俺の異世界勇者デビュー   作:†バレット†

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聖痕

「ヒカル、右手の甲を見てみるのだ」

 

右手の甲?

 

何事も無かったかのようにケロリとした表情でアドルフさんにそう言われて、俺は視線を自分の右手に移した。

 

「これ……刺青……なのか? 全然身に覚えが無いんですが」

 

見てビックリ、いつの間にやら俺の右手の甲には剣のような形を模した十字の刺青らしきものが彫られていた。

 

いやいや、健全な男子高校生だった俺はこんな物、全く身に覚えがないんだけどね。

 

「それこそ聖剣デュランダルのマスターに選ばれた証、聖痕(スティグマ)だ」

 

「…………」

 

何か今、ものすっっっげぇぇっ厨二臭い言葉を耳にしたような気がするけど気のせいじゃないよな?

 

「聖剣デュランダルはヒカルを認め、契約を結んだ。ヒカル自身がデュランダルの鞘となっており、その身に聖剣を秘めているという事なのだ」

 

俺の沈黙をどう取ったのかは不明だが、アドルフさんは続きを話し出す。

……よく分からないけど、勝手に契約結ばれて俺の中に聖剣が宿ったってことか? まぁ無事に選ばれたってんならいいんだけどさ。

 

「これ……デュランダルだっけ? どうやって俺の中から出せばいいんですか?」

 

俺がデュランダルの鞘となり、どうゆう原理か体? の中に取り込まれている事はなんとなく分かった。けど出し方なんて全く分からないぞ?

 

「なに、至極簡単な事だ。デュランダルに来いと心の内で念じればよい、戻す時もそのように念じればいいのだ。ふむ、物は試しだ、今此処で実践してみなさい」

 

「わかった、やってみるよ」

 

アドルフさんが教えてくれた方法というのは、確かにとてもシンプルで簡単なものであった。

 

なるほど、念じれば言い訳ね。いよいよなんかの主人公みたいになっちまったよおい。

 

……っと、ミフィ達も真剣に見てるし真面目にやらないとな……。

 

俺がデュランダルを出す場面をじっと見つめる親子をちらりと見てからすぐに思考を切り替える。

 

ふーっと軽く息を吐いて形だけでもリラックスさせようとして肩の力を抜き、俺は心の内で強く念じてから、それを言葉にして吐き出した。

 

「来いッ! デュランダル!!」

 

右手を前に突き出し叫ぶと、、聖痕と呼ばれた右手の甲に彫られている刺青が淡く発光し始めた。

 

「…・・おおっ!」

 

気づいた時には俺は右手にデュランダルを握っていた、隣に立っているミフィは嬉しかったのか、何故か拍手している。

 

拍手なんてあまりされたこと無いからなんか照れるな……。

 

「ははは、どうやら無用の心配だったようだな。さすがヒカル」

 

嬉しそうに笑ったアドルフさんは俺の手に握られているデュランダルを愛でるように見つめてきた

 

「聖剣デュランダルはな、古くから我が国に伝わる門外不出の秘宝だったのだ……」

 

あっ、これ話が長くなるパターンですね、分かります。

 

「言い伝えによると天使から王に献上された品だとか……」

 

「天使? それは魔族ですか? それともアニュー?」

 

天使といういかにも空想上の世界にしかいないような言葉だけどこの世界には魔物とかアニューとかいるからな……、もしかしたら存在するのか?

 

「そこまでは分からん……、だが天使は言ったそうだ、切れ味の鋭さデュランダルに勝るもの無し……とな、噂では岩をも切り裂く切れ味らしい」

 

岩って……、とんでもない切れ味だなおい。

 

 

その後、アドルフさんからデュランダルに纏わる秘話という秘話を小一時間程聞かされた。

 

その時のアドルフさんはまるで自慢の息子の話をしているみたいに嬉しそうな表情をしていたから話を切るに切れなかったんだよね。

 

隣でミフィもすみませんとばかりに乾いた笑みを浮かべていたよ。

 

「おっと話が逸れてしまったな、すまんすまん」

 

ようやくアドルフさんのデュランダル秘話は終了し元の話の路線に戻り始めた。

 

「えっと、このブレスレットは何ですか? アドルフさん」

 

それはいたってシンプルなシルバーブレスレット、聖剣と一緒に持ってきたあたりただのブレスレットではないと思うんだけど……。

 

「ああ、説明し忘れていたな。それはヒカルの強すぎる力を抑えるための魔法具だ」

 

魔法具……これが? 見たとこ普通のブレスレットだけども。

 

「今のままヒカルが生活していたら何がどんな拍子に起こるか想像できん、その為普段はそれを装着して生活するのだ」

 

なるほど、確かに一理あるな、なんてったって壁をパンチで打ち抜く威力がある訳だし、間違って人に怪我をさせたら大変だ。

 

「早く自分の力に慣れるよう訓練するのだぞ?」

 

「分かりました」

 

そう言って受け取ったブレスレットを右手に装着した。

 

「それと魔法を学ぶためにグランセウム王立魔法学園に編入手続きをしておこう」

 

「えっ?」

 

「ミフィリアもそこに通っている、頑張って魔法を覚えてきなさい」

 

え、ちょっと待って。俺魔法覚えるって学校に入るの? なんも魔法のこと知らないのに大丈夫なのか!?

 

「あー、そうだ。言い忘れていたが君が勇者であることは隠密にしていこうと思っている。下手に命を狙われでもしたら堪らないからな、それに身動きが取れなくなっても困る……」

 

「はぁ……」

 

「だから学園ではミフィリアとは初めて会ったふりをしてくれないか? 非常に心苦しいのだが……」

 

つまり単身謎の魔術学園に乗り込めってんですね、分かります。

 

「勿論学園でミフィリアと友達になってくれれば何も問題は無いのだが……」

 

「ごめんなさい……」

 

ミフィとアドルフさんはとても辛そうに顔を下げ俯いている。

 

「そんな、俺の為にしてくれた配慮なんですよね? だったらありがたいです、ミフィとはまた友達になればいいだけだし……」

 

「そうかすまないな……、編入は明後日からになるから頑張るんだぞ」

 

明後日っていきなりだな! まぁ、明日じゃないだけましか……。

 

「因みに明日は勇者を召喚したことを民に伝え心配させないようにするつもりだ、身分は明かさないからフードつきのローブを着て身を隠してはもらうつもりだが聖剣を民達に見せてあげて欲しい」

 

なるほど、だから明日じゃなくて明後日なのね、さらには学校でミフィとの関係も隠す……と。

 

「分かりました……」

 

「それとこれは強制では無く一つの提案なのだが……」

 

「なんですか?」

 

ここまで言っておいて言いずらそうにするって事はよほどの事なのだろうか?

 

「ヒカルの名前はどうにもこの世界では珍しすぎてね、良ければ名前を変えてみないか?」

 

 

そう言われて気づいた、ミフィ達の名前は外国人みたいな感じであること、俺の名前を呼ぶときなんかイントネーションが変な事に。

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