間違いなく俺を捉えている。というより、周りを見渡して見たがこの豪華絢爛な部屋には俺達以外に誰もいない……って事は。

 

 

「なぁんだ、夢の続きか!」

 

「夢じゃありませんっ!」

 

 

今……なんと?

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